Home/ 経済 経済 わが国の生き筋 ~TPP参加と減反廃止~ 2013.12.10 ◆「減反廃止」という誤報?が紙面を飾る 今秋、新聞主要紙が50年近く続けられてきた「減反廃止」、コメ政策の大転換と相次いで報道しました。生産調整(減反)は5年後の平成30年度(2018)をめどに廃止すると驚くべき内容でした。 しかし詳細に検証しますと「減反廃止」報道は間違いであり、「減反維持」が実情と思われます。 政府は11/26、農林水産業・地域の活力創造本部会合を開き、コメ政策見直しの全体像を決めました。 主なものとして、 (1)平成29年度までは、現行通り国が生産数量目標を配分する(生産調整=減反)。 平成30年度をめどに、行政による生産数量目標に頼らなくても、国の需給見通しなどを踏まえ、生産者や集荷業者・団体中心に需要に応じて生産する体制に移行する。 (2)現在10アールあたり1万5千円というコメ農家に対する戸別所得補償を5年後に廃止する。 (3)飼料用米への助成で補助金を拡充する。水田での主食用米以外の生産を誘導する。 これに対する補助金を、現行10アール一律8万円を収穫により変動させ最大10万5千円とする。 このように政府が生産目標数量の配分を行わないことと戸別所得補償を5年後に廃止することに目がいき、主要紙は減反廃止と報じたと思われます。 しかし、実際には減反面積への減反補助金は依然として交付され、これは維持であって減反廃止ではありません。 当会合を受けて翌日(11/27)の産経新聞は「減反廃止を政府決定~コメ政策、大転換」と一面で「減反廃止」と報道していますが、日本農業新聞は「米政策見直し~主食用以外に誘導」と減反廃止という表現は見られません。 ◆実態は、民主党の減反政策から自民党の減反政策への転換 実情は、民主党の減反政策を廃止し、自民党の減反政策を実行するということであります。 キャノングローバル戦略研究所の山下一仁氏は、Webronza11/4,11/5の中で、次のように指摘しています。 「自民党は、主食用のコメの作付けが増えないようにするために、非主食用の作付けを増やす補助金を増額し、「水田フル活用政策※」をさらに拡充しようとしていることに他ならない、減反廃止どころか強化ではないか」 農水省は非主食用(飼料用)に450万トンの需要が見込めるとしています。 現在、米価の維持のための減反政策に投入している税金は5000億円を超えると言われていますが、飼料用450万トンを生産するために補助金が7000億円に増えるという試算もあります。 同時に高い米を買っていることで消費者が負担している金額も5000億円と言われています。 本来、減反廃止の効能とは、米価が下がるということにあるはずです。非主食用への「転作」により主食用コメの生産はさらに減少するかもしれません。 事実上の減反強化で、米価は下がらないことになります。コメ政策の見直しにより、さらに財政負担と消費者負担が増えるのです。 ◆TPP交渉で守るべき聖域とは、衰退の一途をたどるコメ市場? 農業従業者はピーク時の1/6に減少しました。( 昭和35年、1340万人の従事者が平成24年、240万人)しかも平均年齢は66歳です。50歳以下の従業者は一割未満です。 米の生産量もピーク時1500万トンから1994年1200万トン、現在800万トンに減少。 農地の面積は、1960年代初頭714万ヘクタール、現在459万ヘクタールまで減少。250万ヘクタール減少しました。半分が転用、半分が耕作放棄となっています。 多額の税金を投入して一番保護してきたコメ市場が、一番衰退しているのです。TPP交渉で聖域を守れという聖域とは、衰退の一途をたどる国内市場に他なりません。安楽死を迎えさせてくれということなのでしょうか。 ◆日本のコメの品質は世界最高峰 しかし、日本のコメの品質、味は世界最高峰です。世界の食市場は、平成21年340兆円から平成32年には680兆円まで拡大すると予想されています。 中国では、富裕層になればなるほどインディカ米からジャポニカ米に嗜好が変わるといいます。 日本の米価はここ10年で3~4割安くなっています。中国米、カリフォルニア米等と3割程度まで価格差が縮小しています。 日本のコメを世界に輸出することこそ、生き筋であります。米価を下げることは、内外価格差を解消し、国際競争力を増すことに他なりません。 TPP参加、減反政策の廃止等、規制撤廃こそ日本の農業が強くなる生き筋であると考えます。 (文責:幸福実現党岐阜県本部政調会長 加納有輝彦) 日本よ、アジアの盟主たれ――FRB緩和縮小後の世界を考える 2013.12.09 ◆バーナンキ米国連邦準備理事会(FRB)議長の後任 来年1月に任期が切れるバーナンキ米国連邦準備理事会(FRB)議長の後任として、ジャネット・イエレン氏の議長就任が決定し、初の「女性議長」誕生が期待されております。 イエレン氏は、先月14日の米上院公聴会で、現在の失業率に関して「まだ高すぎる」との見解を明示しており、失業率が目に見えて低下するまでは量的緩和が継続されると予想されます。 世界に大量のマネーが供給されれば、世界の金融市場で一段とリスクオンの流れが加速します。 実際、イエレン氏の声明が発表された11月第2週は日経平均株価も大幅に高騰しました。上昇幅は15年間で最大の1079円。現在はやや落ち着きつつあるものの、2007年12月以来の高値水準を更新しております。 ◆回復基調の先進国、不調の途上国 バーナンキ議長の積極的な緩和策、そしてイエレン氏の議長就任決定などによって、リーマン・ショック後、10%を超えていた米国の失業率は7%まで低下し、米国は株価最高値を続伸し続けております。 日本も今年4月の異次元緩和の効果もあって株高が演出され、長いデフレ不況から脱却の兆しも見え始めております。 日米欧共に先進国は現在、歴史的な金融緩和政策の効果により、ゆっくりとではありますが、経済は回復に向かっていると言えるでしょう。 一方90年代、00年代と高い成長を誇ってきた途上国経済は、インフレや通貨安で苦しめられ、いまいち調子が良くありません。 ◆量的緩和縮小のインパクトを考える さてイエレン氏の議長就任により米国の量的緩和・早期縮小の可能性は遠のきましたが、来年の3月辺りにはやってくると予想されております。 では米国の量的緩和縮小は世界経済にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。 米国にとっては緩和の継続も縮小も悪いことではありません。 量的緩和によって米国の失業率は下がり、株価は続伸を続けました。一方、量的緩和の縮小はリーマン・ショックから米国が本格的に復活したことを意味します。量的緩和縮小は「米国は非常時を脱した」というメッセージです。 金融緩和縮小によって一時的に金融市場が不安定化することもあるかもしれませんが、中長期的には再び「強いドル」を目指して米国の株や不動産に資本が還流してくることが予想できます。 米国の量的緩和縮小は日本にとっても悪いことではありません。ドルが強くなれば相対的に円が安くなり、日本の大企業、輸出企業の回復を後押しするからです。 では米国の金融緩和縮小は途上国に何をもたらすのでしょうか。 途上国の今の課題はインフレと通貨安です。米国の量的緩和縮小は「強いドル」を復活させるため、相対的に途上国通貨は安くなります。 エネルギー等を輸入に頼るアジアの途上国は通貨安によってインフレが加速します。途上国に向かっていた資本はドル高によって米国に反転するため、途上国は通貨安・インフレ・対外債務危機という三重苦に見舞わられる可能性が高まります。 ◆日本よ、アジアの盟主たれ そうしたなかで、アジア新興国経済の危機に手を差し伸べられるのは世界一の債権国・日本しかありません。日本経済の復活を考える上でもアジア経済の梃入れは欠かせません。 2014年、米国の量的緩和が終了に向かい、世界経済の潮目が変わる時、日本はこの変化に対応し、チャンスに変えていかなければなりません。 日本政府は日本企業によるアジア新興国への対外投資を後押しし、アジア新興国の雇用を支えると同時に、TPP推進により輸出先としての日本市場を開放していくべきです。 日本政府がアジア開発銀行や政府系金融機関を通して、積極的にアジア新興国通貨建ての債券やファンドを買い支えていくことで、アジア金融市場にはいっそうの厚みが生まれます。厚みのある金融市場は危機に強いアジア経済をつくります。 中国の不良債権問題や賃金上昇、反日感情などチャイナ・リスクを考えて、生産拠点を東南アジアに移したい日本企業も多数あるはずです。 そうした日本企業のためにも、政府は国際協力銀行や政策投資銀行など、政府系金融機関を動員して、生産拠点の移転を金融面から積極的に支援していくべきです。 アジア新興国を危機に強い経済に変え、先進国化を促していくことは、アジアの需要を取り込みたい日本経済にとっても多大な利益をもたらします。 幸福実現党は安全保障面だけでなく、経済面からも「アジアの盟主としての日本」を復活させてまいります。(HS政経塾2期生 川辺賢一) チェルノブイリ原発事故後のウクライナから日本は何を学ぶべきか 2013.12.07 ◆未だ帰れない福島の人たち 東日本大震災は、2013年12月4日で震災発生から1000日を迎えました。復興庁によれば、避難者は11月14日時点で27万7609人。 住んでいた県以外に避難している人は5万8309人で、そのうち福島第一原発の事故の影響を受ける福島県民が84%の4万9554人です。 阪神淡路大震災が起こった神戸は、3年後にはかなり復興が進みましたが、東日本大震災では原発問題が絡んでいるため、政府の復興方針も曖昧なままです。 ◆スラブチッチ市について チェルノブイリの事故が起きたウクライナから学ぶことは数多くあります。 ウクライナを訪れた福島県民約30人の視察団の代表NPOハッピーロードネット理事長の西本由美子さんと、そのきっかけを作られた北海道大学 奈良林教授の講演から多くの学びがありました。 参考例の一つがWEDGE2013年11月号でも特集が組まれていた「夢の街」スラブチッチです。 スラブチッチ市は、チェルノブイリの東50キロの地点に存在するニュータウンです。チェルノブイリの事故後、初めは原発作業をする作業員のために作られた街でしたが、今は原発の作業員を含めた普通の大人子どもが24,700人暮らしています。 コンセプトは、子供たちが楽しく暮らせる「おとぎの国」。この街は原発事故から2年経たずに建設され、街では子供の遊ぶ姿やベビーカーを押す家族の笑顔が見られます。 幼稚園は子供たちが歩いて通えるようにと400m毎に7つあり、産業もガラスの装飾工場や刺繍工場を設置して住民の雇用を確保しています。 この街は、チェルノブイリ原発事故から3年後の放射能レベルが、福島第一原発の避難区域のうち「避難指示解除準備区域」レベルであったにも関わらず、健康被害が住んでいる人に起こることもありませんでした。(WEDGE2013年11月号) 避難指示解除準備区域とは、年間積算線量が20ミリシーベルト以下が確実であると確認された区域のことです。 年間100ミリシーベルト以下の地域では健康に被害がないことが国際機関においては既に確認されておりますが、福島においては2013年8月8日時点で、避難指示解除準備区域に住んでいた約3万4000人もの人が未だに避難しています。(福島民友 minyu-net) 今ではウクライナ一住みやすいと言われる「夢の街」スラブチッチ。 福島には、スラブチッチのような新しい街も作られないばかりか、ふるさとを捨てなければならない人が後をたちません。これは政府の対応の遅さと、マスコミの報道被害によるものです。 ◆ウクライナの原発・農業政策について 更に学ぶべきは、ウクライナのエネルギー政策です。1990年、ウクライナではチェルノブイリ事故のショックから「ウクライナでの原子力発電所の建設凍結」を発表し、事故5年後の91年に全原発を停止させました。脱原発を選択したのです。 しかしその後、電力不足による停電が何度も発生。電気代高騰から工場の操業率は低下し、経済が破綻しました。失業や将来の展望が見えない中、鬱やアルコール中毒による数万人の自殺者が発生したようです。 そのため、94年に原発再稼働を決意します。現在は原発15基を稼働させ、全電力の約50%を担う世界第7位の原子力大国になっています。 2030年までには、更に原発2基を新設する予定です。日本でもこのまま原発ゼロが続けば、ウクライナの二の舞になることは明らかです。ウクライナが一度犯した脱原発という間違いを決して繰り返してはなりません。 また、ウクライナの国立農業放射線研究所では、ペルシアンブルーという無害の色素を塩に混ぜて牛に食べさせると、牛の体内のセシウムを輩出させ1/17に激減させる方法をすでに発見しています。牛乳も、バターやチーズに加工したらセシウムが1/4~1/6に低減するそうです。 原発事故後すぐに、ウクライナ政府は日本政府に研究結果を手渡していました。活用しなかったのは、政府です。 その結果、日本は数多くの牛を殺処分し、牛乳を大量廃棄しました。本当であれば、この方法を使って酪農家と牛を救済することができたのです。民主党の責任は今後も追及されなければなりません。 ◆人類に原発は必要だ ウクライナには、チェルノブイリ事故で被災した人とお茶を飲んだり、世話をして心のケアをしているNGO「ゼムキャリ」という団体があります。この団体が日本からの視察団に対して、「原発で公害がなくなった」「人類に原発は必要」と言うのです。 誰よりも原発の恐ろしさを実感した人々と日常的に接している人たちが言うこの言葉の重さを、日本の政治家は真摯に受け止められるでしょうか。 そして彼らは「放射能の100倍ひどいのが報道汚染」とも言います。日本のマスコミには、原発や放射能の恐怖を煽るばかりでなく、チェルノブイリや福島の真実を報道し、国民の知る権利を保障してほしいと願います。 「人類に原発は必要だ」 この言葉の重さをかみしめながら、真実を伝え行動を起こすことが、被害に遭われた方々や被災者への真摯な態度であるはずです。(文責:兵庫副代表 HS政経塾1期生 湊 侑子) 参考:(第一回「原子力の安全と利用を促進する会」シンポジウム―チェルノブイリに学ぶ福島の復興の促進―2013.11.27) 軽減税率という甘い罠 2013.12.02 ◆政局と税制 公明党の強いプッシュに押される形で、安倍首相が消費税の軽減税率の検討を命じました。 目下、軽減税率の導入に積極的な公明党と、消極的な自民党・財務省の綱引きの様相を呈しています。(12/1産経「『師走闘争』に走る公明党 軽減税率論争の行方は」) また公明党は、消費税の10%への増税も推していました。この背景については、青山繁晴氏が興味深い報告をされておられます。 公明党と財務省の密約が存在するというのです。公明党は、軽減税率を公約に掲げており、何としても実現したいところでしょう。 財務省は、軽減税率は税収が減るので、導入はしたくないのですが、税率が上がれば話は別で、軽減税率を導入する旨味が十分にあります。 どの分野に軽減税率を適用させるか、という巨大な裁量権を手にするからです。この裁量権をテコに、天下り先には困らないことでしょう。 安倍首相はと言うと、アベノミクスの成功が最優先で、10%増税には消極的だそうです。 そこで財務省が、軽減税率を認める代わりに、消費税増税10%を実現させるということで、公明党と密約を交わしたというのです。 以上が、青山氏の発言の概要です。(11/16「アンカー青山繁晴のニュースDEズバリ」) ことの真相は分かりませんが、ともあれ国益とは関係ないところで税制論議が進んでいるとすれば、不届き千万です。 ◆そもそも軽減税率は善か悪か ところで、軽減税率という制度自体を、どのように考えるべきでしょうか。 軽減税率とは、低所得者への消費税の負担を軽減する目的で、食料品などの生活必需品に限定して、低く抑えられた税率のことです。一見、低所得者に優しい税制のように見えます。 しかしここで問題になるのが、「生活必需品」を決めることが出来るのか、ということです。例えば、一体どんな服だったら生活必需品で、どんな服が贅沢品だと言うのでしょうか。 100グラム何円のお肉だったら、生活必需品のお肉だと言うのでしょうか。そのルールを決めるのに、適切な基準はありません。 探しても見つかりませんし、そもそも誰かを説得できるような、そんな明確な基準は存在しないのです。だったら、どうやって決まるのでしょうか。 正しさの基準が無い中で決めなければなりません。ですから、幾つかの業界や政治家の強い意向を材料にして、官僚の裁量で決めるしかなくなる訳です。 ◆複雑なルールは、静かに自由を奪う 国民の自由を保証するのは、私有財産の権利です。お金が自由に持てて、自由に使えるから、国民は自由に経済活動をすることができます。 そして、国民の自由を奪ってきたのは、権力者の裁量による課税です。そういった権力者の裁量を抑制するために、議会や憲法が発明されたのです。 だからこそ、現代においても、官僚に裁量を与えるような政策を選択してはなりません。 裁量の余地が無いように、ルールにはシンプルさが必要です。シンプルな制度は、官僚の裁量を拡大させないためにどうしても必要な条件なのです。 軽減税率も累進課税も、一見、低所得者に優しく見えます。 しかし、軽減税率や累進課税に、寄って立つべき正しさが見出されない以上、この制度の中で自由を守ることはできないでしょう。 ◆複雑さの中に、自由を奪う罠がある 様々な状況がある中で、「結果の平等」を実現しようとすると、多くの規制や累進課税によって、制度は複雑になるばかりです。 複雑ゆえに、官僚は裁量を働かせやすく、また官僚の人数も増えて、大きな政府が出来上がってしまいます。複雑な議論の中で、国民の自由は危機にさらされることになるでしょう。 私たち国民は、機会の平等に向かう政策か、結果の平等に向かう政策か、見極めなければなりません。 複雑な議論には、その背景にあるやましさを疑いましょう。その複雑さの中に、自由を奪う罠が潜んでいます。 「機会の平等」に複雑さは不要です。税制論議は自由を守るための戦いです。幸福実現党は自由を守るために戦い続けます。(文責・HS政経塾 三期生 田部雄治) 21世紀のニューフロンティア政策―宇宙開発への挑戦 2013.11.25 ■ケネディ大統領の「ニューフロンティア政策」 昨今の大きな話題の1つとして、「アメリカの王室」とも言われるケネディ家のキャロライン・ケネディ氏が新駐日大使として日本に赴任することになったことが挙げられると思います。 日本とアメリカの外交的紐帯を強める大きなチャンスとして、日米双方から大きな期待の声が寄せられています。 そして、キャロライン氏が来日した今月15日から1週間後の先日22日は、キャロライン氏の父親であるJ.F. ケネディ大統領が暗殺されてから50周年という節目の日でもありました。 ケネディ大統領はアメリカの歴代大統領の中でも、アメリカ国民からの人気が特に高く、その若きカリスマの死を惜しむ声が未だに絶えません。 ケネディ大統領の功績としては、ソ連との核戦争の危機(いわゆるキューバ危機)を平和裏に解決したことや、マーティン・ルーサー・キング牧師などと協力し黒人差別撤廃のための公民権運動を強く支援したことなど様々挙げられます。 もう一つ代表的な功績として、アメリカの宇宙先進国化をその強いリーダ一シップによって牽引したことが挙げられます。 ケネディ大統領が公約として打ち出した「ニューフロンティア政策」の柱の一つが「宇宙開発」であり、ソ連との宇宙開発競争で挫折感を抱えていたアメリカを鼓舞するためにケネディが掲げた国家プロジェクトこそが、月に人類を送り込むという「アポロ計画」でした。 暗殺によってアポロ計画による人類初の月面着陸の成功を見届けることはできませんでしたが、ケネディの大きな構想力とリーダーシップがなければ、人類は未だに月へ足を踏み入れていなかったかもしれません。 今、日本に必要なのは、このケネディの「ニューフロンティア精神」、新たなフロンティアとしての宇宙の開発を国家プロジェクトとして強力に推し進めることではないでしょうか。 ■日本の宇宙開発の現状 日本の宇宙産業市場は現在、約7兆円~8兆円と言われています。宇宙産業の内訳は主に4つに分類されます。 (1)宇宙機器産業(ロケットや衛星、地上設備など) (2)宇宙機器を利用した宇宙サービス産業(NHK、NTT、スカパーなど) (3)宇宙サービスを利用するための民生機器産業(衛星放送チューナーを搭載した液晶テレビ、GPSを利用したカーナビ及び携帯電話など) (4)自らの事業に宇宙サービス・民生機器を活用しているユーザー産業(農林水産業、新聞社、映画館、資源開発など)です。(JAXA産業連携センター) このうち中核をなすのが(1)の宇宙機器産業であり、日本では市場規模約2600億円程度ですが、一方で、アメリカは約4兆円、欧州でも約9000億円と、日本は大きな差をつけられてしまっています。 これはひとえに、日本の政治家のリーダーシップの欠如と縮み思考が原因だと言えます。 実際、2008年に日本の宇宙開発の基本方針を定めた宇宙基本法が制定されてから、予算が増えるどころか、財源不足を理由に宇宙関連予算は年々減少を続けています。 限られた予算を奪い合いあっていては消耗戦になるということで、日本の宇宙産業に関わる民間企業の多くが外需の取り込みのために新興国市場に打って出ています。 実績も少しずつ出始めてはいますが、まだまだ米国・欧州が世界では大きなシェアを握っており、苦戦を強いられているのが現状です。 外需の拡大とともに、政府による研究開発予算の増加や、宇宙関連ビジネスの興隆などの内需の拡大を実現しなければ、日本の宇宙産業が国家を支える基幹産業へと成長することはありえません。 ■政治家は「21世紀のニューフロンティア政策」を打ち出せ しかし、悪いニュースばかりではありません。 最近では、日本のお家芸である固体燃料ロケットの最新機種であるイプシロン(試験機)の打ち上げ成功や、日本人宇宙飛行士の若田光一さんが日本人で初めてISS(国際宇宙ステーション)の船長に任命されるなど、日本の「宇宙力」への評価が世界でも高まってきています。 日本の喫緊の課題は、独自の「有人宇宙輸送システム(有人ロケット、有人宇宙船)」の獲得を成し遂げることです。 宇宙という目的地があっても、日本は宇宙に行く「船」を持っていません。他国の宇宙船に乗せてもらわざるを得なかったために、日本の宇宙開発の黎明期は、他国の事情に翻弄されてきたとも言えます。 しかし、日本は有人宇宙飛行を可能にする技術力をすでに持っています。日本が持つISSに物資を運ぶためのHTV(こうのとり)の技術などは、有人飛行技術の基礎となるものです。その他にも、日本には世界から認められている最高峰の技術が多々存在します。 最終的には、有人宇宙開発に挑戦するか否かは、国の判断、政治家の判断、そして強い意志にかかっています。 かつてのケネディ大統領のように、国家の安全と平和を守るために、そして国民に夢と希望を与えるために、宇宙開発の意義とビジョンを国民に真摯に語り、ニューフロンティアに挑戦する強い意志と決断力を有した政治家の出現が望まれているのです。 幸福実現党は「21世紀のニューフロンティア政策」で、「世界の宇宙開発を牽引する日本」を創ってまいります。(文責・HS政経塾2期生 鈴木純一郎) 経済好調でも貿易収支赤字を拡大する「原発の停止」 2013.11.21 ◆原発停止による貿易収支赤字の拡大 11月20日に発表された10月の貿易統計によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は、1兆907億円の赤字となりました。 赤字額は比較できる1979年以降で3番目の大きさとなり、赤字が16ヶ月連続で過去最長を更新しました(11/20 朝日夕刊2面、11/20日経夕刊1面)。 アメリカ向けの自動車を中心に好調で、輸出額は伸びているにも関わらず、なぜそれ以上に輸入額が増えているのか。 その理由は、「燃料輸入」の増加です。原子力発電所の停止により、液化天然ガスや原油など火力発電に必要な燃料需要が増加しており、さらに円安の影響で、輸入額が拡大しているのです。 日本は、対外直接投資や証券投資の収益である所得収支が大きいため、貿易収支が赤字となっても、今のところ経常収支は黒字です。 経常黒字の積み重なった結果、日本は、世界一の対外純資産は296兆円を保有しています。 これは、日本が世界一のお金持ち国であり、日本がすぐに破綻するハズがないといえる論拠の一つですが、原子力発電所の停止がさらに続き、貿易収支赤字が拡大することは日本経済にとっても悪影響となります。 来年4月には、消費税が8%に増税される予定となっていますが、燃料代もさらに重なるとなれば、消費マインドが冷え込み、購買意欲が減退し、企業の売上に直撃します。 それ以外にも、電力の高コスト化、不安定化は、工場など、企業の設備投資の意欲も冷え込ませることに繋がります。 日本経済が縮小すれば、税収も減少します。増税するにもかかわらず、財政はいつまでたっても健全化しないという状況に陥りかねません。 原子力発電所の再稼動は、日本経済をさらに活性化するためにも不可欠なのです。 ◆原発を推進していた小泉元首相 小泉元首相は、「政府は、原発ゼロの方針を出すべき」と主張しておられますが、首相在任時の判断を変えた経緯をはっきりと述べるべきではないでしょうか。 2005年10月に「原子力発電は基幹電源として着実に推進していく」という原子力政策の基本方針を定め、そのアクションプランとして「原子力立国計画」2006年6月に策定されました。これらを推進したのは、小泉首相在任時でした。 さらに12日、日本記者クラブの記者会見では、「政治で一番大事なのは方針を出すこと。そうすれば必ず知恵が出てくる」と発言し、環境技術をリードする日本のハイブリッド車の可能性について言及しておられました。 しかし自動車のエネルギー消費割合は、最終エネルギー消費内の約14%であり、電力問題の本質的な解決に繋がりません(経済産業省エネルギー資源庁http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2011energyhtml/2-1-2.html)。 1973年の石油ショックを機に、代替エネルギーを開発する目的で1974年にサンシャイン計画が打ち出されました。 当初は、国内総エネルギーの20%を新技術によって充足することを目指していましたが、大きな成果は出ませんでした。 そうした中、日本のエネルギー供給体制を安定的なものとするために、原子力発電所の建設が進められてきた背景があります。 首相在任時と判断を変えた理由や、石油ショックを機に原子力発電が推進されてきた背景について何ら触れることなく、原発ゼロというのは、あまりに強引といえます。 ◆放射性廃棄物の最終処分場の決定へ 20日、経済産業省の作業部会で、放射性廃棄物の最終処分場の選定について、国が主導する方針が表明されました。長年の課題であった、最終処分場についての方針が示されたという意味で、評価できます。 「原発ゼロ」を求める小泉元首相を牽制すると同時に、これを逆手にとって、放射性廃棄物の最終処分場の選定も進めることで、原子力発電にまつわる長年の課題を解決し、原子力発電を活用しやすい環境を整え、日本経済をさらに成長させるチャンスとするべきです。 (HS政経塾部長兼政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ) えっ!農地に植物工場を建てられない?――東北復興に向けた早急な法改正を! 2013.11.20 ◆植物工場―希望の未来産業 「植物工場」とは、施設内において、LED照明や空調、養液供給等により植物を生育し、季節を問わず連続的に生産するシステムのことです。 植物工場のメリットとしては、天候の影響を受けることなく安定的な生産が可能なこと、通年生産が可能なこと、単位面積あたりの生産性が高いこと、害虫がつかず「無農薬栽培」が可能なこと、施設の立地条件を選ばないこと、土壌を用いないため「連作障害」が無いこと、労働の負荷が少なく計画的な生産が可能なこと等が挙げられます。 そのため、「植物工場」は、日本の食糧自給率の改善・食糧安全保証のみならず、東北の農地復興、TPPに向けた農業の構造改革、百億人時代の世界の食糧危機打開策、砂漠や宇宙での新鮮でサステイナブルな野菜供給等、幅広い領域からの期待を受けています。 幸福実現党は2010年頃より、未来産業の一環として「植物工場を活用した農業の振興」を訴えて参りましたが、植物工場は丁度その頃より「第3次ブーム」に入ったと言われています。 2009年度の補正予算で、農林水産省が約100億円、経済産業省が約50億円規模の補助金を出し、民間企業による植物工場ビジネスへの参入が急増したことがきっかけです。 更に2011年度以降は、農林水産省は植物工場の施設整備・リース導入等に対する支援や、植物工場に関する技術開発や人材育成等の本格的な取り組みを始めており、植物工場への参入意欲が高まりつつあります。 ◆東北復興の切り札となる「植物工場」 特に東日本大震災以降は、津波で海水をかぶった農地の再整地や除塩を行わなくても早期に農産物を生産することができる施設として、また、福島では、原発の放射性物質の除染を行う必要の無い農産物の生産方法として注目されて来ました。 また、東北では、秋田県をはじめとして、過疎化や震災、人口移動等によって生じた工場跡地、廃校、廃屋等の空きスペースを活用して、「植物工場」を作る動きも活発化しています。 実際、青森県八戸地域や岩手県沿岸部、宮城県平野部、福島県全域では、植物工場の誘致、あるいは立地支援による早期の雇用確保と就業機会の増大、収入の拡大、地域産業の活性化を図る計画や取組等が増えています。 私(佐々木勝浩)の故郷である福島では、植物工場で生産された農作物を、細菌、農薬、放射性物質の心配の無い「三無い野菜」としてブランド化し、出荷することも検討されています。 こうした動きや起業家の要望を受け、政府は植物工場の立地支援策を復興予算を使って、植物工場に対する補助金を用意し、東北の農業再生支援を行っています。 植物工場のメリットとして、成長スピードが通常の2~3倍になる上、東北の厳しい気候変化にも影響を受けないことが挙げられます。 レタスなら年間20回も収穫でき、年間を通じて発芽から収穫までのサイクルを繰り返す「多期作」が可能になります。 植物工場は、年間を通じて安定的収入が見込まれるため、震災で失われた多くの雇用を回復し、人口を取り戻す切り札となります。 そのため、植物工場は「東北復興の切り札」として、政府、企業、農業関係者らからの期待がますます高まっています。 ◆農地に植物工場を建てられない!――早急な規制緩和を! このように植物工場には多くのメリットがある反面、広く知られている通り、光熱費を中心としたランニングコストが高く、採算性を取ることが難しい点がデメリットとして挙げられます。 山形県環境企画課の試算によれば、植物工場における代表的な作物であるレタスの生産コストは植物工場の設備規模により110~139円/株となります。 レタス1株を500g/株とすると220~279円/kgとなり、平均市場価格約200円/kgより、やや割高になります。 ランニング・コストにおいては、光熱費に加え、現在、農地法が問題となっています。 現在、建築基準法や農地法の関係で、農地に設置できる施設はハウス等の簡易な施設に限られており、閉鎖型施設の植物工場は高額な宅地に設置するか、農地転用を行う必要があります。 農地における植物工場設置の規制緩和については、民主党政権下における「規制仕分け」でも、安倍政権下における「規制改革ホットライン」でも検討課題となりましたが、残念ながら結論として、「転用許可が必要」という見解は変わっていません。 農地を転用した場合、土地の評価額が上がり、土地賃貸料が高くなる上、宅地なみの課税となり、ただでさえ高いランニングコストがはね上がり、採算分岐点が上昇し、一層、植物工場の採算性が厳しくなります。 植物工場の振興にあたっては、農地法の「農地」の定義を、現状の「耕作の目的に供される土地」(農地法第2条)から「農産物生産の目的に供される土地」に法改正すれば、農地における植物工場建設は認められるようになります。 TPPに向けた農業の構造改革の一環として、「減反廃止」や「農地の規制緩和」の動き等が加速していますが、企業の「植物工場」参入促進に向け、農地法第2条の改正も行うべきです。(文責・政務調査会 佐々木勝浩) 【参考文献】 (1)復興庁(2013)「復興の現状と取組[平成25年9月25日]」 (2)農林水産省(2012)「農業用施設用地の大規模野菜生産施設等建築による農地転用基準の見直し」 (3)山形県環境企画課(2011)「山形県「緑の分権改革」推進事業委託業務調査報告書」 (4)三菱総合研究所(2012)「あおもり型植物工場ビジネスモデルの構築に向けた調査研究業務報告書」(2012 (5)野村アグリプランニング&アドバイザリー(2011)「植物工場のビジネス化に向けて~植物工場の事業モデル確立に向けた7つのポイント~」 客船誘致で日本経済の発展を 2013.11.04 今、世界的に「クルーズ」と呼ばれる産業が発展してきています。 毎年毎年、新造船が多数建造されており、クルーズ人口も増加の一途を辿っているところです。国土交通省の発表によると、日本のクルーズ人口だけでも2012年度には20万人を突破しています。 さらには、日本国内の港に寄港したクルーズ船(日本船、外国船合わせ)は、2012年度に初めて1000回を超えました。 ◆海運大国としての日本 元来、日本はその四方を海に囲まれていることにより、海運業を発達させてきており、海運大国、造船大国として知られていました。しかし、戦後造船業なども、中国・韓国に抜かれ、世界3位に転落してしまっています。 しかし、今日本には大きなチャンスが到来しています。クルーズマーケットとして、アジア地域の人気が高まっており、日本もその寄港地の選択肢として外国船が入港回数を増やした結果、先ほどのように寄港回数が1000回を超える結果となっています。 ◆クルーズ船入港の経済効果 クルーズ船が1隻入港した際にもたらされる経済効果は、例えば横浜港を発着する外国のクルーズ船1隻あたり、約2億円、日本のクルーズ1隻当たり約3500万円と推計されています。 これは、入港する港によって燃料の補給の有無なども違うため、あくまで横浜港の場合ですが、しかしながらこれだけの経済効果があることで、入港する地域の経済の活性化にもつながるものと言えるのではないでしょうか。 実際こうした収入があることから、アジア各国はクルーズ船の誘致に積極的に動いており、港に寄港する際に発生するポートチャージ(港費)の減免措置などを行っている国が存在しています。 さらには、世界的に増加している超大型船と呼ばれるクルーズ船が入港可能なように、自国の港の拡張、および客船ターミナルの設置などをおこなっている国も存在しています。 ◆誘致においての問題点 日本の港では、ポートチャージの減免を行う港を増やすことが必要であるとともに、超大型船が入港できる環境整備を行っていく必要があると言えます。 残念ながら、現時点では世界最大級の客船(約22万総トン)が入港可能な国内港は数港であるとされ、客船用の岸壁を使用できる港は1つしかなく、その他は貨物船用の岸壁などを使用することで何とか入港できる、といった状況です。 これには、船には「喫水」と呼ばれる海の中に沈んでいる部分の深さを示す指標が存在しますが、大きな船ほど、この喫水の深さが深くなってきます。これに対し、日本の港の岸壁において安全に入港できるだけの深さがない場合が多く、入港が難しいとされています。 また、岸壁そのものの大きさ(長さ)が足りず、着岸することが出来ない、というのも入港が不可能とされる理由の一つです。 ◆今後の誘致と発展のために いつでもそうした大型船の受け入れが可能な体制を整えておくことにより、実際の誘致もしやすくなると言えますし、大型船になればなるほど乗船人数も増えることから、観光収入やその他の収入も合わせた経済効果もより大きいものになります。 また、港の整備をしておくことで、客船だけではなく、貨物船であっても大型船が入港可能となり、その港を大型の貿易港としても使用することもまた可能であると思います。 ただ、地方の港においては、各地方自治体の予算の問題などもあり、必ずしも整備をしようと思ってもその費用に限界がある場合があると言えます。 それに対し、国として予算を計上し、支援を行っていく必要もあるのではないでしょうか。 他のアジア各国が国家として客船の誘致に取り組んでいる中、今後日本としても、各地方自治体だけではなく、国家として客船の誘致を行うための環境整備を考える必要があると言えます。 日本が再び海運大国として復活し、海運業を活性化させることで、もう1段明るい未来ビジョンが描けるものと考える次第です。(HS政経塾3期生 瀬戸優一) 政府活動の成果を明確にする公会計の役割 2013.11.03 ◇自由主義と無政府主義は同じではない 市場で供給できないサービスを公共財と呼びます。公共財は民間では代替できにくいと考えられているもので、司法制度や国防が代表的です。 自由主義陣営の中には、無政府主義という考え方がありますが、現代社会においては政府の完全否定は極端すぎると言えるでしょう。自由主義とは本来、無政府主義と必ずしも同じではありません。ノーベル経済学者であり、自由主義哲学の構築にも貢献したF・ハイエクでさえ、『法と立法と自由』の中で課税権の行使を認めています。ただし、公共財の提供者として政府が常に関わり続ける必要性はないというのが重要な論点です。 例えばハイエクは、中央銀行の民営化を提唱しました。貨幣の発行権を中央銀行が独占せず、民間の銀行にも発行させて競争させるメリットを説きました。幸福実現党もメガバンクからの紙幣発行を提言していますが、理論的な背景にはハイエクの思想があります。 最近では、公民連携(Public-Private Partnershipの頭文字をとってPPPとも呼ばれる)と呼ばれる行政手法が注目されています。つまり、役所の仕事を民間が代替することで自治体の行政コスト削減ができることを意味します。ハイエクの考えが、具体的な手法となった姿だと言えるでしょう(参考文献:O・ポーター著『自治体を民間が運営する都市』米国サンディー・スプリングスの衝撃)。 筆者が2月に参加したアジア・リバティーフォーラムの中でも、自由主義者の共通の理念は、私有財産の保証、市場メカニズム、そして限定的な政府活動Limited Government Activitiesだと教わりました。「経済学の父」と呼ばれたアダム・スミスの提唱した経済哲学も、ほぼ同じ内容です(スミスは分業と呼んでいたが、市場メカニズムにおける交換の利益と生産性向上を指す。『諸国民の富』参照)。 ◇政府の仕事に経営の発想を取り入れる よく「お役所仕事」と呼ばれる言葉は、行政の非効率性を表します。役所では予算をいかに使い切るかが課題で、余った場合は翌年の予算は切られます。決算期になると予算の費消が行われるのは、予算カットを恐れる役所の自己保身にあるわけです。 一方、民間では予算が余れば翌年に繰り越すなどして効率的な資金運用が前提とされます。企業は利益を出すことが最優先なので、予算を費消するインセンティブはありません(節税対策として意図的に赤字を作る企業は別)。 ◇行政の成果を表す公会計 経営とは、最小のコストとリスクで最大の利益をあげることです。税金を使用して公共サービスを提供する国家経営や地方自治体にも経営が必要なのは言うまでもありません。著名な経営コンサルタントとしてアメリカで活躍したP・ドラッカーも同じことを主張しています。そして、成果の貨幣的評価が会計なのです。会計とは、単なる数字の羅列や財務諸表の作成ではなく、資源を預かる者の成果を測る指標なのです。その意味では、企業会計の損益計算書にあたるものが公会計の成果報告書です。 行政コスト計算書も大事です。しかしながら、行政コストだけでは、行政の成果まで測ることはできません。行政の貨幣的成果とは、発生費用から受益者の負担などを差し引くことで求められます。両者が均衡していればサービスと費用は釣り合っています。受益者の負担以上に費用が高い場合は、経営に問題がある証拠です。費用の財源は税金なので、この値が大きければ「将来の税金」として増税される可能性が高くなります。 ◇会計の情報開示と国民の関心 公会計は、納税者に政府活動の会計情報を提供します。会計情報に基づいて首長や内閣総理大臣が納税者の負担を減らすことができたかどうかの成果を測る上では有益です。費用が増大した場合は、国民や市民に説明をしなければいけません。最初から増税を主張する経営者は、赤字を価格引き上げによって賄おうとするようなものです。民間では、そのような会社は倒産することになるでしょう。 17世紀の思想家であるモンテスキューは、「彼らは常に政府の窮乏について語り、われわれの窮乏についてはけっして語らない」と著書『法の精神』に記しました。しかしながら、現代では、有権者が正しい情報を目にすることなく、選挙のない時に増税が進行します。その根拠が「国の借金が1000兆円」とか「一人あたり800万円の借金」といって財政の窮乏を語って増税を正当化していますが、国民負担が増えることについては触れません。モンテスキューの指摘は現在でも当てはまっています。別の見方をすれば、国民が政府活動の成果に関心がないので、財政の窮乏は生活の悪化と思い込んでしまいます。つまり、財務省や増税派の政治家は、国民の無関心を利用しているわけです。 もし会計情報の浸透と国民の関心の高まりがあれば、政治家や役人が税金の無駄使いをすることが難しくなります。ましてや、増税などは主張できなくなるのです。 現在の公会計は、地方レベルで初歩的な導入が始まっています。市議や県議、知事を目指す方は、公会計とPPPの導入を公約としてもよいでしょう。いずれ政府にも適用しますが、まずは地方から実績をつくることも必要です。明治維新が地方から始まったように、改革は地方レベルから始まるかもしれません。幸福実現党としても、公会計とPPPは今後も研究を重ねて政策提言をしていく所存です。(文責:中野雄太) 未来産業に向けた大胆な法改正を!――「自動運転カー」は違法? 2013.11.01 ◆世界をリードする日本の「自動運転システム」 日本の未来産業の切り札の一つとして期待されているのが「自動運転システム」です。 日本の「自動運転システム」はトヨタ、日産、ホンダの3社が開発中で、世界をリードしています。(10/17 日経「『自動運転』こそ日本の切り札」) 日産は今年8月、2020年までに自動運転技術を搭載した車両を量産販売する準備が整ったと発表しており、一般消費者が入手可能な価格で、複数車種の自動運転車を用意する予定です。(8/28 ITMedia) また、トヨタは10月中旬、首都高で自動運転技術を利用した公道デモ走行を公開しました。 自動運転カーは渋滞や急カーブにあふれた都市の高速道路でも使えるのが特徴で、ドライバーがハンドルから手を離し、アクセルやブレーキのペダルからも足を離して自動運転する様子がテレビで全国に放映されました。(10/20 日経「トヨタの自動運転車に乗ってみた 初心者でも首都高安心 とっさの判断、人より速く」) ◆「手放し自動運転」に国交省や警察が激怒! しかし、トヨタが首都高で「手放し自動運転」を実演したことに対して、国土交通省や警察庁が「完全な道路交通法違反。業界のリーダーとしてあるまじき行為だ」と怒り、「待った!」をかけました。(10/16 Business Journal「警察庁と国交省が激怒!トヨタが首都高で違法自動運転を実演」) 道路交通法第70条には「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない 」とあります。 そのため、トヨタの首都高(公道)での「手放し自動運転」は違法と見なされたためです。 しかし、自動運転カーは決して危険ではなく、とっさの事への対応も人間の判断よりも速く、事故予防はもちろん、無駄な走行もなくなり、車がすいている道を自動で選択するので、渋滞を生じにくくする効果もあり、警察や国交省にもメリットがあるはずです。 これは、日本のお役所の「頭の硬さ」が、日本の未来産業の発展をストップさせている典型事例です。 ◆早急に、自動運転を認める法改正を! アメリカでは、グーグルが8月に、自動運転カーの実験車両が走行距離累計30万マイル(約48万キロ)を突破し、これまで無事故だったと発表しています。(8/8 ITmedia「Google自動運転カー、48万キロを無事故で走破」) グーグルが長距離の公道走行実験をして来た背景には、米国ではネバダ州など一部の州で、公道で自動運転カーを試運転できる免許を発行して来たからです。 さらに、カリフォルニア州では今年9月、公道での自動運転カーの走行を許可する法案が成立しています。 現在は日本の自動車メーカーが技術面においてリードしていますが、グーグルなど米IT企業も追随しており、日本政府が公道での自動運転カーの走行を一切認めない現状では、米企業に追い越される日も近いと言えます。 日産も「法律改正を前提条件として自動運転車を商品化する」としていますが、現在、日本では自動運転カーを公道で運転できるようにするための法改正の動きは全く見られません。 自動運転カーはもはや「夢の技術」ではなく、既に実用段階に入りつつあります。 自動運転カーが実用化されれば、自動車は行き先を入力するだけという「家電感覚」になり、自動車運転免許は不要になります。道路標識や信号さえ不要になります。 そのためには、大幅な道路交通法の改正を視野に入れていく必要があります。 少なくとも、まずは自動運転カーの試験走行を認めるよう、早急な法改正をなすべきです。 ◆未来産業に向けた大胆な規制緩和を急げ! 日本は再生医療の研究レベルでは世界のトップを走っているものの、再生医療製品の実用化では欧米に遅れを取っています。 その理由は、製品化に向けた厳しい法規制が山ほどあるためです。 日本が世界に誇る「自動運転システム」も、再生医療製品実用化の遅れの前轍を踏むことのないよう、早急に手を打つ必要があります。 日本には世界に誇る最先端の未来産業のタネが数多く存在していますが、厳しい規制で縛られ、芽を出しにくい環境にあります。 「未来産業」という大樹を育むためには、政府は大胆な規制緩和を断行すべきです。(文責・政務調査会 佐々木勝浩) すべてを表示する « Previous 1 … 60 61 62 63 64 … 78 Next »