Home/ 経済 経済 シンガポールとの比較で見える日本医療の問題点 2017.09.12 シンガポールとの比較で見える日本医療の問題点 幸福実現党・岡山県本部代表 たなべ雄治 ◆忍び寄る医療保険制度の危機 私たちが診療所や病院で診察を受けると、自己負担は3割です。 残りの7割は保険から支払われるはずなのですが全体としては4割分しか賄えておらず、あとの3割は税金から支払われています。 これが後期高齢者医療制度(75歳以上)になると自己負担は1割で、残りの9割は保険料と税金です。 その保険料も、現役世代が加入する健康保険組合などの拠出金に支えられています。 健康保険組合連合会(健保連)が9月8日に発表した報告によると、2025年には健康保険組合の通常の保険給付支出を、後期高齢者医療制度への拠出金が上回るとの試算です。 この拠出金の負担が大きすぎて、多くの健康保険組合が解散するのではないかという懸念を表明しています。 (健保連「平成28年度健保組合決算見込の概要」より) 健保連はこの報告の中で、拠出金負担の軽減や高齢者医療費の抑制を求めています。 もはや抜本的な改革が不可欠ですが、どうすべきでしょうか。 他国の事例の中にヒントを見つけました。シンガポールです。 ◆シンガポールの病院 シンガポールの医療は、日本・欧州型の「社会保障」という考え方ではなく、アメリカ型の「サービス業」として捉えられています。 しかし医療費が高騰しているアメリカとは異なり、安価な医療も存在しています。 シンガポールの医療制度が、ローコストの公立病院と高品質の民間病院の二階建て構造になっているからです。 公立病院は包括医療制度(DPC。治療法ではなく症状で医療費が決まる制度。)であり、過剰医療は皆無ですが、むしろ淡泊すぎる医療が不満にはなっています。 一方の民間病院は、出来高制の自由診療で、競争原理の中でふんだんなサービスがなされています。 なおシンガポール国内の経済格差は大きく、民間病院を利用するのは2割の富裕層で、8割の庶民は公立病院を使っています。 ◆シンガポールの医療保険 保険制度にも見るべきものがあります。 国民皆保険ではなく、強制貯蓄制度による積立金(医療については「メディセーブ」口座)の中から、医療費や保険料を賄っています。 (これらの積み立ては、医療、年金、介護、教育、投資など、国が認める用途に限って引き出すことができる。) 医療保険(メディシールド)には、民間保険のような免責金額や生涯支給額上限があります。 基本的な医療支出はメディセーブと自費で賄われており、医療に対する国家支出は低く抑えられています。医療支出が財政赤字の主要因の一つになっている日本とは大違いです。 ◆シンガポールの医療の考え方 シンガポール保健省は、「個人責任」「地域互助」「政府による間接的援助」という3方針を明確に打ち出しています。 「自助努力」を基本原理にしていて、「収入に応じた医療を」という考え方です。 また、高齢者ほど自己負担が増えていく制度であるため、高齢者医療は家族が支えています。 「誰にでも平等な医療を」という日本とは大きく異なります。 シンガポールが開発独裁だから成り立つ考え方だという主張もありますが、大赤字を出してまで平等な医療を維持することが本当に正しいのか、考えるべき時でしょう。 ◆日本の医療に立ち返ってみると 私たちは、3割負担を良いことに、税金が支える保険診療を使い過ぎているのではないでしょうか。 医療経営の立場では、顧客の負担が3割だけで、残りを保険と税金で補てんしてもらって10割稼げるわけで、こんなおいしい商売はありません。過剰医療にもなるわけです。 保険診療は、使えば使うほど財政赤字が膨らみます。 保険の利用を抑制する動機付けが急務です。 保険を使わなかった人へのキャッシュバックという方法だってあります。 しかし、現政権にはこれが出来ません。 大票田である日本医師会の「ご意向」により、あるいは「忖度」によって、保険診療を減らす改革には手を出せません。これが今の政権与党です。 政権を維持するために、日本の社会保障制度が食い物にされ、このままだと国家が緩やかに滅んでいくわけで、ひとことで言うとシロアリ政権です。 医療分野に、セーフティーネットは残しつつ市場原理を取り入れることは可能です。 公定価格と規制を無くせば、シンガポール同様に、医療が成長産業として国家の発展を牽引してくれるでしょう。 いつまでも特定政党の票田確保のために、防衛費の何倍もの社会保障費が垂れ流される現状にストップをかけようではありませんか。 (参考文献) 「アジアの医療保障制度」井伊雅子編 アベノミクスの「成果」に疑問を呈す 2017.09.07 アベノミクスの「成果」に疑問を呈す 幸福実現党政務調査会・成長戦略部会部会長・HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真 ◆2017年4-6月期GDPの発表 内閣府は8月14日に2017年4-6月期の総生産(GDP)を発表し、実質成長率が前期(1-3月)比で1.0%増えて6四半期連続のプラス成長になったことを明らかにしました。 しかし、アベノミクスによる「景気回復」に「実感」が伴っていないというのも実際のところです。当稿では、アベノミクスの「成果」について疑問を呈して参ります。 ◆リーマン・ショック前の水準に戻ったに過ぎない、名目GDPの水準 今回、「6四半期連続のプラス成長」となりましたが、この間の成長率は極めて低い水準に留まっています。 第2次安倍内閣時において、確かに回復基調を示してはいますが、その速度は極めて緩やかで、GDPもようやくリーマン・ショック前の水準に戻ったにすぎません。 安倍内閣は4年半かけて、ゆっくり「回復」させたにすぎず、「経済成長」を達成しているわけではないのです。 2014年の5%から8%への消費増税などにより、景気回復が「人為的」に遅れたことを問題視すべきではないでしょうか。 また、この度の4-6月期のGDP速報(1次速報値)では、実質GDPの成長率は前期比1.0%増(年率換算4.0%増)を記録したものの、今回の数値に寄与した個人消費の伸びについては、リーマン・ショックの後に景気対策として打ち出された家電エコ・ポイント制度によって購入された白物家電の買い替え需要による影響や、前年度補正予算の執行による効果が大きいとされています。 したがって、今回発表された比較的高い成長率が、今後も持続するとは限りません(*2)。 さらに、有効求人倍率は、43年5カ月ぶりの高水準(2012年12月0.83倍⇒2017年7月1.52倍)にあるとされていますが、その理由として、団塊世代の大量退職に伴い、構造的な人手不足が続いていることが指摘できます(*3)。 パートやアルバイトなど非正規雇用の賃金は上昇しているものの、正規雇用含め、就業者全体の賃金は上昇トレンドにあるとは言い難い現状にあります(*4)。 *1 デフレ期には、統計的に加工された「実質GDP」ではなく、所得の実額を反映している「名目GDP」が生活者の「実感」に近い。ゆえに、「デフレ脱却」を議論する際には「名目GDP」の水準がどれだけ上昇したかに注目しなければならない。 *2 茂木敏充経済再生担当大臣は、8月14日の記者会見で「消費が完全に回復したかというと、力強さに欠けている面も残っている」との認識を示している。 *3 ブルームバーグ2017年5月30日付「有効求人倍率43年ぶり高水準、株式市場で小売り株期待の声―総賃金伸び」より *4 ニューズウィーク日本版2017年8月17日付「雇用が回復しても賃金が上がらない理由」より ◆デフレ脱却はなお道半ば 日銀は2%の物価上昇率目標を掲げ、マイナス金利を含めた金融緩和政策を実施しています。 安倍政権として、金融政策や財政政策、成長戦略の政策パッケージでデフレ脱却を目指しているものの、(第二次)政権発足後4年半たった今もなお、道半ばです。 消費者物価指数の値(*5)を見ると、2014年には2%以上を記録していますが、これは単に消費税の増税分の物価上昇に過ぎません。その後、2015年に急落し、2016年には総合指数、生鮮食品を除く総合指数でマイナスを記録しています。 また、月次ベースで見ると、2017年7月に、0.5%以下の値をとっています。 尚、消費者物価指数は、実際の値より、1%ほど上振れる傾向にあるとする指摘もあります。したがって、1%未満のインフレ率が観察されたとしても、実際にはデフレ脱却が果たされたとは言い切れないでしょう。 そして、イオン(*6)やセブン・イレブン(*7)などプライス・リーダーシップを持つ企業が軒並み値下げを行っており、その他にも家具大手のイケア(*8)なども値下げを敢行しています。 デフレとは、物価が下がっていく中、所得が減少していき、「国民が貧しくなっていく現象」のことを言います。物価の低下が企業収益の減少を招いて賃金は減少。そして国民の所得の低下により消費が抑えられ、さらにモノの値段が低下していきます(デフレ・スパイラル)。 安倍政権は「アベノミクスの成果」を強調していますが、デフレからの脱却は果たされておらず、その行き詰まりは明らかです。 *5 総務省統計局HP(http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm)より *6 日本経済新聞2017年8月23日付「イオンまた値下げ『インフレ目標で価格決めない』」より *7 朝日新聞デジタル 2017年3月29日付「セブンイレブン、日用雑貨61品値下げ 最大20%オフ」より *8 日本経済新聞2017年8月24日付「イケア、890品を2割値下げ」より ◆明確な「国家ビジョン」や確かな「成長戦略」に欠けるアベノミクス 経済水準が、リーマン・ショック前のピーク時に回復後、どれほど伸びるかが重要ですが、現政権には「国家ビジョン」に当たるものが必ずしも明確ではなく、今後、「力強さ」のある成長を十分に期待することができません。 デフレからの脱却、長期的な成長を実現するためにも、消費減税や法人減税などにより需要喚起を行うと共に、「国家百年の計」として、リニア新幹線、宇宙、防衛産業など未来産業に対する重点的な投資を国として行うべきです。企業による技術革新を推し進める上でも、研究開発促進税制の拡充も図っていくべきでしょう。 また、若者は、「生涯所得が少なくなることへの不安が根強い(*9)」と言われています。幸福実現党は、明確な「国家ビジョン」を描いて長期にわたる経済成長を実現して経済的不安を払しょくし、将来に希望を持てるような政策パッケージを提示して参ります。 *9 東京新聞2017年8月15日付「GDP年4.0%増なのに景気実感 なぜ薄い? 正社員の賃金低迷 若者に将来不安強く」より IT積極活用による「稼げる農業」の実現に向けて――次世代の大規模トマトハウス栽培 2017.08.05 IT積極活用による「稼げる農業」の実現に向けて――次世代の大規模トマトハウス栽培 薩摩川内市議会議員 松澤力 ◆農業の課題解決に期待されるIT活用 平成27年時点で、基幹的農業従事者の平均年齢は67.0歳となり、65歳以上が占める割合は約64%となっています(参考:農林水産省 統計データ) 。農業従事者を増やしていく取り組みが課題であると同時に、農業の作業効率化や生産性向上、品質のアップも求められています。 農業の課題を解決していくため、現在大規模な農業を実施している事業者を中心に、ITを活用した新たな農業のシステムが注目されています。 ITサービスを活用した農業には、主に以下のような技術が用いられています。 ・インターネットへ繋がるスマートフォン・タブレット等のモバイル端末の普及 ・農業用センサネットワーク技術の進化 ・安価かつ高性能の小型ドローン開発 ・人工知能(AI)関連技術の発達 ・GPSやGISを活用した先進農業機械・技術の普及(参考:AgriTech×農業IT) ITを活用した現在の農業の多くは、上記の技術を1つまたは複数を組み合わせて活用することによって農業の新たなシステムが確立されています。 ◆次世代の大規模トマトハウス栽培 日本の農業の国際競争力が更に求められる中、ITを積極活用したトマト栽培の大規模ハウスが注目されています。 テレビ東京・ガイアの夜明けでも特集された株式会社「兵庫ネクストファーム(兵庫県加西市)」では、合計 約3.6ヘクタールもの大規模ハウスでトマト栽培が実施されています。 ハウスの大きな特徴は、農業先進国オランダにある制御機器メーカーの生育システムを導入している点にあります。 ハウス内外にセンサーを張り巡らせており、日射や風の量を検知して天井などを自動で開閉します。 また、二酸化炭素の発生機も備え、ハウス内濃度をトマトの生育に最適な状態に保ち、給水頻度や肥料の分量などもデータを基に調整することができるようになっています。(参考:神戸新聞NEXT) ◆従来の農業のイメージ転換 IT技術を活用した大規模トマトハウス栽培を運営している「兵庫ネクストファーム」の代表・田中氏は、兵庫ネクストファームに加えて、「サラダボウル(山梨県中央市)」と「アグリビジョン(山梨県北杜市)」、合計3つの農業会社を運営しています。 合計売上は既に10億円を超え、さらに高い目標を掲げて取り組んでいらっしゃいます。(参考:日経ビジネス) 「たくさんの人に農業にチャレンジしてもらいたい」と語る田中氏は、売上だけ大きくても、そこで働く若者が夢を持てなければ、企業として成功することは難しいと考え、社員の待遇面でも、これまで農業のイメージの転換を図っています。 兵庫ネクストファームで働く15人の社員には、ボーナスを夏・冬で合計4カ月分を支給しています。また、アグリビジョンの10人の社員にも夏・冬2回ボーナスを出しています。どちらの農業会社も週休2日制です。 また、サラダボウルでは、天候に左右される度合いが大きい露地栽培のため、週休1日を基本に1カ月に1回連休を設け、さらにオフシーズンにまとめて休みを取得できるように努めています。 農業にチャレンジする人を増やすため、「収入が少ない」「休みが取れない」といった従来の農業イメージを転換する様々な実践をされています。 ◆IT技術を活用した新たな農業の推進 政府から出されている日本再興戦略2016において、「農業のIT化や自動化を可能な限り進めていくことが重要である」と示されるなど、農業のITサービスの普及には日本で進み始めています。 限られた農地で、国際競争力の高い農業を実現するため、日本の技術力を更に農業に活用していく必要があると考えます。 IT技術も活用し、若者にも魅力ある農業の実現に向けて、今後も努力を重ねて参ります。 食料安全保障の要である「種子(たね)」――唐突な種子法の廃止 2017.07.25 食料安全保障の要である「種子(たね)」――唐突な種子法の廃止 幸福実現党 宮城県本部代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) ◆種子法によって多くのブランド米が生まれた コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまちなど様々なブランド米があります。 それらは品種改良によって、おいしさや高い収穫量、病気への強さ、冷害や高温への耐性など生産者や消費者が望む特性を生み出してきました。 昭和に入ってから、コメの品種は国の農業試験場で改良された品種は約400種類ほどあり、都道府県の試験場が改良した品種も300種類以上、これまで700種類以上が開発されてきました。 このなかで300品種程度が現在栽培されています。 これらの優良な種子の生産や普及は「主要農作物種子法(種子法)」によって法的に管理されてきました。主要穀物の技術、品種改良に関する基本法です。 種子は基礎的な農業資源ですが、種子法によって、稲、麦、大豆などを対象にし、都道府県が農業試験場で地域に合う品種の研究開発を進め、奨励品種を指定。原種や、その元となる原原種を生産してきました。 近年は産地間競争が進み、山形県の「つや姫」や北海道の「ゆめぴりか」などの人気銘柄も開発されています。 一般的に一つの品種を開発するのには10年前後の期間を要し、公的機関のたゆまぬ努力でブランド米は誕生しています。 ◆唐突過ぎる種子法の廃止 その種子法の廃止が、昨年の10月に規制改革推進会議の農業ワーキンググループ(WG)で提起され、今年の2月に閣議決定、4月には廃止法が成立。わずか半年ほどの間で可決しました。 種子法の廃止に関しての議論は、十分になされているとは言えません。 種子法廃止の提起がされてから今年1月の農業WGで一度議論され、農業機械化促進法案と種子法廃止法案と合わせた2法案は、衆院農林水産委員会では一般質疑を5時間、参院農林水産委員会で一般質疑を5時間、参考人質疑を2時間行っただけで可決されました。唐突感は否めません。 ◆種子法の廃止は民間参入の促進 廃止の理由は、民間参入の促進にあります。 農業WGでは「地方公共団体中心のシステムで、民意の品種開発の意欲を阻害している」と指摘。民間が開発して奨励品種となるコメが少なく、都道府県が主導する奨励品種のあり方が問題視されました。 農林水産省は種子法の廃止によって民間活力を最大限に活用することを提起していますが、優良な種子の生産・普及に国や都道府県が責任を持つ体制を廃止しなければならない理由について詳しい説明はありません。 そもそも、民間参入は1986年に種子法の改正を行い、種子の生産流通に制限付きながら民間への門戸を開いており、それ以降、「みつひかり」などの民間が開発したコメの品種が出ています。 民間業者の参入が少ないのは、地域ごとの地域農業が行われており、その土地に合った特色による多様で品質の高い品種を栽培しているからです。 種子に対する民間参入を促すとしても、法の見直しや改正など方法は様々ですが、突然の廃止で、多くの疑問や懸念の声が出ています。 ◆種子法の廃止による懸念点 種子法の廃止で、都道府県の生産義務の根拠法がなくなり、予算や研究体制が縮小するのではないかという懸念。 さらに公的機関が持つ素材や施設が民間に提供されると、多くの税金で培われてきた国民共有の知的財産が海外流出し、多国籍企業による種子独占を招くのではないかという危険性が指摘されています。 地域振興のための流通量が少ない各地の銘柄米は、存続の危機に直面することも否めません。 農業の活性化のために、民間のノウハウの活用や官民連携は進めていくべきです。 しかしながら、稲などの品種開発や普及を公的機関が責任を負うことで、日本の食糧安全保障の要である「種」を守り、単純に「ビジネス化」することなく、農家に安価で優良な種を安定的に提供する役割を担ってきました。 政府は種子法の廃止で都道府県の種子生産が後退することへの懸念を踏まえ、種子生産の予算確保や外資による種子独占の防止に努めることなどを求める付帯決議を採択しています。 これらを徹底する方針を示していますが、十分な議論がなされないまま、なぜ法を廃止するのか、廃止の是非を広く問う必要がありました。 これまでに品質改良された種は、厳格に品質管理され、国民はおいしいコメが食べることができました。次の世代にも、しっかりとつないでいくために、種の管理は責任をもって進めていくべきです。 もちろん、農業を魅力ある産業とするため、自由化や民間参入を促して、国際競争力を高めていくことが求められますが、食料安全保障の点から、この規制緩和は結論を急ぎ過ぎたと言わざるを得ません。 今後の動向を見守り、種子行政に関する提言を行ってまいります。 【参考】 毎日新聞 「種子法廃止に広がる不安」 2017年4月21日 農業協同組合新聞 「【種子法廃止】種子の自給は農民の自立」 2017年3月30日 日本農業新聞 「種子法 廃止法案を可決 予算確保へ付帯決議 参院農水委」 2017年4月14日 日本の種子(たね)を守る有志の会 「種子(たね)を守る会院内集会報告」 2017年4月3日 三橋貴明の「新」経世済民新聞 「すべての日本人よ、主要農作物種子法(モンサント法)に反対せよ」 2017年4月7日 農林水産省 aff 2011年11月号 水素社会に向けて――課題と展望、そして光合成 2017.07.22 水素社会に向けて――課題と展望、そして光合成 幸福実現党茨城県本部代表・茨城第一選挙区支部長・政務調査会経済部会長 川辺賢一 ◆水素の魅力 水素は、“究極のクリーン・エネルギー”として90年代から注目を集め、2014年に政府のエネルギー基本計画で方針が示され、同年12月にはトヨタが水素で作った電気で走る燃料電池車としてMIRAI(ミライ)の販売を開始し、水素社会への期待は日に日に高まっております。 最近では、ホンダの燃料電池車クラリティをタクシーとして導入するとして帝都自動車交通が発表(7/4)。 またトヨタや東芝、岩谷産業、神奈川県等が水素社会に向けた環境省委託の実証実験に参加すると発表(7/12)。 内容は、風力で発電した電力で水素を作り、それを貯蔵・圧縮してトラックで運び、近隣の倉庫や工場で稼働する燃料電池フォークリフトに供給するというプロジェクトです。 では水素の魅力と何でしょうか。 例えば、水素と酸素の結合により発電する燃料電池では、発電の際に熱と水しか排出されず、有害ガスや温室効果のあるCO2を放出しないため、クリーンなのです。 クリーンな車として先行する電気自動車は充電に時間がかかる上、満充電でも航続距離が限られるところ、燃料電池車は数分で水素を補給でき、航続距離も比較的長いのです。 また発電の際に同時に放出される熱も利用して給湯を行うエネファーム(家庭用燃料電池)の利用も進んでおります。 しかし何より水素の魅力は、例えば水が地球上に無尽蔵に存在するように、宇宙一多く存在すると言われる水素原子(H)からなる物質である点です。 水素を自由に利用できる社会の実現は、日本にとってエネルギー安全保障上も悲願なのです。 ◆課題 ただし現状、水素社会に向けては多くの課題もあります。 まずは輸送や貯蔵の問題です。 水素はかさばるため、ガソリンならタンクローリーで20〜25t運べるのに、水素は20気圧に圧縮しても0.06t程度しか運べません。 また液化して運ぶ場合、蒸発損が多く、天然ガス・タンカーで蒸発損が1日0.6%のところ、液体水素はその5倍の3%以上だとされます。 貯蔵に関しても同様の困難が伴い、水素社会実現のためには、より高度な断熱材の開発等、周辺技術の開発も同時に進めなければなりません。 しかし最も重要な問題は、水素の製造です。 現状、最も経済的な水素製造方法は、天然ガスの改質ですが、水素を作るのに天然ガスを使うなら、天然ガスをそのまま使った方が良いでしょう。 また、水の電気分解という方法もありますが、これも水から水素を取り出すのに、電気エネルギーを要するので非効率です。 他には、石炭を加熱し、その際、発生するガスに含まれる水素を利用する方法もあり、今まで需要が少なかった低品位炭を利用する点で優れていますが、化石燃料由来のエネルギーを投入しなければならないことには変わりありません。 こうした点から米テスラ・モーターズのイーロン・マスク氏は「燃料電池車は馬鹿げている」とし、太陽光で発電し、電気自動車を走らせるのが理想だと語ります。 ◆水素を自由に取り出す技術の開発を それでも私たちは水素の夢を諦めるべきではありません。 水素技術の革新は、エネルギーにとどまらず、私たちの生活に欠かせない化学工業においても革命的技術となるからです。 例えば水素と一酸化炭素の混合ガスである合成ガスを反応させれば、ガソリンを始め、オレフィンやメタノール、またそれらの誘導により、化学製品や建材、あるいは窒素との結合で化学肥料も作れるのです。 私たちが水素を自由に取り出す技術を手にした時、いわば水素はあらゆる物質・エネルギーに変換可能な通貨となるのです。 そこで注目すべきは、植物の光合成であり、それを人工的に行う人口光合成の技術です。 植物は太陽光と水から水素と酸素を作り、その水素と大気中の二酸化炭素から炭水化物を作ります。 この光合成を人工的に行う技術こそ、水から自由に水素を取り出し、水素をエネルギーに、または、あらゆる物資に変換する究極の循環型エネルギー社会=水素社会を創る鍵なのです。 そのためには、燃料電池車の普及や水素ステーションの整備のみならず、人口光合成を始め、水素の製造方法に関して、基礎研究の助成を推進すべきです。 こうした未来産業の種を官民で育て、予算の代わりに報告義務で研究者を縛るのではなく、自由に研究できる環境を整えるべきなのです。 オバマケアと医療保険 2017.07.08 オバマケアと医療保険 幸福実現党・岡山県本部代表 たなべ雄治 ◆オバマケアの廃止は決まらず アメリカでは、医療保険制度改革法(オバマケア)廃止に向けての共和党の代替法案が話題となっています。 オバマケアの廃止は、トランプ大統領の公約の目玉の一つでした。 5月に、オバマケアの代替法案は僅差で米下院を通過しました。 ところが先月末、上院での過半数獲得が見込めず採決が延期となりました。 今、アメリカの医療サービスに何が起きているのでしょうか。 ◆アメリカの医療制度 アメリカでは、医療保険制度の大部分を民間に任せています。先進国では例外的です。 公的医療保険制度もあります。高齢者・障害者向けの「メディケア」と、低所得者向けの「メディケイド」で、人口の3分の1の方がこの制度に加入しています。 上記以外は民間保険であり、多くの米国民は雇用先を通じて民間医療保険に加入しています。 ところがアメリカの医療費が非常に高いこともあって、民間医療保険の保険料も高額になっています。 保険料が払えない中低所得者などを中心に無保険者は10%を超えており、医療費の支払いに起因する破産などの問題がおきていました。 オバマケアとは、上述の問題を解決すべく、国民皆保険を目指して2014年から導入された医療保険制度です。 国民には医療保険への加入を義務付けて、民間保険会社には国民の保険加入を断れないなどの規制を設け、財政支援も加えました。併せて、メディケイドの条件を広げ、加入しやすくしました。 こうすれば、確かに無保険者は減っていくはずです。 ◆オバマケアの評価 では、オバマケアは成功したのでしょうか。 確かに、医療保険の加入率は上がりました。 一方で、保険料が平均25%も値上がりし、オバマケアを提供する保険会社が相次いで撤退するなど、見通しの明るいものではありません。 その原因は、公営の社会保険ではなく、民間保険だからです。 民間保険の場合、リスクの高い人には高い保険料を求めますし、場合によっては加入を断ることもできます。 ところがオバマケアの規制により、リスクの高い国民の加入も断れなくなったため、保険給付が増え、その分を保険料の引き上げで補う必要が出てきたわけです。 さらに、収益を見込めない保険会社が撤退し始めました。 2018年には全米の約半数の州で、オバマケアの保険商品を提供する保険会社が1社以下になるという予想も出ています。 1社だと競争原理が働かず、保険料のさらなる値上がりも懸念されます。 オバマケアは成功とは言えません。 ◆オバマケアの代替法案 対して、共和党によるオバマケア代替法案とは、以下のようなものです。 ・国民への加入の義務付けを外す。 ・保険会社は、リスクの高い人の加入を断ることができる。保険内容に関する規制も緩和する。 ・拡大したメディケイドは、段階的に元に戻していく。 完全にオバマケア以前に戻すわけではありませんが、かなりの部分で規制が緩和されることになりそうです。 しかしこの代替法案が可決されると、再び無保険者が増加していくという分析があります。 上院では共和党の中にも代替法案に反対する議員が現れ、冒頭で述べた採決延期につながりました。 ◆医療保険のあり方 多くの先進諸国で、医療を含む社会保障が財政を圧迫しています。 医療のように、自由化して市場原理に任せればよいと単純には言えない分野が存在します。 まだどの国も、医療保険のあるべき姿を見つけ切れていないのではないでしょうか。 これからも様々な社会実験をしていくことになるでしょうが、方向性を示すことは可能だと思います。 それは、「公共の資源を食いつぶさない」という「インセンティブ(動機)」を与えることです。 日本では安くて高品質な医療サービスがいつでも受けられます。 しかし、私たちが窓口で支払う診察料の2倍以上の額が、国民の税金から支払われていることを忘れてはなりません。(自己負担3割) 「保険診療を無駄遣いしない」という「インセンティブ」が望まれます。 その一例として、岡山県総社市の「総社市国民健康保険 健康推進奨励金制度(総社市国保「健康で 1万円キャッシュバック」)」を挙げます。 一年間保険診療を使わず、かつ健康診断を受けている世帯に対して、1万円を還付するという制度です。 また、夕張市のような事例もあります。 http://hrp-newsfile.jp/2017/3209/ あるいは、保険診療の利用額が少ない人に、年金給付を増額して還付する方法も考えられます。これらは、生活習慣改善へのインセンティブにもなることでしょう。 正しいインセンティブを与えつつ、効率化は市場原理にゆだねる。これが医療保険のあるべき姿だと考えます。 都市開発の新しいフロンティア「空中権」【その1】 2017.07.06 都市開発の新しいフロンティア「空中権」【その1】 幸福実現党政務調査会 都市計画・インフラ部会長 曽我周作 ◆「容積移転」「空中権」とは アメリカでは「空中権」という制度があり、「土地の上部空間を水平的に区画して建築的に利用する権利」とされ、土地の所有権の構成要素の一つとされています。 都心においては、土地の高度利用の観点からできるだけ収益性をたかめる商業施設や事務所ビルを建設しようという力が働きます。 しかし、容積率の制限が存在し、もっと容積率の高い建物を建てたいという需要があります。 一方、ある土地に対して容積率を制限限度まで利用して建築物を建てている場所ばかりではありません。 また、将来にわたっても容積率を余らせることが予見される場所があります。例えば歴史的建造物や寺院、また公園などもそうです。 開発競争の中で神社仏閣や歴史的建造物、オープンスペースを確保する公園、また美術館など文化施設が失われるのは町にとっても損失ですし、守り、残さなければならないものがあります。 未利用の容積率を開発権とみなして移転できるようにするということが発生するのは、「おなじ都心地域のなかにあっても未利用の容積率を残したまま新たな建築更新の必要のない地権者がいる一方で新たに建替えの希望のある地権者が基準容積以上の容積を得たいと考える場合」があるということ、「民間事業の側からは都心の土地利用の有効・高度利用の需要があり、行政からは都心の町の魅力を高める必要性」があるからであるといわれます。(『建築空間の容積移転とその活用』p9より) 容積率を譲り渡したい側と、容積率を譲り受けたい側が、それを取引できるようにするということが行われるのが容積移転であり、「空中権」の取引などと表現されます。 ◆日本とアメリカの容積移転制度 ・アメリカのTDR制度 アメリカのTDR(Transferable Development Rights)制度は1961年にG.ロイドによって提唱されたといわれ、その理念は以下のように指摘されています。 「彼は、都市の開発においては開発密度の調整が必要であり、一定以上のオープンスペースを確保しながら開発は進められるべきであるとし、オープンスペースの土地所有者は、高密度開発が認められている地区の土地所有者に開発権を譲渡し、高密度開発地区の土地所有者はこの開発権を購入しなければならないと提案した。この考え方の中には、都市開発を推進していくうえで、オープンスペースの確保が必要であり、このオープンスペースを強制的に確保させるためには、財産権の補償としての開発権の移転を土地所有者に与えようとする姿勢が見られる。」 つまり、この制度の性質として、開発が規制された土地の所有者に対しての財産保障と、それによってオープンスペースを確保しようという狙いが、まず一つあきらかです。 現在、このTDRは2008年時点で186の自治体で採用されており、オープンスペースの確保の他に、歴史的建築物の保全、農地保護、森林保護、環境保護、低所得者用住宅確保などの目的も果たしています。 また、場所によってはCO2削減などの目標も含まれているように、公益性の目的のために用いられている面があります。 この制度においては、空中権の出し側と、受け側の需要が同時にあることが必要であったため、TDR bankというものが設けられるようになりました。 例えばニューヨークのサウスストリート・シーポート特別地区は歴史的建築物の保全と再開発の推進を目的として地区として位置づけられ、ここでは歴史的建築物の所有者が未利用容積を開発権として、受け地に直接売却するか、仲介者を介することもできます。 この仲介者にあたるのがTDRbankであり、ニューヨーク商業銀行の連合体で組成されました。 また、アメリカでは空中権が土地所有権の構成要素とみなされています。条例で容積率移転の事実を公示することが義務付けられています。(『都市再生を目指して』p17より) 一方、日本では先ほど指摘したように、未利用分の容積が所有権の対象となっていません。 そのため、空中権の取引を制度的に確立するにあたっては第一に権利関係の法的確立が課題になります。 (「法的性格としては、直接土地に及ばない不安定な権利であること、当事者間でのみ有効な債権的権利であること、物権としての公示方法がない」『都市再生を目指して』p17より) (つづく) 「坂の上の雲」を超えた国家ビジョンを目指せ 2017.07.04 「坂の上の雲」を超えた国家ビジョンを目指せ HS政経塾第6期生 坂本麻貴 ◆国の税収が減収 日本経済がリーマンショックの影響を受けた2009年から、今年で8年がたちますが、国の2016年の税収が前年度を下回り、55兆5千億円程度となりました。 これは7年ぶりの前年割れで、所得税、消費税、法人税といった税収全体の8割を占める「基幹3税」がそろって減収となっています。 さらに消費税収は2015年度の1兆4千億円を数千億円下回り、これは2014年4月の消費税率引き上げが絡んでおり、経済成長頼みの財政運営は転機をむかえているといいます。(6月30日付日本経済新聞) ◆社会保障の充実を名目に引き上げられた消費税 2014年に消費税率は8%へ引き上げられました。その少し前の民主党政権かで、社会保障の財源のために消費税率をあげるという法案を通し、それをベースに引き上げられ、また2019年からは10%まで引き上げられます。 しかし、高齢化が進む日本において、消費税の税収を社会保障にあてても、今以上に充実していくことは極めて難しいと言わざるを得ません。 そもそも、消費税制を始めて日本に導入した際、当時の竹下登首相は、「景気が回復し、国の借金を返すまでの間導入する」と私たちに約束しています。その年の税収は60兆円ほどでした。 しかし、その後景気はいっこうに回復せず、27年間、一度もこの60兆円の税収を超えたことがないのです。 1997年には5%へ引き上げ、これによってさらに景気は悪化。その後8%に上げたことの影響が、今になって現れてきたといえます。 消費税の増税では、景気は回復しないということがいよいよ明確になってきました。 ◆鍵を握る企業の国内回帰 今回の減収の要因の一つとして、企業のグローバル化についても指摘されています。 日本企業が海外に進出し現地で雇用したりすることで、日本に法人税や所得税が入らず減収したということです。 ここから、海外に進出している企業が、再び日本国内に立地していく必要があり、そのためには大幅な法人税の減税が必要です。 また、企業が魅力に思う人材を教育によってつくっていくことも重要です。 ◆坂の上の雲を超えた国家ビジョン 戦後日本は坂の上の雲を目指して経済成長してきました。それがここ30年は坂を登りきり、下り始めたかのようになってきています。 日本では、経産省を筆頭に日本の技術力に注目し、「モノづくり」を推進してきました。 戦略を階層で考えるというものがありますが、技術力というのは最下層にあたります。 「技術」→「作戦」→「戦略」→「大戦略」→「政策」→「理念・世界観」(奥山真司氏講義より所収)と進むにつれ上の階層になっていきますが、下の階層でどんなに素晴らしくても、より上の階層が強い方が勝ってしまいます。 今、日本には、世界の中でどのような存在なのかという理念や、世界の中でどういうビジョンを持ち、どの方向へ舵を切るのかという世界観が必要です。 幸福実現党のもつ、「より多くの人を幸福にする」という理念や「世界をリードする日本」といったビジョンが必要なのではないでしょうか。 教育の一律無償化は憲法改正に盛り込むべきではない 2017.07.01 教育の一律無償化は憲法改正に盛り込むべきではない 幸福実現党たつの市地区代表 和田みな ◆今年の夏は憲法改正議論が熱い 2020年の憲法改正にむけて、永田町の動きがあわただしくなってきました。 安倍首相は自民党改正案の年内国会提出を目指す意向を示しており、自民党憲法改正推進本部は9月にそのたたき台をまとめたい考えです。 ◆教育の無償化は憲法改正の主要4項目 自民党憲法改正推進本部は、これから、主要4項目を中心に議論を進める方針ですが、その中で、最も各党の合意が取りやすい項目は「教育の無償化」です。 先月、政府がまとめた「骨太の方針」にも「幼児教育・保育の早期無償化」や「高等教育の改革」が盛り込まれる形となりました。 民主党政権時に高校の授業料無償化に反対した自民党としては大きな方向転換ですが、改憲勢力として重要なポジションにある日本維新の会を取り込みたい安倍首相にとって、維新が強く主張する「教育の無償化」が重要な論点となっていることがわかります。 現在、日本国憲法第26条において、義務教育は無償と定められています。また、2010年度からは、高校の授業料についても全額または一部が無償となりました(「高校無償化法」)。 「教育の無償化」議論は、就学前教育や高等教育までこの範囲を拡大しようとするものですが、憲法に明記し、一律に無償化する必要があるのか甚だ疑問です。 ◆高等教育の無償化も問題点 「高等教育の無償化」にはどのような問題点があるのでしょうか。 日本の大学の教育支出に占める私費負担の割合は65%と非常に高く、学生と家族に重い経済的負担が問題であると言われています。 このような現状に対して、日本維新の会などは「無償化は教育の機会均等、少子化対策にも資する」「教育投資は成長戦略である」と主張しています。 一方で、定員割れの私立大学は全体の4割強に達しており、授業料を無料にすれば、無料であることのみを理由に進学する人が増えることが予想できます。 また、学割や様々な学生サービスを利用したいがために、学ぶ意思のない人が進学するケースも懸念されます。 このような学生の増加は、定員割れに苦しむ大学にとっては、非常にありがたい施策であるかもしれませんが税金を支払っている国民にとっては、許せることではありません。 やる気のない学生の授業料を税金で賄うことが、投資として本当に有効であるとは思えません。 本来、大学も他の企業同様、市場原理の下で、学生に必要な教育の質を確保し、競争力を維持できるよう、努力するべきです。そのために、国は授業内容や授業料などを自由に設定できるようにすべきです。 逆に、無償化によって経営状態のよくない大学を国が支援する形になれば、「定員割れ」の大学は努力する必要がなくなり、結果として、大学教育の質の低下を招きます。これでは、意欲のある学生が大学に進学するメリットも薄れてしまうということになりかねません。 ◆就学前教育の無償化 様々に問題がある高等教育の無償化に対して、就学前教育の無償化については、肯定的な意見が多くみられます。 経済学的な観点からは、「年齢が低いほど人的資本投資の社会的収益率が高い」とする、米ノーベル経済学者のJ.ヘックマンの研究を引用し、幼児教育や保育への投資が正当化されてきました。 さらに、社会保障的な視点からは、自民党の小泉進次郎氏などが主張するように、今の時代は「子どもは社会全体で育てるもの」であり、高齢者向けの社会保障費の増加に比べて、子ども向けの施策の少ないアンバランスな構造を是正するために、就学前の子育て支援の必要性が述べられてきました。 しかし、日本の場合、4歳で幼児教育施設に通っている比率は95%であり、すでにほとんどの子供が幼児教育を等しく受けている現状があります。さらに、保育対象の子供たちの内、全国で2万3000人が待機児童となっており、受け入れる器がない状態です。 待機児童問題が解決されない中、就学前教育が無償化されれば、今預ける必要のない子供たちまで、保育園への入園を希望するようになることは明らかです。 そうなれば、更なる保育園不足が問題となる可能性が高く、これによって保育の質の低下も懸念されます。 ◆憲法に教育無償化を盛り込むことは単なるバラマキ どのような家庭環境にある子供にも、教育を受ける機会を保障することは大切ですが、「教育の機会均等」のためというのであれば、教育内容にも議論が及ぶべきではないでしょうか。無償化によって質の低下を招いては意味がありません。 憲法改正には賛成ですが、教育の無償化を書き込むことには反対です。「教育の無償化」を憲法に明記するとなれば、義務教育と同じように、親の収入や子供の数に関係なく、一律に無償化されることになるでしょう。 これは単なるバラマキであり、ポピュリズム政治です。 教育は一律に無償化するのではなく、経済的に苦しい家庭に対しての、保育料や授業料の減免や教育バウチャー制度の導入、奨学金の拡充などで対応すべきです。 給付型奨学金制度に今よりも多くの予算を割き、能力ややる気のある学生を支援することも、無償化より有効な教育投資になると考えます。 夕張市の奇跡――自助の精神が日本を変える 2017.06.20 夕張市の奇跡――自助の精神が日本を変える 幸福実現党・広島第二選挙区支部長 水野善丈 ◆『2025年問題』 皆さんは『2025年問題』をご存知でしょうか。 2025年に日本は、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という「超・超高齢社会」を迎えます。 これが『2025年問題』と言われるものです。 この「超・高齢化社会に伴い増大しつづけるのが社会保障費であります。 現在、日本政府の歳出の多くを占め、約1000兆円ある政府の借金を増やす要因となっているのもこの社会保障費です。 今後、日本で高齢化社会が進む中で、この問題をどう乗り越えていくのかを世界各国は注目しています。 そして、この問題を解決するヒントを北海道の夕張市からご紹介させて頂きたいと思います。 ◆高齢化率が高い夕張市 夕張市は、札幌から60km近く離れた北海道の中心部に近い市で、人口が8593人(5月末時点)である小さな市です。夕張メロンでも有名ですが、2007年に財政破綻し、財政再建団体となった唯一の市でも知られています。 かつて日本有数の産炭地として栄えた市でしたが、炭鉱の閉山や観光開発の失敗も重なり、人口はピーク時(1960年代)の約12万人から激減し、現在では、1万人をきっています。 しかも、夕張市は全国の市で高齢化率が最も高い市でもあり、8593人のうち65歳以上が4301人で人口の48.86%が高齢者となっています。 こうした中で、夕張市では、財政破綻とともに医療崩壊もおきました。 公営の総合病院は財政破綻の同年2007年に公設民営化され、診療所は171床から19床に縮小、市内の病院にはCTやMRIなどの機器はなくなり、救急病院も無くなったため、病院到着まで倍近くかかるようにもなってしまったのです。 これが、2050年の日本の未来を先取りしているともいわれていました。 ◆医療崩壊からの復活 さて、夕張市に残された高齢者は、医療崩壊のせいで、病気に苦しみ、悲惨な目にあっていたのでしょうか。 実は、全くの逆の現象がおきました。お年寄りは元気になり、寿命も延びてしまったのが実際の状況でした。 例えば、日本人の死因上位三疾患(心疾患、肺炎、ガン)の死亡率が、全国で増えている中で、夕張市は下がっています。 実際に、三疾患の標準化死亡比(SMR)は、胃がんであれば、2006年134.2だったのが、医療崩壊後2010年には91.0まで下がり、肺炎については、125.0(2006年)から96.4(2010年)までに低下しています。(週刊日本医事新報「夕張希望の社の奇跡」参照) また、全国的に一人あたりの医療費は増加しておりますが、夕張市の一人あたりの医療費は、2005年に83.9万円から2010年には73.9万円へと減少しています。 このようなことができたことの要因に、夕張市立診療所の前所長で医師の森田洋之氏は、病院があるから安心ではなく、病院に頼ることなく、予防の意識を市民の皆さん一人ひとりが持ち、地域で支え合う温かい風土ができたことを挙げられています。 参考:「医療崩壊のすすめ」(動画) https://www.youtube.com/watch?v=lL8aJE9Xp3Y ◆夕張市の事例から学べること 今回の夕張市の事例は、財政破綻・医療崩壊もした危機の中で、人間が持っている底力の部分や自立した精神こそ社会や自らを良き方向に導くことを教えてくれたものであると思います。 現在の政治は、社会保障を手厚くする代わりに国民から税金を多く徴収するというスタンスで運営を行っています。 一見、国民にとって楽であるから良いように見えますが、「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があるように、実際は、財政赤字は膨れ上がる一方で、増税により使えるお金が少なくなり、個人の選択の自由も無くなっていく地獄の道へと繋がっています。 もちろん、社会保障がいらないわけではなく、自助の精神に立脚したうえで、どうしても逃れられない困難に出くわすことも人生にはあるので、その時に社会保障などのセーフティネットを使えることは大切であります。 しかし、過度な社会保障は、国家財政を崩壊へと導くだけでなく、自由や人間の本来持っている力を喪失させ、堕落させる方向へと導いていくので問題であると考えます。 やはり、超・高齢化社会に向けては、「生涯現役」という理念を掲げ、高齢者も生きがいを持って働いていける社会の環境整備を優先すべきであると考えます。 そこには、個人として、人生を選択できる自由があります。 今回の夕張市の事例は、「超・高齢社会」に突入していくこれからの日本の大きな教訓を与えてくれたものであると思います。 すべてを表示する « Previous 1 … 25 26 27 28 29 … 78 Next »