Home/ 経済 経済 「パリ協定」の曲解で国を滅ぼすことなかれ【前編】 2015.12.29 文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 ◆万雷の拍手で迎えられた「パリ協定」 12月12日、フランス・パリで開催されていた国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、2020年以降の温室効果ガス削減に関する新たな国際枠組みである「パリ協定」が、196の国と地域の賛成で採択されました。 パリ協定は、京都議定書(1997年)以来18年ぶりに採択された法的拘束力のある国際枠組みであり、各国代表はスタンディングオベーションで採択を歓迎しました。 また、日本政府代表団の事実上のトップであった丸川珠代環境大臣の尽力もあり、これまでの日本の主張が概ね反映されたことから、安倍総理や政府も歓迎を表明しています。 ◆パリ協定で決まったこと パリ協定では世界共通の長期目標として、産業革命以前からの地球の温度上昇を2℃より十分下方にとどめ、さらに1.5℃以下にとどめるよう努力すること(パリ協定 第2条)、世界全体の排出のピークをできるだけ早めること、21世紀後半に人為的な排出と森林による吸収をバランスさせること(パリ協定 第4条)などを決定しました。 先進国が途上国に温暖化対策の資金を提供することを義務付け、中国などの途上国も自主的に資金を提供することが奨励されます(パリ協定 第9条)。 また、世界の排出量の55%以上を占める55か国以上の批准が、パリ協定の発効要件として決まりました(パリ協定 第21条)。 これは、一部の主要排出国が批准しない場合に協定が法的拘束力を持たないようにするためであり、丸川大臣の発言が反映されました。 ◆パリ協定に基づく削減目標を達成する義務はない パリ協定では、全ての国が自主的な削減目標を5年ごとに提出・更新し、その実施状況を報告し、レビューを受けることが決まりました(パリ協定 第4条)。 この点は、国連が先進国だけにトップダウンで削減義務を割り当て、中国を含む途上国には削減義務がなかった京都議定書とは決定的に異なるものであり、日本や米国の主張が反映されています。 各国は削減目標の達成に向けて国内で削減措置を講じる義務がありますが、削減目標を達成することは、京都議定書と異なり、どの国においても国際法上の義務ではありません。 例えば、日本が7月に提出した約束草案「2030年度に2013年度比26%削減」(「日本の約束草案」2015年7月17日 地球温暖化対策本部)は、達成できなかったとしても、パリ協定には違反しません。 ◆日本の削減目標を実際に守ればバカを見る パリ協定で全ての国が自主的な削減目標を提出することになったことは、公平性の観点から一定の評価はできますが、現時点で各国が提出している削減目標(約束草案)を比較すると、その厳しさには大きな差があります。 政府は「欧米と遜色ない約束草案を提出した」と説明していますが、これは基準年を2013年に揃えれば欧米の数字と大差はないという意味であり、石油危機以降に既に世界最高水準のエネルギー効率を達成していた日本と、効率が悪い東欧の旧共産圏諸国を含むEU、シェールガス革命で排出が減った米国とは、大きく事情が異なります。 地球環境産業技術研究機構(RITE)は最新の研究の中で、各国が約束草案を達成すると仮定した場合に、1トンの二酸化炭素(CO2)を追加的に削減するために必要な費用(限界削減費用)を比較した結果を示しています。 ※我が国および世界各国の約束草案の排出削減努力の評価 (2015年12月18日 地球環境産業技術研究機構) http://www.rite.or.jp/news/events/pdf/akimoto-ppt-kakushin2015.pd それによると、CO2の限界削減費用は、日本の378ドルに対して、スイスだけが380ドルとやや高いですが、EUは210ドル、韓国は144ドル、米国は85ドル、オーストラリアは33ドル、ロシアは4ドル、中国とインドに至ってはゼロという、ほぼ日本だけが突出して高い結果となっており、相当なコストをかけなければ、約束草案は達成できないことがわかります。 一方、例えば中国の約束草案は、「2030年に2005年比でGDPあたり60~65%削減」というものであり、実質的に削減目標ではないため、容易に達成できます。 このような中で日本が無理に削減目標を達成しようとすれば、莫大なコストがかかり、決定的な経済のダメージを受けることになってしまいます。 (つづく) 必要なのは「軽減税率」ではなく「増税中止」 2015.12.25 文/幸福実現党・政務調査会チーフ 小鮒将人 ◆我が党は、消費減税を進める政党 去る12月16日、与党間で協議されていた「2016年税制改正大綱」の全容が固まりました。 その中で、2017年4月の消費増税時に導入する「軽減税率」について一応の決着が付き、1兆円という財政規模及び、適用される具体的な品目について合意がなされました。 今回の議論では、軽減税率の線引きに、インボイス(税額票)の導入、「みなし特例」制度の新設、今となっては笑い草ですが、低所得者への現金やらプリペイドカードの給付案なども浮上しました。 しかし、こうしたドタバタ劇については、そもそも消費増税がなければ起きようがなかったものです。 我が党は「国民の負担を軽減し、自由の領域を拡大することで、経済成長とその果実である税収増を目指す」のが、経済政策の基本方針です。 そして、軽減税率については、党声明で表明したとおり「消費増税の負担減が必要というのなら、本来は、軽減税率の導入で対処するのではなく、増税自体を取りやめるべき」という立場です。 ◆「税率据え置き」となる個別品目をどう見るか そうしたことも踏まえた上で、今回の軽減税率の対象となる具体的な品目について見てみましょう。 まず、生鮮食料品や加工食品などは「生活必需品」として、これらの増税を避けることができたという意味では、8%の税率据え置きが望ましいことは言うまでもありません。 さらに、新聞・書籍関係について、新聞は「税率8%に据え置き」、書籍も「同様の方向で検討中」となりました。 新聞に対する軽減税率の適用は、財務省とマスコミと裏取引の懸念はあるものの、書籍・出版の自由が自由主義を保障する大きな根幹をなすものであることは間違いありません。 少なくとも、今回の協議の結果、この分野での増税が止まったことには賛成の立場です。 といっても、現在のマスコミのあり方そのものを是としている訳ではなく、つねに国家・国民にとっての利益をもたらすものであるか、今後も注視を怠ってはなりません。 ◆GDP1,500兆円を実現するために さて、現時点の日本経済の現状について、8日に内閣府より発表された7月~9月のGDP改定値は「年率換算プラス1.0%」でした。 昨年4月以来、GDPの値は、プラスとマイナスを行き来しており、現在の日本経済は、アクセルを踏みながらも「消費増税」というブレーキをしている状態です。 このままでは、少なくとも日銀黒田総裁がことあるごとに表明してきた「物価上昇率2%」の目標達成は、極めて困難な状況です。 しかし、それでも、プラスの結果を残したという意味では「ブレーキを踏みながらも、前進し続けている」、日本経済の底力を感じるところです。 幸福実現党は、さらなる日本経済のさらなる発展を通じて、世界のリーダーたるべき役割があると訴えています。 先般、総合雑誌「ザ・リバティ」の綾織次郎編集長による著書「GDPを1500兆円にする方法」が出版されました。 アマゾンwebサイトより http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4863957408/liberty0b-22 このタイトルを見ると、キャッチフレーズとして「極端な数字」を掲げたのではないか、と思う方も多いでしょう。 現在の日本は、「失われた20年」での中で、およそGDP500兆円のレベルを行き来している状態が続いてきました。この書籍では、3倍の1,500兆円のGDP達成が可能、という夢のようなビジョンが掲げられています。 実は、1990年代以降、日本が米国と同程度の経済成長を続けていたら、すでに1,500兆円のGDPが達成可能だった、という話が掲載されています。 「なぜ、米国並みの経済成長ができなかったのか」、逆に「何がその成長を止めていたのか」が、分かりやすく解説されています。これを読むと、いかに政治または官僚の経済政策が国民の財産を奪い取り続けてきたのか、ということが実によくわかります。 そして、1500兆円という数字は、本来、達成していなければおかしい数字であったことを感じます。 例えば、消費増税の中での「年率換算プラス1.0%」というGDP値について述べましたが、仮に、増税ではなく、減税を行うことによってこのプラスがさら2%、3%とさらに大きな数字になり、米国並みの成長を取り戻せたということは間違いありません。 さらに、リニアなどのインフラ整備、未来産業の立上げなどを国家が主導することで、この成長率を高め得ることが可能となるのです。 このように、まず「ブレーキ」となって成長を妨げている部分を取り除き、更には、アクセルとなる部分を強化することが必要なのです。 そのためにも、今回の軽減税率について、一部の重要な品目について、増税を回避できたという意味では賛成ですが、本当に必要なものは、消費減税であり、世界経済のリーダーとしての日本のさらなる経済大国としての国家ビジョンであるのです。 国民一人ひとりが豊かになれる政治を! 2015.12.23 文/幸福実現党・千葉県本部副代表 古川裕三 ◆今年の流行語大賞「爆買い」 今年の流行語で年間大賞となった「爆買い」という言葉。中国人観光客が、ドラッグストアや家電量販店、スーパーマーケット、百貨店などで、化粧品、医薬品、お菓子など、一人当たり10数万円もの買い物をすることが社会現象化しました。 一つの商品を買い物かごに収まりきらないほど買い込んでいる映像がメディアにも度々登場していましたが、まさしく「イナゴの大群」よろしく、店内の商品を一掃していく姿には、言葉を失いました。 この「爆買い」現象について、一人の日本人としてある種の憤りを感じているのは、私だけではないはずです。 もちろん、消費不況の日本では、インバウンド消費(海外からの訪日客の消費)が頼みの綱であるという小売業の切実さは理解できますが、少々、納得できないものが残ります。 なぜなら、政府は日本国民に対しては2014年4月より消費税を3%増税し、「買い物できない」ように“制限”をかけておきながら、同年10月には、改正「外国人旅行者向け消費税免税制度」により、従来は免税対象外だった消耗品(食料品、飲料品、薬品類、化粧品類、その他消耗品)を含めたすべての品目を消費税免税の対象としました。 要するに、日本人は消費しないので、中国人の皆さんは消費税を廃止するのでどんどん買い物してください、ということです。 つまり、この「爆買い」という社会現象は、政府の制度によるものであり、この制度を機に、免税店も一気に増加しました。 ここ最近で「tax free」と書かれているお店がやけに増えたと実感されている読者も多いのではないでしょうか。この文字を見るたびに、消費税がかからないって、何ていいのだろうと思います。 中国人はお得意様で、日本人は政府の失政のつけである財政赤字を埋めるために高い税金を払い続けなければならない家畜か何かでしょうか。 私なら、GDPの6割を占める個人消費がもっと活発になるように、日本人に対して、消費税率を一律に減税して、国民の皆様を幸福にしたいと思います。 日本人が「爆買い」するというと少々品性に欠けるかもしれませんので、日本人が、もっと積極的に「大人買い」できる社会を目指す、というのはいかがでしょうか。 別に秋葉原や銀座の街を行きかう中国人の皆様を蔑視しているわけでは決してありませんが、日本人が消費増税に耐えているのに、中国人が免税で爆買いしている様はやはり異常だと指摘したいのです。 もっと日本人が買い物できるようにすべきです。むしろ、中国に対しては、中国国内で、日本製と同じような高品質のものが日常的に買える社会にすべきだと言いたい。その前に、pm2.5をどうにかしていただきたい。 ◆政治家が、今、考え、なすべきこととは何か ところで、89年より竹下内閣下で導入された消費税は、すでに失敗した政策であると結論されます。 消費税が導入された当時の大義は、「財政再建」でした。この当時の財政赤字は100兆円程度でしたが、20年経った今は、1000兆円と10倍になりました。 つまり消費税は不況を作り出し、トータルの税収を減らす効果しかなかったのです。「財政再建」のための消費税という政策的大義はとっくに失われています。 この客観的事実に対して、現政権はもっと謙虚に反省し、「政治家が、いま、考え、なすべきこととは何か。」を元総理の言葉に照らして熟考すべきです。 ※参照:『竹下登の霊言――政治家が、今、考え、なすべきこととは何か。』 大川隆法著/幸福の科学出版 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1597 ところが、政府は反省どころかウソを重ねて、消費増税の大義を「社会保障のため」と言い換えるようになりました。老後が人質にされれば、国民は誰も反対できません。 この大義を振りかざして昨年の4月に政府は景気回復ままならない段階で消費増税したのです。これは、ぬるま湯でまだ体が十分に温まっていないのに、いきなり氷を大量に投じたのと同じようなものです。 案の定、昨年の消費増税後、GDPはマイナス成長となりました。 ◆マイナンバーという名の監視モニター さらに政府は、ナチズムの本質であるところの全国民に番号をつけて管理する「マイナンバー制度」を導入し、将来的には個人の金融資産を把握し、財産税をかけようと企んでいます。 マイナンバー制度とは、「私有財産監視制度」であり、今年1717兆円にまで増加した個人金融資産に課税したいというのが政府の本音でしょう。個人の経済的自由が奪われようとしています。 結局のところ、消費増税で「消費してもとる」、マイナンバーで、「貯金して金融資産を増やしてもとる」、どちらにしてもとりますよ、というのが政府の方針です。 今のまま行くと、富裕層は日本からいなくなるだけでなく、中間層も資産課税の強化によって豊かになれず、巨大な国家という生き物を構成するための一要因として国民は税金を納め続けることになります。これを国家社会主義といいます。 ◆「正義」について考えよう 格差是正という美名のもとに、国民を隷従の下に置く体制(結果の平等社会)を「正義」とするか、それとも個人の創意工夫と努力精進を奨励し、国民一人ひとりが豊かになれる体制(機会の平等)を「正義」とするか、この選択が迫られていると言えるでしょう。 私たち幸福実現党は、小さな政府、安い税金を志向する政党として、もちろん、後者に正義があると考えます。 来年の参議院選挙に向け、国民の皆様に、「隷属」をとりますか、「自由」をとりますか、あなたはどちらを選びますか、と問いかけていきたいと思います。 堂々と稼げる中小企業を増やそう! 2015.12.22 文/HS政経塾4期生 幸福実現党・大阪本部副代表 数森圭吾 ◆中小企業の事業承継と相続税 日本には中小企業が約390万社あり、これは全企業数の99.7%を占める数です。 また、雇用の約7割を担い、日本企業の売上高の約半分を占めているのも中小企業であり、地方においてはより中小企業の役割が重要となります。 中小企業庁の発表では、中小企業は年間約26万社が廃業しており、この原因として企業相続問題が大きく影響していると言われています。 これを示すかのように日経ビジネス2010年4月5日号の表紙には「相続が7万社を潰す」という見出しまで出されています。 利益を出し、雇用を生み、社会から必要とされている企業が永続的に発展するためには、経営者が交代する際などにスムーズに事業継承が行われる必要がありますが、ここで大きな壁となっているのが相続税なのです。 ◆相続税の課税対象となる中小企業の非上場株 中小企業の社長やオーナーが死亡した場合、 その会社の株は残された家族などの後継者に引き継がれます。この際、この株が相続税の課税対象となります。 中小企業といっても、その場合の株の評価によっては相続税額が数億円に上るケースも珍しくありません。 ところが中小企業の非上場株式は、簡単に売却してお金に変えることができず、廃業を選択する企業もあるのです。 税理士の方への取材によると、家族だけで経営している個人事業主が廃業を選択するのはまだ経営者の判断としては楽なものです。 しかし、これが数十人以上の従業員を抱える中規模企業になると、経営者として雇用などの社会的責任が発生するため、簡単に廃業を選択することさえできないといいます。 そのようななかで経営者は相続財産を一部処分することによって納税資金を確保したり、納税のために銀行から借金をし、その返済に四苦八苦している経営者も多いそうです。 ◆自社株の評価を落とす努力をする経営者 以上のように、事業承継における相続税の課税で企業の後継者にとって最も重い負担となるのが自社株にかかる税金です。 会社の株は企業価値を示す一つの指標であり、本来は株の評価額が高いことは経営者にとって喜ばしいことのはずです。 しかし、この株の評価額が高ければ高いほど事業承継の際に課税される相続税は高くなり、納税資金の確保が困難になります。 ここで多くの中小企業は利益を下げるなどの方法で自社株の評価を下げる努力をしているのが現状なのです。 企業とは本来、社会に対して良いサービスを提供し、利益を上げ、成長し、さらによいサービスを提供していく公的側面をもった存在ではないでしょうか。 しかし、多くの企業が税金対策のために利益を下げ、自社の評価を落とす努力が必要となる今の状況は、本来の企業の存在目的に対して矛盾を生んでしまっていると感じます。 ◆他の主要先進国に遅れをとる日本 このような中小企業の苦しい実態を政府はどのように考えているのでしょうか。残念ながら日本は事業承継税制について主要先進国に大きく後れをとっています。 各国とも雇用や株の保有期間など一定の条件を満たせば、以下のように株の評価減などの負担軽減策が適用されます。 【各国における非上場株式の評価減・控除】 ・アメリカ ⇒ 0.8億~1.3億円控除 ・フランス ⇒ 75%評価減 ・ドイツ ⇒ 85~100%評価減 ・イギリス ⇒ 100%評価減 ・日本 ⇒ なし このように、企業にとって最も負担の大きい株式への課税に関する特例処置は、主要先進国においては100%~80%前後の評価減や控除が適用されます。 これに対し日本における非上場株への課税に対する優遇措置は納税猶予制度(納税を遅らせる制度)しかなく、その適用条件も他国と比較して厳しいものとなっています。 このように、日本の税制面における事業承継支援は非常に限定的なものであり、各国と比較して日本は制度的に未熟であると言わざるを得ない状況です。 ◆中小企業が堂々と稼ぐために 現行制度での中小企業の事業承継には資金に関する大きなリスクが伴います。税理士の方への取材によると、事業承継に関する相続税対策には10年以上の年数をかけて対策をする企業が多く存在するそうです。 そんななか、主要各国と比較しても日本においては非上場株の評価優遇制度がまったく整備されていません。 このため企業経営者は少しでも納税額を減らし、ダメージを和らげるために納税額の算出の基盤となる自社株の評価を下げる努力をしています。 本来の企業のあるべき姿から考えるとこれは「無駄な努力」であり、このような状況を放置している政府には大きな責任があると言わざるを得ません。 世に必要とされている中小企業が堂々と稼ぎ、永続性を確保するためにも、早急な事業承継税制の改革が必要です。 マイナンバー利用拡大の危険性 2015.12.18 文/幸福実現党・三重県本部副代表 野原 典子 ◆マイナンバーとは? 10月からマイナンバーが簡易書留で通知されています。 この夏の国会では「安保法案」が審議されたとき、賛成、反対が分かれる中、国民の意識がそちらに引きつけられている間に、この「マイナンバー制」が、するするっと「通されてしまった」感があります。 そして、マイナンバーが交付された今でも、「よくわからない」という人がたくさんいらっしゃるようです。 マイナンバーは、一人一人に12桁の個人番号が記され、そのメリットは、政府広報によりますと、「行政の効率化」「国民の利便性の向上」「公平、公正な社会の実現」があげられています。 ◆マイナンバーが生まれたいきさつ マイナンバーの前には2002年に始まった「住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)」があります。マイナンバーの番号の基になっているのがこの住基ネットです。 しかし住基ネットに対しては、「個人情報の漏洩」が懸念されて、全国で反対の声がわき起こりました。300を越える地方議会が、延期や中止、見直しを求めて衆院に意見書を提出しています。 しかし今回のマイナンバーに対しては、衆院に反対の意見書を出した地方議会は6つでした。 ◆マイナンバーは安全か? ではマイナンバーは、本当に安全なのでしょうか? 私の手元には、今年6月に日本年金機構から送られてきた「日本年金機構不正アクセス事案についてのお詫びとお願い」という書類があります。 「流出が確認されました情報は、最大でお客様の 『基礎年金番号』、『お名前』、『生年月日』、『住所』であることが現在判明しております」とあり、「抜本対策に全力かつ可及的速やかに取り組んでまいります」とのことでした。 この事件がきっかけで、サイバー攻撃に対して危機管理を徹底させる姿勢を打ち出しました。しかし今も政府系のホームページに対するサイバー攻撃は続けられ、明らかに、日本の守備能力は後手にまわっています。 マイナンバーは、住基ネット以上に個人情報が繋がっており、「芋づる式ではない」と言うものの、かなりの個人情報が危険にさらされることは推測できます。 ◆マイナンバー利用拡大の危険性 これからマイナンバーが、銀行口座や、検診結果、治療歴、買い物、嗜好などに結びつけられ、資産や行動、趣味嗜好まで「政府に把握」されてしまうことを危惧しています。 銀行で現金を引き出したり、カードで食事をすれば、いつどこで、どんなことをしたのか、推定することも可能だからです。 世界一民主的なワイマール憲法ができたとき、それがヒトラーを君臨させるとは思いもよらなかったでしょう。 ドイツでは、ナチスの歴史を経験しているため、マイナンバーのような共通番号は人を集団管理する国家権力の危険性があるため、利用制限をかけています。 マイナンバーが安保法案にかくれるように、すっと通ったことが、将来どんなことを引き起こすのか、わかりません。 ◆マイナンバー制に反対します マイナンバーは「よくわからないけれど、キモチ悪い」という女性が、私のまわりにたくさんいます。よくわからないけれど、直感的に、生理的に、イヤ、なのだそうです。 私もマイナンバーと聞くと、岐阜の長良川で、毎夏行われる「鵜飼い」を思い浮かべます。 かがり火が夜の長良川の水面を赤く照らし、その静かななかを、鵜庄さんが操る鵜が、鮎をとるために水中に潜る水音が聞こえるのです。 松尾芭蕉も句を詠んでいます。 「おもしろうて、やがてかなしき鵜飼いかな」 風情のある、風流な伝統的な鵜飼いですが、鵜にはプライバシーはありません。私たちが、その「鵜」になるとしたら、「やがてかなしき」どころではありません。 今、先に起こるかも知れない危機を避けることができるのなら、私たちは勇気を持って、いいことは進め、よくないことは止めていかなくてはいけないと思います。 それは、私たち自身の未来のためでもありますし、もっと先の未来の、私たちの子孫に対する責任ではないでしょうか。 ※なお、幸福実現党では、現在、「マイナンバー制度の廃止を含めた抜本的見直しを求める署名」活動を行っております。 ■マイナンバー制度の廃止を含めた抜本的見直しを求める署名 http://info.hr-party.jp/2015/5007/ 2016年に衆参同時選はあるのか? 2015.12.17 文/HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆なぜ1月4日に国会召集? 年の暮れとなり、来年の計画を考えている方もいるかもしれません。 企業や組織で責任ある立場につかれている方は、「来年の選挙が自社の商売に、どんな影響を与えるのか」と考えることもあるのではないでしょうか。 このたび、安倍政権が1月4日に通常国会を召集する方針を固めたのは、来年の選挙を視野に入れた意志決定だと言われています。 過去の国会召集の日を見ると、2015年は1月26日、14年は24日、13年は28日、12年は24日、11年は24日です。 1月4日は1992年以降で最も早い日時だとも言われています。 国会の当初予定は150日なので、4日に召集すれば、参院選の投票日として6/26、7/3、7/10、7/17、7/24の五通りの日時を選べます。 しかし、1月5日以降に召集すると、参院選の投票日が一つの選択肢に確定されてしまうのです。(1月5日召集の場合は6月26日) ◆選挙日程のからくりを利用して、首相は政治の主導権を握る? 「えっ。どうして」と思われた方もいるかもしれませんが、そのからくりが、『エコノミスト(2015/12/15)』(P90-91)に書かれていました。 執筆者の与良正男氏(毎日新聞専門編集委員)は、公選法が定める参院選の二つの規定に注目しています。 (1)任期満了日の前、30日以内に選挙を行う、 (2)国会閉会日から23日間が「任期満了前30日以内」にかかる場合は、国会閉会日から「24日~30日」の間に選挙を行う 「参院議員の任期満了は来年7月25日で、『30日前』は6月25日となる。1月4日に召集した場合、150日間の会期を延長しなければ閉会日は6月1日」 「このため、(2)の『23日間』規定はぎりぎり適用されず、投票日は6月26日、7月3日、10日、17日、24日の5日曜日を候補にできる」 「1月5日以降に召集した場合は閉会日は6月2日以降。『23日間』規定が適用されて、例えば1月5日召集なら投票日は自動的に6月26日に確定する」 ※24日~30日後の範囲は6月26日(日)~7月2日(土)。選挙は普通、日曜日に行われるので、この場合は26日で確定。 そして、憲法では「衆院解散後、40日以内に衆院選を行うと定めている」ので、7月10日に衆参同日選をやれば、選挙活動の日数から見ても、ほどよい長さになります。 かくして、首相は選挙日程の選択肢を持ち、政治の主導権を握るというわけです。 ◆与党は、軽減税率という「羊頭」を掲げ、増税という「狗肉」を売ろうとしている 首相が来年に衆院を解散する可能性があるのは、17年4月に消費税を10%に増税した後では、選挙がやりにくいからです。 前掲の与良氏も「可能性は低い」としながらも、「17年4月の消費再増税延期もあり得るのでは」と真顔で述べる国会議員も少なくないと述べていました。 この場合、ちゃぶ台返しのように「そもそも」の前提が変わるため、軽減税率を巡る自公の合意も議論のし直しになるでしょう。 裏を返せば、公明党は「軽減税率」を固めることで、増税延期のための「衆参同日選」を阻止し、増税への道を舗装しているとも言えます。 この議論の本質は「軽減税率があれば、増税してもよいではないか」という論理だからです。 14年4月の消費税増税が景気後退を招いたことを正直に認めれば、5%に減税すべきなのは明らかなのに、与党の政治家やマスコミは、企業に複雑な事務を強いる軽減税率を持ち出しています。 本来あるべき5%への減税を無視して、今の与党は「軽減税率」という「羊頭」を掲げて、「増税」という「狗肉」を売ろうとしているのです。 ◆消費税5%、大幅な法人税減税が本道 来年の選挙の行方を考える上で、12月時点で安倍政権と自民党が支持率を取り戻していることは見逃せません。 産経・FNN合同調査では、安倍晋三内閣の支持率は47.8%(+3.6)、不支持は41.2%(+2)でした。自民の支持率は37.9%(+4)、民主党の支持率は9.4%です(産経ニュース2015.12.14)。 同じような傾向がTV朝日の世論調査(12/5-6)でも出てきています。 (http://www.tv-asahi.co.jp/hst/poll/201512/index.html) 【安倍内閣への支持・不支持】 支持する47.3%(+5.1) 支持しない33.3%(-7.7) わからない、答えない19.4%(+2.6) 政党支持率でも自民党(47.3%〔+3.1〕)と民主党(11.5%〔-4.2〕)の明暗が分かれていました。 支持率の行方次第では衆参同日選になる可能性もありますが、争点となる経済政策を、軽減税率や増税延期などの「その場しのぎ」でよしとすべきではありません。 本来、あるべき消費税5%への減税を訴える政党が必要なのです。 自公政権は18年度に法人税を29%(※まだ実質3割)に減税する方針ですが、これは細切れの減税でしかありません。法人税に関しても、企業の国際競争力の強化のために、幸福実現党が訴える2割台への大幅減税(長期的には1割台を目指す)こそが必要なのです。 環境規制の不都合な真実 2015.12.16 文/幸福実現党・山形県本部副代表 城取良太 ◆有名無実化の可能性が高い「パリ協定」 12日夜、世界196か国・地域が参加し、パリで開かれていた国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)が「パリ協定」を採択しました。 「パリ協定」とは、気温上昇の原因となるCO2を中心とした温室効果ガスの削減によって、地球の気温上昇を産業革命前の2度未満、できれば1.5度までに抑えるという全体目標を掲げ、各国の応分で排出削減の責務を担うという枠組みであります。 1997年に採択された京都議定書では、先進国のみが削減義務を負ったのに対し、今回は全締約国が自主目標を元に削減を図ることとなりました。 そのため日本が誇る高効率石炭火力発電、電気自動車関連の省エネ技術の輸出に期待が高まっています。 しかし一方で、2030年までに26%削減という日本の目標に対して、「排出量をすぐに激減させる技術革新は難しい」「環境規制の強化で負担も増え、業績にはマイナスになりかねない」という懸念も産業界から少なくないのが現実です。 また、この枠組み自体に正当性があると仮定して、大きな疑問が残るのは「本当に全ての国が目標を尊守するのだろうか」という点です。 この点、目標を達成できなかった場合、罰則を科すという規定には反発が強く、実効性のある具体的な規定についてはほとんど議論されておりません。 結局、世界最大の温室効果ガス排出国の中国を中心に、年数が経つにつれてうやむやとなっていき、この枠組み自体が有名無実化していく可能性が極めて大きいと言わざるを得ません。 ◆「CO2増加=温暖化」は本当に正しいのか 更に踏み込んで述べると、COP21が掲げる気温抑制という目標と、温室効果ガスの削減という責務の間に、相関関係が本当にあるのかという点の検証が必要です。 日本のメディアにおいては、「世界全体で目標を達成しよう」というおめでたい論調が大半ですが、海外メディアにはこの枠組みに対する論調は多様性に富んでいます。 例えば、ウォール・ストリート・ジャーナルの社説では、「政治エリートの意見が一方に偏った時ほど警戒すべき」「気候変動が地球を危険に晒すという事自体を疑っている」「パリ協定の内容では世界はより困窮し、技術的な進歩も見込めない」としっかりとした価値判断を行っています。(12/14ウォール・ストリート・ジャーナル日本版) また、温暖化の研究自体が完璧には程遠く、実際に米共和党内部でも懐疑論が根強いのが実態です。 大気中のCO2増加と温暖化に相関関係がないと考える説としては、たとえばアメリカで2007年に発刊されベストセラーになった『地球温暖化は止まらない』があります。 地球は1500年周期で温暖化と寒冷化を繰り返しており、実際に温暖化自体は1850年から始まり、CO2が増え始めた1940年からの数十年は逆に寒冷化が進んだというデータがある点です。 つまり、近年の温暖化は人間が作り出した温室効果ガスのせいではなく、はるかに長いスパンで観た自然サイクルの一部である可能性があるわけです。 こうした確固たるデータから鑑みても、我々はこの温暖化という現象を、短期的な産業発展の副作用というよりも、生命体としての地球の活動といったより大きな視座から見ていく必要性があるのではないでしょうか。 ◆これ以上の環境規制は「不況による不幸」と「各国のエゴ」を増長させる これに対して、「確かに温暖化の原因はCO2増加以外にあるかもしれないが、不確実性があったとしても、将来に向けて『後悔しない政策』を選択すべきである(12/15朝日新聞)」というご指摘もあるかもしれません。 しかしながら、これ以上の環境規制がもたらすものは、残念ながら世界的不況による不幸の生産か、もしくは更なる自国勝手主義の横行といった極めて好ましくない不公平な未来です。 具体的には、こうした環境規制を健気に尊守すれば、不要な負担感によって経済成長を足止めさせられる一方、罰則が不明瞭な枠組みの中では自国の国益を最優先に考え、ルールを守らない国が続出するはずです。 おそらく日本は、この「温室効果ガスと気温上昇」という相関関係すら怪しい枠組みを、疑いもなく愚直に守ろうとするでありましょう。 まさに社会主義体制によく見られるような「正直者が馬鹿を見るような結末」が待っているように思えて仕方がありません。 ◆真の環境問題解決は日本にしかできない 本来、国際社会において中心テーマとして問題にとりあげるべきは、中国のPM2・5に代表されるような、国際社会を巻き込んで多くの環境被害、健康被害を生み出すような公害問題ではないでしょうか。 この点、戦後の高度成長期、日本は大気や土壌の汚染、水質汚濁に伴う水俣病や四日市ぜんそくといった様々な公害問題に直面し、「このままではいけない」という危機感から日本企業の血の滲むような努力で技術を改良し、自ら解決していった歴史があります。 また、12日同日に合意された日印原子力協定に象徴されますが、公害対策としてはもちろん、百歩譲って「温暖化とCO2増加に相関関係がある」と考えたとしても、世界一の安全性と技術力を誇る日本の原発というクリーンエネルギーこそが、世界の環境問題に対する万能薬になり、「将来に向けて『後悔しない解決策』」になる事は間違いないはずです。 経験的にも、技術的にも日本はどの国にも負けない環境先進国です。 国際社会においても、他の国々に遠慮、追従するのではなく、リーダーシップを取って公害問題、エネルギー問題で苦しむ新興国を実質的に導いていく資格と権利が日本にはあるのです。 参考 『大川隆法政治講演集2009第2巻』――「CO2の濃度が増える前から、温暖化は始まっていた」 『幸福維新』――「不況を促進させるCO2排出削減は大幅な見直しを/CO2による地球温暖化は「仮説」にすぎない」 『地球温暖化は止まらない』シンガー,S.F.著/エイヴァリー,D.T.著/東洋経済新報社 国際競争力を高める畜産政策の実現を! 2015.12.15 文/幸福実現党・鹿児島県本部副代表 HS政経塾 4期生 松澤 力(まつざわ・いさお) ◆法制化が打ち出された「赤字補填制度」 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)で、牛肉については現在38.5%の関税がTPP発効時に27.5%に引き下げられ、16年目に9%になるよう段階的に下げることになっています。 仮に米国やオーストラリアなどから牛肉の輸入が急増した場合、関税を引き上げて輸入を抑えるセーフガード措置を設けて対応しますが、16年目以降に4年間発動がなければセーフガードも無くすことになっています。 このため、先月11月25日に政府がまとめたTPP関連政策大綱では、牛肉生産者の赤字を補填する新マルキン事業などの法制化を明記し、2016年の通常国会で成立を目指す方針です。 また、補填割合も現在の8割から9割に引き上げることになっています。 ◆肉用牛肥育経営安定特別対策事業 「新マルキン事業」 肉用牛の肥育経営については、肥育牛(育てた牛)を販売したときの所得が悪化した場合、肉用牛肥育経営安定特別対策事業 (新マルキン事業)への契約者が経営を続けられるように、補填金が契約者に交付されています。 現在の新マルキン事業は、肥育牛1頭あたりの四半期平均粗収益(全国平均)が四半期平均生産費(全国平均)を下回った場合、差額の8割を上限として補填金が契約者に交付されます。 交付金の財源は、生産者の積立金と国からの補助金により、地域基金を造成して交付金に当てています。新マルキン事業は1期3年間で行い、現在、肥育事業者は平成25年度~平成27年度の期間で契約しています。 この新マルキン事業は、当初、平成元年1月~平成3年9月を事業実施の期間として、畜産振興事業団の肉用牛肥育経営安定緊急対策事業(マルキン事業)が措置されたことがスタートになっています。 その後、事業実施期間の延長や事業内容の見直しが行われ、現在の事業につながっています。 ◆構造的に下がらない「牛肉生産コスト」 11月に政府がまとめたTPP関連政策大綱の中で法制化が打ち出された、牛肉生産者の赤字を補填する新マルキン事業について、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は、以下のように述べています。 「枝肉価格が下がって、本来子牛価格が下がるはずなのに、下がらない。子牛農家に利益が生じる。その高い子牛価格で肥育農家のコストが上昇すれば、枝肉価格との差を補てんする。これで肥育農家の経営は安定するが、子牛農家に再生産が可能となる保証基準価格を上回る、不当な高利潤が発生したままとなる。マルキンがあったからこそ、肥育農家は高い子牛価格を支払っているのである。(『週刊農林』第2267号(11月25日))」 つまり、新マルキン事業が継続されていくことが一つの要因となり、構造的に高い子牛価格が維持され、日本の牛肉生産コストが下がりにくくなっています。 現状の新マルキン制度のままで法制化され、継続されていくことは、和牛の国際競争力を高める方向には進んでいかないと考えます。 ◆意欲のある和牛生産者のモチベーションを高める政策へ 肉牛経営への安定化対策については様々な意見が出ています。 新マルキン事業など、現在の経営安定化対策に否定的な意見としては、日本産の牛肉であっても、アメリカなどからの輸入とうもろこしを飼料として作られた肉であれば、食料安全保障にほとんど寄与するものではないという声もあります。 牛肉を1キログラム生産するには、とうもろこしが約11キログラム必要となると言われています。 量がかさばる輸入とうもろこしを高い輸送コストを負担して日本に輸入し、飼料として家畜に投与するよりも、海外で牛肉を生産して日本に輸入する方が遥かに効率的だという考え方もあります。 一方で、肉牛経営への安定化対策を廃止して、日本の肉牛事業が無くなってしまっては、これまで世界的なブランドとして評価されてきた「和牛」が市場から姿を消してしまいます。 今後の肉牛経営安定化対策については、世界に誇る「和牛」という日本の食文化を守るために肉牛経営を守りつつ、意欲のある和牛生産者のモチベーションを高める制度が求められます。 そのため、新マルキン事業などの肉牛経営の「赤字補填対策」は、一定期間内に経営改善が行われた事業者のみに同様の支援を継続することを検討するなど、一律の支援ではなく、事業者の経営努力に応じた支援を行う制度設計が必要だと考えます。 また、畜産としての食料安全保障を図るため、飼料については国産の飼料用米の活用を拡大するなど、日本国内で再生産が可能な体制構築をしていくことも重要です。 畜産経営経済研究会の小林信一氏の試算では、飼料用米の需要について、鶏と豚はトウモロコシと全量代替が可能であり、牛についても濃厚飼料の4割は代替可能とされており、家畜全体で1,200万トンもの潜在需要があるとみられています。 飼料用米の生産量は平成27年度産で約42万トンとなっているため、さらなる増産が求められます。 今回は、主に牛肉生産の経営安定対策の在り方について書かせていただきました。日本の国際競争力を高める畜産政策の実現に向けて、今後もさらに努力して参ります。 ノーベル賞受賞者・梶田氏にみる理想の「科学者像」 2015.12.12 文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩 ◆ノーベル賞の授賞式 ノーベル賞の授賞式が日本時間の11日、スウェーデンのストックホルムで開かれ、物理学賞の梶田隆章氏と生理学・医学賞の大村智氏にメダルと賞状が贈られました。 大村氏は「言葉にならないくらい感動した」、梶田氏は「無事に終わってよかった」と満面の笑みで語る姿が報道されています。あらためておめでとうございます! ノーベル賞受賞者・大村氏にみる理想の「科学者像」 http://hrp-newsfile.jp/2015/2442/ 大村氏の研究の特徴は、『社会に実用的な研究』でした。それに対して梶田氏の研究は、『宇宙の解明』です。 ◆宇宙の解明につながる研究 梶田氏の今回のノーベル賞は、素粒子ニュートリノに質量があることを解明し、物理理論の新たな手掛かりや宇宙の誕生、星の進化に迫る糸口を与えました。 宇宙の質量の大半を占めるものは、正体のわからない暗黒物質や暗黒エネルギーですが、現在の理論で説明できる物質は約5%に過ぎません。宇宙の誕生時には物質と反物質が同量あったはずですが、反物質がどこに消えたのかは不明です。(日経10/7) その解決の糸口になるのが、今回の梶田氏が受賞したニュートリノの研究にあると言われています。 梶田氏は、ノーベル賞の知らせを受けた直後、受賞の意義について「人類の知の地平線を拡大するような研究(基礎研究)。すぐに役立つものではないが、それが認められてうれしい」と述べています。 梶田氏の研究は、言わば「神がつくられた世界の探究」という壮大なものです。 ◆「基礎研究」の重要さ 「基礎研究」とは、基本原理を解明する研究です。探究テーマは研究者の知識欲や好奇心によるもので、大村氏のように、すぐに商業的な利益を生み出すものではありません。 しかし長期的には、その基礎研究から革命的な科学技術につながるイノベーションが生まれる可能性があります。 梶田氏の研究は、もしかしたら、将来、人類が遠く宇宙を航行する原理の発見にもつながるかもしれません。 ◆基礎研究には国家的なプロジェクトが必要 梶田氏のノーベル賞は、世界最高性能を誇る素粒子観測施設「スーパーカミオカンデ」の導入があったからです。 大がかりな科学的実験や観測を実現しようとすると、国家レベルの大事業となり、地方公共団体や企業と提携してプロジェクトを組まなくてはなりません。 政府としても、このような基礎研究を支えるには、大学や国家的な組織による研究チームと莫大な投資が必要になります。国家の理解がなければ、科学の発展はありえません。 民主党政権のように、スーパーコンピュータのような「発展のための投資」を「ムダ使い」として、事業仕分けしてしまえば、科学の発展の芽を摘むことになります。 ◆研究者にも必要な「企業家精神」 観測施設「スーパーカミオカンデ」の建設に尽力したのは、東京大総長だった有馬朗人氏でした。 国や政治家に基礎研究の大切さを訴え、麻生太郎元首相に「この装置ができたらノーベル賞が2回ぐらい取れる」と説得し、数十億円の予算獲得につなげました。(産経10/9) このように科学者は、プランを説明し、これが10年後、20年後、どれほど大きな国の富、世界の富となるかをプレゼンできる能力が必要です。 ◆研究を率いる強いリーダーシップ さて梶田氏のノーベル賞受賞は、2002年の小柴昌俊氏のノーベル賞受賞から始まり、やはりノーベル賞受賞候補だった戸塚洋一氏が梶田氏へ研究をつなぎ、子弟3代の苦労が生んだ受賞でした。 梶田氏の恩師であった戸塚氏は2000年、大腸がんの手術を受けましたが、その一年後、スーパーカミオカンデのセンサーが破損する事故が発生しました。 この試練の中、「鬼軍曹」を自称する戸塚氏は落胆するチームメンバーを励まし、事故の翌日には、「一年以内に実験を再開する」と宣言。陣頭指揮をとって10ケ月で一部観測の再開を実現しました。 その後も病気の身で現場に入り、政府関係者に次の実験の必要性を訴えたのです。梶田氏は、戸塚氏のリーダーシップがなければ再開は実現しなかったと語っています。 戸塚氏は、7年前に亡くなられましたが、ご存命であれば、間違いなく梶田氏とともにノーベル賞を受賞していたことでしょう。 このように戸塚氏のような研究を実現していくためには、強いリーダーシップを持った理系人材が必要なのです。 以上、日本から優秀なノーベル賞につながるような理科系人材を輩出するには、「企業家精神」を持ち、研究を強力に導く「リーダーシップ」が欠かせません。 最後に、大村氏と梶田氏には、たくさんの共通点がありますが、素晴らしいところは、中でも自分を育ててくれた恩師への感謝、そして研究チームメンバーへの感謝を忘れていないところです。 それがあるからこそ、大村氏や梶田氏を支える人材が集まるのでしょう。お二人は、次の科学者を輩出すべく、若い研究者の育成に情熱を持たれている点も共通しています。 政治家も科学への関心を持ち、未来の発展を導く科学者を輩出するために支援していかなければなりません。 参考 『「未来産業学」とは何か』大川隆法著/幸福の科学出版 マイナンバーという人権問題 2015.12.10 文/幸福実現党青年局部長 兼 HS政経塾部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ ◆完了しつつあるマイナンバー通知カードの配達 マイナンバー通知カードの配送が完了しつつあります。日本郵便の、8日の発表によると、全体の約87%に当たる、約4960万通の通知カードの受け取りが完了しているそうです。 ちなみに、受け取られていないマイナンバー通知カードは、約725万通で、その内、不在や住所地にいないなどの理由で自治体に保管先が移った分が約469万通あるそうです。 [参照]:日本郵便HP: http://www.post.japanpost.jp/notification/productinformation/2015/1208_01.html 12月20日には郵送を完了予定としていますが、実際に住民の手に、マイナンバー通知カードが届くのには、さらに時間がかかりそうです。 ◆個人番号カードの申請・取得は義務ではない 届いたマイナンバー通知カードの下には、個人番号カード交付申請書が付いています(「個人番号」のことを「マイナンバー」と言っています)。 行政側としては、個人番号カードの申請を推奨していることもあり、「個人番号カードの申請は、しなくてはいけないんですか?」という、不安混じりの質問を多くいただきますが、これは義務ではありません。 個人番号カードがなくても、マイナンバー通知カードと身分証明書があれば、必要なことはできますので、個人番号カードを作成したくない場合は、「作らない」という選択もできます。 ◆マイナンバー制度は何が問題? 現状では、来年2016年1月からは、税金関係と雇用保険関係の処理にしかマイナンバーは利用されません。そして、社会保障の分野で使用されるのは、2017年からとなります。 では何が問題かというと、マイナンバー制度の最大の懸念点は、利用が公的分野に限られる既存の「住基カード」と異なり、金融機関など民間にも拡大する可能性があることです。 そして、情報が漏えいしたら、情報を管理する事業者への罰則規定はありますが、漏えいした情報については、どうしようもないということです。 [参照]:マイナンバーの「のぞき」政策化に歯止めを http://hrp-newsfile.jp/2015/2459/ ◆特に怖い!口座番号とマイナンバーの結びつき 任意ではあるものの、予定通り2018年に預貯金口座にマイナンバーが結び付けられると、財布の中身の使い道、さらに資産の詳細な把握ができるようになります。 財産の詳細な把握を政府がすることで、「財源が足りないので、資産に課税しよう」ということになりかねません。 「そんなこと、ありえない」と思うかもしれませんが、実際に、資産課税を政策として考えている兆候があるのです。 例えば、現在の経済財政諮問会議のメンバーとして、安倍政府の経済政策に携わっている、伊藤元重・東京大学大学院教授は、政治的ハードルは高いとしつつも次のように発言しています。 「日本では所得に比べて金融資産が増えているので、将来の財政問題を考えると、所得ではなく、資産に課税するという方法もある。」 [参照]マイナンバーで金融資産課税も俎上に: http://jp.reuters.com/article/iot-itoh-idJPKBN0NE0BQ20150423?pageNumber=1 消費税を導入して以来、税率を3%から8%に上げたものの、財政赤字は10倍に膨れ上がっていますが、いつもの「財源が足りない」という「いつもの」理由で、資産課税を導入する動きがいつ出てこないとも限りません。 ◆これも怖い!健康保険証とマイナンバーの結びつき さらに、健康保険証とマイナンバーの結びつきも議論されています。 推進側は、「特定健診の結果」や、薬の処方を把握して、医療費の削減につながるという意見がありますが、病歴などのデリケートな個人情報が漏えいするリスクについては、何も説明していません。 日本医師会も、プライバシーの観点から医療情報のマイナンバー利用には反対しています。 ◆海外の教訓を生かしていない? 既に海外では、様々な失敗事例があります。 アメリカでは、マイナンバーにあたる制度として、社会保障番号を導入していますが、なりすまし被害が多発しており、これまでの被害総額は数兆円を超えています。 使用履歴のない子供の社会保障番号は、不正利用の標的となりやすく、未成年者の社会保障番号に関連する被害は、毎年14万件あります。 例えば、11歳の時から社会保障番号が不正利用されて、13歳になってクレジットカードに多額の請求がきたというケースなど、様々な被害が出ています。さらに困ったことに、被害を受けても、証拠を示すのが難しく、なかなか裁判に持ち込むことも難しい状況のようです。 [参照]Targeting children: the young victims of identity theft http://www.wthr.com/story/16690002/targeting-children-the-young-victims-of-identity-theft その他にも、イギリスでは2008年に始まった、顔写真付きの個人番号カードをわずか2年で廃止しています。 つまり、世界の趨勢としても、マイナンバーから銀行口座やクレジットカードの作成にまで広がる方式(フラット方式)を見直す動きが広がっているにもかかわらず、その教訓を踏まえずに、失敗した方式に自ら飛び込んでいるともいえます。しかも、そのために3000億円以上の税金が使われようとしています。 ◆マイナンバーの拡大は、人権問題につながる 以上のことを踏まえると、マイナンバーの使用範囲の拡大は、国民生活を監視する「のぞき見」政策にほかならず、個人のプライバシーを侵す「人権問題」になりかねない危険な政策です。 そのため、幸福実現党は、「マイナンバー制度の廃止を含めた抜本的見直しを求める署名」を開始しました。 マイナンバー制度の廃止を含めた抜本的見直しを求める署名 http://info.hr-party.jp/2015/5007/ マイナンバー制度を、不安に思うお声を幅広くお伺いし、人間の尊厳を守る国民運動として盛り上げていければと存じます。 マイナンバーの使用範囲の拡大は、人権問題にかかわります。自由で闊達な社会を守るためにも、現行のマイナンバー制度は、抜本的に見直すべきです。 愛してるから、黙ってられない。 だから、ノー!マイナンバー。 すべてを表示する « Previous 1 … 36 37 38 39 40 … 78 Next »