Home/ 経済 経済 月面基地の早期建設をめざして 2016.11.08 HS政経塾6期生 須藤有紀 ◆宇宙でも?迫りくる中国の脅威! 先月17日、中国は1ヵ月の長期任務を目標とした、有人宇宙船「神舟11号」の打ち上げを行ないました。またその2日後、中国時間の19日午前3時31分、地球から393キロ離れた軌道上で、実験室「天宮2号」へのドッキングにも成功しました。 現在、中国の宇宙開発技術、打上経験、実績は、アメリカや旧ソ連を含むロシアにははるかに及んでいません。 しかし、着々とその差を縮めて来ています。 習近平国家主席は、2030年に「宇宙強国」となることを目標に掲げています。 中国政府も宇宙計画を優先課題と位置づけ、2018年には独自の宇宙ステーション「コアモジュール」を打ち上げ、2022年に稼働を計画しています。 また、2017年には月面の土壌サンプル採取を計画し、2018年には月面裏側への着陸を計画するなど、月探査に意欲を見せています。 こうした中国の動きに対して、日本はなかなか宇宙開発に乗りきることが出来ていません。 ◆本気でやるなら、「プログラム的探査」 元日経BP記者でノン・フィクションライターの松浦晋也氏は、日本の宇宙開発の問題点は特に「プログラム的探査」の欠如にあると指摘しています。 プログラム的探査とは、長期的な計画に基づいて、戦略的に行われる探査の事です。 月探査で言えば、大まかには以下のようになります。 (1)月の周りを回って月表面の情報を集める探査機を打ち上げる。 (2)月に着陸する。 (3)月を走り回って情報を集めるローバーを送り込む。 (4)月の物質を収集し、持って帰る「サンプル・リターン」を行う。 (5)有人探査を行う。 日本は、はやぶさを例外として、ほとんどのプロジェクトが単発です。 月探査においても、jaxaは月探査の長期計画をjaxa案として出していますが、実現はなかなか厳しいようです。 ◆立ちはだかる「予算」の壁 2007年に、日本で初めて月探査のために打ち上げられた月周回衛星「かぐや(SELENE)」は、目覚ましい成果をあげて諸外国から称賛を浴びました。 しかし、その後続機である「SELENE-2」は開発を中断されています。理由は色々と考えられますが、一番は予算の不足だと言われています。 SELENE-2は、月への着陸探査をめざしたプロジェクトでした。 SELENE-2サイエンスチームは、「着陸探査は周回探査に比べても2倍の費用がかかる」とした上で、各国は1000億クラスの予算で実施していると指摘しています。 日本の宇宙開発関連予算は3000億円規模なので、着陸探査だけでもおよそ3分の1の予算規模を必要とすることが分かります。 しかし、現実に中国が月探査に力を入れ、月面基地建設や「宇宙強国」としての地位に色気を示している以上、日本も月探査に積極的にならねばなりません。 有人飛行経験のあるアメリカなどと協力して月への有人飛行を行い、中国をけん制する必要があります。 ◆でっかい理想を掲げて積極投資を! SELENE-2は、成果を最大化するために様々なミッションを担おうとしていましたが、開発を中断され、そのミッションの一部を別プロジェクトが引き継ぐ形となりました。 公募で決まったプロジェクトである、SLIMは、ピンポイント着陸の実証を目的とし、2019年にイプシロンで打ち上げ予定となっています。 SLIM自体は素晴らしいプロジェクトですが、SELENEとは別プロジェクトの単発ミッションです。単発ミッションは、同様の探査プロジェクトの結果が出てから、次のプロジェクトに移るので、移行期間が長くなりがちです。技術継承や人材確保、部品などの面で様々な弊害が生じます。 幸福実現党は、「高付加価値の未来産業(航空・宇宙産業、防衛産業、ロボット産業、新エネルギー開発など)に対し、10年以内に100兆円を投資し、振興を図る」という政策を掲げています。 やはり、こうした大胆な政策を掲げ、単発ミッションではなくプログラム全体に対して、積極的な投資をはかる必要があるのではないでしょうか。 ◆宇宙はフロンティア 宇宙は21世紀のフロンティアです。 宇宙開発の過程で編み出された技術は、私たちの生活に転用され、より便利な物を生み出しています。 カーナビや、Googleマップなどの地図サービス、天気予報などは、衛星を使っていますし、宇宙服の技術を転用した肌着や、高性能の浄水器なども誕生しています。 また、月の資源を利用した建設材料や、フロン3といった新エネルギーの材料の発見も期待されます。 こうした経済的発展可能性の面からも、先述した安全保障の面からも、月面開発は重要です。 日本は国家として、月面基地建設までを視野に入れた月面開発プログラム全体に大規模な予算を投入すべきです。そのためにも、まずは宇宙産業を戦略産業に位置付け、官民ファンドの創設などを検討する必要があります。 日本のさらなる発展のためにも、宇宙開発が一段と進むことを願ってやみません。 (参考) 産経新聞 http://www.sankei.com/life/news/160101/lif1601010006-n5.html 東洋経済 http://toyokeizai.net/articles/-/140675 CNN.com http://www.cnn.co.jp/fringe/35090776.html 「合わせ技は認められないのか~SELENE-2の実情~」 http://www.isas.jaxa.jp/j/researchers/symp/sss13/paper/S2-004.pdf 日経BP http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/matsuura/space/071026_change/ 新しい企業誘致の考え方で地方の活性化を! 2016.11.01 HS政経塾六期生 坂本麻貴 ◆リニア開通で地方の人口はどうなる? リニア中央新幹線の開通が、2027年に品川―名古屋間、その10年後には、大阪までが開通する予定です。 それに向けて、国土交通省は先月24日、経済効果などを高めるインフラ整備や制度設計を目的とした調査プロジェクトを年度内に立ち上げることを決めました。 リニア開業は移動時間の大幅短縮に伴う新たな人やモノの流れだけでなく、ライフスタイルそのものにも変革を起こす可能性があり、国交省は早期に青写真を示し、地方との意思統一も図っていく考えのようです。 リニア中央新幹線は、品川-名古屋間をおよそ40分で結びます。(大阪まで67分)そうすれば地方へ人口を集めることができ、地方の活性化が見込まれます。 一方、逆に都心部に地方の労働人口が吸い上げられ、格差が一層深まるのではないかと言った懸念も指摘されています。 地方を元気にするためには、地方に住む若者を増やすことが課題だとして、政府は「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、「地方における安定した雇用の創出」、「地方への新しいひとの流れをつくる」といった目標のもとに政策を講じています。 ◆「亀山モデル」にみる企業誘致の成功と陰り 三重県は全国に先駆けて大規模な企業誘致を行ってきました。クリスタルバレー構想として、シャープ㈱を亀山市に誘致した例で、『亀山方式』とよばれるほど一時期大きな注目をあびました。 『亀山方式』とは、大型の補助金や助成金によって企業にインセンティブを支払うというもので、当時シャープの誘致に県と市が投入した補助金は135億円でした。 また、用水や道路のなど受け皿の準備にも力を入れ、企業のニーズに合った立地条件をつくりました。 県によると、その成果は大きく、関連企業も含めて、2004年の創業から2011年には雇用者数は2.8倍の7100名に増え、税収も315億円になり、投入した補助金以上の効果があったとしています。 しかし、家電業界では工場閉鎖や売却が増えているのが現状です。 例えば、愛知県一宮市に立地していたソニーのテレビ工場は2009年に閉鎖されました。また2012年には大阪府貝塚市のパナソニックの工場も閉鎖しています。 前述のシャープに関しても、今年8月12日には台湾の鴻海精密工業によるシャープ買収の手続きが完了しました。 家電工場中心の誘致政策にも陰りが見えつつあるのが現状です。 ◆新たな産業誘致を 今まで企業を地方に誘致する際、『亀山方式』のような、補助金・助成金でのバックアップや、「企業立地促進法」 による税制面での優遇などの処置がとられることが一般的でした。 その際は、地方税収の中で約25% をしめる固定資産税の減免です。固定資産税は地方税ですが、海外を見ると国税である法人税を減免する国も多いのです。 例えばシンガポールは新規企業の法人税は最長15年間免除、タイ王国では8年間免除、その後5年間は5割減免という優遇策がとられています。 外資系企業を誘致するにしても、こうした状況から日本へ誘致するメリットは少ないということが言えます。 工場中心の企業誘致に行き詰まり、外資系企業も見込みが少ないとなると今後、どういう分野の企業を誘致するのかということが非常に重要です。 ◆地方が活性化するためには 現在、成長産業と言われる分野には、「航空宇宙産業」、「医療」、「食」が挙げられます。 航空宇宙産業では、既に愛知県の旗振りで「アジアNO.1航空宇宙クラスター形成特区」が行われています。また、医療分野についても「あいち医療イノベーション推進特区」をすすめています。 三重県を例にすると、同県は井村屋製菓㈱(上場)や㈱柿安(上場)、㈱おやつカンパニー(非上場)など、食分野の企業が多く立地しています。また、和牛や海産物にも恵まれ、茶業でも全国3位のシェア を持っています。 今後、三重県において一つの可能性として、食産業を誘致し集積地をつくることで新たな集積地をつくり、世界的な人口増加に伴う食糧問題に取り組んでいくことが上げられます。 地方の活性化の問題は、国内の人口をどう呼び寄せるかという「パイの奪い合い」から視点を変え、「世界で問題になっていることは何か」ということに目を向けることが解決の鍵なのです。 小さな政府の使命を再度問う 2016.10.30 幸福実現党・岐阜県本部副代表 加納有輝彦 ◆中古住宅やエコリフォームに対する支援の開始 麻生政権時、省エネ性能の高い家電を購入した国民に、他の商品と交換できるエコポイントを付与する家電エコポイント制が導入され、総額約6900億円の補助金が投入されました。 CO2対策、経済の活性化、地上デジ対応テレビの普及を図るのが目的で、環境省、経済産業省、総務省が中心となって取り組まれてきましたが、その後、国土交通省でも省エネ住宅の新築やエコリフォームの普及を図る住宅ポイント制度も実施されてまいりました。 去る10月11日、平成28年度第2次補正予算が成立し、「住宅ストック循環支援事業」(国土交通省)として中古住宅やエコリフォームに対する支援が実施されることになりました。 ※住宅ストック循環支援事業について http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000121.html 全国9つのエリアで、国土交通省主催の住宅リフォーム等に関する支援制度説明会が順次開催されました。 中部エリアでも10月26日に名古屋市公会堂大ホール(1990人定員)で開催され、多くの事業者が参加し関心の高さ、期待の大きさを示しています。 主な補助内容は、 (1)住宅のエコリフォームに最大30万円/戸 (2)40歳未満の者がマイホームとして中古住宅を取得する際に、インスペクション(建物状況調査)+エコリフォーム費用に対して50万円/戸 (3)耐震性のあるエコ住宅に建替えるに際し、50万円/戸 (1)(2)については、耐震性を持たせる場合、それぞれ15万円上乗せされます。 新築住宅の着工件数が減少しつつあるなか、特に地方においてリフォーム工事への補助金は、工務店等の建設事業者にとって仕事を頂くための「必要不可欠」なインセンティブ(誘導)となりつつあります。 地方における建設業界の仕事の創造は、国の補助金に期待するところ大であり、今回の国土交通省主催の住宅リフォーム等に関する支援制度説明会に多くの事業者が参加したことは、期待の大きさを示すものと考えます。 ◆消費税増税と補助金 エコポイント等の補助金を必要とする理由として、そもそもお客様の財布の紐が固くしまっており、大きな値引きが「消費を喚起する」「消費を誘引する」そのことに尽きます。 国は一方で、消費税の増税で消費者の財布の紐を締め上げ、一方で補助金で緩める、マッチポンプ(マッチで自ら火事を起こして煽り、それを自らポンプで消す)と揶揄される所以です。 地方の事業者が、補助金制度を利用して仕事を頂くことは、当然の行為です。 しかしながら、事業者の仕事を国の補助金が創造するという姿は、本来の姿とは思えません。国が、税金を吸い上げ、税金を使って仕事を創造する、この方向は「大きな政府」へと真っ直ぐに繋がっています。 私たちは、現行の制度を利用して仕事を創造しつつ、マクロの目を持たなければならないと思います。エコポイント制度から始まったエコ住宅への補助金の原資は、「税金」です。 ◆大きな政府と小さな政府 わが国が立ち戻る原点は、2009年8月21日に放送された幸福実現党大川隆法総裁の政見放送です。この内容に、立ち戻るべき原点が凝縮されています。 税金に関しては、「皆様方の選択は二つに一つです。『大きな政府』を選ぶか、『小さな政府』を選ぶか、どっちかです。」 小さな政府を明確に訴えているのは幸福実現党のみであり、小さな政府とは、国民の生命安全財産を守るための必要最小限の機能を国が担い、それ以外は、企業や各人の創意工夫によって未来を切り開いていける国がよいとされました。 大きな政府は、多額の税金を国民から取って、ばらまく。民主主義の最大の欠点。ばらまいて票を頂くことであると喝破されています。 最後は、「少ない予算の中で、国民の生命安全財産を守りきるために闘う。」これが小さな政府の使命であると結ばれました。 本来、企業や各人の創意工夫によって未来を切り開いていくべきものが、国のばらまき政策である「エコポイント」という補助金にぶら下がることは、一事業者・個人としては現状やむを得ないものの、その方向性は限りなく肥大していく大きな政府であるということをしっかりと認識しておく必要があると思います。 幸福実現党は、小さな政府を明確に訴えている唯一の政党として、「少ない予算の中で、国民の生命安全財産を守りきるために闘う。」を使命として精進してまいります。 生活保護制度について考える 2016.10.29 幸福実現党 大阪府本部副代表 数森圭吾 ◆生活保護制度とは 生活保護制度とは社会福祉六法の一つである生活保護法に基づいて施行される福祉制度の一つです。 生活保護法の目的は、「日本国憲法第25条(生存権)に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」(第1条)とされています。 つまり生活保護とは「一時の」最低限度の生活を保障しながら自立を促すための制度であり、また障害を抱える方など働きたくても働くことのできない方々の生活を保障するためにも、現状において重要な制度であるといえます。 しかし他方、この制度が抱える様々な問題をみていくと、この制度が人の弱さを助長している側面があるということも明らかになってきます。 ◆生活保護受給率 平成26年の厚生労働省発表データによると、都道府県別に見た生活保護受給率は以下の通りとなっており、受給率の最も高い大阪府と最も低い富山県の差は10倍以上となっています。 大阪市の発表によると、大阪府がトップとなっている背景には「失業率」「離婚率」「高齢者の割合」が高水準になっていることや、全国最大の日雇い労働者のまちへの多亜府県からの流入が多いことなどがあげられていますが、他方で行政側の審査の甘さなども指摘されています。 1 大阪府 3.35% 2 北海道 3.11% 3 高知県 2.79% 4 福岡県 2.56% 5 沖縄県 2.41% 6 京都府 2.31% 7 青森県 2.28% 8 長崎県 2.20% 9 東京都 2.16% 10 鹿児島県 1.93% 47 富山県 0.32% ◆生活保護制度が抱える問題点 2015年度生活保護費の予算は約3兆円。今後も増加していくとみられており、制度が抱える数多くの問題も議論の対象となっています。 ・外国人への保護費支給問題 外国人への生活保護費の支給です。2010年のデータで総世帯数と被保護世帯数の割合を比較すると、日本国籍世帯の受給率は2.6%であるのに対して外国籍世帯の受給率は3.6%となっています。 特に韓国・朝鮮籍世帯の受給率は14.2%と非常に高くなっています。また外国人受給者の場合、海外に資産を持っていても、調査に限界があるという点も問題となっています。 実際に資産や所得を海外に隠して生活保護を不定受給していたという事件も起こっています。 ・貧困の連鎖 生活保護世帯で育った子供が、大人になって再び生活保護を受けることを「貧困の連鎖」といいます。 関西国際大学の教授が行った実態調査によると、貧困の連鎖の発生率は25.1%というデータも出ています。この実態をみると自立を助ける制度として生活保護が役立っているのか疑問に感じざるをえません。 ・国民年金とのバランス問題 また、生活保護で給付される金額が、国民年金の老齢基礎年金よりも多い事が指摘されています。 都市部で支給される生活保護費と国民年金(満額)を比較すると倍以上のひらきが存在します。これは国民年金をコツコツと納めてきた国民にとっては納得しがたい状況であるのも理解できます。 ・医療扶助の不適切受給問題 医療扶助は年間約1.5兆円で、生活保護費のおよそ半分を占めています。これは投薬回数や診察回数に関わらず、受給者なら本来の自己負担分はすべて公費負担となるからです。 医療扶助を利用し、不必要な検査や注射を繰り返したり、医薬品を過剰処方することで医療費の増大につながっているという指摘もあります。 このように多くの問題を抱える生活保護制度。制度の理想と実態の乖離や日本の現在の厳しい財政状況から考えると制度の見直しが必要となるのはまちがいないでしょう。 ◆福祉が実現すべきは「楽」?「幸せ」? セーフティーネットとしての福祉制度は非常に重要なものです。しかしそこには落とし穴も存在しており、制度が人間を堕落させてしまう恐れがあることも知らなければならないと思います。 「楽」をしたいという思いがでる、安きに流れるのが人情だと思います。しかし、ただ楽なことが本当に「幸せ」なのでしょうか。何もせずとも楽に生きられる毎日がずっと続いた場合、人間はそれを幸せだと思えるのでしょうか。 人間が人間らしく生きるため、生存権だけでなく憲法13条の幸福追求権を守るためにも、人間の幸福とは何かを深く考え、制度に生かしていかなければなりません。 人間の幸せには「努力」というものが密接に関係するように思います。努力を重ねる先に、心から感じることのできる幸福もあるのではないでしょうか。 もしそれを福祉制度が阻害していしまっているのであれば、それは本来の意味からして福祉と呼べるものではありません。 最低限の生活を守る福祉制度は非常に大切です。 しかし同時に多くの人びとがセーフティーネットを必要とする状況から脱し、努力の先に一つでも多くの成功をつかみ取ることのできる環境をつくることこそ大切な福祉であり、政治が実現すべき重要な仕事であると感じます。 規制緩和で医療を輸出産業に 2016.10.25 HS政経塾 第6期生 野村昌央 ◆問われるこれからの社会保障制度 21日に行われた経済財政諮問会議で、安倍首相は「医療費抑制の改革の具体化に向けた検討を加速する」よう、塩崎恭久厚生労働相に指示しました。(10月22日付・日経新聞より) 増加する社会保障費のなかでも医療費の伸びは著しく、平成27年度の医療費は41.5兆円となっており、前年度に比べ1兆5000億円増となりました。医療費の抑制策としては、最近では高額がん治療薬のオプジーボが緊急的に薬価を引き下げる方針となったことが話題となりました。 医療制度改革はこれまでにも行われていますが、その中身は給付額の削減や、保険料や医療機関窓口での自己負担の増加といった、今ある制度の枠組みの中での対応策であり、今後、安倍首相がどこまで医療改革を断行できるかが注目されます。 ◆日本の医療産業は規制だらけ 日本の医療は国民皆保険とフリーアクセスを特徴とし、全ての国民が等しく、どこでも医療を受けられる制度となっています。 どの医療を保険の効くものとするかは、中央社会保険医療協議会(中医協)によって定められ、保険収載を認められた医療行為が保険医療機関(病院等)で医療サービスとして受けられるようになっています。 また、一つひとつの医療行為に対する診療報酬(保険会社から医療機関へ支払われる保険給付)や薬の価格(薬価)も、中医協の議論を踏まえて厚生労働大臣が決定する制度が採られています。 様々な規制があるため、例えば混合診療の禁止(保険の効く医療サービスと、保険の効かない医療サービスを一緒に受けた場合、保険が効く医療サービスも全額自己負担となる)などから、海外では既に実用化されている先進医療を受けたくても、それを受けるためには様々な障壁があるのが現状です。 医療には高度に専門的な知識や技術が必要であるため、医療提供者と患者の間に医療に関する知識の差(情報の非対称性)が生じます。そのため、自由競争に任せると、本当は必要でない医療サービスであったとしても、それが不必要なのかどうかが患者にはわからないまま、医師の勧める医療サービスを受ける(モラルハザード)などの問題が起きる可能性があります。 これらの問題を防ぐことを目的として、日本の医療産業には様々な規制があるのです。 ◆医療制度改革で医療を成長産業へ しかし、平等に医療を受けられる社会を守るという目的のためとはいえ、採算のとりようがない今の枠組みのままでは、増税と国債発行による社会保障費の補填に頼り、将来世代にツケを回すだけです。 また、規制にがんじがらめでは医療資源の効率配分も難しく、ムダが生じます。このままでは、最短5年で医療制度は破綻するとする専門家もいます。「医療費抑制」という考え方のままでは、結局は医療保険の適用範囲の縮小などが行われることになると考えられます。 ただ制度の縮小を待つのではなく、「どうすれば医療産業が活性化するか」という視点を持ち、個人の選択の幅が広がり、より質の高い医療サービスを受けられるようになり、世界の人達が日本の医療を受けに来られるような輸出産業にしていく方向にシフトしていくべきではないでしょうか。 そうした改革に向けて、動き出している自治体もあります。愛知県では「国家戦略特区」への提案として「あいち医療イノベーション推進特区」というものがあります。 これは、名古屋大学医学部付属病院を国際医療拠点として「病床規制の特例」「外国人医療従事者の受け入れ」「保険外併用療養の拡充(混合診療の推進)」「医療機器分野への新規参入の促進」などの提案をするものです。 これらの規制緩和によって、愛知県は医療を国際競争に耐えうるものとし、優れた医療や医療機器の新たな市場を創造する「医療イノベーション」を推進しようとしています。 医療費抑制を目的とした今までの枠組みの中での医療改革ではもはや対応しきれなくなってきていることをしっかりと認識する必要があります。愛知県の医療イノベーションの提案のように、医療産業を成長産業としていく道を拓いていくことが、日本の医療を守ることにもつながっていくのです。 地方活性化に向けて(2)――岩手県紫波町「公民連携(PPP)による街再生」の例 2016.10.15 HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真(にしむら たくま) ◆駅前の未整備地区の開発に成功する「オガールプロジェクト」 岩手県盛岡市と花巻市の間に位置し、人口約33,000人を抱える同県紫波町に2012年、複合施設「オガールプラザ」がオープンしています。 「オガールプラザ」は、紫波町が取り組む都市開発事業「オガールプロジェクト」の中核施設となっており、図書館、民営の産直販売所、カフェ、医院などを備えています。 同事業が対象とする地区は、JR紫波中央駅前にある11.7ヘクタールの町有地です。この地区は、財政難により整備できない状態が続き、10年以上、未利用のまま塩漬け状態となっていました。 この状況を打破しようと、PPP(公民連携)を念頭に、当プロジェクトが2009年に開始されます。 「オガール」とは、「成長する」という意味の方言「おがる」と、フランス語で「駅」を意味する「ガール」をかけ合わせた造語を意味します。 同事業は「オガールプラザ」を核に、バレーボール専用体育館やホテルを有する「オガールベース」、紫波町が造成・分譲する住宅地である「オガールタウン」、日本サッカー協会公認グラウンド「岩手県フットボールセンター」などから成ります。 事業開始から7年が経ち、今や、町の人口の25倍に相当する、年間90万人近くが、同地区を訪れるような状況にまで発展しています。 ◆成功の「カギ」となったPPPの活用 このプロジェクトの成功の「カギ」となったのは、PPPです。 PPP (Public Private Partnership)とは、「官」と「民」が連携して公共サービスの提供を行うスキームで、事業の企画段階より民間事業者が携わる仕組みとなっています。 PPPを活用することによって、インフラ整備の際の財政負担を軽減することができるというメリットがあります。 オガールプロジェクトにおいても、東北銀行から融資を受けるなど、民間資金が十分に活用されています。 「PPPといえども、これは民間事業。金融機関がカネを出してくれなくては成立しない」という意識からも、オガールプラザの建設時には、大枠の施設の規模や建設費用が先に決められ、また、コストを極力抑制する建造設計がなされるなどしました。 その結果、オガールプラザの工事費は10億円余りと、公共建築としては極めて低コストに抑えることに成功しています。 また、「甘い見込みでテナントが埋まらないような駅前施設」にはしないために、設計前に見込みテナントが固められるなど、健全な経営感覚に基づいた判断がなされています。 さらには、「来館者同士の交流を促進させ、活気を生み出す」というコンセプトの下、民間の知恵も大いに活用されました。 図書館の新設や産直所に関しては、住民の強い声を拾い上げた結果として、設置されたものとなっています。 このように、民間の資金と知恵を活かすPPPをうまく機能させたことが、同プロジェクトを成功へと導いたというわけです。 ◆民間活力を最大限活用することこそ、地方活性化の道! 大幅な人口減少と、深刻な財政難を抱える地方自治体は多く、確固たる「地方活性化策」の推進が今、急がれています。 しかし、国から、「危機」の中にある「地方」にお金を委譲して、それを使わせることだけが、必ずしも地方を活性化させるための最善策であるとは限りません。 やはり、地方活性化のためには、「民間のアイデアや資金を最大限活用する」という発想を持つ必要があるでしょう。 岩手県紫波町の「オガールプロジェクト」は、健全で発展的な「まちづくり策」の良い例を示していると言えるのではないでしょうか。 参考文献 竹本昌史 『地方創生まちづくり大事典』, 国書刊行会, 2016. 日経アーキテクチュア2012年7月10日号「オガールプラザ 産直、カフェ、図書館が一堂に−コストを抑えた木造施設に、エリア全体で集客」 日本経済新聞(地方経済面東北版)2014年2月15日付「塩漬けの土地街の顔に」 日銀、マイナス金利の誤算――初の国債保有額400兆円超え 2016.10.13 HS政経塾第2期卒塾生 川辺 賢一 ◆日銀の国債保有額、400兆円超え 今月12日、日銀の国債保有額が初めて400兆円を超えたことが発表され、約1100兆円の国債発行残高のうち、3分の1程度を日銀が保有していることが明らかになりました。 2013年4月に始まった異次元緩和により、日銀が市場に大量のお金を放出し、大量の国債買い入れを進めてきたからです。 国内民間銀行が保有する国債は今年8月時点で87.5兆円とされ、異次元緩和前と比較して半減。あと1~2年すると年間80兆円ペースで国債を買い入れる政策に限界が訪れると言われます。 また異次元緩和以前には1.5兆円程度であった日銀による上場投資信託(ETF)の購入額は今年10兆円に達しようとしております。 ◆「金利」政策への回帰 そうしたなか日銀は昨年末にマイナス金利の導入を発表し、民間金融機関が新たに日銀に預け入れるお金に-0.1%の金利がかかるようになりました。 マイナス金利を導入した日銀の狙いは何だったのでしょうか。 もともと日銀の金融政策の中心は「金利」の上げ下げを通じて、景気・不景気に対応することでした。 金利が下がれば、お金を借りる人が増え、景気が過熱し、金利が上がればその逆に過熱した景気にブレーキがかかると考えられるからです。 ところがバブル崩壊後の失われた20年のなかで、日銀の「金利」政策はゼロの下限に達したため、新たにお金の「量」の拡大を指標とする量的緩和政策が実行されるようになりました。 お金の「量」拡大を通じて、人々に将来の物価が上がる(お金の価値が下がる)と予想させ、現在の消費や投資を喚起させようとしたのです。 これまで「量」拡大を目指した政策に限界はないと言われてきたなかで、昨今、国債発行額の3分の1程度まで日銀の買い入れが進み、その限界が意識されるようになったのです。 そこで日銀は「マイナス金利」を導入し、再び「金利」に着目した金融政策に回帰したという経緯があります。 さてマイナス金利の結果はどうだったのでしょうか。確かに日銀の狙い通り、民間金融機関が保有する日銀の預金の一部にマイナス金利が適用されることで、住宅ローンや貸出金利等、様々な金利に下落圧力がかかりました。 ところが安い金利でお金を借り、高い金利でお金を貸すことを生業とする銀行業にとってマイナス金利は収益の圧迫を呼び、さらに量的緩和政策の限界を意識させる結果となり、これまで金融緩和を主張してきた幸福実現党としても資本主義の精神を傷つけるとして厳しく批判をして参りました。 ◆日銀の混乱した政策、その解決策は そのようななか先月21日発表されたのが、新発10年物国債の金利を0%程度にコントロールする政策でした。 この政策からは、マイナス金利導入による金利の下落圧力を是正しようとする日銀の意図が見られます。 しかしながらマイナス金利撤回以外の方法で金利の下落圧力を是正するには、現状、日銀の国債購入量を減らす以外にありません。 実際、日銀の国債買い入れ額は減っており、異次元緩和以降の金融政策を評価してきた中原伸之氏や嶋中雄二氏らリフレ派エコノミストたちも現在の日銀の政策に批判的です。 このように日銀の金融政策は現在、マイナス金利の導入に端を発して混乱していると言わざるを得ません。 では何が解決策なのでしょうか。 まず政府は消費税率を5%に戻すことで、政府も日銀に協力して、徹底的にデフレ脱却に取り組む姿勢を改めて明確にすることです。 また銀行紙幣の発行等、日銀による国債購入やETF購入に頼らない手段でお金を創造する新たな金融政策が求められます。 幸福実現党は民間の知恵と資本が生きる自由な経済の創造を目指します。 アパレル産業から見る消費構造の変化 2016.10.11 HS政経塾第6期生 山本慈(やまもと・めぐみ) ◆百貨店でのアパレル購買量が減っている 10月6日、セブン&アイ・ホールディングスは、百貨店の不採算店舗が増えたことから、傘下のそごう・西武3店舗をエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)に譲渡することを発表しました。 この譲渡を起点に、今後百貨店事業を大幅に縮小する方針です。 昨年まで大賑わいだった中国人の「爆買い」も一変し、現在、デパートでは閑古鳥が鳴いています。 ◆百貨店の客足は減ったけど・・・? 百貨店から客足が減った原因は、「H&M」等のファストファッションやネット通販の台頭です。 1998年に設立したベンチャー企業スタート・トゥデイは、2004年にファッション通販サイトZOZOTOWNを開始し、2014年、商品取扱高1000億円を突破し、株価では三越伊勢丹を追い抜いています(2016年9月23日ベース)。 年間購入者数も300万人を突破し、利用者は増加傾向にあると発表しています。 ◆最近の消費者志向 ネット通販サイトを利用する層は、「富裕層」でも「低所得層」でもない「中間層」が占めています。どうやら彼らのライフスタイルと購買志向の変化が、ネット通販サイトの台頭を支えているようです。 日経ビジネスのアンケートによれば、仕事の帰宅時間は商業施設が閉店した後で、休日はあまり買い物に行かず、ネットで代替できないライブや美術鑑賞をしているということです。 ネット通販も商品サイズや口コミ、レビューで詳しい商品情報を得ることができることと、家にいても、電車の中でも、仕事の休憩時間でも、手軽に買えるというメリットがネット通販の強みでしょう。 総務省「家計調査」調べから統計された「家計の消費支出の割合の推移」をたどっても、支出の割合がモノからサービスへ移行しています。 このようなライフスタイルの変化が、消費構造がモノからサービスへ移動しつつあると推察できます。 ◆最近、違うブランドでも似た服が多い? アパレルに興味がある人は、すぐ共感されると思いますが、違うブランドでも似たような服が多いことをご存知でしょうか。 他ブランドで類似品が販売されている原因は、アパレル企業がOEMメーカーや商社に製造を発注しているからです。 この商品の同質化も購買量の低下に影響しています。そんな中、GUなど自社独自の製品を売り出しているブランドは、収益が好調という結果を残しています。 ◆新創造の努力と製品の差別化がビジネスチャンス ライフスタイルと購買志向の変化からみえる、モノからサービスへの消費構造変革が起きている時代に、モノでどのようにライフスタイルの提案ができるかが重要となってくるでしょう。 また爆買いの収拾の裏で、中国人による中国向けの個人輸出(仲介人)がでてきており、流通には、まだまだビジネスチャンスが隠れています。 こうした消費構造の変化が起きている中で、必要なことは、「創造の努力」と「製品の差別化」であり、それがビジネスチャンスとなっていきます。 日本の経営者は、中国の爆買いの収束に敗けることなく、創造性を磨き努力をしていくことが大切です。 ※参考資料 みなと銀行グループ (株)みなとコンサルティング「【調査】消費構造の変化 ~モノからサービスへ~」 日経ビジネス10月3日号 ↓↓政策発表会のお知らせ↓↓ ■「第5期生ライフワーク、第6期生個別政策発表会」 日時:11月5日(土)13時~17時 会場:東京正心館 東京都港区高輪 2-1-17 (地下鉄泉岳寺駅A2出口より徒歩約3分) 最新情報はHS政経塾Facebookでご確認ください。 https://www.facebook.com/hsseikei/ 日本林業の再出発に向けて 2016.10.08 幸福実現党 兵庫県本部副代表 みなと 侑子 ◆外資買収による水源地問題から考える日本林業 外国人や外国人資本による水源地買収が問題になって久しくなります。 首相が衆議院予算委員会において「政府としても大変重要な問題であると考える」と発言し、対応を検討しているといいます。 この問題はすでに多くの指摘がなされてきたが、対応が後手後手になっており、具体的な対策がない点、省庁間の連携の問題などが挙げられています。 北海道では、中国資本や中国資本の影がある日本企業が広大な土地や森林を買収しています。中には水源地を抱える270haに及ぶ森林地帯もあるそうです。 しかし、なぜ日本人が土地や森林を手放すのでしょうか。先祖代々の土地を手放したがる日本人は少ないはずです。 この問題の根本には、日本林業が抱える問題があるのかもしれません。 ◆日本林業の現状 日本の国土面積のうち、森林は67%を占める。森林といえば水源地のような場所を想像するが、実際はそうではありません。 日本の森林のうちの40%にあたる約1000万haはスギやヒノキ、カラマツが植林された地です。 戦後、日本人は森林を大規模に伐採し、そして植林でした。 1955年の時点では、スギ1㎥で雇用できる作業員数は11.8人でした。そのため、1日に概ね12人を雇うことができ、林業は成り立ったのです。 しかしこの後、人件費が上がり、国産材は急速に輸入材にとって代わりました。 新築住宅の減少に加えて、大手住宅メーカーの台頭により木材住宅が激減した結果、私たちが木を使う機会もぐっと減ったのです。 その結果、50年後の2004年の時点では0.3人しか雇えなくなった。山の資産価値は50年前に比べて、40分の1になってしまいました。 そうなると、山に手入れに入る人は激減、木は切り出されなくなります。 人の手が入らない場所は、密植された針葉樹の「死の森」となってしまいます。 光が林床に当たらず、真っ暗なのはもちろん、草も生えていない。すると餌を求める虫も、それらを狙う動物もいない。そのような中で木々は、何とか子孫を残そうと必死に花粉を飛ばしています。 ◆解決への道のりを探して 大企業や大規模林業家の所有する森林では、世界の林業国から学び、生産性を高め、付加価値を高めた木を市場に供給しようと努力しています。この知恵に学び、山の価値を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。 一つには、森林管理のための徹底的なコストダウンと共に効率化を進めることです。 政府の補助金制度も存在しますが、従来は働いた人数分に対して補助金がでていたため、人手をかけないようにするための合理化を行えば、補助金が少なくなるという矛盾がありました。 現在では合理化や木材生産のための努力を行えばメリットがでる形となりましたが、林業においては他の業界で当たり前に行われていたことが行われていなかったのです。 日本では経営が重要視されていませんが、ヨーロッパに存在する森林専門大学では林業経済学、森林政策をはじめさまざまな学問を3年間学び、専門性と学術性をもつ森林官が数多く存在しています。 これからは、日本でも経営の視点を持ち、広大な森林を管理する林業家が求められます。 もう一つは、実際に木が適正価格で売れるようにすることです。 現在、ある程度の規模を擁する林業家でも、その平均収入はわずか26万円です。そのためほとんどの人が兼業を行っています。ビジネスとして成り立たなければ、林業家の成り手は出てきません。 国産材の使用が推進されていますが、市場に木が溢れればいいというものではありません。 需要以上に供給がすすめば、木の値段が暴落し、林業家にダメージを与えます。新たな需要を作り出していくことが求められているのです。 例えば木の割り箸は環境に優しくないということで、プラスチックのマイ箸に変えた人もいるかもしれません。しかし真相はその逆で、割り箸ほど林業家を助けた商品はありません。 割り箸のために木を切っているのではなく、他の木を大きくするために切らないといけない間伐材を用いて作られるのが割り箸です。 林業にとってはコストパフォーマンスに優れた商品で、その需要がなくなれば間伐材も行き場がなくなり、山に放置されかねません。このように間違ったエコ思想には、注意が必要です。 「日本書紀」では、スサノオノミコトの毛を抜き、地面に挿したところ木が生えてきたとされています。日本中にある山や木、森林は神様からの贈り物です。 これらをどう活用し、さらに100年後に残していくか。日本の林業はこれからが勝負です。 国家管理型の農政から脱却し、攻めの農業で市場開拓を! 2016.10.04 幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生 油井哲史(ゆい てつし) ◆農家の「収入保険制度」に向けた議論を開始 政府・与党は、環太平洋連携協定(TPP)対策の一環として、農家向けの「収入保険制度」に関する議論を開始しました。TPPが発効すれば、安い輸入農産物に押されて農産品の値下がりが懸念されます。 価格下落に伴う農家の収入減少を保険で補う仕組みの検討を進め、2017年の通常国会に関連法案を提出します。 農林水産省が示した収入保険制度は、年収が過去5年間の平均より1割以上、下回った場合、下回った分の9割を保険金などで補償するものです。 現在、自然災害による収穫量の減少に伴う農家の補償制度は存在しますが、今回の特徴として自然災害に加えて市況の変動による値下がりで収入が減った場合も対象としています。 ◆国家管理型の農政が農業衰退の原因 このような農家を保護する政策は、日本の農業を弱らせ、政府が掲げる「攻めの農業」に逆行する選択です。これまでの国家管理型の農業政策が日本農業の衰退を招いてきました。 国家主導の保護政策として輸入調整措置が行われています。TPPでも農林水産物の多くの関税が撤廃に向け合意されましたが、国内への影響が大きい5項目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の原料)では594品目のうち71%に当たる424品目が関税撤廃の対象外として守られました。 例えば、日本の農業を代表するコメについては、キログラムあたりの関税は341円で、国産米価の200円をはるかに上回っています。関税を通して、安いコメの流入を阻止し、農家を守っています。 また、減反政策を通して、日本のコメの生産量は国家に管理されています。 国がコメの供給量を決めて、都道府県へ生産数量を配分し、各農家に作付面積を割り当てます。この制度に従うと農家は様々なメリットが得られ、補助金も支給されます。自由競争を避けて、生産調整を通じてコメの価格をコントロールしており、市場原理が働いていません。 さらに、構造政策として農地法により、農業への新規参入を阻み、農家を守ってきました。 農地はその耕作者自らが所有することが最適であるという自作農主義の理念に立脚し、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ることを目的として、農地の所有や利用関係の仕組みを定めました。 これが農地の流動性を著しく妨げ、農業の世襲制度を固定化させました。1952年に制定され、その後、規制緩和の流れを受け、2000年に改正農地法が成立。一定の条件で株式会社の農業参加の道は開いたが、多くの規制がいまだに残っています。 国家管理の農政は、非効率な農業を招き、農業を衰退させました。 農業経営体の耕地面積でみると1ヘクタール未満の農業経営体は93万体で全体の56%です。 さらに、規模も小さいために年間の販売金額が100万円にも満たない経営体が全体の59%にも及んでいます(農林水産省/2010年農林業センサスより)。農業従事者の減少と高齢化も深刻な問題です。 ◆守りの農業で日本は低輸出国に 国家主導の日本農業は、世界の潮流とは違う選択をして、「攻め」と「守り」の判断を誤り、国益を損ねてきました。 1970年前後、先進国は農産物過剰の問題に直面していました。 肥料の投入や農業機械の導入によって生産技術が向上し、日本国内ではコメの生産性が飛躍的に伸びるとともに、食事の欧風化によってコメ離れが進んでいきました。 本格的にコメの生産調整(減反)を始めたのも、この頃です。世界はそれらの問題に対し、開発途上国への援助や輸出を進め、市場開拓という判断をしました。 日本は「余ったら生産調整」、先進国は「余ったら市場開拓」。この結果は農産物輸出量としてはっきり表れており、現在、先進国の多くは輸出大国となり、日本は世界57位の低輸出国です。 ◆国家管理型の農政からの転換を 日本の農業は時代の変化の中で大きな岐路にあります。 衰退の一途をたどる一方で、農業をビジネスとして捉えて「攻めの農業」を牽引している農業経営者は増加しています。 彼らは国の保護に頼らずに、農業を流通やサービス業にまでビジネスの幅を広げて、未来の農業モデルを示しています。 国家は、これまでの管理型の農政ではなく、農業経営者とともに新しい農業政策のあり方を提示するべきです。そのために農業の自由性を阻む要因を取り除いていくことです。 減反の廃止や農業への参入障壁の撤廃、農業振興を目指す農協改革を通して、魅力あふれる日本の農業を構築していくことが求められています。 すべてを表示する « Previous 1 … 29 30 31 32 33 … 78 Next »