Home/ 経済 経済 日本の農業とコメ文化を破壊する「減反」を今すぐやめよう【幸福実現党NEW174号解説】 2025.07.17 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEW174号 https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/15014/ ◆なぜおコメは高くなったのか? おコメの値上がりが止まりません。 5月7日に発表されたコメ5キロあたりの平均販売価格は4233円で、17週連続の値上がりとなりました。 5月中旬に入って、ようやく前の週から19円だけ値下がりしましたが、依然として1年前の約2倍以上の価格になっていることは変わりません。 自宅で食べるおコメだけでなく、飲食店ではご飯の大盛やおかわりの無料サービスがなくなったり、コンビニのおにぎりが値上げされたりと、おコメの値上がりは家計に大きく響いています。 なぜ、おコメはこれほど高くなってしまったのでしょうか。その原因はズバリ「減反政策」です。減反政策とは、コメを作る田んぼの面積を減らし、コメの生産量を調整することで、おコメの値段を高く維持する政策です。 政府は「2018年に減反政策をやめた」と主張していますが、主食用のコメの代わりに家畜のえさ用のコメを作ると、補助金がたくさんもらえる仕組みが維持されており、主食のコメの生産を計画的に減らし続けている状況は変わりません。 実際、2023年秋に収穫されるおコメの量を、前の年より10万トン減少させるという計画を進めていたのですが、猛暑などの影響でコメの収穫が計画よりさらに30万トン減ってしまいました。 コメは工業製品などとは違い、安ければその分買う量を大幅に増やしたり、逆に高くなったら買うのをやめたりする商品ではありません。 年間を通じて同じくらいの需要があり続け、また1年に一度しか収穫できませんので、全体からすればわずかな生産量の減少であったとしても、供給が減るとすぐ値上がりしてしまうのです。 中国人や転売ヤーといわれる人たちがたくさん隠し持っているわけではなく、おコメの生産量を政府が計画的に減らしたため、コメが不足しているというのが、今回の値上がりの最大の原因です。 しかも、「コメの収穫量が増えれば価格が下がる」ため、単収といって「単位面積当たりのコメ収穫量を増やす」品種改良も日本はやめてしまいました。その結果、同じ農地面積で、アメリカ産のコメの生産性は日本の1.6倍となっており、かつて日本の半分の生産性しかなかった中国にも抜かれてしまいました。 なぜここまでしてコメの生産を減らしているのかといえば、コメの価格を高く維持して、小さな農家の収入を守ろうとしているのです。もちろん、善意からではありません。小さな農家は自民党の票田なので、農家を敵に回せば、自民党は地方の選挙で勝てなくなるからです。 ただ、あまりにコメが高くなり、消費者から批判の声が上がっているので、政府は備蓄米の放出を決めました。備蓄米とは、本来、災害や有事などでコメが足りなくなった時の緊急用に保存しておくべき食糧ですから、本来、価格調整のために出すものではありません。 しかし、備蓄米まで放出しても価格は上がり続けました。なぜなら、ほぼすべての備蓄米は、コメの価格を下げたくない農協に渡ったからです。 ◆コメは一粒たりとも入れないという貿易政策 さらに、日本は、コメの生産を減らすだけでなく、外国産のコメに高い関税をかけて、輸入をしないようにしてきました。輸入が増えれば、当然、コメの価格が下がるからです。 政府の本心としては、コメは一粒たりとも入れたくなかったのですが、自由貿易を推進するWTO(世界貿易機関)の加盟国として、「自動車などは自由に輸出したいけど、コメは一切輸入したくない」というわけにはいかず、「最低限のコメは政府が買うので、コメの自由貿易は勘弁してほしい」ということで、年間約77万トンのコメを輸入しています。 これをミニマムアクセス米と呼んでいます。 しかもこのミニマムアクセス米は主食用としての利用は最大10万トンまでとなっていて、他はあられや味噌などに加工するためのコメか家畜のエサとして安く売られています。その結果、年間700億円近くの赤字が出ているのです。 一方、民間がコメを輸入する時には1キロあたり341円という関税をかけています。 ここ数年のコメの卸売価格は、1キロあたり240円でしたので、1キロ341円の関税がかけるなら、外国産のコメはタダであっても国産米より高くなるため売れず、輸入されないというわけです。 とはいえ、現在では国産のコメの価格が2倍以上になったため、341円の関税がかかっても外国産の方が安く売れるため輸入が増え、アメリカ産や台湾産の米が流通し始めました。 現状では「多少高くても、国産米が食べたい」という人は多いですが、今後、国産のコメがもっと高くなれば、消費者はやむを得ず外国産のコメを買うようになります。 また、大阪府交野市の小中学校では、コメが高くなったため、おコメの給食を週3回から週2回に減らすことにしたと報じられました。 一般の消費者でも「コメが高くなったので、最近はパスタなどを食べています」という声も聴かれるようになりました。 「日本の農業を守る」「コメは日本の文化だ」と言い張っても、市場原理をあまりに無視した政策では、国産のコメ離れを招き、コメ文化を衰退させることになります。 このように減反は、家計だけでなく、日本の文化にも大きなダメージを与えるのです。 ◆日本を危機にさらす「減反政策」 そもそも、高い税金を出して主食であるコメ生産を減らす「減反政策」は、共産主義の中国も真っ青になるような異常な政策です。 減反は、高い税金を払って高いコメを買わされる消費者の負担が増えるだけでなく、食料安全保障を損ないます。 つまり、万が一、台湾有事などが起きて、シーレーンが閉ざされて食料の輸入ができなくなれば、大半の国民が飢えて死んでしまうことになります。 何しろ現在、日本のおコメの生産量は、国民の大半が餓死した終戦後間もなくの時よりも少ないのです。終戦時は900万トンのコメを生産していましたが、現在の主食用のコメ生産量は700万トンを切っています。しかも、日本の人口は終戦時より1.7倍に増えています。 もちろん、現在はお金さえ出せば輸入ができますので、私たちの食事にはおコメ以外にも様々な選択肢があります。 しかし、その輸入が止まってしまったら、コメとイモくらいしか食べるものがなくなります。有事が起きてからコメの生産を増やそうとしても間に合わず、たちまち終戦時より悲惨な食料不足となり、国民の半分以上が飢えてしまいます。 税金を使って主食のコメの生産を減らし、国民を危機に陥れる政策は一刻も早くやめるべきでしょう。 ◆コメの価格を維持しながらコメ農家を守るには? このようにコメの価格が昨年の2倍以上になって家計を苦しめているのに、コメを生産する立場からは「今の値段でも安いくらいだ」という声もあります。 JA会長は「決して高いとは思っていない」「長年にわたり、生産コストをまかなえていないような極めて低い水準だった」と述べています。 しかし、1キロあたり341円の関税がかかっている輸入米が国産米より安く売られているということは、世界的に見て、日本のコメがいかに高いかを示しています。 現状では、国産米よりお値打ちだと感じる程度ですが、関税がかからなければ、輸入米の販売価格は1キロ当たり200円から250円程度となると見込まれています。5キロなら1200円程度になりますので、値上がりする前の日本のコメよりはるかに安いと言えます。 こうしてみると、日本の消費者は異常に高いコメを買わされていることが分かります。 政府がどれだけ農業生産者に支援をしているかを表す「PSE」という指標によれば、アメリカが12%程度、中国が14%なのに対して、日本は41%です。 このPSEは、農家への補助金や、農産物の値段を高く維持して、他国より高いコメを買わされている消費者の負担も含まれるのですが、こうしてみると、日本は相当農家を手厚く保護をしていることが分かります。 ここまでしてコメ農家を保護しているのに、まだ「コメが安いから生産コストがまかなえない」というのは政策が明らかに間違っているのです。 なぜこれだけ政府が保護しても、コメ農家はあまり利益が出ないのでしょうか。 まず挙げられるのは、日本は諸外国では農家と見なされない、小さな農家でも「農家」と見なして、政府の保護の対象にしているということです。 特にコメ生産を行う農家は、兼業農家の割合が92%を超え、家計の主な収入は農業以外で得ています。 日本では「農業は弱い産業だから保護しなくてはいけない」と思わされていますが、いわば副業でやっている小さな農家まで保護の対象になっているというだけのことです。 小さな農家は、農業用の機材を購入したりレンタルしたりしても、たくさんコメを取れないので、生産コストに見合った収入が得られない、いわば生産効率が良くないのです。 一方、大規模な農家であれば、最先端の農業機器を導入しても、その分大量生産ができるので、利益が出るわけです。 しかし、日本ではコメの値段が世界的に見て高く維持されているので、生産効率が悪くても副業と考えればそこそこの収入が入ってきます。さらに、家族や親戚で食べるコメが、お店で買うよりは安く手に入るので、小さな農家もコメづくりを止めないのです。 政府が保護を止め、コメの値段が世界標準レベルに下がれば、小さな農家はコメづくりをやめ、農業で主な収入を得ている大きな農家への農地の集約が進みます。小さな農家にとっても、農地を売ったり貸したりすることでメリットがあるのです。 減反を止めて、日本でおコメをたくさん収穫できるようになれば、価格が世界標準レベルに近づいていき、日本のおいしいおコメを海外に売ることもできます。 「日本米」を一つのブランドとして海外に売り出せば、海外の富裕層にも人気が出るのではないでしょうか。 このように、海外に輸出できるくらいの量のおコメを平時から作っておけば、万が一、食料の輸入が止まった時には日本国内で食べて飢えをしのぐことができるわけです。 とはいえ、穀物の価格は、天候や世界情勢によっても大きく左右されますので、想定外に価格が下がることも考えられます。 そのような場合は、コメ作りで主な収入を得ている大規模農家の人たちの所得を支援すればよいのです。これは「直接支払い制度」と呼ばれ、EUなどでもすでに導入されています。 幸福実現党としては、基本的にはある産業の所得を補償するような政策は望ましくないという立場ですが、日本の食料安全保障強化という観点から、主食の生産を担っているコメ農家が、今後も生産を続けていけるように保護することは、ある程度必要だと考えます。 この「直接支払い制度」は、消費者は適切な市場価格でコメを購入でき、農家も存続できるうえ、食料安全保障の強化にもつながる点で、コメの生産を調整して価格を維持しようとする減反政策よりもはるかに理に適ったやり方といえます。 ◆農業に関する様々な規制を取り除く そして、農業をさらに発展させるために大切なことは、農業に関する不必要な規制を取り除くことです。 例えば、農業の生産性を高めるには、高度な経営ノウハウを持つ食品加工会社などが広い農地を取得し、農産物を生産するようなスタイルもあり得るでしょう。 しかし、現在の農地法では、株式会社が農地を取得する場合、主な事業内容が農業(耕作)である必要があります。また、半数以上の役員が、年間150日以上農業に携わらなくてはいけません。これは現実的ではありません。 ゆえに、大きな食品加工会社の場合は農地が持てず、もし持ちたい場合は、別の会社を設立する必要があるなど、いろいろ面倒なことになります。 また、個人で農地を売買したり、貸し借りしたりする場合でも、市町村に置かれる農業委員会の許可を得なくてはいけません。農業をやりたい若い移住者にとっては、農業委員会とのやり取りも農業を始める上で大きな足かせになります。 また、現在は、農家がコメを直接消費者に売ったり、中食・外食業者に直接販売や契約栽培をしたりすることも増えていますが、主に家庭で消費される主食用のコメの集荷の9割近くは、未だ農協が押さえています。 現在、新しい農協を設立するハードルは高いですが、農協設立の規制を緩和したり、地元の農協以外にも加入できるようにしたりして、新しい経営や流通の担い手が登場しやすくすることで、儲かるコメ農家をたくさん育てることができる可能性が開けます。 例えば、主食用のコメ以外にも、お酒用のコメ、寿司用のコメ、洋食に使うおコメなど、用途に合わせたコメを作って付加価値を生み、新たな販路を開拓することもできるでしょう。 農業政策を見直せば、日本の農業には大きな可能性があります。 大川隆法党総裁は、2010年2月に行われた質疑応答で、以下のように述べています。 「全世界を見ると、日本の農業は間違いなく、世界一進んでいるのです。『この世界一進んでいる農業が、高付加価値産業にならない、大きな付加価値を生めないでいる』ということは、やはり、何かの取り組みに間違いがあると考えなければいけません。 今の政府のやり方は、この世界一進んでいる日本の農業に対して、寝たきり老人のような扱い方をしているのです。『補助金を出して保護すればいい』というような考え方ではなく、もっと創意工夫を生かし、高付加価値のものを売り出していけるようにしていかなければいけません」 そのために、「世界一の技術を生かした高付加価値の商品を作る」ことと「PR戦略と共に安いものを海外に輸出していく」という二つの道を示されました。 コメ農家についていえば、世界一おいしいコメを作って高く売る道と、面積当たりの収穫量を増やす品種改良を進め、安くて安全なコメを世界に売るという二つの道があります。 小さな農家を存続させ、農家から票をもらおうという狭い了見にとらわれることはあまりに寂しい発想です。 そうではなく、日本の農業が優れた生産技術を生かし、日本も世界も豊かにする尊い使命を果たせるような、誇り高き農業政策を推し進めていくべきではないでしょうか。 製造業こそ国の根幹 「ものづくり大国」日本を取り戻そう【幸福実現党NEW172号解説】 2025.03.22 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEW172号 https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14897/ ◆日本のものづくりが衰退している 日本経済に元気がありません。 昨年、日経平均株価が史上最高値を更新したり、昨年度の賃上げ率が33年ぶりの高水準だったりしたことをもって、政府与党は「わが国の経済には着実に明るい兆しが現れている」などと言っています。 しかし、大半の日本人は、経済がよくなっているという実感を持てないでいるのではないでしょうか。賃上げといっても、電気代やモノの値段の値上がりに追いついていません。 何とか生活はできているけれど、負担ばかりが増えているのが実態ではないでしょうか。 実際、日本の経済成長率は横ばいで、経済規模を示すGDP(国内総生産)は他国に比べて増えていません。その結果、日本のGDPはドイツに抜かれ、今年中にはインドにも抜かれ、世界5位に転落する見込みです。 GDPは、日本国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計です。 単純に言うと、モノを作ったりサービスを提供したりする時にかかった費用よりも、高いお金を払っても欲しいと多くの人が思うような価値の高いモノやサービスを生み出せたら経済は大きくなるわけです。同時に、私たちの収入も増えて豊かになっていくわけです。 その中でも製造業は、付加価値の金額が大きい産業です。 https://www.stat.go.jp/data/kkj/kekka/pdf/2023youyaku2.pdf かつての日本は、製造業が非常に強く「ものづくり大国」と称されており、「メイド・イン・ジャパン」は高品質の代名詞でした。 しかし現在では、日本の製造業の多くは海外に工場を移し、GDPに占める製造業の割合は減り、今では2割を下回っています。 ◆日本の製造業はなぜ衰退したのか では、なぜ日本の製造業は元気をなくしてしまったのでしょうか。 製造業が海外に生産拠点を移すことは、ある程度は自然なことです。 既存の製品を組み立てるなら、人件費の安い国で作った方が利益は出ますし、為替や関税のことを考えると、例えばアメリカで売る製品はアメリカで作った方が効率はよいからです。 ただ、本当は国内で作りたいのにそれが難しいという事情もあります。 例えば、中国でのものづくりは、重要な技術の漏洩、社員が危険にさらされる、日本に利益を戻せないなどのリスクが顕在化していきました。 そこで、国内に工場を戻そうという動きも出てきたのですが、これにブレーキをかけているのが日本の事情です。 具体的には、高い税金、社会保険料、高い電気代、脱炭素、複雑な規制などです。 まず、企業を苦しめているのは、経営状態が苦しくても払わなければいけない多額の社会保険料です。 昨年10月から、従業員数51人以上の企業で、正社員だけでなく、一定の要件を満たすパートやアルバイトなどの短時間労働者についても社会保険の加入が義務づけられました。 さらに社会保険の加入対象を拡大しようという議論も進んでいます。 この社会保険料は労使折半ですから、従業員だけでなく企業も払わねばなりません。雇用に対する課税のようなもので、人件費を押し上げます。 こうした状況では、中小企業などは新規の雇用を控えるようになり、ものづくりの技術を継承する人材が育たなくなります。 そして特に製造業にとってダメージが大きいのが高い電気代です。 特に鉄鋼業や半導体の製造には大量の電気が必要で、北海道に建てられた半導体製造企業ラピダスの工場で使われる電気は、北海道の電力需要の2割ほどを占めることになると言われています。 電気代が高ければ、ものづくりのコストが押し上げられます。 現在、日本の電気代は世界的なエネルギー価格の高騰と円安のダブルパンチで高くなっており、企業は高い電気代の支払いを余儀なくされています。 原発の再稼働を一日も早く進めていかなくてはいけません。 さらにここに「脱炭素」の取り組みが追い打ちをかけます。大量のエネルギーを使うモノづくりは、結果として大量のCO2を排出します。 そして、来年度から日本では、企業ごとのCO2排出量に「枠」を設け、その排出枠の過不足を企業間で取引する「排出量取引制度」を全国で本格稼働させることになっています。 しかし、前回171号の解説でもお伝えしたように、世界はむしろ、脱炭素の取り組みから離れつつあります。百害あって一利なしの脱炭素政策は、一早く撤回すべきでしょう。 それから、各業界を縛る細かい規制や慣習が山のようにあります。 例えば昨年6月、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカー5社で「型式認証試験の不正があった」と報じられました。 この「型式認証試験」とは、自動車を大量生産する上で必要な、国が定めたルールなのですが、よく調べてみると、国の基準よりも厳しい基準で安全性に関する検査をしていたら「国土交通省の基準にのっとっていないから不正」という指導が入ったということです。 詳細は、「ザ・リバティ」2024年9月号の記事をお読み頂きたいのですが、この件のみならず、複雑なルールを守るために、企業のコストや労力が相当奪われている実態があります。 「ザ・リバティ」2024年9月号 https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=3038 ◆国内での高付加価値のものづくりはなぜ大切か 企業は、このような二重、三重のハンディを背負いながらものをつくっています。 現在は、IT産業も人気が高いのですが、IT産業を成り立たせるためにはコンピューターやスマートフォンが必要です。 また、今はやりのAI、人工知能の開発においても、高性能のコンピューターが必要です。 ものづくりがなければ、私たちの生活は便利で豊かにはならず、IT産業も成立しないわけですから、製造業は非常に大事な産業です。 そして、ものづくりの技術は日本の平和・安全を守る上でも重要です。宇宙産業や防衛産業における技術力の差は、国防力の差となって現れます。 いくら鍛え抜かれた軍隊を持っていても、相手国が性能の高い戦闘機やミサイルなどの武器を持っていたら、そちらに軍配が上がります。 また、サイバー戦争を制するには、高いサイバー技術や情報収集能力が不可欠ですが、コンピューターの処理能力に差があればそれだけでハンディが生じます。 現在の戦争は、ものづくりの技術差で決まる面も大きいわけです。国内で宇宙産業、防衛産業を育てていくことは、安全保障の面からも必要なのです。 ◆「ものづくり大国」を取り戻すために必要なこと では、日本が再び「ものづくり大国」になるためには何が必要でしょうか。 一言でいえば、世界の人が望むような新しい価値を生み出し続ける土壌づくりです。これが、製造業の国際競争力を保つために必要です。 日本の製造業は、安全で燃費がよいクルマ、ソニーのウォークマンのようなまったく新しい製品などを生みました。 現在、「産業のコメ」と言われ、世界情勢にも影響を及ぼす半導体産業においても、日本は1980年代、世界の半導体市場で50%強のシェアを取っていました。 しかし、その後の日本はなかなか新しいものを産み出せていません。 外交力や国際競争戦略の欠如という要因もあったでしょうが、様々な規制や税金、社会保険料などが企業の足を引っ張った面もあります。 安定した安い電力の供給、法人税の減税などで企業の経済活動のコストを下げ、研究開発に割く余裕を生み出すことが大事です。 また、今なら空飛ぶ車や自動運転車などの規制がものづくりのネックになっています。 たとえば、4月から始まる大阪・関西万博においては、ドローン技術を応用した「空飛ぶクルマ」が、来場者を乗せて飛ぶ日本初の商用運航を目指していました。 しかし、安全性を証明する手続きに時間がかかったため、来場者を乗せることができず、デモ飛行のみを行うことになりました。 そして、働き方改革も、新しいものを生み出す足かせになっています。 長時間働けば業績が上がるわけではありませんが、やはりスキルを身に着け、質の高い仕事をするには、まずはある程度の時間、仕事に打ち込まなくてはなりません。 残業時間を規制され、何時までに帰れとうるさく言われれば、新しいものを生み出す研究開発には没頭できないでしょう。 こちらに、日本の年間労働時間とGDPの関係を示したグラフを掲載しています。 日本の高度成長期は、一人当たりの年間労働時間は、ピーク時で2400時間を超えていました。 しかしこれについて、アメリカが「日本は国民に長時間労働を強いて、対外競争力を高めている」と口を挟み、日本国内でも「日本人は働きすぎだ」という世論が高まりました。 そこで政府は1992年、労働者全体の平均労働時間を年間1800時間までにし、完全週休2日制の導入を目指す「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を制定しました。 このようにして「長時間働くことをやめよう」というメッセージを発した時と、日本経済が停滞し始めた時期は見事に重なっています。 ◆製造業の人材養成を このように、経済をもう一段発展させるには、日本が大切にしてきた「ものづくりの精神」を育てていくことが必要です。 そのためには、教育においては、前例のないことにチャレンジする精神、コツコツと努力する勤勉の精神、また「多くの人に便利さ、豊かさをもたらしたい」という愛の思いなどを育てていくことが大事になります。 そうした思いをもつことで、宗教的に言えば「インスピレーショナブルな頭脳」をつくることになり、この世になかったアイディアを受け止めることができるようになります。 一方、政府の仕事としては、公平な競争環境を整え、中国などに新しい技術やアイディアを盗まれないよう「スパイ防止法」などを整備することに集中し、減税や規制緩和によって企業の仕事の足かせになっているものを取り除くことが必要です。 大川隆法総裁は、著書『創造する頭脳』のあとがきで次のように述べています。 役人の発想は、基本的に、「なぜ、できないのか」「なぜ、ダメなのか」を中心に回っており、それをいかに整然と説明するかに知力を使っているのである。(中略)これは、勇気・責任感・積極性・行動力を中心に形成される経営者マインドの正反対のものである。 いくら税金を投入しても無駄である。むしろ小さな政府を目指して、倒産の恐怖を自分で背負いながらチャレンジしていく民間に任せるべきだ。「創造する頭脳」は未来を積極的に切り拓こうと決断できる勇気の持ち主にこそ与えられるのだ。 (引用終わり) 政府がお金をバラまいて経済が繁栄することはありません。 幸福実現党が言っている「小さな政府、安い税金」の考え方に基づく自由と自助努力の精神が、日本復活の原動力になっていくのです。 税金を重くするばかりでは国民は豊かにならない【幸福実現党NEWS(170号)解説】 2025.01.29 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 幸福実現党NEWS(170号) https://info.hr-party.jp/newspaper/2025/14707/ 解説動画 https://youtu.be/IaGgQ-oPdY4 ◆税制改正大綱の議論 2025年度からの税金の制度をどうするかという議論が、これから本格化します。税金の制度は一年ごとに変わります。 まず、与党の税制調査会が、各省庁や業界団体からの要望を聞いて議論をし、来年度以降の税金のあり方、どの分野にどのように税金を課すかなどを具体的にまとめていきます。 これを「税制改正大綱」と呼んでいます。 これを年末までに閣議決定し、これに基づいて国税については財務省が、地方税は総務省が改正法案を作成します。 そして、今年は1月24日から始まる通常国会で議論し、3月までに法案を可決、成立させ、4月以降に新しい税金の制度が始まるという流れです。 今回のNEWSは、「税制改正大綱」の内容を踏まえ、政府が来年度以降、どのような税金の仕組みを考えているかについて、今話題になっている「年収103万円の壁」見直しの話を中心にまとめました。 なお、「税制改正大綱」についてもう一段詳しい解説については、幸福実現党のYouTube番組「言論チャンネル」で公開しますので、こちらも是非ご覧ください。 ◆「103万円の壁」の見直しとは? まず、最近話題になっている「103万円の壁」の引き上げについて、見ていきましょう。 今回、税制改正が話題になったのは、昨年の衆院選で国民民主党が「103万円の壁を引き上げ、国民の手取りを増やす」という政策を掲げて躍進したことが一つのきっかけです。 一定の年収を超えるまでは所得税は課税されません。この所得税がかかり始める金額が、年収103万円で、それを「103万円の壁」と呼んでいるのです。 国民民主党は、この壁を178万円まで上げようと主張して注目を浴びています。 一定の時間しか働かないパートやアルバイトの人たちは、なるべく税金を取られて手取りを減らしたくないので、一年間の収入が103万円を超えないように働く時間を調整している人が多くいます。 所得税が取られる年収が178万円まで引き上げられることで、こうした人たちはもう少し働こうかなという気持ちになります。 また、会社からお給料をもらっている人たちや、自営業などで収入を得ている人たちも、現在の収入から178万円が差し引かれた金額に、所得税がかかることになります。 壁が178万円になれば、収入から103万円が差し引かれる場合に比べて、所得税がかけられる金額が減ることになり、それだけ所得税が減税されるというわけです。 例えば、年間600万円の収入を得ている人は、年間14.6万円の減税になるという試算もあります。 しかし、自民党、公明党が作成した与党の案は、123万円までの引き上げにしよう。 しかも、そのうち10万円分は、年間162.5万円以下の給料をもらっている人にのみ恩恵が及ぶような形でお茶を濁そうとしているのです。つまり、大半の人にとっては、113万円までしか差し引かれないということになります。 そうなると、年収600万円の人は、1万円程度しか減税にならないと見込まれています。 現在、自民・公明の与党だけでは衆院で過半数の議席がありません。ですので、与党案はそのまま国会で成立することはなく、1月24日からの通常国会で駆け引きが始まります。 国民民主も、衆院選の公約として掲げた178万円の壁に向けて妥協はしないでしょう。 確かにこの国民民主党案は、年収に関わらず1人当たり4万円という決まった額を減税するという岸田政権の減税策に比べ、働く意欲が増すという点でよい減税策と言えます。 ただし、国民民主党は、膨らみ続けている多額の国家予算を減らすことは考えていないようです。 そうなると、減税分の赤字国債を発行しなければならなくなり、政府の借金が増えることになります。これは、さらに物価高を加速させることにもつながるのです。 また、資産課税など別の増税策も打ち出していますので、国民民主党の案が日本経済を元気にすることにつながるかは、よくよく注意して見ていく必要があります。 ◆防衛を口実にした法人税の増税 また、今回の税制改正大綱の注目ポイントは、岸田政権の時に議論されていた防衛増税の導入が明記されたことです。 私たち幸福実現党は、防衛費の増額は必要だと考えています。 しかしながら、本来、税金というのは、防衛や治安維持、大規模災害対策など、政府にしかできない仕事をしてもらうために納めているものです。 無駄な省庁をたくさんつくった上、バラマキ政策や社会保障の大盤振る舞いをしておきながら、「防衛予算を増やさなくてはいけないから、増税します」というのは筋が通りません。 政府がしなくてもいい仕事を思い切って減らしても、それでも税金が足りないというなら、防衛増税は理解できますが、増税の前にもっと政府の仕事を減量するべきです。 ちなみに、今回の防衛増税の導入で、法人税は約1%分上がる見込みです。決して軽くない負担がのしかかります。 さらに、円安が続いて、海外から兵器を買う時の値段がどんどん上がっています。今後も「防衛予算が足りないから増税します」という流れになりかねません。 しかも、与党がまとめた「税制改正大綱」では、今後の方針として「法人税を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、メリハリのある法人税体系を構築していく」と書かれています。 簡単に言うと、「以前、法人税を引き下げたけど、国内投資や賃上げは思うように進まなかったので、これから法人税は増税していきますが、政府の言うことを聞いて投資や賃上げ、子育て支援などをした企業には、ご褒美として法人税を下げてあげます」ということです。 これは企業の経済活動の自由を奪うという意味で、まさに「大きな政府」の発想です。 企業も、本当は頑張っている従業員の給料を上げたいのです。しかし、円安で様々なモノの値段が高くなる、原発が動かず、再エネ賦課金なども取られて電気代は高くなる、働き方改革で人件費が増える、という状態であれば、そんなに簡単に給料を上げられません。 こうした逆風に加えて法人税の増税まで待っているとしたら、経営者たちはやっていられません。 ◆社会保険料の対象となる「106万円の壁」の方が問題 企業の負担はそれだけではありません。社会保険料の増額が待っています。 現在、税制改正の議論と合わせて、社会保険加入範囲の拡大の議論が出ています。 所得税がかかりはじめる103万円の壁を引き上げる話は先ほどお伝えしましたが、次に「106万円の壁」というものがあります。 これは、年収106万円をこえると、社会保険への加入が義務化され、年金などの社会保険料を払わなくてはいけなくなるということです。 この106万円の壁をなくし、2027年10月には、一週間に20時間以上働いた人は社会保険料に加入し、保険料を払ってもらおうという話になっているのです。 これによって、新たに200万人が厚生年金の加入対象になるとのことです。 社会保険料を払うことになるとどうなるか。まず、従業員にとっては手取りが大きく減ることになります。 同時に、企業の負担も増えます。社会保険料は「労使折半」といって、従業員と会社が半分ずつ負担する仕組みです。ですから、企業にとっては人件費が増えることになります。 それでも、スーパーや飲食店など、パートやアルバイトで支えられている仕事では、社会保険料を理由に従業員を減らすわけにはいきません。 実際、年収106万円の壁を意識する従業員がシフトを減らし、働き手が確保できないという悩みを抱えている経営者は多いようです。 そこで政府は、年収156万円未満の人に対しては、従業員の手取りが減らないように、社会保険料を会社側がより多く負担してもいいよ、という仕組みをつくるとのことです。 ただ、会社の側もこれ以上の負担は無理です。裏面のグラフに示されているように、税金と社会保険料の滞納を原因とした倒産は、昨年は前年の2倍近くに増えました。 そこで、従業員の負担分を一部肩代わりしたことによって負担が重くなる会社には、政府が支援をするそうです。 もちろん、この「支援」は税金で行われるわけです。個人や企業の負担を増やしておきながら、「負担が増えたら税金で支援をします」というのは意味が分かりません。 一体、何をやっているのでしょうか。 国民民主は、103万円の所得税の壁については問題意識を持っていますが、この106万円の壁をなくして社会保険料の負担が増える案については「将来、もらえるお金が増えるのだから」ということで、むしろ賛成の立場です。 しかし、それでは社会保険料の負担なら増やしてもいいということになりかねず、国民の手取りは減っていく一方です。 ◆「小さな政府」を目指さなければ国民の負担は減らない 幸福実現党は、公的年金や介護保険などの社会保障も含めて、政府の仕事を思い切って減らすという「小さな政府」の実現を訴えています。 政府の仕事を減らせば、税金や社会保険料など、個人や企業の負担を軽くすることができますし、何より政府が民間の仕事に口を挟むことが無くなるので、自由の範囲が拡大します。 そもそも、年金など、老後の面倒をすべて政府に見てもらうというのは不可能なのです。 大川隆法総裁は、著書『経営者マインドの秘密』のなかで、「政府が大きくなると、無駄な仕事がとても多くなる」と指摘し、さらに次のように述べています。 「『大きな政府』というのは、必ず独裁化するし、強権化する。また、そこからお金を、飴を撒くようにバラまいてもらって生きていく国民が増えれば、必ず、それは奴隷化していくことになるので、堕落するのです」 実際、公的年金制度では、政府は後先のことを考えずに年金を大盤振る舞いしただけでなく、国民から預かったお金を保養施設などの建設に使って大赤字を出し、目減りさせました。 その結果、今の中堅世代以降は、自分が払った年金よりも、将来年金として受け取る額が減ると見込まれています。 そのような失敗を覆い隠すため、政府は一人でも多くの人を年金制度に加入させようとするなど、次から次へと国民の負担を増やす施策を打ち出してくるわけです。 また、国民の側も、「これだけ税金や社会保険料を払っているのだから、年老いた親の面倒は政府が見るべきだ」と考えるようになり、家族の絆が希薄になっています。 こうした悪循環を食い止めるためにも、政府の仕事を思い切って減らす必要があると幸福実現党は考えています。 ◆地方税の導入に反対の声をあげよう そのためにも、「大きな政府」や「重い税金」の動きがあれば、反対の声を上げていかなくてはいけないと思います。 2000年から徐々に地方自治体の課税自主権が強化されたことで、次々と新たな地方税が導入されています。 地方自治体は、地方税法で決められている住民税、固定資産税、事業税などの税金以外に、条例で税金を新しく導入できますが、2000年の法改正により、自治体で使い道を自由に決められる税金を導入するハードルが下がったのです。 代表的なものが宿泊税です。2002年に東京都で導入され、現在では3都府県・7市町で導入されており、千葉県でも導入が検討されています。 例えば京都市は、2018年から宿泊税を導入し、市内のホテルや旅館の宿泊客から税金を徴収しています。現在の最高額は1000円ですが、2026年3月から最高で1泊1万円の税金をとるという方針が発表されました。 これによって、文化財保護や増えつつある観光客の受け入れ環境の整備などに使うと言いますが、税金が重くなると、宿泊客が減るのではないかという懸念も出ています。 また、地方で導入された税が全国に広がるケースもあります。 例えば、森林環境税は2003年に高知県が導入し、その後37府県に広がり、昨年から国税として国民全員に年間1000円が課税されるようになったのです。 また、滋賀県では現在、交通税の導入が議論されていますが、根強い反対の声があります。 自治体が税金を集めて、果たして有効に使われるのか。負担を増やすのではなく、他の自治体の仕事を削る余地はないのか。こうしたことを検討せず、安易に新しい税金を導入すれば、私たちの負担はどんどん重くなります。 幸福実現党は現在、公認地方議員が55人いますが、各地で増税を食い止めるために頑張っています。地方から増税の風穴を開けさせないためにも、幸福実現党の地方議員を是非応援してください。共に増税反対の声をあげていきましょう。 参考 宿泊税 https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/articles/101/016/38/#:~:text クローズアップ現代 地方税 https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/JR8VX44N46/ 総務省(法定外税) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_24.html https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_23.html 「103万円の壁」について考える 2024.11.30 幸福実現党政務調査会ニューズレター No.37 https://info.hr-party.jp/2024/14648/ ◆「103万円の壁」問題とは 2024年10月27日投開票の第50回衆院選で、自民・公明合わせた与党が過半数を割りこむ結果となり、第2次石破茂内閣は、野党との政策ごとの交渉を余儀なくされています。そこで焦点となっているのが、「103万円の壁」問題です。 「103万円の壁」とは、アルバイトやパートで働く労働者が、年収103万円を超えると所得税の納税が発生するため働き控えを行うようになるという問題です(注1)。 この壁が「103万円」であるのは、基礎控除額(48万円)と給与所得控除額(最低額55万円)の合計が103万円であることによります。 与党と政策協議を行っている国民民主党は、基礎控除額を引き上げることで、所得税の納税が発生するのを「103万円」から「178万円」にすべきだと提言しています。 20日、自民・公明両党と国民民主党は、103万円の壁を「引き上げる」との内容を盛り込んだ新たな経済対策について合意し、22日には、政府はこの経済対策を閣議決定しました。 今後は、控除額をどう設定するかなど具体策が議論されることになります。 ◆「103万円の壁」問題をどう考えるべきか 「103万円の壁」の引き上げは、パート・アルバイトの働き控えを抑え、労働力不足を抑制する効果を期待することができます。同時に、基礎控除が拡大するため、家族などの扶養者をはじめ、一般の労働者に対して幅広く減税措置が取られることになります。減税で国民負担が軽減される点は評価すべきでしょう。 一方で、政府は、壁を「103万円」から「178万円」に引き上げた場合、国と地方自治体の税収は併せて7兆円〜8兆円程度減収すると試算しています。 壁の引き上げと同時に歳出カットを行わなければ、赤字国債の発行額増など財政悪化やさらなる物価高につながることが懸念されます。物価高や将来的な増税など、実質的な意味で国民負担を軽減するためには、壁の引き上げと同時に「政府の仕事の減量」を併せて行うべきです。 ◆「年収の壁」問題の根本解決に向けて 国民民主党は、壁を「178万円」に引き上げるべきとする根拠として、「103万円の壁」の水準が定められた1995年から現在までの最低賃金額の伸び率を挙げています。一方、壁の引き上げ額は、1995年を基準にした物価上昇分を考慮した「120万円程度」で良いのではないか、とする意見もあります。 英国の基礎控除額(約239万円)や、ドイツの基礎控除額と給与所得者に対する控除とを併せた額(約169万円)などといった例を見ても、178万円まで引き上げることは諸外国と比べても遜色ないと考えられます。 しかし、178万円分よりももっと働きたい人や、物価高の影響による名目上の収入増の傾向を考えると、本来、「壁」自体を解消すべきではないでしょうか。 そこで、所得税制においてフラット税制を導入すれば、労働量や収入に関わりなく税率が一定であることから、「年収の壁」は根本的に解消されることになります。 労働供給を増やすインセンティブが高まって労働力不足が解消されるとともに、労働者の手取りが増える方向となります。 将来構想として、段階的にフラットタックスを導入することを検討すべきです。尚、その場合は、低所得者への増税につながらないよう、社会保険料負担の見直し、逆進性が指摘される消費税廃止と同時に進めるなどといった配慮を行う必要があります。 フラットタックスを導入する前段階としては、できるだけシンプルな税制を敷いて広く浅く税をとる仕組みを目指すべきです。所得税率の低下と累進性の緩和を行いながら、税を複雑にしている様々な控除はできるだけ無くしていくべきです(注2)。 ◆問題は「103万円の壁」だけではない 「年収の壁」は「103万円の壁」だけではありません。たとえば、パートで働く妻のケースを考えると、住民税が発生する100万円、一定の条件(従業員51人以上の企業で働くなど)で社会保険料が発生する106万円、基本的に無条件で社会保険料が発生する130万円、夫の配偶者特別控除が減り始める150万円、夫が配偶者特別控除を受けられなくなる201万円に、それぞれ壁が存在しています。 所得税に関する103万円の壁については、非課税(税率0%)から税率5%が課せられるに過ぎないので、それほど大きく手取りが減るというわけではありません。 より大きな問題は、社会保険料(厚生年金保険と健康保険)が発生する106万円の壁や、130万円の壁であり、社会保険料の加入義務が発生することで、手取りは大きく減ることになります。 厚生労働省は社会保険料の壁について、年収条件や企業規模の条件を撤廃し、週20時間以上働けば、社会保険料の負担が発生する仕組みとする方針を示しています。しかし、これは社会保険料負担の対象を拡大させる措置であり、企業と労働者にとっては事実上の増税となります。 また、厚労省は、企業と労働者で保険料を折半する今のルールを見直し、労使間で合意が取れていれば、労働者の負担割合を減らせる案も示しています。 しかし、労働者の社会保険料負担を軽減したところで、企業にその分の負担が上乗せされることになれば、企業は賃上げをためらうか、労働者を雇うことに消極的になって、失業者が増えることが懸念されます。 そのほか、高齢者が「働き損」となる「50万円の壁」も存在しています。これは、「在職老齢年金」制度によるもので、65歳以上の働く高齢者の収入が、賃金と厚生年金を合わせて月額50万を超える場合、50万円を上回った年金部分の半分が減額されるという仕組みです。 厚生労働省は現在の制度を見直し、基準を引き上げるほか、将来的に廃止する案を提示しています。 現行制度は高齢者の労働意欲を削ぎ、生涯現役社会の実現に逆行するものと言えます。将来、年金を多くもらうことを希望する人に限って負担を増やしたり、在職老齢年金の廃止を含め、制度の見直しを早期に進めるべきです。 総じて、事実上の税金といえる社会保険料の壁を根本的に解決するには、公的年金をはじめとする社会保障の根本的な見直しが必要ですが、これは今からでも議論をはじめなければ、国民の負担は重くなる一方です。 (注1)アルバイトやパートが家族の扶養に入っている場合、給与収入が103万円を超えると、税制上の扶養から外れるため、扶養者の所得税、住民税が増えることにもつながります。 (注2)所得税について、現在、様々な控除が存在することにより、収入約270兆円のうち課税対象となる所得は約120兆円に過ぎません。見直すべき控除の一例として、年金に関する控除があります。社会保険料を納める際の「社会保険料控除」がある一方、年金による収入が入った際の「公的年金控除」も存在しており、こうした二重控除の仕組みは見直しを図るべきとの声も挙がっています。 「大きな政府」の象徴 デメリットだらけのマイナ保険証を廃止しよう(幸福実現党NEW168号解説) 2024.11.21 https://youtu.be/VssxLGU–x0 幸福実現党政務調査会代理 小川佳世子 ◆12月2日からマイナ保険証に一本化 今回は、幸福実現党NEWS168号「デメリットしかない マイナ保険証一本化は見直しを」の解説をいたします。 今年の12月2日をもって、従来の健康保険証の新規発行がなくなり、「健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカード」通称「マイナ保険証」に一本化されます。 これについて、「マイナンバーカードはつくりたくないけど、健康保険証がなくなってしまうんだったら、カードをつくらないといけないのかな」という不安の声も寄せられています。 そこで、まずお伝えしたいことは、現在、お手元にある健康保険証は、有効期限が来るまで、最長1年間利用できます。 それ以降も、「資格確認書」という、従来の健康保険証と同じように使えるプラスチック製のカードが発行されますので、マイナ保険証を持っていないからといって、病院の受診ができなくなることはありませんので、ご安心いただきたいと思います。 むしろ、マイナ保険証を取得するためには、自治体の窓口に申請してマイナンバーカードを手に入れて、保険証の利用手続きを行わないといけないので、結構面倒です。 一方、現在のところ、資格確認書を取得するための手続きは特に必要ありません。 とはいえ、この資格確認書は、マイナ保険証を持っていない人が自ら申請して取得することが原則です。また当初、有効期限は1年ほどになる予定でした。 しかし、「それはつまり、マイナンバーカードの取得を義務化されるのと同じじゃないか」という反発が沸き起こり、政府は「マイナ保険証を持っていない人全員に、資格確認書をお送りします。有効期限は5年とします」と苦し紛れの策を出しました。 ただ、この政府の「申請しなくても資格確認書を送ります」という約束は、ハッキリとした法律の裏付けがあるわけではありません。 今後、「やはり、マイナ保険証を持っていない人は、1年ごとに申請して資格確認書を取得してください」などといって、マイナ保険証を持っていないと困るような状況がつくられる可能性もあります。 ですから、幸福実現党としては、現在の健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化することに、引き続き反対していきます。 そもそも、資格確認書は、従来の健康保険証と色くらいしか変わらないものになる見込みです。それなら、今の保険証をなくす必要はないはずです。 ちなみに、ご自宅に「資格情報のお知らせ」という紙製のシートが送られてきた方も多いのではないかと思います。当初はマイナ保険証を持っている人だけに送られる予定でしたが、全員に送られるようです。 これは、「資格確認書」とは違い、単独では保険診療が受けられません。あくまでもあなたの入っている健康保険や、保険者番号を確認するためのものです。 また、マイナ保険証を持っていても、ネットや機械の不具合で、マイナ保険証のカードリーダーが使えないというトラブルが報告されていますが、そんな時に、マイナ保険証と一緒に、「資格情報のお知らせ」という紙を提示すると、診察が受けられるとのことです。 このように現行の健康保険証を廃止して、無理やりマイナ保険証に一本化しようとしているため、非常に複雑になり、手間もお金もかかっています。 ◆利用率14%の現実 さて、これだけ苦労して普及させようとしているマイナ保険証ですが、9月時点で利用率は14%未満で、利用する人がなかなか増えません。 それはなぜかというと、トラブルが絶えないからです。 全国保険医団体連合会が9月に公表した調査によると、約7割の医療機関がマイナ保険証の「トラブル・不具合があった」と回答しています。 トラブルの内容としては、カードが読み込めないとか、保険証の資格が確認できない、さらには他人の情報が紐づけられていたという深刻なものもありました。 マイナ保険証には、患者さんの入っている健康保険組合や保険者番号などは書かれていません。そのため、カードリーダーでデータを読み込めなければまったく使えないわけです。 トラブルがあった医療機関の約8割が、「健康保険証でトラブルを乗り切った」と答えており、やっぱり現在の健康保険証は便利なので残してほしいという声が絶えません。 その結果、マイナ保険証の利用率は、14%に満たないというわけです。 ちなみに昨年末段階は利用率4.29%だったのですが、マイナ保険証が利用できない医療機関は通報してください、一方で、利用率を上げた医療機関や薬局に対しては最大40万円の補助金を出しますよという、「アメとムチ」の政策でようやく9か月で14%まで利用率を引き上げました。 そもそも、推進側にいるはずの国家公務員がマイナ保険証を使っていないのです。 実は8月時点ではもっと低かったのです。国家公務員全体で利用率は5.47%、防衛省の職員は3.54%、外務省職員は4.5%という利用率でした。 マイナンバー関連の情報漏洩も、昨年度は分かっているだけで300件以上起きており、情報漏洩が心配だということもあるのではないかと思います。 そのように、みんなが使いたがらない欠陥システムを、税金を使って使わせようとするなど、民間企業ではありえないことをやっているわけです。 このような状態に私たちはもっと怒るべきではないでしょうか。 ◆マイナ保険証のメリットは虚構 とはいっても、デメリットよりメリットが大きいならば推進する意味もあるかもしれません。ところが、政府がアピールしていたメリットはどうも怪しいのです。 例えば厚生労働省は「救急搬送時や旅行先ではじめて受診する病院でも、マイナ保険証があれば過去、病院を受診した時のデータや、どんな薬を飲んでいるかが分かるので安心です」などと言っています。 しかし、病院を受診した後1か月ほどたたないと、マイナ保険証を通じて情報を確認することはできないのです。ですから、お薬手帳を持ち歩く、もしくはスマホにお薬手帳アプリをダウンロードした方がよほど便利で安心ということです。 しかも、消防庁が救急活動のシミュレーション訓練において、本人の身元などを確認するのに、従来の保険証とマイナ保険証を使った場合を比べたところ、情報の読み取りに時間がかかり、マイナ保険証を使った方が救急車の出発が6分29秒も遅くなってしまったという、笑えない結果が出ました。 また、マイナ保険証のメリットとして、河野太郎・前デジタル担当大臣が「保険証の不正利用を防げます」と言っていました。 しかし、市町村国民健康保険において不正利用が確認されたのは5年間で50件とのことです。他にも隠れた不正使用があり、これがマイナ保険証で防げたとしても、それ以上にマイナカードを悪用した詐欺被害や情報漏洩事件などが起きたら本末転倒ではないでしょうか。 実際、偽造されたマイナンバーカードが身分証明書として使われ、知らないうちにスマホが乗っ取られ、ネットショッピングで高額の商品が勝手に購入された被害が出ています。 保険証の不正使用対策は、本人確認を徹底することで防げばいいだけで、これをもってマイナ保険証をゴリ押しする理由にはならないのではないでしょうか。 ◆マイナカードをゴリ押ししたい理由とは? では、政府がここまでマイナ保険証にこだわる理由は何でしょうか。 幸福実現党の大川隆法党総裁は、マイナンバー制度について「貯金が銀行にあるのは分かっているので、これを全部マイナンバーと連結してしまえば、各人がどれだけ持っているかが分かるようになります。番号だけ入れれば、全部が一目瞭然で分かるようになるので、『貯金に税金をかけていく』という次の手があるわけです」(『人の温もりの経済学』)と述べています。 実際、この指摘を裏付けるような動きを政府は着々と進めています。 例えば、「改正マイナンバー法」などによって、年金給付を受けている人に対して、書留郵便などで通知した上で、同意を得た場合、または、一定期間内に拒否するという回答がない場合は、年金の給付を受けている口座を政府が自動的に「公金受取口座」としてマイナンバーに紐づけられるようにしました。 なお、こちらはまだ準備を進めている最中とのことです。 政府は「口座を登録しても、預貯金の残高を知られることはありません」「公金受取口座は、政府から国民に給付をするときのみに利用しますから安心してください」などと説明しています。 しかし、財務省の財政制度審議会の議事録などを読むと、「マイナンバーと全銀行口座の紐づけを通じて、その人の収入や財産を把握し、負担能力に応じて税金や社会保険料を負担してもらうようにしましょう」という趣旨のことが堂々と話し合われています。 ただ、この預貯金への課税は、国民がマイナンバーカードを持たなくても可能です。 強引にマイナ保険証を普及させて、国民全員がカードを携帯しないといけないような社会を作ろうとしているのは、あらゆる個人情報と紐づけて、監視社会を完成させようとしているからではないでしょうか。 特にマイナ保険証で健康情報をつかむことができれば「ワクチン接種した人」「特定の病気にかかっていない人」だけ行政サービスを受けられるとか、保険料を下げるなどといった施策も可能になります。 今年5月には、マイナンバーカードの全機能をスマホに搭載できるようにする「改正マイナンバー法」が成立しました。 デジタル庁は、「本人確認が、さまざまな行政手続きだけでなく、民間サービスでも利用できる」と言っていますが、これによってより多くの個人情報が一元管理できる道が開けます。 他国でも共通番号の導入は試みられたことはありますが、国民からの反発やなりすまし被害が多発して、利用拡大に歯止めがかかっています。 当初、税と社会保障と災害対策のみに使うだけです、と言っていたマイナンバーの利用範囲を拡大し、事実上のカード取得の義務化まで進めている日本は、自由主義国の流れには逆行しているといえます。 むしろ日本は中国に近づいているのではないでしょうか。 中国では、身分証明書の携帯が義務付けられ、政府が国民の個人情報、年収や資産、借入状況、さらにはウェブでの行動履歴・購入履歴などを監視し、「信用スコア」をはじき出し、それによって行動や借金の制限がされるという監視システムが成立しています。 大川総裁は、全体主義体制の中国について触れながら「国民をマイナンバーで全部つかめたら、ナンバーだけで全部日本人をつかめるんだったら、あと、侵略するときはしやすいでしょうね」(『「小説 とっちめてやらなくちゃ」余話』)と述べています。 国民を一元管理できるマイナンバーのシステム自体が、中国の全体主義と極めて相性がいいということです。 ◆今必要なのは「小さな政府」の考え方 現在、マイナンバーを推進している自民党は、社会保障の充実や子育て支援などの「大きな政府」を目指しています。 「大きな政府」を目指すと、どうしても国民の財産を監視し、取れるところから税金を取り、所得の再配分を強化するような仕組みが欲しくなります。 現在はマイナンバーやマイナ保険証に反対している、立憲民主党や共産党、れいわ新選組などの野党も、自民党以上に「大きな政府」を目指しています。 そもそも、マイナンバー制度導入の議論が加速したのは、年金保険料をおさめたにもかかわらず、それが正しく記録されていなかった「消えた年金」問題がきっかけでした。 そこで、立憲民主党の前身である民主党が2009年の衆院選公約に「所得把握を確実に行うため、税と社会保障制度共通の番号制度を導入する」との政策を盛り込み、政権を取った後、仕組みづくりに着手したのがマイナンバー制度のはじまりです。 自民党が創った制度に反対している政党も、何らかのかたちでマイナンバーに似たシステムをつくりたいという考え方は共通しているのです。 いくら「国民の利便性を高めるため」といっても、結局は国民の財産を把握し、取れるところから取って、持たざるものに配るというシステムにならざるを得ないのです。 つまり、「ゆりかごから墓場まで」国民の面倒を見る「大きな政府」を志向する限り、マイナンバーの問題は無くなりません。マイナンバーは「大きな政府」の象徴ともいえる仕組みなのです。 幸福実現党は、現在のところ日本で唯一、自助努力の精神をベースにした「小さな政府」を目指している政党です。 一人ひとりの経済的自由、政治的自由を守るためにも、マイナンバー制度の拡大を含む「政府の無駄な仕事」をやめ、「小さな政府」を目指して参ります。 【歴史的円安】バラマキは亡国への道。定額減税でも家計負担10万増。今こそ「小さな政府・安い税金」の実現を! 2024.06.25 https://youtu.be/xWcD6l_X90E 幸福実現党党首 釈量子 ◆円安で苦しむ日本 今、日本では、円安による輸入品の高騰もあって物価高が続いています。にもかかわらず給料は上がっていないため、生活が苦しくなっています。 物価高に影響を及ぼす円安について、最近は、「歴史的円安」という言葉も使われています。 円安とは、ドルに対して円の価値が下がるということですが、英語では「weak」(弱い)。人間の身体に例えると、「脈拍が落ちてくる」ように元気がなくなっている状態です。 これまでは、「円高不況」という言葉があり、輸出企業には円安の方が有利だという声も根強くありました。 実際、円安の恩恵を受けてトヨタの2024年3月期連結の営業利益は5兆3千億円を超え、過去最高を更新しました。営業利益が5兆円台になるのは、日本企業初です。 しかしトヨタも含め、製造業の七割が海外に生産拠点を持っています。現地生産したりして、少しでも人件費の安いところに移してきました。 背景にあるのは日本のコスト高です。日本はエネルギーや食料品など、生活に必要な品物の大半を輸入に頼っています。 極端な円安になると、輸入に頼っている化石燃料が高騰し、電気代が恐ろしいほど値上がりします。 「円安」の影響をもろにかぶるのが中小企業です。部品などを作る下請け企業は、海外から材料を輸入して造っているので、円安で材料費が高くなるわけです。 こうしたわけで、中小企業の6割以上が、「円安は自分の会社の利益にとってはマイナス影響です」と回答しており、「円安がプラスになっています」と答えた中小企業はわずか7.7%です。 大企業では賃上げができても、円安で苦しむ中小企業は従業員の賃金を思うようには上げられません。 そのため、物価高を考慮に入れたうえで賃金がどれほど上がったかを示す「実質賃金」は、25カ月連続マイナスです。 定額減税などしても、今年の家計負担は、昨年比10万円あまり増えることが想定されています。 ◆円安の原因は? では円安の原因は何か?以前は、自動車など日本からの輸出が増えれば「円高・ドル安」が進むとされてきました。 教科書的には「ドルが日本国内にどんどん入ってくると円高になる」と言われてきましたが、今は、貿易収支よりも資本取引の影響が遥かに大きくなりました。 1980年の外為法改正で、資本の取引が自由化されて、外貨預金などする人が大幅に増え、金利差の生まれるところに大量の資金が利益を求めて、大きく移動します。 ちなみに、世界の貿易額は、2022年は24.2兆ドル、1日約663億ドル。1ドル150円で換算すると約10兆円です。一方、世界の外国為替市場の取引額は1日あたりの平均が7兆5千億ドル(1,125兆円)。貿易額の100倍をはるかに超えています。 アメリカがインフレ対策として高金利政策を維持しています。その一方で、日本は低金利政策を続けているため、円安が止まらないのだということが言われます。 それなら、日本も金利を上げればいいのですが、それができません。 金利を上げたら、自宅などローンを組むような大きな買い物をする時に負担が増えたりして、経済にもっとブレーキがかかります。 何より、最大の理由は、バラマキや手厚い社会保障によって財政赤字が増えすぎて、金利を上げると、政府の利子の負担が大幅に増えてしまう。つまり、日本政府の借金がもっと膨らんでしまうわけです。 しかし日本は、財政赤字が巨額過ぎ、とても金利を上げられません。 財務省の試算では、長期金利がこれまでの想定より1% 上がった場合、2033年度 の国債の利払い費がさらに8.7兆円増えるとされます。これは2024年度の防衛関係費(約7.9兆円)を上回ります。 その結果、日米の金利差はなかなか縮まらず、円を売ってドルを買う動きはしばらく続くとみられます。 では、現在の円安、物価高の苦境から脱するためにはどうすべきでしょうか。 (1)補助金、給付金などのバラマキをやめること まずは、財政赤字を膨らませる原因となる補助金、給付金を止めることです。 円安で家計が苦しいという訴えが出てくるとすぐ「給付金を出しましょう」という話が出てきますが、日本経済にとって逆効果です。 補助金を出すためには、増税するか国債を発行することになるからです。 増税は企業や個人のやる気、働く意欲を失わせ、経済を低迷させてきました。「タコが自分の足を喰う」と言いますが、バラマキは必ず将来世代のツケになります。 そもそも「補助金」バラマキは、まぎれもない選挙対策です。生活が苦しくなるほどにバラマキがよく効くのです。 1998年に公明党肝いりの「地域振興券」から、バラマキがさも「優しい政治」のように大手を振っています。 セーフティネットは必要ですが人々の「政府から奪いたい」という心を増長させると、またくれないかなというさもしい心を引き出します。 国民の働く意欲を奪うようになるので、 政治における愛というのは、単なる優しさではなく、智慧を持って与えなくてはなりません。 小学生が「将来の夢は生活保護を受けて楽に暮らしたい」と言っているという記事もありますが、現金を懐に入れる政治が外道も外道、国民の精神を歪めます。 大川隆法総裁は「人の心の弱みに付け込み、餌で魚を釣るがごとく、人々を釣るような行為で政治権力を取ろうとする者たちに対しては、やはり、『それは悪魔の所業である』と言わざるを得ない」と指摘されています。 (2)規制緩和と減税 次に、規制緩和と減税です。円安対策の王道は、日本経済への信頼を取り戻すことです。 政治がやるべきは、現金お金を配ることではなく、民間が働きやすい環境づくりです。民間の智慧を最大に発揮してもらえるように、自由の範囲を拡大することです。 速攻やるべきは、規制緩和です。「働き方改革」といった残業規制、働かせない改革を撤廃することです。 そして「減税」です。税金と社会保険料を取られると貯金もできない国にしないでほしい。 現在、「安い税金」について訴える政党は増えてきましたが、そうした政党の一部は「お金持ちや企業からは取る」と主張します。 そこで「目指すべきは小さな政府」です。バラマキのためにお金持ちからたくさんの税金を取ると、お金持ちはお金を使わなくなります。そうした「ゆとり消費」というのは、景気に大きな影響があります。 政府が税金でやる仕事はたいてい、バカバカしいことになります。「民間ができることは民間で」という「小さな政府」を目指すべきと主張している政党は、幸福実現党以外にありません。 バラマキは亡国の道です。「小さな政府、安い税金」によって、国民の自由の範囲を広げ、やる気のある人、頑張る人が報われる社会をつくることが全ての人の幸福につながるはずです。 国民を更に貧しくする「働き方改革」は天下の愚策。働きがいのある国にするには。 2024.05.27 https://youtu.be/KwdMsNLEDJE 幸福実現党党首 釈量子 ◆「2024年問題」働き方改革で貧しくなる日本 2015年に大手広告代理店で起きた過労自殺をきっかけに、2019年から、残業時間の上限などを規制する「働き方改革」が始まりました。実質上の「働かせない改革」で、これに対して苦しんでいるという声が多数寄せられています。」 例えば、大阪府の商店経営者からです。 「朝10時に開店で、夜8時に閉店しています。10時間労働となるので2人、あるいは3人シフトにせざるを得なくなりました。これで人件費が上がりました。また、政府は賃上げを要請しています。給料を上げると、雇用保険、社会保険の負担も上がります。賃上げ税制で戻ってくるといっても、微々たるもので雀の涙。残業規制がとにかく一番キツイ。」 この「働かせない改革」ですが、これまで「運送業」「建設業」「医療」の3つの業界においては、仕事の大部分を人間の労働力に頼る、その対応に時間がかかるため、猶予期間が儲けられていたのですが、4月からその3つの業種の猶予期間が終わり、約2カ月経ちました。 案の定、憤懣やるかたない声が噴出しています。人手がないとそもそも仕事が回らない「労働集約型産業」は、システム導入などで業務を効率化するといっても、限界があります。 こうした業種に「働く時間を減らせ」「さもなくば処罰する」という政策は、現場の実情を無視しているといえます。 ◆「働き方改革」の悪影響について ●建設業界 建設現場は天候の影響などもあって思うように工事が進まない場合、以前は一時的な残業で対応していましたが、今後は、時間外労働の上限は「月45時間、年360時間」を原則とし、災害復旧などの特別な事情がある場合でも、年間720時間以内、ひと月最大100時間未満となります。 違反した場合は罰則がかせられるので、より多くの人手を確保する必要に迫られています。 いま、ビルの建て替え工事などが先送りになることが相次いでおり、例えば、広島駅前に建設されるアパホテルは、当初、2026年春の開業を目指していましたが「時間外労働の上限規制」の影響で、2028年春に約2年延期となっています。 大手だから余裕かと言えばそうでもなく、大きいところほどメディアも取り上げ公表されるので厳しいです。 工期の延長の影響は深刻です。コロナ禍以降、資材価格が高騰し、人手不足、人手を確保のための賃上げの圧力、そこに「働き方改革」という名の残業規制がのしかかりました。 帝国データバンクによると、2023年、建設業界の倒産件数は前年比38.8%増と急増しています。 倒産が増え、工事の停滞や先送りが生じると、元請けから下請けへの支払いが遅れ、資金繰りが悪化する企業がさらに増えてしまいます。地域経済への影響もあるので、目が離せません。 ●運送業 運送業も、残業の上限が年間960時間となりました。 他にも ・1日の拘束時間(労働時間)は原則13時間が上限。 ・休憩時間を8時間以上確保すれば最大15時間まで延長可能。 ・連続運転時間は4時間が上限。4時間経過後は30分以上の休憩が必要。 ・1週間に2回までは拘束時間を15時間まで延長可能。 ・この上限規制に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科される可能性があります。 運転手一人が働ける時間が短くなるため、一人でやっていた仕事を二人、三人でやらねばならなくなり、多くの運転手を必要とすることになりました。 ドライバー不足は、様々な業種に深刻な打撃を与えています。特に長距離輸送のトラック運転手には深刻な問題が生じています。 年間の残業時間の制限だけではなく「連続運転が4時間を超えると30分の休憩を挟む」「1日の拘束時間は原則13時間以内」などの細かいルールがあるため、あと少しで会社に戻れる場所まで来たのに、そこでトラックを止めて朝まで休まなくてはならず、家に帰れなかったというケースもあるようです。 次に「バス業界」です。 慢性的な運転手不足に加えて、残業規制強化によって、全国各地の路線バスが大幅に減便となり、千葉県の調査によると、県内35の路線バスにおいて、4月16日時点で半年前より1900便減ったと公表しています(3万1900便から3万便へ)。 減便理由の8割が、残業時間などの時間外労働規制の導入を上げています。 また、「運転手不足と時間外労働の上限規制」を理由に、修学旅行のバスの手配ができないと断わるケースも発生し、「業界崩壊の危機」とも言われています。 「引っ越し業界」でも、残業規制の強化でドライバーが確保できないため、3月の引っ越し依頼を100件以上断ったという企業があり、新入学や入社シーズンの3月から4月、引っ越しができない「引っ越し難民」が続出しています。 「宅配業界」は、翌日配送していた地域への宅急便を、翌翌日配達に変更したり、翌日の配達時間の指定を断ったりする対応を取っています。 スーパーやコンビニなどの小売業においても、商品を各店舗に配送する回数を減らす対応をしています。 ●医療 医療も、既に土曜日の外来診察を減らすなどの対応を始めています。救急患者のたらいまわしなどがもっと深刻化する可能性もあり、死亡率が上がるのではないかと危惧されています。 また過疎地など地域医療に影響が出ると予測されています。実際、北海道の離島への医師の派遣を減らす、見送るといった事例が出始めています。 ◆「働き方改革」の対応に追われる企業 このような中、企業も仕事を断る、減らす、またコストの負担に耐えながら対応を取り始めています。 長距離輸送運送会社では、一人のドライバーで運ぶと一日の上限時間を超えてしまうため、中継点でドライバーを交代して二人にするといったスイッチ体制を組むなどしていますが、人件費は増えます。 そこで、1台で通常の大型トラック2台分の荷物を運べる「ダブル連結トラック」(全長25メートル)を導入する企業も出てきました。(鴻池運輸) 運送業では、2025年には現在運んでいる荷物の28%が、2030年には35%が運べなくなるという試算も出ています。 深刻な危機感から、物流大手のヤマトHDは、効率的な共同輸送に向けて、荷主と物流会社のマッチングを行う新会社を設立したと発表しました。トラックの積載率を向上させ、配送の効率化を目指すということです。 こういうと、よくお役人は、「2024年問題をプラスに捉えて…」とか「物流の改革が進みつつあるのは、政府が残業規制を強化したからだ」などというのですが、違和感があります。 大型トラックには、休憩時間や一日の上限時間を守っているかを確認するため、運転速度、運行時間、走行距離などを記録する「デジタコ」と言われる機器の装着を義務付けられています。 また、国交省の役人が「トラックGメン」となって監視の強化も始まりました。こうした規制の強化のオンパレードで、これで仕事をしているつもりなら、それは社会主義の国の官僚と変わりません。 国交省は「2024年問題」対策に、総額482億3500万円(22・26倍)という超大型予算を組んでいますが、政府がやることはたいてい壮大な「無駄遣い」となり、税金をドブに捨てるのと同じという状況になりがちなのです。 ◆働き過ぎを一律決めるな! 自由の領域を増やすのが政治の仕事 私たち幸福実現党は、政治の仕事とは「国民の血税を再配分して、規制を強化すること」ではなく、その逆である「自由の拡大」だと考えています。 「働き方改革」が進む中、2021年に労災認定の基準、いわゆる「過労死ライン」が見直されましたが、何時間の仕事を「働きすぎ」かなど、年齢や体力など個人差がありますし、「仕事の負担感」も、やりがいや職場の雰囲気など、さまざまな要因に左右されます。 そうした個人や企業の事情を無視して、一律「働きすぎ」の基準を決め、休憩時間まで口を挟み、残業時間を守らないと企業に罰則を科すというのは、政府がすべてを把握し、経済をコントロールできると思っているからでしょう。 親切のつもりでしょうが、これは「致命的な思い上がり」です。 政府が、個人の働き方や労働契約に口を挟んでくるような政治が、国民の自由をどんどん奪っています。こうした政府の領域が大きくなっていくのと「大きな政府」といいます。 この真逆の「小さな政府、安い税金」にすべきだというのが幸福実現党です。 実際、トラックドライバーへのアンケートでは、「収入が増えるならもっと働きたい」と回答した人が42.5%と最多でした。 もちろん、「収入が増えたとしても働きたくない」という人もいますので、それは各従業員が会社と相談しながら働き方を決めればいいだけのことです。 働けなくなることで「手取りが減る」庶民にとっては、住宅ローンや子供の学費の工面など死活問題です。そのためいま「副業」に注目が集まっていますが、「エセ副業」など問題も多発しています。 そもそも、残業規制など、企業に余計な負担を強いることになるので、企業はそうしたコストを宅配サービスや商品の価格に上乗せします。国民にとっても「高い税金」を支払わされているのと同じようなことになるわけです。 ◆勤勉の精神を失わせる愚策「働き方改革」勤勉あってこその経済成長 結局、「働き方改革」は、「勤勉の精神」を失わせ、国を貧しくする愚策です。 特に怖いのは、長時間労働を処罰するような政府の動きが、「長時間労働は望ましくない」という考えがさも「常識」のように国民に浸透してしまうことです。 確かに、短時間で優れた成果を出すのが一番ですが、仕事に慣れない新人の頃は、頑張って働かなければ経験値も増えず、智慧や工夫も生まれてきません。 また、「自分は人の二倍、三倍努力しなければ身につかないけれども、それでも働きたい、お世話になった社長の役に立ちたい」と言う青年がいました。 「学習障害」と診断された青年です。効率よくサクサク仕事できなければ切り捨てられるような環境を、政治が作るのは本末転倒です。 実際問題ですが、「経済成長と労働時間」には関係があります。 イギリスでは、17000年から1870年までの170年間、経済規模が10倍に拡大しました。この成長を裏付けるのが労働時間です。年間の平均労働時間は約2600時間から3500時間へと35%も増えました。 そしてこの時代、『自助論』「天は自ら助くるものを助く」という自助の精神が読まれていたのは有名な話です。勤勉さが、国の成長を導くわけです。 見事にその逆の方向に向かっている「働き方改革」です実際、近年の日本の労働時間は減少傾向にあります。 1988年に約2100時間だった日本の年間平均労働時間は、33年後の2021年には1600時間程度と大幅に減少しています。 「年次有給休暇の取得」も義務づけられていて、2019年から、従業員に年間5日以上の有給休暇を取らせないと、違反者一人につき30万円以下の罰則が企業に科せられるようになりました。 日本の年次有給休暇の取得日数は、アメリカに次いで少ないものの、祝祭日の日数はG7諸国で最多となっています。休日全体は、ドイツに次いで多い国です。 日本の経済規模を示すGDPは中国、ドイツに抜かれ、世界2位から世界4位にまで落ち込みました。来年にはインドにも逆転されると見込まれています。 二宮尊徳型の「勤勉さ」を取り戻さなくてはならないのではないでしょうか。 そもそも「仕事」とは何か。大川隆法党総裁は、「人間は、ともすれば、仕事に不満を持ったりするけれども、『世の中に仕事がある』ということに感謝したことがないのではありませんか」(中略)「仏が、自分と同じような創造の喜びを人間に与えようとして、仕事というものを与えたのだ」と考えてよいのです。(『仕事と愛』) と説かれています。 「思いによってあらゆるものを創造する自由」が神の子の証明であるし、この「自由」こそ、人間の最大の幸福だということです。 また、「働く」ということが、多くの人への「愛」となれば、また多くの幸福を生んでいけます。 「働く」ということは、生きていく糧を得るということですが、この世に生まれてきた目的や使命、つまり、「天命」「使命」にも昇華する精神的な問題でもあります。 今日お話しした内容は、幸福実現党NEWS162号「『働き方改革』で貧しくなる日本 働きがいのある国にするために」にまとめています。 幸福実現党は、「小さな政府、安い税金」を掲げ、働くことの喜び、自助努力からの繁栄に道を拓こうとしている唯一の政党です。 私たち一人ひとりの自由と豊かさ、幸福を守るために共に声を上げていきましょう。 止まらない円安スパイラル。日本経済の信用を取り戻すために必要な一手とは? 2024.05.08 *当記事は動画サイト「TruthZ」に連動しています。 下記の動画を併せてご覧頂き、チャンネル登録もよろしくお願いいたします。 https://youtu.be/bTZgWzhypRI 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 ◆生活に直撃している円安 円安・ドル高水準が続いています。円相場は一時、1ドル=160円台にまで下がり、34年ぶりの円安ドル高水準となりました。 円安は輸入物価の上昇で、生活必需品となる食品の値上がりを招いており、私たちの生活を直撃しています。 34年前、1ドル=150円台の水準に達したのは、円安から(アメリカのドル高を是正する)プラザ合意を経て)円高に向かう流れであり、今は反対に円高から円安方向に突き進んでいます。 円が安くなることで、日本がだんだん貧しくなっている状況にあると言えます。34年前の米国の物価は日本の半分だった一方で、現在は2〜3倍になっていると言われています。 円安の影響で、今のGW(ゴールデンウイーク)の旅行先についても、「国外に行きたいが、円安が進みすぎているため、行くなら国内(*1)」といった声も出ており、円安を理由に海外旅行を敬遠する動きも現に見られます。 ◆円安・ドル高の傾向に影響を与える要素とは 円安・ドル高の傾向に大きく影響を与えている要素が、日米の金融政策の方向性の違いです。 例えば、日本国債よりも米国国債の方が、金利が高い場合、高い運用益を得られるとして投資家などによる円売り・ドル買いの動きが進みます。このように、日米の金利差の大きさが為替相場に大きく影響を与えているのは事実でしょう。 米国は特に2022年6月以降、金融引き締めをして政策金利の引き上げを行っている一方、日本は今年3月にマイナス金利を解除したとはいうものの、本格的な利上げまでには至っていません。 政府・日銀は円安是正のため、ドルを売って円を売る為替介入を、4月29日には5兆円規模で、2日にも3兆円規模で行ったとされています。一時、円高方向に動いたものの、円安基調が変化しているとまでは言えず、為替への影響は限定的で、焼石に水と言えるでしょう。 日本時間の2日未明、米国FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を5.25-5.5%に据え置くことが決められました。早期に利下げが行われるという観測が後退し、やはり当面は円安・ドル高基調が続くとみられます。 もちろん、金利で為替の全てが決まるわけではありません。この30年、日本経済はゼロ成長が続き、財政状況も悪化の一途を辿り、政府の債務は1200兆円超にのぼる状況です。今、円が売られているということは、日本経済に対する期待、信用が失われていることをも意味します。「強い円」に戻るには、日本は健全財政の下、「正しい政策」で力強い経済を取り戻さなければなりません。 ◆円安・ドル高を抑えるために本来必要となる「減量」 さて、当面の円安傾向に歯止めをかけるには、何が必要なのでしょうか。日銀が利上げすれば良いかといえば、そう簡単なことではありません。 日銀が利上げを行い、国債金利の上昇を許容すれば、これは政府にとっては利払費が増え、財政のやりくりが今よりさらに厳しいものになることを意味します。日銀が金利を上げたくても上げられないのは、やはり政府の財政状況が悪いという側面があるのです。 やはり、少なくとも、金融政策に自由性を持たせるためには、政府は無駄な仕事をなくす「減量」を徹底的に行い、歳出の見直しをかけなければなりません。 一方、米国の場合、政策金利が高止まりしているのは、米国でしつこいインフレが継続し、それを鎮圧しようとしているに他なりません。 しかし、FRBが金利を上げれば、インフレは本当に収束するのでしょうか。 一時15%程度の物価上昇をも記録した、80年代初頭に米国で生じたグレートインフレーションに対し、当時のポール・ボルカーFRB議長は強烈な金融引き締めで対応しました。 BNPパリバ(エコノミスト)の河野龍太郎氏は、石油ショックを機に顕になった当時の米国でのインフレは、実はジョンソン政権、ニクソン政権における拡張財政路線が大きく影響を及ぼしており、インフレを鎮めたのは実は、「小さな政府路線」を掲げ、社会保障費を大きく抑制したロナルド・レーガン大統領によるところが大きい、との旨述べています(*2)。 インフレが収まらない米国で、今後もさらなる金融引き締めを余儀なくされれば、今度は、景気が大幅に悪化して、インフレと景気後退が同時に生じるスタグフレーションが本格的に到来するかもしれません。 ◆日米ともに、「減量」しか道はない 今、日米ともに、財政インフレーションの側面から「しつこいインフレ」に喘いでいますが、いかに経済・財政のクラッシュを避けて、経済成長路線へと向かわせるかが両国にとっての共通課題となっています。 トランプ前大統領は先月23日、34年ぶりの円安・ドル高水準について、米国の製造業にとって「大惨事だ」と述べており、これまでも、民主党バイデン大統領による放漫財政をはじめとする政権運営や、FRBの金融政策の方針について、疑問を呈してきました。 今、日米両者に必要となっているのは、かつての米国レーガン政権のように、「小さな政府」路線をとることです。 大川隆法党総裁は『危機に立つ日本』の中で、「『小さな政府』を目指し、政府として必要最小限のところに税金の使い途を絞らなくてはなりません。また、民間の力を抑えているもの、民間の活動を規制し、抑えている法律や条例などがあったら、これを取り除いて、民間の活力を呼び戻すことが必要です。」と述べています。 行きすぎた社会保障の見直しなどによる歳出削減や不要な規制の撤廃など、今こそ、政府の無駄な仕事の「減量」を行うことが必要ではないでしょうか。 (*1)TOKYO MX(2024年4月29日)「GWの過ごし方も変化…国内旅行が人気 歴史的な円安の影響で」より。 (*2)河野龍太郎, 『グローバルインフレーションの深層』(慶應義塾大学出版会、2023年)より。 4月から始まった制度改正――日本に必要とされる「勤勉革命」 2024.04.11 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。 https://youtu.be/BGBWAB_AQu4 ◆新年度の開始で、暮らしはどう変わるか 新年度が始まり、私たちの生活に影響を与える、料金の値上げや制度改正が行われています。何が変わったのか、簡単に見てまいります。 一つ目は、食品や宅配料の値上げです。 4月に値上がりする食品は、価格を変更せずに中身を減らすという「実質値上げ」を含めると、2806品目に及びます。 宅配料金は、佐川急便で平均7%、ヤマト運輸で平均2%の値上げに踏み切っています(*1)。様々な商品の値上がりが続いており、今後、生活はますます苦しくなっていくと懸念されます。 二つ目は、時間外労働の上限規制の適用です。 安倍晋三政権の下で進められた「働き方改革」により、2019年以降、一般の労働者の時間外労働、残業に対して、年間で720時間の上限規制が設けられましたが、運送業、建設業、医師については、人員確保が難しいなどという理由から、その適用が5年間猶予されていました(*2)。 しかし、猶予期間が過ぎる今、こうした業種が、労働時間の減少により現場で支障が出る、いわゆる「2024年問題」に対して十分に対応できているとは言えないでしょう。 今後、宅配料などの更なる値上げ、場合によっては地域で医師が不在となるケースが生じるなど、私たちの生活に打撃を与えかねません。 三つ目は75歳以上の一部の方を対象にした公的医療保険の保険料引き上げ、四つ目は、森林環境税の導入です。森林環境税は、国内の森林整備を目的に、住民税に上乗せされる形で、年間一人あたり1000円が徴収されるという新しく導入された税金です。 こうした保険料の引き上げや新税の導入は、国民負担をさらに増大させることになります。 五つ目は、ライドシェアの一部解禁です。 これまで、タクシー以外の自家用車が客を運ぶ「白タク」行為は原則禁止となっていました。 しかし、タクシー不足や地域における移動手段を確保するという観点から、今月1日より、東京や京都など一部地域を対象に、ライドシェアが部分的に解禁されることになりました。 ただ、海外とは違い、ドライバーはあくまでタクシー業界に雇用される形に留まっており、ライドシェアが運行できる区域や時間帯も限られています。 このように一見「規制緩和」に見える「ライドシェア一部解禁」は、不足する移動手段を穴埋めする「その場しのぎ」の策にすぎません。タクシー業界が政治に守られていることで、料金は高止まりしてしまっています。 それによって生じる損失を被っているのは、私たち消費者です。利便性を高めたり、安全性を担保するルールを整備しながらも、地域の足を確実に確保するという観点から、タクシー業界以外にも有償運送業への参入を認める「全面解禁」を目指すべきではないでしょうか。 ◆経済成長路線への回帰に向けて必要な「勤勉革命」 今の日本は、様々な業界が既得権益で守られているほか、増税や社会保険料の引き上げで、「大きな政府」化が進んでいます。 一方で、日本経済はこの30年、低迷が続いています。昨今、GDP3位の座をドイツに明け渡し、近く、インドにも追い抜かれるのではないかとも言われています。 日本が経済成長路線に回帰するには、何が必要なのでしょうか。その大きな鍵となるのが「勤勉」という価値観ではないでしょうか。幸福実現党の大川隆法総裁は、『減量の経済学』の中で、次のように述べています。 「自由的な意志による努力の継続があって、そして経済的繁栄は来るのです。 過去、こういう『勤勉革命』というのは、イギリスで二回ほど起きています。十六世紀、十八世紀ごろに、それぞれ起きていますが、これでイギリスの国力がガーッと上がっているわけです。 要するに、『個人個人が、自由意志に基づいて勤勉に働いて、世の中を発展させようとする』、『自分自身も豊かになって、世の中も豊かになるように努力しようとする』―、世間の風潮がそういうふうになってきたときに、産業革命が起きたりして、国がもう一段上がっているわけです。」 ◆勤勉革命がイギリスで起こった背景とは ここで、18世紀ごろのイギリスに焦点を当てると、1700年から1870年までの170年間で、イギリス経済の規模は、10倍にまで拡大しています(*3)。 この経済成長を裏付ける要素の一つが、労働時間です。特に18世紀後半、1760年から1800年において、年間の平均労働時間は約2631時間から3538時間へと35%増加しています(*4)。 当時、工場での生産活動が行われていましたが、それは、労働者による長時間労働があってこそ、運営が成り立つものでした。確かに、あまりにも長い労働を強いられたり、場合によっては児童労働が起こったケースもあったのは事実でしょう。しかし、プラスの面に焦点を当てると、人々の勤勉性が国全体としての活発な生産活動に繋がっていき、これがさまざまな「技術革新」が生み出された、「産業革命」にもつながったのは確かです。 ではなぜ、当時のイギリス人は労働意欲が高かったのでしょうか。 一つは、「財産権」が保障されていたこと、すなわち、国家が個人や企業の財産を没収するといったリスクがほとんどなかったことです。 1688年に起こった「名誉革命」以降、イギリスでは議会政治が確立し、国家権力はある程度制限されていました。国民は自らの財産が政府に奪われる心配もなく、安心して労働に励み、富を築くことができたのです。 もう一つは、信仰観です。マックス・ウェーバーが説いたように、当時のイギリスの人々は「魂の救済は、あらかじめ神によって決められている」というカルバンの「予定説」に従って、自らが「選ばれし者」であることを示そうと、勤勉に働いて富を蓄積していったのです。 16世紀以降、世界経済のフロントランナーを走ったのはオランダ、イギリス、米国とプロテスタントが優位な国々であることからも、宗教が国の経済的な繁栄に大きく影響を及ぼしてきたと言えるでしょう。 いずれにしても、経済活動の自由や民主主義、そして信仰をベースとする考え方が、勤勉革命が起こった素地になっていたのではないでしょうか。 ◆日本経済が成長するのに必要な「小さな政府・安い税金」 今、日本では、バラマキが横行しています。バラマキは必ず、増税など国民負担の増大につながります。増税は、働いたり知恵を出して稼いだお金が強制的に国家に没収されることに他なりません。これはある意味で国民の財産権に対する侵害です。 バラマキ・増税は、働かなくてもお金がもらえること、また、働いても重い税金で自由に使えるお金が少なくなるということから、労働意欲をますます低下させることにつながります。ましてや今、政府は働く自由を阻害する新たな規制まで設けています。 日本経済が成長するためには、確かな信仰観の下で、政府はバラマキや要らない規制をなくして、「小さな政府、安い税金」を目指すべきではないでしょうか。 (*1)ヤマト運輸は、大型の宅急便やクール宅急便など、佐川急便は飛脚宅急便を対象としている。 (*2)建設業の労働者に適用される上限規制は、他の業界と同様、年720時間が上限となる。運送業のドライバーは年960時間、医師は、休日労働を含めて年1860時間となる。いずれも、特別な事情がある場合に限られる。 (*3)マーク・コヤマ他『「経済成長」の起源』(草思社、2023年)より。 (*4)永島剛「近代イギリスにおける生活変化と勤勉革命論」(専修大学経済学会, 2013年)より。 マイナス金利が日本経済にもたらした3つのこと。17年ぶりの「金利ある世界」に戻るために必要な心構えとは? 2024.03.21 幸福実現党政務調査会 西邑拓真 当記事は、動画チャンネル「TruthZ」に連動しています。 下記の動画もぜひご覧ください。チャンネル登録もお願いいたします。 https://youtu.be/oODks5s9Xkc ◆日銀はマイナス金利政策の解除を決定 3/18-19日、日銀の金融政策決定会合が行われ、焦点となっていたマイナス金利政策の解除が決定されました。 先週にも、株式市場で「日銀がマイナス金利を解除する可能性が高い」と見られ、一時株安が進みましたが、その後は反発するなど、株価、円相場は大きく変動しています。 先般、日経平均株価は最高値を更新しましたが、生活実感に乏しいというのが現状です。株高をもたらした影響としては、直近では、中国経済のバブル崩壊の懸念から、中国に流れていたマネーが日本株に流れるといった影響も挙げられます。また、この10年スパンで見ると、家計(売り越し25兆円)、日銀(買い越し36兆円)、企業(買い越し16兆円)、海外勢(買い越し5.7兆円)と、日銀が日本株を買い支えていたことが明らかであり(*1,2)、この点からも、この株価は「官製株高」と言えるでしょう。 いずれにせよ、金融政策というのは、株式市場に大きく影響を与えるわけですが、今回は、マイナス金利が日本経済に何をもたらしてきたのかについて、見てまいります。 ◆マイナス金利政策とは 2013年4月以降、黒田前総裁は、世の中に大量にお金を流す「量的・質的緩和」を行い、家計や企業がお金を借りやすくして景気を良くし、デフレから脱却することを目指してきました。しかし、2014年に行われた8%への消費増税が大きく影響し、デフレ脱却には至りませんでした。 そこで、日銀は、金融緩和策の深掘りを行います。それが2016年1月に導入が決まった、マイナス金利政策です。 マイナス金利政策とは、民間の金融機関が、日銀に預ける預金の一部にマイナス金利を適用するというものです。マイナス金利政策が経済にもたらしてきた影響を3つ取り上げます。 ①資本主義の精神を傷つける 1つ目は、そもそも、マイナス金利政策は、資本主義の精神を傷つける、というものです。 資本主義は、いわば「勤勉と節制で富を蓄積し、その富で新しいものを作る。そして更なる富を獲得して、さらに付加価値あるものを作っていく」という好循環を生み、国家に繁栄をもたらすものですが、マイナス金利は、考え方の根底において、資本主義の精神とは逆行するものと言えます。 小峰隆夫教授(大正大学)も、マイナス金利について、「お金を預けると減っていき、お金を借りると増えていくという世界になる。そんな世界はありえないと思う」と述べています(*3)。 ②景気回復にほとんど効果がなかった 二つ目は、景気回復にほとんど効果がなかったことです。 マイナス金利政策では、一般の金融機関は日銀にお金を預けておけばマイナスの金利、すなわちペナルティーが課せられます。日銀の狙いは、日銀に預けられたお金を企業や家計への貸し出しに回させようとするものでした。 しかし、そもそも極めて低い水準の金利が多少低くなったからと言って、企業や家計が借入を増やすことはなく、日銀の意図の通りにはいきませんでした。 ③銀行の経営を圧迫 三つ目は、銀行の経営を圧迫したという点です。 一般的に、信用が同じ程度の債券の場合、長くお金を貸す方が返済されないリスクも高まるため、短期よりも長期の金利の方が高くなります。 銀行は、基本的に、預金など短期のお金を低い金利で借り入れて、長期のスパンで企業や個人に貸し出しますが、高い金利で貸し出した部分と、低い金利で借り入れた部分の差が、銀行にとっての利益になります。 では、日銀がマイナス金利政策を実施した時、何が起きたかといえば、短期金利はすでにゼロ付近にあったことから、金利が低下する余地はほとんどなく、相対的に長期金利の方が低くなっていきました。 すると、銀行にとっては、利益が少なくなることになり、経営が大きく圧迫されることになりました。 経営難に陥った地銀など金融機関はリスクを避けるようになり、日銀の意図とは裏腹に、むしろ貸出を躊躇するという動きも見られました。 幸福実現党・大川隆法総裁は『富の創造法』の中で、マイナス金利政策によりもたらされる銀行の経営難が、日本経済に与える影響の可能性について、次のように述べています。 「銀行が危なくなると、銀行から大口の融資を受けているところもみな危なくなるので、経済政策が失敗すれば、大きなドミノ倒し型というか、将棋倒し型で経済の「負の連鎖」が起き、ある意味での経済恐慌が起きる可能性もなくはありません。(中略)マイナス金利を、一時的な“カンフル剤”として使っているだけならば、そこまでは行かないでしょうが、もし、これが恒常的なものになってきた場合、産業の構造自体が壊れる可能性が高いのです。」 銀行は、実体経済に血液としてのお金を送り込む、心臓のような存在とも言えます。心臓である銀行が機能不全に陥れば、日本経済は立ち行かなくなってしまいかねないのです。 ◆金融緩和の出口戦略に本来必要となる、政府の「覚悟」 以上、三点を踏まえても、今回のマイナス金利の解除は妥当と言えると考えます。 今回、日銀はマイナス金利政策を解除するとともに、長期金利を低く抑え込む長短金利操作(イールドカーブコントロール)の枠組みを終了することを決めています。 ただ、日銀は長期金利の急な上昇を避けるため、同枠組みの撤廃後も「これまでとおおむね同程度の金額で長期国債の買い入れを継続する」としています。 重要な点としては、今後、国債の金利が上がる場合、それは政府財政における利払費が増加することも意味します。 政府は今、1000兆円を超える国債を既に発行していると同時に、放漫財政を続けていることにより、毎年多額の新規国債を発行しています。政府が利払費の増加で財政が破綻に向かうことを防ぐためには、政府は、バラマキはやめ、歳出のあり方を根本的に見直す必要があります。日銀の出口戦略の本格化に向けては、政府歳出の抜本的な「減量」が必要なのではないでしょうか。 (【Truth Z】「株価史上最高値更新もこのままだと日銀倒産?「金利ある世界」に求められる覚悟とは?」(https://www.youtube.com/watch?v=qIofw00WPrc&t=2s)もご覧ください。) (*1)テレビ東京「ワールドビジネスサテライト(2024年2月26日)」、日銀「資金循環統計」より (*2)今回の日銀の金融政策決定会合において、日銀はリスク資産の買い入れ縮小策として、金融市場に大量の資金を供給する目的で行ってきたETF(上場投資信託)と不動産投資信託(REIT)の新規での購入を終了すると決定した。 (*3) 小峰隆夫『平成の経済』(日本経済新聞出版, 2019年)より すべてを表示する 1 2 3 … 78 Next »