Home/ 経済 経済 「勇断できる政治」がなければ、インフラ建設は進まない 2019.04.17 「勇断できる政治」がなければ、インフラ建設は進まない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆大事な五輪の輸送路が・・・ 現在、東京では、オリンピックの準備が進められています。 しかし、市場の移転騒動のために工事が遅れ、築地から豊洲に至る道が狭くなってしまいました。 千代田区と江東区をつなぐ「環状2号線」のうち、築地近辺の区間は2車線しかありません。 この区間は、五輪の時には選手村と新国立競技場をつなぐ大事な輸送路になります。 ここは、ようやく昨年11月に開通したのですが、2020年までに全区間で4車線を確保できず、2車線で運用されることになったのです。 (※2022年以降は四車線運用となる) 新橋から築地に行ったり、豊洲から築地に行ったりする時は4車線ですが、築地近辺では2車線なので、ここが輸送のボトルネックになると懸念されています。 ◆空騒ぎの結果、負担は現場に これは、小池都知事が築地市場の移転を遅らせ、「政治劇」にしてしまった結果です。 予定通りに豊洲に移転していれば、築地から豊洲までの道は4車線を確保できたはずだからです。 無駄な政治劇の代償は、結局、工事の進捗の遅れとなって跳ね返ってきました。 遅れたのは、輸送路の開通だけではありません。 築地の跡地にはバス3000台を収容できる駐車場をつくる計画があったのですが、築地解体が遅れたので、こちらも急ピッチでやらなければ間に合わなくなりました。 これは、小池都知事が、豊洲の「盛り土」などを理由にして、移転を引き伸ばした結果です。 都知事と都民ファーストの会の活動によって、不毛な政治闘争の代償が現場の方々に押し付けられたのです。 ◆都政は「残念な政治」の歴史 市場の移転騒動の現場となった江東区には、ほかにも残念な問題があります。 それは、有楽町線(地下鉄8号線)を豊洲から住吉まで伸ばすプランが日の目を見ていないということです。 有楽町線を伸ばし、豊洲から東陽町、住吉までを地下鉄でつなげば、区内の南北交通の便がよくなるだけでなく、東京東部や隣の県へのアクセスが改善されます。 また、メトロ東西線の混雑緩和なども期待できます。 しかし、この延伸計画が実現する年は決まっていません。 この延伸案は、1972年に初めて国の都市交通審議会で答申されたのに、いまだに実行されていないのです。 残念な政治は、小池都政だけではありませんでした。 ◆これ以上、「政治の力不足」でインフラの建設を遅れさせてはいけない 都政には、こうした機会損失がたくさんあります。 これは、政治の力不足としか言いようがありません。 そうなるのは、無駄な手続きや規制が多く、事業の実現に時間がかかりすぎるからです。 幸福実現党が今、各地で挑戦しているのは、こうした政治を覆し、「勇断できる政治」を実現するためです。 しかし、今の日本には、市場の移転を止めたり、ダム建設を止めたり、原発を止めたり、リニア新幹線に反対したり、あげくのはてには、飛行機の航路にまで文句をつける政治家がたくさんいます。 これは、リスクだけに目が行った考え方です。 こういう考え方は、不幸を最小にするために、大きな発展の機会をつぶしてしまいます。 ◆今こそ、「勇断できる政治」を しかし、本当に必要なのは、そういう考え方ではありません。 「最大多数の最大幸福」の実現こそが必要なのです。 それは、国の礎となる事業に、勇気をもって挑戦していくことです。 戦後復興期の日本は、死に物狂いで、東京オリンピックまでに新幹線開通を間に合わせました。 大発展期のアメリカでは、エリー運河やパナマ運河を開き、大陸横断鉄道をつくり、州を超えた高速道路を次々とつくっていきました。 本来、政治は、こうした国の礎となる公共事業の建設を、いち早く完成させるべきなのです。 幸福実現党は、リスクゼロや最小不幸を目指しません。 「最大多数の最大幸福の実現」こそが政治の基本だと信じ、勇気をもって、本当に必要な公共事業を実現してまいります。 【参考】 ・産経新聞【主張】「豊洲市場へ移転 都知事は責任持ち対策を」2018/10/6 ・江東区HP「地下鉄8号線(有楽町線)の延伸(豊洲~住吉)2019/3/29 財政に大穴あける共産党の医療政策——公費投入の大行進に終わりはない 2019.04.14 財政に大穴あける共産党の医療政策——公費投入の大行進に終わりはない HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆共産党の目玉政策は医療への公費1兆円投入 今回の地方選で、共産党は医療への公費1兆円投入を掲げています。 志位和夫委員長は、3月14日に「自民、公明などを選んだら国民健康保険の値上げになる。共産党を選んだら公費1兆円投入で値下げになる」という主張を党のホームページに掲げました。 「国保の値下げ」と聞くと「暮らしが楽になるかも」と思う方もいるわけですが、この政策には、3つの大きな問題が潜んでいます。 ※共産党の主張に関しては、志位和夫「国保料(税)の連続・大幅値上げか、公費1兆円投入で大幅値下げか――統一地方選挙の一大争点に」を参照 ◆問題(1):医療に投入される公費も、結局、国民が負担したお金 当たり前のことですが、公費は税金などが元手なので、結局は、国民が負担したお金です。 受診する人が「安くなった」と思っても、その裏側には、必ず、その公費を負担した方がいます。 これは健康な人に他の人の医療費を負担させる政策でもあるのです。 ◆問題(2):共産党は「将来の備え」の切り崩しを薦めている 共産党は地方自治体がためた「基金」からお金を出せると主張しています。 ここで使えるお金とみなされているのは、全国で7兆5千億円ある「財政調整基金」(※)です。 しかし、これは、もともと非常時や歳入不足に備えるための仕組みです。 公共施設の老朽化や災害対策のためにはお金が要ります。 人口減によって税収が減り、高齢化によって社会保障費が増えれば、備えのお金が必要になります。 地方自治体は、入るお金が出ていくお金よりも少ない時には、この基金を取り崩すのです。 そのため、財政力の弱い自治体ほど、この基金を増やしてきました。 共産党は「ここ10年間でためこみ金が増えてきた」と言いますが、それは人口減と高齢化を恐れていたためです。 そこを考慮せずに「ここから1兆円の医療費を出せ」というのは、目先の人気取りにしかすぎません。 ※地方公共団体の基金残高 総務省によれば、様々な基金の総額は、ここ10年間で13.6兆円(2006年末)から21.5兆円(2016年末)に増えた。「財政調整基金」はそのうち7.5兆円。基金総額の7.9兆円の増加分のなかで「国の施策や合併といった『制度的な要因』による増加額が2.3兆円」あり、「法人関係税等の変動、人口減少による税収減、公共施設等の老朽化対策等、災害、社会保障関係経費の増大といった『その他の将来の歳入減少・歳出増加への備え』による増加額が5.7兆円となっている」という。 ◆問題(3):共産党はもともと「窓口無料」の医療を目指している 今回、共産党は、過激な主張を丸めて、普通の有権者に「できそうだ」と思わせる言い方を工夫しています。 しかし、2017年の衆院選では「高すぎる窓口負担を軽減し、先進国では当たり前の『窓口無料』をめざします」と言っていました。 「1980年代までは『健保本人は無料』『老人医療費無料制度』」だった。 だから、まずは、子ども(就学前)の窓口負担は無料にし、「現役世代は国保も健保も2割負担に引き下げ」、高齢者はみな1割負担に戻すべきだ…。 そんなことを訴えていたのです。 これだけで何兆円もの公費負担が増えるでしょう。 共産党の目的地は「窓口無料」なので、彼らに医療を任せたら、そのために必要な医療の公費負担をどんどん増やしていきます。 その結果、現役世代の医療負担も際限なく増えていくのです。 共産党がいう「一兆円」というのは、終わりのない公費投入の大行進の始まりなのです。 ◆「大企業と富裕層から取れ」というが・・・ しかし、選挙で勝つためには「現役世代の負担を増やそう」とは言えません。 そのため、別のターゲットが必要になります。 そこで「大企業とお金持ちから取れ」という主張が出てきます。 しかし、すでに約30%の法人税は世界のトップ層の税率です。 州税を足した米国の法人税は平均が26%、中国は25%なので、米中よりも高く、タイやシンガポールなどに比べると、約1割の差がつきました。 これ以上、高税率を強いれば、国際競争の中で日本企業が遅れをとってしまうでしょう。 重税の中で多くの大企業が潰れれば、中小企業にまで負の影響がおよび、経済全体が沈んでしまいます。 さらに、共産党は、富裕層を狙って「証券税制の強化」を訴えていますが、今の日本では、普通のサラリーマン層も株の売買に参加しています。 その被害は、お金持ちだけに止まりません。 株式に重税をかければ、海外から日本への投資も減るので、日本企業の勢いも削がれてしまうでしょう。 ◆「金の卵を生むガチョウ」を殺してはいけない 結局、共産党の福祉政策が実現した場合、現役世代の保険料の支払いが増えていくか、大企業と投資家がつぶされて日本経済が沈没するかのどちらかになります。 どちらでも、「取り尽くすだけ取る」という結末なので、最後は、福祉の財源が出てこなくなります。 これは「金の卵を生むガチョウ」を殺す政策です。 そこには「富を生み出す人がいてこそ、福祉のためのお金が出てくる」という経済の常識がありません。 共産党の政策は、一見、楽になりそうに見えますが、発展がなくなり、みなが貧しくなるのです。 しかし、幸福実現党は、経済成長によって「パイを大きくする」ことを目指してきました。 それがなければ、税収が増えず、困っている人を助けるお金も出てこないからです。 厳しい現実ではありますが、少子高齢化時代の医療には、現役世代の負担増に歯止めが必要です。 そして、現役世代の活力が失われない範囲で、医療保険を運営していく必要があります。 そのために、高齢者にも一定の負担が求められることは、避けがたいものがあります。 現在の窓口負担は「65歳以上は原則1割」という「年齢」で基準が定められていますが、今後は「所得」に応じた負担率に変えなければならないのではないでしょうか。 【参考】 ・日本共産党・志位和夫委員長「国保料(税)の連続・大幅値上げか、公費1兆円投入で大幅値下げか――統一地方選挙の一大争点に」 ・日本共産党「2017総選挙公約」 ・総務省自治財政局「地方公共団体の基金の積立状況等に関する調査結果のポイント及び分析」(平成29年11月) 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【後編】 2019.04.12 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【後編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆自民党は「ゆりかごから墓場まで」を目指していた 前編で述べた自民党の「福祉国家の建設」という方針には、イギリスを斜陽国家にした「ベヴァレッジ報告」の影響が濃厚です。 「ベヴァレッジ報告」は、完全雇用を目指すとともに、全国民が同じ社会保険に加入し、老後や病気、失業などに備えることを訴えた政策文書です。 当時のイギリスでは、これに基づき、「ゆりかごから墓場まで」福祉を提供するために、国をつくりかえていました。 そして、高い税金のもとで福祉予算を増やした結果、勤勉の美徳が失われ、かつての大英帝国は見るも無残に凋落していったのです。 こうした「英国病」をもたらした「福祉国家」の思想を、自民党は党の基本文書に盛り込みました。 それは、当時の政治でも、福祉が争点になっていたからです。 当時を知る、元厚生事務次官は、自民党ができた昭和三〇年の頃には「保守合同で自由民主党が生れ」、「左右社会党の統一があって」、「何か国民の福祉で役に立つということが政党の合言葉になった」とも回想しています。 厚生省内では「『ゆりかごから墓場まで』ということはもう当然のごとく語られていた」とも述べているのです。 しかし、高度成長期の日本には勢いがあったので、その病原菌はしばし隠れていました。 それは、少子高齢化が実現した後に正体をあらわし、日本をどんどん高税率の国につくりかえているのです。 ◆地獄への道は善意で舗装されている 福祉予算を増やす場合、その財源は「増税」か保険料の値上げで賄われます。 その結末は、結局、未来の増税と消費不況の実現にすぎないのです。 甘い言葉の代価は高くつきます。 「地獄への道は善意で舗装されている」という格言のとおりです。 幸福実現党は、この「福祉の充実⇒財源不足⇒増税⇒消費減退」という負のサイクルを終わらせるために「小さな政府、安い税金」の実現を訴えてきました。 そのために、消費税増税に反対し、5%に戻すことを訴えてきました。 増税をしてお金を誰かに配るよりも、一律に減税したほうが、公平な「福祉」になるからです。 減税こそが最大の福祉です。 しかし、自民党や公明党、立憲民主党の議員が増えれば、福祉が増えたあとに、増税や保険料の値上げが行われます。 そして、消費不況が繰り返されるのです。 こうした「未来を犠牲にした福祉」は、「その場しのぎ」にすぎないので、日本経済のパイを大きくすることができません。 幸福実現党は、GDPの6割を占める消費を活性化させてこそ、日本経済そのものが大きくなり、税収も増え、そこから福祉に回るお金も出てくると考えています。 日本経済の未来は、消費税5%への減税から生れてくるからです。 【参考】 ・枝野幸男×荻原博子「そろそろ昭和の成功体験から抜け出そう」(『女性自身』HP、2019/1/21) ・総務省統計局「家計調査(家計収支編) 時系列データ(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」 ・自民党HP「高校授業料無償化の問題点!」〔2010年3月16日〕 ・自民党HP「党の性格」(昭和三十年十一月十五日) ・菅沼隆ほか『戦後社会保障の証言』(有斐閣)※引用部分は幸田正孝元厚生事務次官の発言) 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【前編】 2019.04.11 自民、公明、立民がめざす「福祉の充実」の甘いワナ【前編】 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「福祉の充実」という甘い言葉にご用心 現在、地方選において、かつて消費税増税に合意した自民、公明、立民の3党が「福祉の充実」を訴えています。 自民党と公明党は消費税の増税分を用いた教育無償化、立憲民主党は格差の是正などを強調しているのですが、どちらにも、大きな問題点があります。 福祉が増えたら、その分だけ税金や保険料の支払いが増えるということです。 つまり、この三党の福祉政策が実現したら、「行きはよいよい帰りは怖い」という言葉の通り、増税が待っています。 そして、増税はさらなる消費の冷え込みを招きます。 これは、すでに起きた現実なのですが、こうした不都合な話は、真正面からは取り上げられていないのです。 ◆消費の冷え込みは「福祉のための増税」でもたらされた 「福祉の増加⇒財源不足⇒増税⇒消費減退」という負のサイクルは、ここ10年の歴史から確認できます。 まず、2009年に福祉の充実をうたった民主党政権ができ、その後、「財源が足りない」という話になり、消費税増税が決まりました。 その結果、消費が冷え込み、かつて月あたり32~34万円で推移していた家計消費の水準を取り戻せていません。 これは2000年から07年までの水準ですが、2018年の家計消費は、31.5万円(※二人以上の勤労者世帯)にすぎなかったのです。 立憲民主党の枝野代表は、本年の1月に「当面、大衆課税は無理ですよ。日本の今の消費不況からすると、そんなことをやれる状況ではない」と言っていましたが、自分たちがその原因をつくったことに責任は感じていないようです。 立憲民主党の枝野代表、蓮舫副代表、最高顧問である菅直人氏、海江田万里氏などは、政権にいた頃、「福祉のために」と称して増税の道筋をつくってきた方々です。 彼らのおかげで消費税も所得税も上がり、相続税が「中金持ち」にまでかかるようになりました。 その結果が「消費不況」です その判断には「先見の明」がかけらほどもありませんでした。 ◆かつての民主党と同じく「教育無償化」を推す自公政権 増税路線は、民主党と自民党、公明党の三党合意で固まりました。 合意したのは、今、まさに福祉の充実を訴えている政党の方々です。 そして、この三党は、みな「教育無償化」を推進しています。 しかし、その財源が、結局、消費税の増税であるのは大きな問題です。 彼らは、消費の冷え込みをもたらした増税を反省していません。 この教育無償化は、もともとは民主党の政策でした。 自民党は民主党政権の教育無償化を「バラマキだ」と批判していたのです。 (※本稿作成時点では、まだ自民党HPに「高校授業料無償化の問題点!」〔2010年3月16日〕という記事が残っている) しかし、自民党は、政権をとったら票稼ぎのために路線を変えました。 自民党の公約の中には、民主党と同じようなバラマキ政策が入り込んでいます。 そうした政策が実行されたら、我々は、10%への消費増税のあとにも、また「財源不足」だという話を聞かされるはずです。 そして、もう一度、「福祉のために増税」という論理が繰り返されるのです。 ◆自民党は、結党時に「福祉国家の実現」を宣言 結局、自民党も公明党も、立憲民主党も、甘い言葉で福祉を語り、国民に重税を強いる政党です。 有権者の皆様の中には「自民党は保守政党だから、バラマキ政党とは違う」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、歴史を振り返ると、自民党も、立党以来、「福祉国家の建設」を目指してきました。 結党した時(1955年)に書かれた文書(『党の性格』)には「社会保障政策を強力に実施し、完全雇用と福祉国家の実現をはかる」と書かれています。 もともと、自民党は「大きな政府」を目指していたのです。 (つづく) 「日本を再び偉大にする」ための法人税減税 2019.04.09 「日本を再び偉大にする」ための法人税減税 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆法人税減税に消極的な自民党 本年は消費税の引き上げが注目されていますが、それ以外にも重要な税金があります。 その一つが法人税です。 前回の選挙で自民党は消費税増税を掲げましたが、公約では法人税減税を取り上げませんでした。 なぜかというと、当時、消費税増税に反対した野党が、大企業に増税をすべきだと訴えていたからです。 ここで自民党が法人税を減税したら、「庶民に増税、企業に減税」となるので、17年の選挙では、この話題は取り上げられませんでした。 ただ、その後、アメリカで法人税が減税されたので、安倍政権も対策を打ち出しました。 わずか3年間に限って「大企業は前年度比で3%、中小企業は1.5%の賃上げを条件にして減税する。IoTへの投資なども税から割引く」と決めたのです。 しかし、範囲が狭く、期間も短いので、「法人税が安くなった」とまでは言えません。 自民党は、2014年や16年の選挙で「法人税の実効税率を2割台にする」と公約したのですが、これに関して、現在は沈黙を守っています。 どうやら、最近は「29.74%」の実効税率でよいことになったらしいのです。 ◆法人税の減税が必要な理由とは しかし、法人税の減税は必要です。 それは、国をまたいだ企業の熾烈な競争が続いているからです。 例えば、シャープは2012年に経営危機に陥りましたが、当時、シャープとサムスン電子を比べると、日韓の税率差がサムスン電子に約1600億円の余裕資金を生み出していたと見積もられています(経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28)。 1600億円は、シャープの亀山第二工場の投資額(約1500億円)を超える規模です。 こうした税率差が企業の重荷になり、法人税が高すぎると企業が海外流出したり、外国企業がやってこなくなったりします。 そのため、法人税の税率は、諸外国の動向も見ながら決めなければなりません。 ◆主要国が減税にかじを切った 現在、主要国では法人税が下がっています。 アメリカでは、2018年から連邦が集める法人税が35%から21%に下がりました。 この上に各州の税率を足した平均税率は25.7%になります。 さらに、中国は25%の法人税に対して、控除の拡大や中小企業への優遇税制などの改革を行いました。 2020年までにイギリスの税率は19%から17%になり、フランスは33%から25%まで減税する予定です。 しかし、日本は約30%の税率のままなのです。 (※米国の平均値は米シンクタンク「TAX FOUNDATION」の記事を参照) ◆世界の法人税率の平均は23~24%程度 KPMGコンサルティング社の調査によれば、世界の法人税率の平均は23.8%です。 先進国が数多い「OECD」の平均は23.4%。 EU平均、アジア平均はどちらも約21%です。 中国以外のアジアの国々を見ると、韓国とインドネシアは25%、マレーシアは24%。 タイやベトナム、台湾は20%で、シンガポールは17%、香港は16.5%でした。 このあたりの国とは1割前後の税率差があります。 ※本節の税率はKPMGの「Corporate tax rates table」を参照。正確には、世界平均は23.79%、OECD平均は23.38%、EU平均は21.16%、アジア平均は21.09%。 ◆「世界で減税、日本も遅れて減税」でよいのか 安倍政権も、一応、法人税(実効税率)を35%から30%に下げました(34.62%⇒29.74%)。 しかし、減税幅は米国に比べると小さいのは事実です。 2000年以降、すでに減税した国々との税率差は、大きく変わらないでしょう。 OECDによれば、中央政府と地方政府を併せた税率の平均値は、2000年に28.6%でしたが、2018年には21.4%まで下がっているからです。 2010年代に日本も法人税を下げましたが、これに対して、評論家の大前研一氏は、「法人税率を戦略的に考える場合、外国企業の誘致を目的にするなら10%台、企業に国内から逃げられないことを目的にするなら20%台半ば」にすべきだと述べていました。 「ライバル国が10%台に引き下げて『我が国にいらっしゃい』と言っているのに、『30%まで下げました。ぜひ日本へ』と叫んでも誰も振り向かない」(大前氏)からです。 アメリカのムニューチン財務長官は、減税法案が成立したあと、「我々は法人税を引き下げる。それで多数の雇用が米国へ戻ることになる」とも述べていました。 こうした大胆な決断がなければ、企業経営者の心は動きません。 ◆レーガン減税で「再び偉大になった」アメリカ 「減税後」の税収減を恐れる方も多いのですが、米国では、レーガン政権の大減税がその後の繁栄の礎となっています。 当時、所得税だけでなく、法人税も減税が行われ、1986年の改革で税率は46%から34%に下がりました。 法人税は12%も下がりましたが、その後、米国経済は復活。 「米国を再び偉大にする」というトランプ大統領のスローガンは、レーガンの先例にならったものです。 大胆な減税で繁栄の礎をつくることが大事です。 そのために、幸福実現党は「1割台まで」という大胆な法人税減税を掲げています。 ◆米中よりも高い法人税で企業を競争させるのか 日本より市場規模の大きな米国と中国が2割台の税率なのに、我が国は約30%の税率を守り、高飛車に構えています。 しかし、今の日本経済に、米国よりも高い税率でも海外企業が集まるほどの魅力があるのでしょうか。 また、中国よりも高い税率で競争に勝てるほど、日本企業に勢いがあるのでしょうか。 今、米中の企業群が世界最先端を目指して、熾烈な競争を開始しています。 その中で、日本が両国よりも高い税金の上にあぐらをかいているのは危険です。 そのため、幸福実現党は、法人税の実効税率を10%台まで下げるべきだと訴えています。 これは、安倍政権のような「最低限の減税」ではありません。 幸福実現党は「最大限の減税」で「日本を再び偉大にする」ことを目指してまいります。 【参考】 ・経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28 ・Kyle Pomerleau “The United States’ Corporate Income Tax Rate is Now More in Line with Those Levied by Other Major Nations”(TAX FOUNDATION2018,2,12) ・KPMGコンサルティング「Corporate tax rates table」 ・大前研一「選挙目当ての税制論議はもう止めてほしい」(日経BPネット 2010/4/6) ・日経電子版「[FT]米国の法人税制改革、トランプ流なら企業行動激変」2016/12/2)。 中小企業の知的財産権が守られる社会をつくる 2019.04.06 中小企業の知的財産権が守られる社会をつくる HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆日本商工会議所が「知財防衛」のための改革案を提言 3月20日に、日本商工会議所(日商)は、「知的財産政策に関する意見」と題した政府への要望を発表しました。 そこには、お金に余裕のない中小企業でも知財(知的財産)を守れるようにするための具体策が並べられています。 心血を注いで生んだ知財が侵害され、「泣き寝入り」になる企業を減らすために、日商が改革案をまとめたのです。 ◆なぜ、今、知財が大事なのか この意見書は、いくつかのデータをあげ、中小企業の特許取得を支援すべきだと訴えています。 ここ10年間で、世界では特許出願件数が1.7倍になっているのに、日本では2割ほど減りました。 一国の特許出願件数のなかで中小企業が占める割合で比較すると、今や日本は15%しかなく、26%のアメリカ、70%を超える中国とは大きな差がついています。 そうした現状を踏まえ、トランプ政権の知財防衛策などを例に取り、日本政府は競争力を強化するために、法制度を整えるべきだと主張しています。 ◆中小企業の特許取得が進まない理由 では、どうして中小企業の特許取得が進まないのでしょうか。 それは、手間がかかるわりには、知財を侵害した相手の罪を証明し、賠償金を得るのが難しいからです。 日商の意見書には、公開された特許を侵害するのは簡単だが、その証拠は加害者の手元にあるので、被害の証明が難しいとも書かれていました。 理屈上は知財侵害をめぐる刑事裁判もできるようにはなっています。 しかし、侵害の有無の判断が難しいため、実際は、なかなか起訴にまでは至りません。 結局、「労多くして益少なし」なので、特許を取らない中小企業も多いわけです。 ◆知財を侵害され、「泣き寝入り」に終わる例も多い しかし、それでも知財侵害は起きています。 日商の意見書はいくつかの例を上げていました。 ○1:他社の特許を侵害しながら、見つかったらライセンス交渉をすればよいと開き直る ○2:特許侵害が判明したあとにライセンス交渉を引き伸ばし、逃げ切りを図る ○3:中小企業の人材難や資金の乏しさを見越して、裁判の長期化を図り、訴えを取り下げさせる この場合、訴訟費が損害賠償額を上回ることが多いので、中小企業からは「泣き寝入りせざるをえないという声があがっている」とも指摘していました。 ◆知財侵害を訴えても、うまくいくとは限らない 実際、この種の訴訟で、被害者が救われるとは限りません。 日商の意見書には、驚くべき数字が並んでいました。 まず、知財が侵害された証拠を手に入れるのが難しいために、被害者(原告)の6割以上が敗訴しています。 さらに、侵害者が「特許は無効である」と言って対抗してきた場合、37%もの特許が無効にされています。 そのうえ、特許侵害の裁判は専門性が高いため、債権回収の訴訟の約3.5倍の弁護士費用がかかるのです。 これで特許取得が進むわけがありません。 ◆事態は深刻。日商の改革案とは 事態はきわめて深刻なので、日商は多くの改革案を出しています。 ○1:損害賠償額の引き上げ(「通常の特許実施料相当額」以上にする) ○2:諸外国を参考にして、知財侵害者に利益が残らないようにする ○3:証拠集めを支援し、見込み違いの提訴を防ぐために、訴訟提起前にも査証を導入する (※この査証で新たな証拠収集手続きが追加される) ○4:査証に一定の強制力を持たせ、証拠を侵害者に提出させる ○5:海外の侵害者を罪に問うことが難しいので、米中と同じく、懲罰的な賠償制度を導入する ○6:知財を持つ企業のために税制優遇制度や低金利の融資制度を設ける ○7:特許侵害者に訴訟費を負担させる そのほか、「大学や研究機関の特許を中小企業が事業化評価をする間、無償開放し、事業化後に有償契約に移行する制度を整備する」という案も出ていました。 ◆知財防衛なしに企業はメジャーになれない 知財は、企業が新たな発明を行い、ブランドを確立する際に、もっとも重要な価値の源です。 有名な例をあげれば、世界を制した「コカ・コーラ」も、1886年に一人の薬剤師(ジョン・S・ペンバートン博士)が1杯5セントの試作品を4軒の店(場所はアトランタ)で売り出したことから始まったのです。 その後、社業は別の経営者に委ねられましたが、コカコーラ社は、原液の作り方を秘密にし、それをブランドに高めることで、130年以上も巨大な価値を生み出してきました。 しかし、そうなるまでに「知的財産権」が守られなかったら、われわれは「コカ・コーラ」を違う名前で呼ばなければいけなくなったことでしょう。 ◆知的財産権が守られなければ、天才や熱意ある個人は出てこない 知的財産権を守ることは、一人の発明が広まり、地域から国家を超えて人を潤していく歴史を守る行為でもあります。 一つの商品の中には、それを発明した人の、熱い願いが宿っています。 それが守られなければ、多くの人の幸福を願って、発明に心血を注ぐ天才が出てこなくなるのです。 かつて豊田佐吉は、日本にも特許制度ができたことを知り、発明の道を志しました。 「これから何かお国のためになるものを考え出さねばならぬ」 彼はそう心に誓い、豊田式織機を発明しました。 その後、織機から自動車に本業が変わるわけですが、特許が守られなければ、トヨタ自動車の礎が築かれることもありませんでした。 ◆「知財」は経済の礎――これを守らなければ、国は衰退する 知財が守られなければ盗み放題なので、努力が報われない社会へと堕落していきます。 幸福実現党は「個人的自由、起業の自由、自由主義経済による繁栄に軸足を置いている」政党です。 我々は「国民がセルフ・ヘルプの精神を失った国家は必ず衰退していく」と信じています。 これが幸福実現党の創立者である大川隆法総裁が『政治の理想について』という著作で訴えた精神です。 その精神に則って、国民が心血を注いでつくった「知財」を守るべく、力を尽くしてまいります。 【参考】 ・日本商工会議所HP「知的財産政策に関する意見」 ・日本商工会議所HP「『知的財産政策に関する意見』について」 ・日本商工会議所HP「知財紛争処理システムの改革を」 ・日本コカコーラ株式会社HP「年表から見るコカ・コーラの歴史」 ・楫西光速(著)『豊田佐吉』吉川弘文館 ・大川隆法(著)『政治の理想について』幸福の科学出版 環境省「火力発電の新増設停止」の不条理 2019.04.04 環境省「火力発電の新増設停止」の不条理 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆原発再稼働が進まないのに、火力発電の「新増設を停止」? 3月28日、原田環境相は、大型火力発電の新設や増設を認めない方針を出しました。 これはパリ協定に基づく二酸化炭素(CO2)の排出削減目標を達成するための措置です。 環境省は、「経済的観点からの必要性しか明らかにされない」場合や、CO2削減の「目標達成の道筋」がはっきりしない場合には、新設や増設の計画を認めないことを決めたのです(「電力分野の低炭素化に向けて」)。 石炭火力は、最新鋭の設備でも、LNG火力の約2倍のCO2を出すので、特に、後者の条件を満たすのは困難です。 つまり、この方針が実施されれば、事実上、石炭火力は増やせなくなるのです。 ◆朝日新聞は、日本は「脱石炭」に後ろ向きだと批判するが・・・ このニュースを夕刊一面で報じた朝日新聞(3/28)は「温暖化に歯止めがかからないなか、世界的に『脱石炭』の動きが広がっており、後ろ向きな日本は批判を浴びている」と書き立てていました。 現在、約30の火力発電所を新増設する計画があることを指摘し、「世界が脱石炭にシフトするなか、日本の動きは国際的なトレンドに逆行している」と述べているのです。 まるで日本が悪いことをしたかのような書きぶりですが、それは本当に正しいのでしょうか。 ◆世界の石炭消費量は「大幅に増えた」あとに「減った」 まず、「脱石炭」についてですが、アジアやアフリカ、南米などでは石炭消費量が増えています。 世界のすべての国がヨーロッパのような「脱石炭」に賛成しているわけではありません。 なかでも、最大の消費量を抱える中国、経済が伸び盛りのインド、資源輸出国のオーストラリアやロシア、インドネシアなどは、石炭火力を放棄できません。 朝日新聞は「脱石炭」を「国際的なトレンド」と見ていますが、世界の石炭消費量は、2006年から16年までの間に2割増しになりました。 政府系団体の調査によれば、2006年の消費量は61億トン。16年の消費量は75億トンでした (※以下、石炭消費量の数値はJOGMEC〔石油天然ガス・金属鉱物資源機構〕の調査による。数値は四捨五入) 2013年の80億トンがピークで、16年までに5億トン減ったものの、10年単位で見ると増えた額のほうが大きいのです。 近年、減っていても、それ以前にもっと大きく増えていたわけです。 ◆石炭を最も消費しているのは中国 その次がインド 2016年の世界の石炭消費量のなかで、トップ3を占めるのは、中国(48%)、インド(12%)、米国(9%)です。 中国の消費量は36億トンです。10年で1.5倍に増えました(2006年:23億トン) インドは9億トン。こちらは10年で約2倍になっています(2006年:5億トン) この2国が、なんと世界の石炭消費の6割を占めています。 アメリカはオバマ政権の頃に石炭消費を減らしましたが、トランプ政権は、環境規制を緩和して石炭や石油産業のテコ入れを図っています。 資源国のオーストラリアやロシアも石炭消費を増やしています。 こうした国々は、「脱石炭」に熱心ではありません。 日本の石炭消費量は2016年で約2億トンです。 世界の2.5%の規模であり、10年前と比べても5%程度しか増えていません。 数字の規模で比べると、中国やインドのほうが、「脱石炭」に後ろ向きであることは明らかでしょう。 ◆CO2削減のために火力発電の進化を犠牲にするのか 2016年に日本が排出した二酸化炭素(CO2)は1年で11億トンです。 日本のCO2排出は4年連続で減っており、昨年11月には、国連環境計画(UNEP)の報告書でも、CO2削減が進んでいる国の一つに名をつらねていました。 CO2削減が進んでいる要因には、原発が再稼働して火力発電の割合が下がったことや再生可能エネルギーの活用などが挙げられています。 これは日本の火力発電の効率がよいことに助けられた数字だとも言えます。 しかし、それでもパリ協定の目標には届かないので、環境省は、火力発電所の新増設を抑える方針を出しました。 この方針には大きな問題があります。 それが実現すれば、「CO2排出の多い中国やインド、米国などは火力発電を強化できるのに、CO2を減らした日本はできない」というおかしな事態になるからです。 2016年のCO2排出量は、中国が91億トン、米国が48億トン、インドが21億トン、ロシアが14億トンでした。 中国やインドはGDP比のCO2削減目標ですから、GDPが伸びれば排出可能なCO2も増え、たいした削減をしなくても済んでいます。 それなのに、パリ条約を厳格に守った日本のほうが火力発電の自粛を強いられるわけです。 ◆日本の火力発電を友好国に国際展開すべき ここで考えるべきことは、パリ条約を「バカ正直」に守ることではありません。 日本の火力発電は、世界最高の熱効率を持ち、環境対応能力の高さで知られているわけですから、これをインドや米国、インドネシアなどの友好国に広め、国内企業を苦しめずに「世界のCO2を削減する」べきです。 経産省の審議会では「石炭火力の需要が増大するアジア諸国」などに「次世代技術」を広めれば、最大で「15億トン」のCO2削減効果が期待できるとの試算も出されています(「次世代火力発電に係る技術ロードマップ 中間とりまとめ(案)」2015年7月) (※資源エネルギー庁には「12億トン」との記述もあり) この方式であれば、日本の火力発電の国際展開に関して、他国に何ら非難される筋合いはありません。 CO2削減のために日本の火力発電の新設・増設を封印するのは愚の骨頂です。 また、原発を再稼働することで、火力発電への依存率を下げることも可能です。 後ろ向きな政策で、世界最高水準の火力発電の進化を止めるべきではありません。 世界の火力発電市場は「2040年にかけて石炭火力では約520兆円、LNG火力では約560兆円」の規模が見込まれています(「次世代火力発電に係る技術ロードマップ)。 この市場で日本のシェアを高め、火力発電の先進化によって、実益と国際貢献を両立させるべきなのです。 参考 ・環境省HP「電力分野の低炭素化に向けて ~新たな3つのアクション~」 ・朝日新聞夕刊(2019年3月28日付) ・新エネルギー・産業技術総合開発機構「平成21年度 海外炭開発高度化等調査『世界の石炭事情調査 -2009年度-』」 ・同上「「平成29年度 海外炭開発高度化等調査『世界の石炭事情調査 -2017年度-』」 ・マット・マクグラス(BBC環境担当編集委員)「世界のCO2総排出量、4年ぶりに増加=国連」(2018/11/28) ・共同通信「温室ガス排出量、4年連続減少 17年度、再生エネ導入と原発で」(2018/11/30) ・環境省「世界のエネルギー起源CO2排出量(2016年)」 ・次世代火力発電の早期実現に向けた協議会「次世代火力発電に係る技術ロードマップ 中間とりまとめ(案)」(2015年7月) 「増税延期がリスク」だなんて、とんでもない。「お上の論理」にNOを! 2019.04.02 「増税延期がリスク」だなんて、とんでもない。「お上の論理」にNOを! HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆消費税は平成不況の象徴 平成の世も終わりが近づいていますが、政府は、1989年以降の経験から学ばず、消費税を10%に上げようとしています。 過去を振り返ると、1997年に消費税を5%に上げてから、税収が97年の水準(54兆円)を下回る時代が、2013年まで続いてきました。 そのころの税収は40兆円代の年が多く、政府が欲を出したことが裏目に出てしまいました。 税収は景気に連動するので、必ずしも「税率増=税収増」となるとは限らないのですが、消費者心理を読めない政府は、増税に踏み込んだのです。 ◆セブン&アイ元会長も消費増税による景気悪化を警告 こうした政府のあり方を、心ある経済人は大いに憂いています。 セブン&アイ元会長の鈴木敏文氏は『文芸春秋(2019年1月号)』にて、日銀が目標を達成できず、国民が老後不安を抱える中で消費税を上げるべきではないと警鐘を鳴らしました。 「消費の減少、企業倒産の増加、失業率の上昇といった負の連鎖に直面する可能性もある。当然、消費税だけでなく、法人税、所得税といった税収全般が、逆に低下する事態に陥ってしまいかねません」 そう訴え、日本人の消費マインドは「数字以上に敏感」なので、消費増税には税率の「数字以上」の影響力があると指摘していたのです。 1998年に北海道のイトーヨーカ堂で一律5%を値引いたら(消費税分還元セール)、売上高が前年比で165%になりました。 このセールは全国でも展開され、似たような結果となったことから、消費者は、必ずしも「2割引セール=2割売上増」という動き方はしないとも述べています。 ◆10%増税の「心理的効果」は無視できない 同じような見方をしている人に、京大大学院教授の藤井聡氏がいます。 この人は内閣官房参与でしたが、昨年末で辞め、本年からは「自由な立場」で消費増税の危険性に警鐘を鳴らしています。 藤井氏は、10%増税の「心理的な影響」にも注意を促していました。 「10%」という数字は3%や8%よりも区切りがよく、税負担を計算しやすくなるので、消費者が嫌でも負担を感じるようになるからです。 実際、藤井氏は、京都大学で男女100名ずつを対象に10%増税が起きた際の「買い控え」の度合いを測ったら、今回の増税には、2014年の増税の「1.4倍」の消費を減らす効果があることがわかったと述べています(藤井氏フェイスブックを参照)。 ◆今回の増税には、2%以上の「重税感」がある? そのほかにも、元東京都知事の舛添要一氏が、今回の増税の「重税感」は「2%増しどころではない」と述べていました。 税率が二ケタになり、計算が簡単な分だけ重税感が増すので、「1割という消費税率が消費を抑制する効果は、2%の税率との差以上になると考えたほうがよい」と警告していたのです。 舛添氏は「13750円」という複雑な値段を例にとり、8%だったら電卓でも使わなければ税金が1100円になるのはわからないが、10%だったらすぐに1375円だとわかるとも述べています。 たしかに、普段の買い物の時にいちいち消費者は電卓で計算しません。 そのため、簡単な税率になることで、今までに意識していなかった税額が「見える化」され、重税感を感じるわけです。 (※なお、舛添氏は必ずしも増税に反対ではなく、景気情勢の悪化のため他の選択肢もありえるという見方) ◆「消費者の目線」に立って見た経済観が大事 昔を振り返ると、増税判断を前にした2013年参院選の頃にも、鈴木敏文氏は、増税は「消費回復に水を差すことになる」と述べたことがありました。 当時も、マスコミに問われた時には、「増税は延期すべきだ」と訴えていたのです。 「消費税率を5%に引き上げた時や総額表示に切り替えられた時は、消費が落ち込み、その影響が長く続きました」(鈴木氏) 過去の小売の経験から、「日本人は税金に対してたいへん敏感」であることに注意を喚起していました。 やはり、大事なのは、お上の目線ではなく、こうした消費者目線に立った経済観なのではないでしょうか。 ◆安倍政権にとって「増税延期はリスク」? 幸福実現党も、立党以来、そうした消費者の目線に立って、増税の危険性を訴えてきました。 日経朝刊(2019/3/28)によれば、安倍首相は、3月19日に藤井聡氏と食事した時に「増税延期」を促されたのですが、結局、「予算を崩す方がリスクが大きい」と周囲にもらしていたそうです。 しかし、この「リスク」は、国民が負うリスクではありません。 「増税」という衆院選の公約を覆した際に「安倍政権が負うリスク」にすぎません。 幸福実現党は、「日本経済にリスクをもたらす」消費税増税に反対しているのです。 参考 ・鈴木敏文「『消費増税』猛反対された還元セール」(『文芸春秋』2019年1月号) ・セブン&アイホールディングスHP「[対談] イノベーションの視点 デフレ脱却へ いま、生活者の視点が日本経済のカギを握る」 ・舛添要一「消費税10%の重税感、今の2%増しどころではない」(JBプレス 2019/3/30) 政治家の『Think Big』が宇宙開発の未来を拓く 2019.03.31 政治家の『Think Big』が宇宙開発の未来を拓く 幸福実現党 山形県本部統括支部長 城取良太 ◆際立つ日本の技術力と低予算 探査機「はやぶさ2」による快挙からはや1か月。 小惑星「りゅうぐう」への着地に成功し、回収された岩石には水分が含まれることが解析の結果、判明しました。 来年末、はやぶさ2が帰還すれば、水分を含んだ宇宙物質が持ち込まれることは世界初で、そのサンプルがもたらす貢献度は極めて高いものとなりましょう。 重力の関係上、着地が難しいとされる小惑星から物質を回収したこと自体、世界で際立つ技術力の証明ですが、対照的なのがその低予算ぶりです。 はやぶさ2関連の11年間分の総事業費は289億円、年平均で考えても25億円前後にしかなりません。 民主党政権下では、事業仕分けで一時3000万円にまで削減され、そのままならば、こうした快挙はまず起こらなかったでしょう。 宇宙開発全体の予算を見ても、JAXA・防衛省が約3000億円(2018年)に対し、米国は約4兆5000億円、米国と同等と言われる中国と比較しても、15倍の開きがあるのが現状なのです。 ◆「天空」支配を目論む中国の宇宙戦略 いま特に、宇宙で目覚ましい発展を遂げているのが中国です。 その旗印が≪中国製造2025≫と称される中国の国家戦略で、「2025年までに半導体等のハイテク部品の7割を自国で製造出来る体制を作り、宇宙開発などでアメリカを抜き、世界一を目指す」というものです。 もし中国の宇宙技術の進歩が、人類への貢献を目的とするものであれば称賛に値しますが、一党独裁の中国がその技術を「軍事に使う」となった場合、話は全く別物です。 現に、習近平主席は事実上の「宇宙軍」創設を明言し、毛沢東の遺志を継ぐ形で、宇宙技術の軍用化を主眼としていることは間違いありません。 中でも象徴的なのが、解読不能と言われる世界最高レベルの「量子暗号」と、それを搭載した「量子通信衛星」を2016年8月、世界で初めて打ち上げに成功させた驚愕の事実です。 「暗号を制する者が世界を制する」の通り、軍事的にも最も重要な要素の一つとも言える「情報」において、世界で優位にあるのは実は中国なのです。 他にも、昨年末には月の裏面探査にも着手、2022年には独自の宇宙ステーション稼働を計画するなど、分野によっては米国の先を行っている感は否めません。 これらは「一帯一路」とも連動しており、予算の少ない途上国に対して、人工衛星機能の活用を約束するなど、中国の宇宙技術が「懐柔」の大きな武器になっているのです。 ◆かつての宇宙大国を蘇らせた起業家たちの夢 一方、ソ連との宇宙開発競争で凌ぎを削り、圧倒的な地位を占めてきた米国ですが、NASAの官僚化に象徴されるように、宇宙開発は低迷の一途を辿ってきました。 そんな停滞感に風穴を開け、再び活気を取り戻したのが、スペースXのイーロン・マスク(テスラモーターズ)やブルーオリジンのジェフ・ベゾス(アマゾン)といった、異業種のベンチャー起業家たちでした。 彼らは巨額の私財を投じ、ロッキード・マーティンやボーイングの寡占状態にあった宇宙分野で、試行錯誤を重ねながら、僅か十数年で不可能とされた地表への垂直着陸を実現、民間初の有人宇宙船打ち上げも成功させています。 既に、地位や莫大な富も手にしていた彼らをそこまで突き動かしたのは、子供の時から強く持ち続けた「宇宙への壮大な夢」であったはずです。 そんな中、「月を拠点として、最初に人類を火星に運ぶ」と壮大なビジョンを掲げるトランプ大統領の誕生で、米国の宇宙開発は再び本格化しようとしております。 以前と違うのは、完全なる国家主導ではなく、民間の宇宙ベンチャーのノウハウと技術を最大限活かすもので、実業界出身の大統領ならではの官民協力体制に期待感が高まります。 また先月には、米国も「宇宙軍」創設を明言、トランプ政権は宇宙領域においても中国と真っ向から対峙する姿勢を見せています。 ◆米中と比肩する宇宙産業を創るために このように、日本と米中の宇宙構想や規模を比較しても、経済力の差を遥かに超えた大きな「差」があるのが現実です。 ようやく、日本でも民間宇宙ベンチャーの胎動や、トヨタ自動車が宇宙服なしで乗車できる月面車への開発の発表など、日の丸宇宙産業の立ち上がりの気配を徐々に感じさせます。 そんな中、米中と比較し最も不足しているのが、宇宙政策に関する国家の大きなビジョンと十分な予算ではないでしょうか。 日本は重力の小さい天体での強みを活かしつつも、堂々たる大国として「月を拠点に、火星に行く」という米国に負けない壮大な理想も描きたいところです。 また、消費増税という失策への補填で2兆円を使う位なら、米中に比肩するような宇宙産業の創造に投資するなど、国家予算の有効活用を是非ご検討頂きたいと思います。 将来、日の丸宇宙産業を背負って立つような人財を数多く創るため、子供たちが心の底からワクワクするような夢やビジョンを堂々と語り示すことも、これからの政治家に求められる責務ではないでしょうか。 報道されない「特別会計」を足した平成31年度予算の真相 2019.03.30 報道されない「特別会計」を足した平成31年度予算の真相 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「一般会計」の3分の1が社会保障関係費 3月27日に成立した2019年度予算(一般会計)は約101兆円でした。 昨年よりも3.7兆円増えたのですが、そのうち2兆円が増税対策に使われます。 最も大きく伸びたのは社会保障関係費で、その増額分は1兆円でした。 項目別の累計額を見ると、社会保障関係費は34兆円なので、一般会計の3分の1です。 7兆円の公共投資、約6兆円の教育予算(科学含む)に比べると、段違いの規模を誇っていることが分かります。 (※読みやすさを考慮し、原則として予算額は四捨五入しています) ◆「一般会計」は100兆円。では「特別会計」は? しかし、これは政府予算の全てではありません。 政府予算には「一般会計」のほかにも「特別会計」があるからです。 特別会計というのは、国が行う事業や資金運用などに用いる会計のことです。 具体的には、年金(医療含む)、財政投融資、地方財政の支援、震災復興などの項目があり、それらを足すと、額面上は400兆円近い規模になります。 しかし、そこには、一般会計と特別会計で二重に計算された金額が含まれているので、実額は半分程度です。 重複分を除いた特別会計は200兆円程度と見られています。 (一般会計の場合、重複分を引くと、実額は45兆円前後になる) 例えば、2017年は、特別会計の実額が196兆円、一般会計の実額(重複分除く)が43兆円。 両者の合計は239兆円でした。 (※この数値は財務省の「平成30年度 特別会計ハンドブック」による) ◆新聞記事をいくら読んでも、本当の2019年予算の姿は分からない 日本の財政は「一般会計+特別会計」から重複分を除いた数値(純計額)を見ないと、政府の本当の歳入と歳出はつかめないようになっています。 しかし、特別会計は複雑すぎるので、新聞やニュースなどは、その詳細をきちんと国民に伝えていません。 そのため、財務省HPで、その純計額を確認してみます。 【2019年予算】 〇歳入:244.5兆円 (租税収入が65兆円。年金や医療などの社会保険料は46兆円) 〇歳出:243兆円 ※財務省「財政法第28条等による平成31年度予算参考書類」を参照。次節も同じ。 ◆「(一般会計+特別会計)-重複分」で見た政府の七大支出 そして、規模の大きな歳出を見ると、社会保障関係費と国債費が目立っています。 ※値は全て四捨五入。()内は「費用÷歳出純計」の割合。 ――――― 〇1:社会保障関係費 92兆円(38%) (年金給付費が55兆円、医療給付費が22兆円、生活扶助等が5兆円、雇用、介護と少子化対策が3兆円ずつ、) 〇2:国債費:87兆円(36%) 〇3:地方自治体支援 19兆円(8%) (そのうち地方交付税交付金が16兆円を占める) 〇4:財政投融資 13兆円(5%) 〇5:公共事業関係費 8兆円(3%) 〇6:文教及び科学振興費 6兆円(2%) 〇7:防衛関係費 5兆円(2%) ――――― 純計額で見ても「社会保障関係費」が最大の項目になっています。 しかし、この92兆円は、社会保障で使われるお金の全てではありません。 厚生労働省は、昨年に、2016年の「社会保障給付費」は117兆円に達したと発表しています。 こちらの「社会保障給付費」のほうが、計上する範囲が広く、給付の総額を反映しているのです。 ※社会保障給付費はILO基準に基づいて算定。具体的には、社会保険制度、家族手当、公務員への特別制度、公衆衛生サービス、公的扶助、社会福祉、戦争犠牲者への給付などが含まれる。 ◆年間歳出のうち社会保障が占める本当の割合は? 結局、基準の取り方で、2019年の歳出に占める社会保障の割合は、ずいぶん違って見えてきます。 まず、一般会計(101兆円)のうち「社会保障関係費(34兆円)」が占める割合は34%です。 ――――― ところが、「一般会計+特別会計」の純計(243兆円)のうち、社会保障費が占める割合はもっと高いのです。 〇1「社会保障関係費(92兆円)」÷「歳出純計(243兆円)」=38% 〇2「社会保障給付費(121兆円)÷「歳出純計(243兆円)」=50% ※2019年の社会保障給付費は未定なので、2018年の財務省予測値を代入 ――――― 一般会計だけで見ると、社会保障予算は全体の1/3に見えます。 しかし、実際は、社会保障給付費は、政府支出の半分ぐらいの規模にまで拡大しているのです。 この給付費は2010年は105兆円だったので、1年につき2兆円の勢いで増えてきました。 このペースで行けば、一般会計の数値しか国民が知らない間に、社会保障費が政府支出の6割、7割を占める規模に拡大しかねません。 ◆特別会計の金額が分からなければ、国民は正しい判断ができない 今のままでは、現役世代の負担が年々重くなり、日本は、若者が夢を描けない国になってしまいます。 しかし、国民には、その危険性が伝わっていません。 そのため、選挙では、社会保障費の大盤振る舞いを掲げた政党が勝つこともよくあります。 結局、財政の本当の姿を伝えなければ、国民は主権者として正しい判断ができないわけです。 ◆特別会計の「見える化」が必要 こうした問題をなくすには、複雑すぎる特別会計を「見える化」しなければなりません。 政府がきちんと国民への説明責任を果たさない限り、日本の公会計は、国民にわからない「謎のエリア」であり続けるでしょう。 難題ではありますが、透明性の高い公会計をつくることは非常に大事です。 幸福実現党が目指す「小さな政府、安い税金」を実現するためには、公会計を国民の手に取り戻さなければなりません。 国民に理解できない公会計のもとで、国民主権が正しく機能するはずがないからです。 【参考】 ・財務省「平成31年度予算のポイント」 ・財務省「平成30年度 特別会計ハンドブック」 ・財務省「財政法第28条等による平成31年度予算参考書類」 ・財務省主計局「社会保障について」 すべてを表示する « Previous 1 … 20 21 22 23 24 … 78 Next »