Home/ 経済 経済 【党首討論】主な発言とその問題点 2019.07.04 【党首討論】主な発言とその問題点 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 7月3日には、日本記者クラブで党首討論が行われました。 与野党7党の党首が議論したのですが、今までと同じく、減税や自主防衛の強化など、日本に本当に必要な政策は語られませんでした。 しかし、それでも、各党の主張と問題点がよくわかる機会ではあるので、主な発言を紹介してみます。 ◆自民党:増税路線の固定化 安倍首相は、消費税の10%への増税後の財政を問われ、「今後10年くらいの間は必要ない」と答えました。 当面の間、10%の税率を維持し、その後、次の増税の可能性をほのめかしています。 つまり、過去の増税を間違いだとは認めず、現状の増税路線を維持することを決めたわけです。 ◆立憲民主党:ついに消費税増税の間違いを認めた いっぽう、枝野代表は、民主党政権の頃、三党合意で消費税増税を進めたことについて「結果的にあの判断は間違っていた」と発言。 意外にも「間違い」を認めました。 しかし、消費税に関する公約は増税凍結にとどまっているので、ほんとうの意味では反省できていません。 本当に間違いを認めたなら、8%の税率も撤回し、5%に戻すことを訴えなければいけないはずです。 ◆公明党:憲法論から逃げて票を盗みたい 山口なつお代表は、記者との質疑で「公明党の本心は安倍さんの憲法改正は迷惑だと思っているのではないか」と問われました。 この質問は的を射ています。 山口代表は、自民党の改憲議論を「政党の立場」として認め、「もっと与野党の枠を超えて議論をしっかりと深めて国民の認識を広めることは大事だ」答えたのですが、これでは、公明党の立場がよく分かりません。 党としての主張は「改憲」「護憲」などの「中身」が必要なのに、公明党は「議論しよう」としか言っていないからです。 結局、支持母体の創価学会は護憲なのに、公明党は改憲派の自民党と連立しているという、矛盾を隠すための答弁に終始しています。 憲法論で立場を明確にしないまま、バラマキ政策で票を集めて逃げ切ろうという意図が伺えます。 ◆野党連合の矛盾①:自衛隊の「合憲/違憲」、日米同盟の「維持/破棄」 安倍首相は、この討論で野党連合の政策の矛盾を強調しています。 「共産党は自衛隊は憲法違反だというのが明確な立場だ。枝野さんは合憲ということだろうが、もし枝野さんが福井県民だったら、この候補に一票入れるのか」 野党連合を見ると、現在、立民党と国民民主党は自衛隊を「合憲」、共産党は「違憲」としています。 (社民党は村山政権の頃、自衛隊を合憲としたが、現在、党HPにて「現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り」と記載。態度は転々としている) また、日米同盟に関しても、立民党と国民民主党は「維持」、共産党は「破棄」なので、立場が一致しません。 (社民党公約は「日米安保条約は、将来的に経済や文化面での協力を中心にした平和友好条約への転換をめざします」という謎の主張を記載) 討論で、枝野代表は「立憲民主党は明確に日米同盟堅持」とも強調していたので、立憲民主党が共産党と共闘しているのはおかしいのです。 結局、野党連合は「反安保法制」だけで結託しており、まとまった安全保障政策がありません。 こうした政党が政権を取ったところで「国民の生命と安全と財産を守る」という政治の責任を果たせるはずがないといえます。 ◆野党連合の矛盾②:年金政策が不一致なのに年金不安をなくせる? 安倍首相と野党の論戦では、年金が大きな争点になりました。 「志位さんはマクロ経済スライドを廃止すると言っている。枝野さんは民主党政権時代も維持してきたから、維持するという考えなのだろう。もし基本政策が統一されていないのであれば、非常に不誠実だ」 その際に、年金における野党政策の不一致もやり玉にあがりました。 将来世代のために物価・給料水準に応じて今の高齢者への給付を減らす「マクロ経済スライド」に関しては、国民民主党も否定的な発言をしています。 「マクロ経済スライドを適用して世代間の公平を図ろうとすると、どうしても削らざるを得ない」(玉木代表) 国民民主党は、年金で所得の最低保障を行いたがっているので、この制度がその妨げになると見ているようです。 元民主党議員がつくった政党なので、昔に自分たちが維持した制度について「廃止」とは言えないのですが、国民民主党の年金政策は、かなり共産党寄りになってきています。 ◆共産党:「減らない年金」? 共産党の志位委員長は「マクロ経済スライドは廃止し、減らない年金にすべきだ」と主張。 これに対して、安倍首相は「(その場合)今40歳の方が、もらう段階になって年金の積立金は枯渇する」と反論しました。 これは、安倍首相のほうに理があります。 年金は、今の高齢者に多めに給付されており、年を減るに従って給付額が次第に減るように設計されていますが、マクロ経済スライドは、物価や賃金の変動に応じて、直近の世代に払いすぎにならないよう、給付額を削減する仕組みだからです。 これを廃止した場合、今の世代は後の世代に比べると「もらいすぎ」になってしまい、「世代間不平等」が拡大します。 高齢者がどんどん増え、高齢者1人あたりの現役世代の数が減っていくわけですから、給付金が減っていくこと自体は避けがたいものがあります。 志位委員長の主張には無理があり、結局、今の高齢者のために年金の積立金をばらまくだけで終わってしまうでしょう。 ◆日本維新の会:「身を切る改革」は何のため? 維新の会の松井代表は「身を切る改革」を提唱。 「大阪府と大阪市で行革をすることで教育無償化の財源を生み出した」 その結果、「教育無償化」の財源ができたと自慢し、これを全国に広げるべきだと主張しました。 維新に関しては「お金の使いみち」が妥当かどうかという問題があります。 今の教育無償化は、(消費税などで)全世帯から集めたお金を子供のある世帯に配る行為なので、必ずしも公平な政策ではありません。 子供のいない世帯からお金を集め、そのお金を子供のある世帯に移転させているからです。 国の予算を浮かせることができたならば、その分だけ減税するか、全国民に恩恵がある政策(例えば防衛費など)に回すのが筋です。 維新に対しては「何のために身を切るのか」という問題があります。 ◆社民党:自己責任の否定=社会主義 社民党は党首が体調不良で欠席し、吉川幹事長が出席という体たらくでした。 吉川幹事長は「かたくなに憲法を守る」と従来の方針を表明。 特に注意を要するのは「国民に自己責任を問うのは政治の責任放棄」という発言です。 自己責任を否定した政治の行きつく先は、国が親方日の丸で企業や個人を養う社会主義の世界だからです。 政治は「最低限のセーフティネット」で苦しんでいる人を助けるべきですが、それは自己責任を否定することと同じではありません。 ◆「減税と安全」の幸福実現党が今こそ必要 結局、党首討論では、本当に必要な「消費税5%への減税」や「自主防衛の強化」についての議論はありませんでした。 17年の北朝鮮のミサイル危機、18年以降の米中対立の本格化、19年のトランプ「同盟不公平」発言など、日本への警告とも取れる出来事が続いているのですが、それでも「自分の国は自分で守る」という議論は、議員から出てこないのです。 憲法9条の1項・2項を含めた全面改正の議論は、どこかへ雲散霧消しています。 また、米国も中国もイギリスもフランスも減税にかじを切っているのに、日本だけはなぜか増税路線です。 これでは、景気の先行きが思いやられます。 しかし、既存の政治家が動かないからこそ、新しい選択を訴える勢力が出てこなければいけません。 幸福実現党は、憲法9条の根本改正や、消費税5%への減税といった、本当に必要な政策の実現を訴えてまいります。 【参照】 ・産経新聞 2019年7月4日付 ・読売新聞 2019年7月4日付(朝刊) ・朝日新聞 2019年7月4日付(朝刊) ・毎日新聞 2019年7月4日付(朝刊) 【野党公約比較】「消費税増税反対」の本気度は疑わしい 2019.07.01 【野党公約比較】「消費税増税反対」の本気度は疑わしい HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆最後の国会論争 なぜ「消費税」を取り上げなかったのか 最近の野党は、「年金だけでは2000万円不足」と書かれた報告書を取り上げ、「自公政権では年金が危うい」ということを印象づけたがっています。 特に、党首討論では、年金をめぐる失言を引き出そうと躍起になっていました。 立民党や国民民主党、共産党などの年金政策にも「給付増のために現役世代の負担が重くなる」という問題があるのですが、国民は、そのプランの中身はわからないとタカをくくり、年金不安を煽ろうとしているようです。 これに関して、経済学者の田中秀臣氏(上武大学ビジネス情報学部教授)は苦言を呈しています。 「本当に10月の消費税率10%引き上げにストップをかける気があるのだったら、19日の国会での党首討論はその絶好の場だった」 「消費増税を論点にして、実施の是非を問うには最大の見せ場であったはずだ」 大事なテーマをわきに追いやってしまったので、田中氏は「政治的に消費増税を止める絶好の機会を、野党は自ら失った」と批判しています。 そして、(増税反対の)「本気度はあいかわらず極めて低い」と酷評しているのです。 ◆立民党と国民民主党の問題点①:自分たちが増税を推進したのに、何の釈明もない 今の野党には、増税反対の熱意に乏しいという問題点があります。 それは、主な政治家の言動や公約からも見てとれます。 そもそも、「民主党」という名がつく二つの野党には、与党だった頃に増税に加担した議員がたくさんいますが、現在、増税反対を訴える折に、はっきりと釈明していません。 立憲民主党の枝野代表がその典型ですが、公約集(「立憲ビジョン2019」)をみると、不思議なことに、そこには、過去、増税を推進したことの釈明もなければ、「増税凍結」に転じた理由の説明もないのです。 ◆立民党と国民民主党の問題点②:バラマキで増税に転じた過去に学ばず そして、年金・医療・介護などの個人負担に上限を設ける「総合合算制度」、年金の最低保障機能の強化、国公立校の授業料の半額削減、奨学金の拡充、農家への戸別所得保障など、お金のかかる政策を並べています。 こうした立民党のプランと「増税凍結」は矛盾します。 また、国民民主党の公約も、「児童手当増額(18歳まで対象、月15000円)」「低所得の年金生活者に月5000円の給付金」「家賃補助(年収500万円以下に月1万円)」といったバラマキ政策を訴えています。 要するに、立憲民主党と国民民主党は、国民に福祉の大盤振る舞いを公約し、「消費税増税はしません」と言っています。 こうしたスタンスは、2009年の民主党公約とあまり大差がありません。 この二党は、福祉の大盤振る舞いを約束し、最後に増税政党に転じた、昔の経験から何も学んでいないのです。 ◆共産党:民主党を超える迫力満点のバラマキ政策 国民の歓心を買うためにバラマキ政策を並べるのは、共産党も同じです。 その代表的な政策を並べてみます。 ・「減らない年金」にする、低年金を底上げ(※底上げ=増額を公約) ・「マクロ経済スライド」を廃止 ・公費1兆円の投入で医療の自己負担分を減らす ・教育無償化と奨学金の拡充 ・中小企業の賃上げ支援を1000倍に かつての民主党以上のバラマキ政策なので、これで消費税の増税に反対といわれても、いま一つ現実味がもてません。 結局、どの政党も「お金をもっと配ります。皆さんのために使います」と言いながら、「消費税は上げなくても大丈夫」と言っているのが現状です。 ◆野党公約を見る限り、「消費増税反対」の本気度は疑わしい こうした政策をみていくと、野党には「本当に消費税の増税をやめさせる気があるのだろうか」という疑問が湧いてきます。 バラマキ政策をどんどん増やしていけば、昔の民主党のように「お金が足りないので、増税が必要になりました」と言わざるを得なくなるからです。 共産党は「金持ちから取ればいい」といいますが、徴税を強化すれば、お金持ちは日本から海外に逃げていくだけです。 「大企業から取れ」といっても、グローバル企業は、日本よりも税金の安い国に拠点を移すなど、様々な対策を取れます。 政府の思い通りに「取れる」とは限らないので、こうした算段は「取らぬ狸の皮算用」で終わっても不思議ではないのです。 (※程度が違えども、こうした発想は、立民党や国民民主党とも共通している) ◆「小さな政府」「安い税金」でなければ増税反対の筋は通らない しかし、幸福実現党は、立党以来、「小さな政府」と「安い税金」を目指し、消費税増税に反対してきました。 そして、消費税5%への減税、法人税1割台への減税を訴えてきました。 税率を下げる以上、無駄な予算を廃し、勤労意欲を損なうような給付金のバラマキはやめなければいけません。 そうしなければ、筋が通らないからです。 バラマキ政策が恐ろしいのは、「一度始めたら、やめられなくなる」という点にあります。 一度、お金をもらった人は、それをあてにするので、後で廃止するのは難しく、選挙のたびに、今まで以上のバラマキが求められるようになります。 そして、今の野党の公約のように、選挙のたびに、バラマキの規模がどんどん大きくなるのです。 こんなことを繰り返していては、消費税増税の凍結や、5%への減税などは不可能です。 幸福実現党は、本気で消費税増税に反対し、5%への減税を目指しているからこそ、バラマキ政策による人気取りに反対してきました。 今後も「小さな政府、安い税金」の旗を下ろさず、消費税5%への減税を訴え続けてまいります。 【参照】 ・田中秀臣「枝野幸男の『自慢』が文在寅とダブって仕方がない」(産経iRONNA 2019/6/25) ・立憲民主党HP「立憲ビジョン2019」 ・国民民主党「新しい答え 2019」 ・日本共産党「希望と安心の日本を 参院選にあたっての日本共産党の公約」(2019/6/21) 年金「百年安心」シナリオ あなたは信じられますか? 2019.06.27 年金「百年安心」シナリオ あなたは信じられますか? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆党首討論は「2000万円報告書」をめぐる政治闘争に終止 6月19日の党首討論では、消費税減税や国防強化といった、本当に大事な政策が議論されませんでした。 年金だけでは「2000万円足りない」と書かれた報告書についてのやりとりが続きましたが、「社会保障費が増え続ける中で、本当に100年安心を保てるのか」という、現実に即した議論も盛り上がりませんでした。 まともな質問だったのは、5年に1度の財政検証の発表が遅れていることと、実質賃金の伸び率が前回の財政検証で最低値と想定した0.7%を下回っていることを問うた、国民民主党の玉木代表の発言ぐらいで、あとは残念な内容です。 立憲民主党の枝野代表が訴えた、(社会保障の)「自己負担額に所得に応じた上限を設ける総合合算制度」と「介護・医療従事者の賃上げ」は、結局、さらに社会保障費が必要になります。 また、共産党の志位委員長が述べた「減らない年金」というのは、保険料を払う現役世代が減る中で高い年金給付を維持する構想なので、結局、一人あたりの年金保険料が増えるだけです。 どちらも、社会保障費が膨張するなかで、大盤振る舞いをめざす人気取りでしかありません。 今の党首討論は、各党がスタンドプレーを狙うつまらない会合に堕しています。 ◆年金をめぐる財政検証の発表は「選挙の後」? 麻生金融相の「報告書」受取拒否は論外ですが、財政検証の発表が遅れているのも、大きな問題です。 これは「100年安心」の年金を保障するために、5年に1度、財源と給付金が適正かどうかを厚労省がチェックする作業です。 具体的には、年金給付が会社員世帯の平均賃金の半分以下にならないように調整します(所得代替率の5割以上にする)。 過去の検証結果は、2004年、09年、14年に公表されました。 本年も、過去の日程から見ると、もう公表すべき時期が来ています。 ・前々回:08年11月に検証のための経済前提を厚労省の専門委が年金部会に報告。検証結果は09年2月に公表。 ・前回は:14年3月に経済前提を年金部会に報告。検証結果は6月に公表。 本年は3月13日に「経済前提」が報告されており、過去は約3ヶ月で公表されたことから考えれば、選挙への影響を「忖度」して、発表を遅らせているようにしか見えません。 これを党首討論で問われた安倍首相は、「財政検証をしている最中であり、(最新の結果の)報告を受けていない」とはぐらかしていました。 ◆財政検証の「経済前提」は妙に楽観的 過去の財政検証に関しては、試算の前提となる経済指標が楽観的すぎるという声もありました。 (2009年の検証は)「100年近くにわたって運用利回りを年率4.1%もの高利回りに設定したり、賃金も年率2.5%で100年近く上昇することが前提となっています」(学習院大学教授・鈴木亘氏 ※1) 「実質賃金上昇率 1.2~1.4%という結果は、およそ100年後までの超長期の経済前提であるとはいえ、最近の実績と比較するとやはり高い」「2000年代に入ってからの実質賃金上昇率を計算すると-0.23%でしかない(2000~12年度の単純平均)」(日本総研調査部 上席主任研究員・西沢和彦氏 ※2) この検証には、経済成長率や物価上昇率、生産性や給料の伸び率といった指標が、「百年安心」という標語に都合のよい形に歪められる危険性があることに注意が必要です。 ◆成長率がマイナスでも年金の運用利回りはプラスになる? 確かに、2014年の「経済前提」をみると、不審な数値も目に付きます。 「2024年以降の20~30年」に適用される未来シナリオは、ケースA~Hまでの8通りですが、そこでは、平均値の経済成長率(実質)がマイナスになろうとも運用利回りは必ずプラスになることが想定されています。 それは、以下の想定です(どちらも名目値-物価で計算した数字)。 A:成長率 1.4% 利回り3.4% B:成長率 1.1% 利回り3.3% C:成長率 0.9% 利回り3.2% D:成長率 0.6% 利回り3.1% E:成長率 0.4% 利回り3% F:成長率 0.1% 利回り2.8% G:成長率 -0.2% 利回り2.2% H:成長率 -0.4% 利回り1.7% シナリオAとEには成長率で1%の差がありますが、利回りは0.4%しか差がありません。 また、シナリオAとHには成長率で2%差がありますが、利回り差は1.7%です。 つまり、成長率よりも利回りが下がりにくいという想定になっています。 ◆財政検証はGPIFを買いかぶり過ぎでは 2014年10月まで、年金資産を扱うGPIFは債権7割で運用していたので、日本の景気が運用損益に与える影響を抑えようとしていました。 しかし、アベノミクスでの株高を支えつつ、そのメリットを活かそうと考え、株式の割合が5割にまで上がった結果、昔よりも運用損益は景気の影響を受けやすくなっています。 今の「国内株式25%、海外株式25%、国内債券35%、海外債権15%」という運用比率で、日本の成長率がマイナスになっても利回りプラスを維持できるかどうかは、疑問が残ります。 米国で1600億ドルの資産を運用するレイ・ダリオ氏(ブリッジウォーター創業者)は「株式には債権の3倍のリスクがある」(※3)と指摘していますが、財政検証では、GPIFはそのリスクをものともせず、不景気下でも利回り1.7%を出し続けることが想定されているのです。 ◆「百年後の未来」がわかるなら苦労しない 財政検証の結果は、まだわかりませんが、自民党や公明党のいう「百年安心」には無理があります。 そもそも、今後100年の経済動向など、誰もわかるわけがないからです。 それを「安全だ」と主張するために、財政検証で様々な手練手管をこらしていることが伺えます。 本来、財政検証は、年金の健全化のために必要なのですが、それが十分に生かされていない状況が続いてきました。 年金に関しては、大盤振る舞いが続いているので、今の高齢者と将来の高齢者のために、給付の適正化をはからなければいけません。 幸福実現党は、年金に関して、ウソや隠し事、タブーを廃した正直な議論を推し進めてまいります。 【参照】 財政検証の数値は「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しー平成26年財政検証結果-」(2014/6/3)から引用。 ※1:鈴木亘著『社会保障亡国論』(講談社現代新書) ※2:西沢和彦「年金財政検証における経済前提の見方」(日本総研、2014/5/2) ※3:アンソニー・ロビンズ著『世界のエリート投資家は何を考えているのか』(三笠書房) 中小企業を苦しめる「最低賃金の引上げ」 2019.06.24 中小企業を苦しめる「最低賃金の引上げ」 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆主要政党が「最低賃金引き上げ」を公約 参院選が近づき、各党が公約を発表しています。 その中でも、最低賃金の引き上げは、多くの政党が好むテーマの一つです。 日本維新の会を除く、自民、公明、立民、共産の四党は、それぞれ、最低賃金について、以下の金額を提示しました。 ・自民党:1000円を目指す(年率3%程度。全国加重平均) ・公明党:1000円超を目指す(2020年代前半を目途〔全国加重平均〕/2020年代半ばに半分以上の都道府県で達成) ・立憲民主党:全国どこでも誰でも時給1000円以上になるように引き上げ(※17年発表の「基本政策」) ・共産党:時給1500円を目指す(いますぐ、全国どこでも1000円。中小企業への賃上げ支援を1000倍に) ※維新の会は「最低賃金」という制度に否定的で、生活難には給付金で対応すべきという発想。 ◆「強制賃上げ」党ばかり 自民党と公明党は、数年かけて時給を1000円に上げようとしていますが、立憲民主党と共産党は「一律1000円」をすぐに実現しようとしています。 つまり、立民と共産のほうが「強制力」による引き上げというカラーが濃厚に出ているのです。 そして、財源を富裕層と大企業に求める共産党だけが「賃上げ支援1000倍」と「1500円」という途方もない数字を掲げています。 この2党に労働政策を任せた場合、中小企業の負担にお構いなく、一気に「強制賃上げ」を行うので、人件費の拡大に耐えきれない企業が、バタバタと倒れていくでしょう。 ◆日商と東商が「最低賃金引き上げ」について政府と各党に苦言 現在、政治家は「立法」という強制力をちらつかせながら、「私達が賃金を上げます」とささやき、国民の歓心を買おうとしています。 しかし、問題なのは、その賃上げが、経済の実態から見て、本当に可能なのかどうか、ということです。 それを見越してか、日本商工会議所(日商)と東京商工会議所(東商)は5月末に賃上げに対して「中小企業から大きな不安を訴える声が高まっている」と訴えました。 最低賃金の引き上げに対して、多くの中小企業が「設備投資の抑制」や「正社員の残業時間の削減」「一時金の削減」で対応すると答えたことを指摘し、「最低賃金に関する緊急要望」を発表したのです。 ◆「3%以上の賃上げ」と「強制力」を用いた賃上げにダメ出し その要望書では、「3%以上の賃上げ」と「強制力」を用いた賃上げに反対しています。 ・経済情勢や中小企業の経営実態を考慮せず、政府が3%を上回る引上げ目標を設定することに強く反対 ・中小企業の賃上げ率(2018年:1.4%)などを考慮し、納得感のある水準を決定すべき。3%といった数字ありきの引上げには反対 ・強制力のある最低賃金の引上げを政策的に用いるべきではない。中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備すべき (※原文はやや読みにくいので、ある程度、平易な言葉に直しています) ◆「最低賃金1000円」になったら中小企業はどうする? この要望書では現在、全国で874円の最低賃金が政府目標の通り、「年率3%」で数年後に1000円になった場合、約15%の大幅引上げとなり、企業にとって「一人あたり年間で約30万円の負担増」になると指摘していました。 30円~40円の引上げとなった場合に「影響がある」と答えた6割の企業の対応策(複数回答)の筆頭には「設備投資の抑制等」(40%)があがっており、それ以外には、人件費の削減案が目白押しでした。 ・正社員の残業時間を削減する:27.8% ・一時金を削減する:23% ・非正規の残業時間・シフトを削減:21% ・正社員の採用を抑制する:17.2% ・非正規社員の採用を抑制する:13.8% ・非正規社員を削減する:9.2% ・正社員を削減する:3.2% 結局、別の形で給与減や社員削減が進むので、最低賃金の引き上げが必ずしも全体の賃金増に結びつかないことが見えてきます。 日商と東商の調査によれば、すでに中小企業の6割は「業績の改善が見られない中での賃上げ」をしており、それを続ける余力がなくなってきています。 8割の企業は賃上げ分の人件費を価格に転嫁できておらず、設備投資を抑えたり、他の人件費を削ったりするしかありません。 ここ7年間で63万社の中小企業が減ったことを踏まえ、この要望書は、「最低賃金の大幅な引き上げが地域経済の衰退に拍車をかける懸念」があると主張していました。 ◆本来、あるべき賃金政策とは 日商と東商の調査を見ると、国民の歓心を買いたがる政治家と、賃金を支払う中小企業との間に、埋めがたい落差があることがわかります。 結局、数年かけて1000円を目指す自公政権の賃上げでも、日本の民間雇用の7割を担う中小企業を押しつぶす結果になりかねません。 これは、政治家が企業に自分たちの人気取りへの協力を強要しているだけです。 こうした危険性があるために、幸福実現党は、長らく「経済界への賃上げ要請や最低賃金の引き上げなど、政府による過度な民間への介入姿勢に反対」してきました。 また、最低賃金法には、根本的な欠陥があります。 それは、需要と供給によって決まる賃金に対して、全国で一律に最低額を決めた場合、不適合を起こす地域が出てくるということです。 最低賃金を強制的に高値で固定すると、企業は雇用増に尻込みするので、それがなければ職につけた人が失業者になるという逆説が発生します。 前掲の中小企業の返答に「採用抑制」が並んでいたことは、それを裏付けていますし、これは経済学的にも理にかなっています。 そのため、幸福実現党は「最低賃金法の廃止」まで政策に入れました。 これは、2012年に日本維新の会が世の批判に恐れをなして公約から撤回した政策でもあります(結局、「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革」と書き直した)。 しかし、幸福実現党は、そのようなことはしません。 立民と共産は中小企業の負担を無視した賃上げを主張し、自公政権は「国民は愚かだからわかるまい」とバカにして、中小企業を苦しめ、全体の給料増にもならない公約を並べました。 実現党は、そうした「強制賃上げ党」の数々とは一線を画し、本当の適正賃金が実現する雇用政策の実現を目指してまいります。 【参照】 ・自民党「令和元年政策BANK」 ・公明党「2019参院選 重点政策5つの柱」 ・立憲民主党「基本政策」 ・共産党「2019参院選 HOPE is 明日に希望が持てる政治に」・日本商工会議所「最低賃金に関する緊急要望(概要版)」 ・同上「最低賃金に関する緊急要望(本文)」 ・同上「最低賃金引上げの影響に関する調査結果」 ・J-CASTニュース「維新の会、「最低賃金制」を「廃止」から「改革」に修正」(2012/12/5) 年金の「世代間格差」という恐ろしい問題 2019.06.15 年金の「世代間格差」という恐ろしい問題 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆月19万円の年金生活 いつまで可能? 公的年金のほかに2000万円の老後資金が必要だと試算した報告書は、麻生金融相の「受取拒否」により「ない」ことにされました。 その報告書では、年金ぐらしの夫婦の1カ月の収入が21万円、支出は26万数千円と見積もられ、支出の大きさが注目されました。 年金は19万円もらえることになっているので、この金額は、若い世代の給料とあまり変わりません。 これを見て、「自分の給料と同じぐらいだ」「自分の給料よりも多い」などと思われた方もかなりいるのではないでしょうか。 しかし、本当の問題は、給付について「中長期的に実質的な低下が見込まれている」ことにあります。 結局、「こうした大盤振る舞いをいつまで続けられるのか」が問われているわけです。 ※この支出額は「平均値」で計算しているので、お金持ちの大きな支出が加算され、上増しされている。本来は、「中央値」(資産順に並べた時に真ん中になる順位の人の値)で計算すべきだが、なぜか「平均値」での試算が行われている。 ◆報告書が試算する年金減額 この報告書でも、先行きの厳しさを見込んで、年金減額をシミュレーションしています。 年金が現役世代の給料の何割にあたるか(所得代替率)が、出生年別に図られました。 各出生年の方が65歳になった時〔()内の年〕の所得代替率が見積もられたのです。 ・1949年度生(2014時点):62.7% ・1954年度生(2019時点):59.7% ・1959年度生(2024時点):58.3% ・1964年度生(2029時点):56.8% ・1969年度生(2034時点):54.8% ・1974年度生(2039時点):52.3% ・1979年度生(2044時点):50.6% ・1984年度生(2049時点):50.6% 今後、所得代替率は、6割から5割に下がることが見込まれています。 (※現在の制度では、所得代替率は5割以上でなければいけないので、50%以下にはならない) そして、近年は、金融緩和に伴う物価上昇で1円あたりの価値が下がっているので、その分だけ、実質的に減額されているのです。 ◆年金の「世代間格差」 所得代替率が下がるだけでなく、今後は、払った保険料よりももらえるお金のほうが少なくなります。 この問題に関して、学習院大学教授の鈴木亘教授(学習院大学教授)は、1960年生まれよりも後の世代は、もらえるお金以上に保険料を払わなければいけなくなると指摘しています(『社会保障亡国論』P63)。 そして、1990年代以降になると、その差額は2000万円を超えると計算しています。 【厚生年金の「世代別損得計算」】(2013年時点) ・1940年生 +3170万円 ・1950年生 +1030万円 ・1960年生 +40万円 ・1970年生 -790万円 ・1980年生 -1510万円 ・1990年生 -2030万円 ・2000年生 -2390万円 ・2010年生 -2550万円 若い世代ほど、給付金と保険料の差額がどんどん開いているわけです。 ◆若者は政治参加をしないと大変なことに そもそも、年金は、現役世代が支払った保険料が退役世代に給付される「賦課方式」で運営されています。 しかし、日本では、60代の投票率は7割を超え、20代は3割、30代は4割しかありません。 そのため、今の政治家は、高齢者を優先した社会保障政策を打ち出し、現役世代や若者の負担を増やしてきました。 結局、投票率の低い若年世代に年金制度のツケが回るようになっているのです。 今の日本の年金は、こうした「世代間の不公平」を抱えた制度です。 政治参加の自由は各世代に平等に保障されていますが、その自由を行使しなければ、結局、その代償が自分の未来にも跳ね返ってきます。 そのため、投票率が低い青年層から中堅層にとっては、自分自身の未来を守るためにも、投票権を用いることが大事です。 既成政党は、高齢者向けの福祉を増やすばかりで、それを支える現役世代や若者の負担を顧みません。 しかし、その中にあって、幸福実現党は、給付と負担の適正化を訴えてまいります。 そうしなければ、日本は、若者が夢を抱ける国にならないからです。 【参照】 ・金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日) ・鈴木亘『社会保障亡国論』(講談社現代新書) 老後「月5万赤字」の報告書撤回 年金の現実を直視すべき 2019.06.14 老後「月5万赤字」の報告書撤回 年金の現実を直視すべき HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆「2000万円」報告書に揺れる安倍政権 「夫婦の老後資金に30年で2000万円が必要」と記した金融審議会の報告書をめぐって、安倍政権は紛糾しています。 政権の方針と違うという理由で麻生金融相が報告書の受取りを拒否し、与党幹部が審議会に抗議しました。 「話が独り歩きし、不安を招いている」(二階幹事長) 「極めてずさんな内容」(岸田政調会長) 「年金の不安をあおるような言動は罪深い」(公明党・山口代表) その報告書では、無職の高齢夫婦の家計モデルで、支出よりも収入が5万円ほど少ないことや、年金減額の可能性が書かれていたので、「百年安心」をうたった与党の怒りを買ったわけです。 ◆同じ内容が厚生労働省ではOK、金融庁ではNG しかし、このモデルは、2ヶ月前に厚生労働省が出した資料の転載にすぎませんでした(「厚生労働省提出資料(2019/4/12)」 そのため、厚生労働省ではOKだったモデルが、金融庁では認められなかったことになります。 年金減額については、「中長期的に実質的な低下が見込まれている」(5/22時点)と書かれていた箇所が、6月3日に「今後調整されていくことが見込まれている」と修正されました。 ここも、実は、厚生労働省の資料に同じような記述があります。 「給付水準は今後、マクロ経済スライドによって調整されていくことが見込まれている」 結局、同じような論述に対して、安倍政権は「厚生労働省はOK」「財務省はNO」と判断したわけです。 ◆「本当のこと」を書いただけなのに審議会を糾弾 しかし、減額についての記述は、間違っていません。 高齢者が増え、現役世代が減っているので、将来の年金減額は避けられないからです。 さらに、金融緩和で物価が上がれば、年金の給付額が同じでも実質的な価値が減っていきます。 ところが、政府は、選挙前にそれを正直に書いた審議会が許せませんでした。 「選挙に不利だから」というだけの理由で、客観的な分析が拒絶され、糾弾されたのです。 ◆「月5万円不足」「30年で2000万円必要」の中身とは 今回、問題とされたのは、以下の記述です。 「高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、毎月の赤字額は約5万円となっている」 「この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなる」 この5万円は、年金ぐらしの夫婦の1カ月の収入から支出を引いた額です。 しかし、その支出には教育娯楽費などが含まれているので、この通りに赤字が出ても、生活難になるわけではありません。 26万4000円の支出のうち、教養娯楽費は25000円、その他支出が54000円とされ、かなり余裕のある生活が想定されているからです。 生きていくために必要な支出は18万5000円程度(「食料・住居・光熱・水道・交通・通信・衣料・家具・保険」+「税金」)。 年金などの給付金は19万2000円、その他収入が1万7000円とされているので、審議会は、もともと「年金で生きていけない」という事態を想定していませんでした。 報告書は、余裕のある老後を夫婦で過ごすには30年で2000万円ほど必要だと言って資産運用を薦めただけなので、審議会は、まさか、この記述が世を騒がすとは思わなかったことでしょう。 ◆国民に根強い「年金への不安」 この報告書をめぐって大騒ぎが起きたのは、公的年金さえあれば老後は安泰だとする自公政権の方針とは違う記述が含まれていたからです。 政府の審議会が、公的年金だけでは収入が足りないと言って、民間の年金や株式、債権などでの資産運用を薦めれば、「公的年金は頼りにならないのか?」という疑問を抱く人が出てきます。 そのため、自公政権の幹部は「年金の不安を煽っている」と批判しました。 国民にも、少子高齢化のなかで年金への不安が根強くあるので、今回の報告書は、マスコミにとっても格好の「ネタ」になったのです。 ◆年金をめぐる「正直な議論」を封殺する安倍政権 このやりとりで、政権に都合の悪い言論が封殺される過程が国民の前に明らかになりました。 しかし、大盤振る舞いが続く年金も、今後は、少子高齢化によって減額をよぎなくされます。 現役世代の負担はどんどん増えているからです。 国民年金ができた頃には、1人の高齢者を11人の現役世代で支えていましたが(※1960年。国民年金法は61年施行)、2020年には、1人の高齢者を2人の現役世代で支える事態がやってきます。 また、1960年の日本の平均寿命は、男性が65歳、女性が70歳でしたが、2016年の平均寿命は16歳以上も伸びています(男性81歳、女性87歳)。 報告書に書かれた通り、年金の給付金は「中長期的に実質的な低下が見込まれている」のです。 自公政権は、この問題を正直に認めることを拒み、野党は、それを政争のネタにしようと画策しています。 これでは、国会で、年金をめぐる建設的な議論が行われることは、まったく期待できません。 こうした現状を打破するためにも、国会に新しい勢力が台頭することが必要になっています。 幸福実現党は、社会保障においても真正面から正論を訴え、歳出の適正化や民間の役割拡大などを訴えてまいります。 【参照】 ・毎日新聞「前代未聞の不受理劇 『老後2000万円』 選挙の影」(2019年6月12日 東京朝刊) ・東京新聞「批判噴出で年金表現修正『老後2千万円』報告書」(2019年6月12日) ・金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日) ・厚生労働省年金局 企業年金・個人年金課「厚生労働省提出資料 iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題」(2019年4月12日) 日米貿易交渉を契機に農政の大転換を 2019.05.31 日米貿易交渉を契機に農政の大転換を HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆日米経済協議の中で農業は重要分野 5月に訪日したトランプ大統領は、日米貿易交渉の結果について、「8月に発表ができると思う」と述べました。 この交渉が本格化するのは参院選後となる見込みですが、そのなかで、日本の保護農政のあり方は、大きな争点の一つになっています。 日本では、自由に競争が行われている農産物と、高関税などで保護される農産物との差が大きいので、特に後者が問題視されているのです。 ◆米国が交渉を急ぐ背景 米国の通商代表部(USTR)は、日本には、牛肉や豚肉、コメ、小麦、砂糖、かんきつ類などに「貿易障壁」があると批判しています。 --- 【米国から見た「貿易障壁」の例】 ・コメ:輸入分のほとんどが加工・飼料用や食料援助用となり、消費者に提供されない ・小麦:小麦輸入は国家貿易 ・豚肉:差額関税制度(国内販売価格より輸入価格が安い場合、差額分が関税扱いとなる) --- 米国はTPPを離脱したため、現状ではFTAの恩恵を受けられず、TPP11の国々よりも高い関税がかかっています。 例えば、米国産牛肉には36%の関税がかかりますが、TPPに加盟している豪州・カナダ・ニュージーランド・メキシコの牛肉は27.5%です。 そのほか、日欧FTAも発効したので、欧州の農産品も関税削減が始まっています。 結局、現状は米国農産品に不利なので、トランプ政権は交渉を急いでいるわけです。 ◆日米協議についての安倍政権のスタンス 米国はTPPよりも有利な条件を勝ち取るために、TPPを離脱しました。 「(米国は)TPPに参加しておらず、縛られていない」(トランプ大統領 5/27) しかし、安倍政権は一方的にTPPを離脱した米国を他国よりも優遇できないと考え、「TPPと同水準」で日米貿易交渉をまとめようとしています。 安倍政権は、選挙で農業票を失いたくないので、「コメや麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖」などの関税は譲れないと考えているのです。 ◆減反と高関税でコメの消費者負担は重くなる しかし、高関税は輸入品の値段をあげ、消費者に負担を強いるので、国民全体の利益を損なっています。 農政アナリストの山下一仁氏は、生産量を減らす「減反」と「高関税」でコメの値段が上がり、年間6000億円もの国民負担を生んでいると指摘しています。 マスコミ報道では、「安倍政権が減反を廃止した」ことになっていますが、この種の補助金は、違った形で支払われています。 減反補助金と、2010年度に始まった戸別所得補償を足すと、年間で4000~5000億円の規模になっていました。 この補助金の配分が2013年に変わり、普通のコメのかわりに飼料米などをつくる農家への補助金が強化されたのです。 農政の体質は変わっていません。 (2019年予算では「水田活用の直接支払交付金」 が3215億円。これに他のコメ農家支援の項目が追加される) 山下一仁氏は、4000億円以上の補助金に高米価がもたらす6000億円の消費者負担を足すと、国民は毎年、1兆円以上の負担を強いられていると試算していました。 ◆保護農政の結果、主業農家は農地規模を十分に拡大できず 減反が始まった1970年に農地は580万ヘクタールありましたが、2017年には444万ヘクタールにまで減りました(23%減)。 1968年に1445万トンあったコメの生産量は、2017年には782万トンにまで下げられています(46%減)。 本来は、自由競争の中で農産物を増やし、余った分を輸出すべきなのに、コメ農政はその逆になっています。 この政策は「自給率の向上」を目指す農林水産省の方針とも矛盾します。 自民党や公明党は、農業だけでは食べていけない兼業農家の票を得るために、補助金行政を続けてきました。 その結果、自由競争に任せれば農業をやめて土地を貸し出す層までが保護されたので、主業農家は農地を十分に拡大できなかったのです。 ◆コメ農政の大転換を 農業では、「規模を大きくして生産コストを下げる」という規模の経済が働きます。 しかし、日本では、そのメリットを活かせませんでした。 そのため、幸福実現党は、生産調整に伴う補助金を廃止し、主業農家の生産量を増やそうとしています。 生産量が増えれば、農産物の価格が下がるからです。 また、輸出できるほど農産物を増やせば、非常時に輸出分を自国消費に回せるので、食糧安全保障は強化されます。 日本は、トランプ政権との日米交渉を契機に、農政の大転換を行うべきです。 幸福実現党は、立党以来、生産調整(減反)の廃止と大規模化の推進を訴えてきました。 家計を楽にするために、生産を増やし、安いコメが買える農政を実現してまいります。 【参照】 ・外務省「2019年 USTR外国貿易障壁報告書(日本関連部分概要)」 ・農林水産省「平成29年度 農林水産白書」 ・農林水産省「米をめぐる関係資料」(平成30年7月) ・山下一仁著『日本農業は世界に勝てる』(日本経済新聞出版社) 公務員平均給与は678万円 民間平均は432万円 この差は何? 2019.05.29 公務員平均給与は678万円 民間平均は432万円 この差は何? HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆増税を予定しながら、自公政権は5年連続で公務員の給料を増やした 2019年には消費税10%への増税が予定されていますが、不思議なことに公務員の給料は伸び続けてきました。 18年11月には、平均年収を約3万円増やし、678万3000円とする改正給与法が成立しています。 これで、5年連続の給料増となることが決まりました。 ◆平均給与「公務員VS上場企業」の結果は? 政府の言い分は、好景気が続いてきたので、公務員も「民間並み」に昇給したということです。 しかし、その説明に納得できる人がどれだけいるのでしょうか。 東京商工リサーチによれば、2018年3月決算をもとに計算した上場企業(1893社)の平均年間給与は620万8000円です。 今の公務員は、厳しい上場基準をクリアした企業よりも、1割ほど高い給料をもらっていることになります。 さらに、民間の平均給与をトータルで見ると、2017年は432万円でした。 (*民間給与実態統計調査〔平成29年度〕。現在、17年の値が最新) これは、正規・非正規と男女の双方を含めた約4900万人の平均値です。 4900万人の23%が非正規社員なので、金額は低めになる分は割り引いて考えるべきですが、公務員とは250万円近い差がついています。 ◆「赤字続きで昇給」というのは、民間ではありえない 今の日本は「財政赤字を増やし続け、国民に増税をお願いしながら、公務員の昇給を続ける」というおかしな政治が続いています。 「中央政府と地方を足すと、1100兆円もの赤字がある。だから、増税が要るんだ」 「子供や孫の世代に国の借金の負担を先送りしてはいけない」 それが増税の理由だったのに、安倍政権は、5年連続で公務員の給料をあげています。 2013年に616万円だった平均給与が、19年には678万円にまで上がるのです。 しかし、民間では、赤字を積み重ねながら毎年昇給を続けるような経営を続けていたら、悲惨な未来が待ち受けています。 ◆政府に「経営の思想」を入れたら、どうなるのか この問題について、幸福実現党・大川隆法総裁は、20年前から人件費の拡大と不採算部門の肥大化に警鐘を鳴らしていました。 「財政赤字の場合、公務員は、ボーナスや退職金をもらえたり、年功序列で給料や地位が上がったりすることを、当たり前と思ってはならないのです」 「財政を再建するためには、将来的にも税収が見込める分野に予算を重点的に配分する一方で、将来的には成長が見込めず、単に税金のたれ流しになっている分野を縮小していくことが必要になります」 (※『繁栄の法』幸福の科学出版刊 この発言は1998年1月) ◆「小さな政府、安い税金」で民間が自由に使えるお金を増やす 大川総裁の考えは一貫しており、5月22日にも「消費税をあげていくなら、省庁を一つずつ減らすなど、目に見えるかたちにしてくれないと、納得がいかない」と政府を厳しく批判しました(「令和元年記念対談」)。 (※詳細は「幸福実現NEWS 2019年5月23日 特別号」を参照) それは「小さな政府、安い税金」を実現し、民間が自由に使えるお金を増やしたいと考えているからです。 「政府が国民からお金を集めて使うよりも、国民や企業が自分で稼いだお金を使ったほうが、有効な使い道になる」というのが、自由主義経済の基本です。 幸福実現党は、この精神に沿って、消費税5%への減税や政府のスリム化(組織や事業の見直しや公務員給与の適正化など)を進めてまいります。 【参照】 ・時事ドットコム「改正給与法が成立=国家公務員、年収3万円増」(2018/11/28) ・東京商工リサーチ「2018年3月期決算『上場企業1893社の平均年間給与』調査」(2018/8/3) ・国税庁企画課「平成29年分民間給与実態統計調査結果について」(平成30年9月) ・J-CASTニュース「公務員給与の削減終了 わずか2年、『身を切る姿勢』はどこにいった」(2013/11/30) ・大川隆法著『繁栄の法』幸福の科学出版刊 ・幸福実現NEWS「大川隆法党総裁・釈量子党首〈幸福実現党立党10周年・令和元年記念対談〉『君たちの民主主義は間違っていないか。』を開催」(2019年5月23日特別号) 【活動報告】4月26日(金)消費税 10%への「増税中止」を求める署名を提出 2019.04.28 https://info.hr-party.jp/2019/8860/ 幸福実現党 広報本部 ◆消費増税中止を求める署名(二次締切分)を提出――署名累計は、306,842筆に 4月26日(金)、内閣府を通して安倍晋三首相宛てに 「消費税 10%への「増税中止」を求める署名」(二次締切分)、19,719筆分を提出し、政府に対して「消費税 10%への増税を中止し、消費税 5%に引き下げること」 を要望致しました。 署名筆数は、3月28日の一次締切分の34,212筆を合わせると総数は53,896筆となります。これで過去に提出した消費増税中止を求める署名の累計は、306,842筆となりました。 全国の皆様、ご協力ありがとうございました。心より感謝申し上げます。 今後も私たちの声を結集し、消費税減税を実現して参りましょう! https://info.hr-party.jp/2019/8860/ (写真有り) ◆トランプ政権の経済ブレーンが日本の消費増税に「反対」 なお、「The Liberty web」の速報では、トランプ政権の経済ブレーンが緊急提言として、日本の消費増税に真っ向から「反対」していると報じています。 トランプ氏の経済ブレーンの一人で米連邦準備制度理事会(FRB)の理事候補でもあるスティーブ・ムーア氏は、「The Liberty」のインタビューに応じ、日本の消費税の10%への増税に反対する考えを次のように述べています。 「10%への増税は、恐るべきアイデアであり、最悪の選択です。日本経済は成長していない上に増税したら、経済成長を取り戻すことはできなくなります。」 「私はこれまで、『税金を上げて豊かになった国』を見たことも聞いたこともありません。トランプ政権と良好な関係を持つ安倍政権が、成長政策とは真逆の方向に進もうとしていることは非常に残念です。日本政府が今すべきことは、消費税の増税ではなく、法人税と所得税の減税です。」 詳しくは下記をご覧ください。 ■速報 トランプ政権の経済ブレーンが緊急提言 日本の消費増税に真っ向「反対」(「The Liberty web」より) https://the-liberty.com/article.php?item_id=15699 1: 10%への増税は、恐るべきアイデアであり、最悪の選択です。 2:日本政府が今すべきことは、消費税の増税ではなく、法人税と所得税の減税です。 3:トランプ大統領は『アメリカを再び偉大な国に』した。次は『日本が再び偉大な国に』なることを願っています、とのエール 上がり続ける介護保険料は「隠れた増税」 2019.04.21 上がり続ける介護保険料は「隠れた増税」 HS政経塾スタッフ 遠藤明成 ◆4月1日から、現役世代の介護保険料が1割増える 本年の4月1日から、現役世代(40歳から64歳)が負担する介護保険料が1割増しになります。 協会けんぽによれば、一人あたりの負担が年間で7000円近く増えるのです。 今まで68000円ぐらいだった保険料が75000円程度にまで上がります。 これは、年間報酬にかかる「介護保険料率」が1.57%から1.73%に増えたことによります。 高齢者(65歳以上)も昨年に6%増しになったので、介護保険は全世代で負担が重くなりました。 ここ10年間でみると、高齢者が払う保険料は、年間5万円から7万円にまで増えています。 介護保険は、現役世代でも、高齢者でも、10年間で4割以上も上がりました。 しかし、その是非は、国民に見える場所で十分に議論されていません。 これは、気づかれにくい増税であり、隠れた増税だとも言えます。 ※介護保険料の増額 ・現役世代の2019年増額:一人あたりで年間6911円(67808円⇒74719円) ・現役世代の介護保険料は10年間で45%増:1.19%(09年)⇒1.73%(19年) ・高齢者の介護保険料は10年間で41%増:49920円(09年)⇒70320円(19年) ◆「隠れ増税」に要注意 4月19日の日経朝刊でも、この問題が取り上げられていました。 大企業の社員が入る健康保険組合では、本年に一人あたりの介護保険料が年間10万円を突破したのです。 これは、会社員の収入に応じて介護保険料が上がる仕組みが2017年にできたためでもあります。 少子高齢化が進んでいけば介保の負担が増えますが、保険料は給料からの天引きなので、健保からの情報や給与明細を見ないと、それに気づきません。 そのため、日経は、これを「隠れ増税」と呼び、健康保険料や介護保険料は「2度延期した消費税に比べれば気づきにくく、あげやすい」ことに注意を促していたのです。 ◆介護費の伸び率は医療費や年金を上回る 介護保険料の伸びが止まらないのは、介護費がどんどん増えているからです。 近年の社会保障の統計を見ると、介護費の伸び率は、医療費や年金の伸び率を大きく上回っています。 2012年から16年までの伸び率を見ると、介護は14%、医療は9%、年金は2%の伸び率でした。 年金の支払いが巨額であることは周知の事実なので、いくつかの対策が取られましたが、医療や介護への対策は遅れているのです。 ※2012~16年の年金、医療、介護の伸び率 ・年金は2.15%:53.2兆円(12年)⇒54.4兆円(16年) ・医療は8.65%:35.3兆円(12年)⇒38.4兆円(16年) ・介護は14.4%:8.4兆円(12年)⇒9.6兆円(16年) (国立社会保障・人口問題研究所「平成28年度 社会保障費用統計」を参照) ◆介護保険が抱える大きな問題 介護は、2000年に施行された「介護保険」を中心に回っていますが、ここには、多くの問題があります。 その一つは、高齢者のお金の積立ではなく、現役世代の支払いをあてにした制度だということです(「賦課方式」)。 90年代から少子高齢化が加速していたのに、介護保険は、年金や医療と同じく、減っていく現役世代が増えていく高齢者を支えるように設計されました。 この仕組によって、介護保険料はどんどん増えています。 また、もう一つの問題は、給付金の半分が国のお金で賄われているということです。 介護にも、高齢者に原則1割の自己負担はあります。 しかし、そこに現役世代のお金が流れ込み、さらに国のお金が投入されるので、結局、自己負担した以上のサービスが受けられるようになっています。 この制度は、若い世代と国全体から、お金を高齢者介護に移転させ、大盤振る舞いの福祉を実現しているとも言えるのです。 ※介護は原則1割負担だが、所得に応じて2割負担、3割負担となるケースがある ◆給付と負担のバランスを取るためには そのため、給付と負担のバランスを取らなければいけなくなりました。 その具体策の一つは、自己負担率を所得に応じて上げることです。 介護に社会保険制度を採用している主な国は、日本とドイツ、韓国です。 日本は原則1割負担ですが、総費用を利用者負担額で割ると、7%にしかなりません。 ドイツは30%、韓国は18%なので、自己負担率に関しては、もっと引き上げる余地があるわけです。 医療と同じく、2割負担(主に中間層)や3割負担(高所得者層)の対象を広げていく改革が可能です。 2つ目は、給付の削減です。 介護は、案件のレベルに応じてお金が給付されるので、軽い介護の案件での支給を止めれば、介護費は減らせます。 厚生労働省の資料では、軽度者(要介護2以下)は、中重度者(要介護3以上)よりも、1人あたりの利用者負担額は小さいが、近年の費用の伸び率が高くなっていると書かれていました。 介護費を減らす場合は、軽度者から始めるしかありませんが、年初の厚生労働省の月額発表によれば、給付額のうち、軽度者が36%、中重度者が64%を占めていました。 その36%のなかから、削減が可能な案件を洗い出し、給付の絞り込みを行う必要があります。 (※「介護保険事業状況報告(平成31年1月分)」を参照。軽度者累計が2754億円、中重度者累計が4841億円) 介護の中には「最低限のセーフティネット」として、公的な支援が必要なサービスもありますが、可能な支援には限りがあるからです。 そのため、自己負担額の増加と、軽度な案件から保険適用を止めるなどの策が必要になるのではないでしょうか。 【参考】 ・協会けんぽ「協会けんぽの介護保険料率について」(2019/2/19) ・協会けんぽ「介護保険の平成31年度保険料率について」(2019/1/31) ・社会保障審議会「介護分野の最近の動向等について」(2018/7/26) ・日本経済新聞朝刊(2019年4月19日付) ・国立社会保障・人口問題研究所「平成28年度 社会保障費用統計」 ・厚生労働省「社会保障①(総論、医療・介護制度改革)」(2017/10/4) ・厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)」(平成31年1月分) すべてを表示する « Previous 1 … 19 20 21 22 23 … 78 Next »