Home/ 国防・安全保障 国防・安全保障 終わらないウクライナ戦争 世界大戦勃発の予兆【前編】 2022.05.05 https://youtu.be/jyY-VpZ1OIA 幸福実現党党首 釈量子 ◆米国の目的は「ロシア弱体化」 前回に続き、「世界大戦勃発の予兆」という緊急性の高いテーマです。 米国は、ウクライナへの軍事支援を強化するために、330億ドル(約4兆3000億円)の追加予算を議会に要求しました。 米国は当初、ロシアとの直接対決を避けるために、防衛用の兵器に限定していましたが、ここにきて、重火器やヘリコプター、攻撃用無人機まで提供しています。 米国製の武器を運用できるよう、ウクライナ兵を訓練していることも明らかにしています。 こうした中で、4月24日、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官がキエフを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しています。 さらに4月25日、オースティン国防長官がポーランドで「ロシアが、ウクライナ侵攻と同等のことができない程度に弱体化することを望む」と発言しました。 国防長官の立場で、「米国の目標はウクライナを守るための戦いだけではなく、長期的にロシアを弱体化させることにある」と明言したのです。 オースティン国防長官の発言を受けて、ロシアのラブロフ外相は「米国が代理戦争を行っている」「ロシアの核使用は可能性がある」と警告しました。 ◆米国が代理戦争を行う理由 米国が代理戦争を行う理由は、直接対決のリスクを減らせることや、戦争に反対する国内世論を納得させるメリットがあるからです。 特に、バイデン大統領にとっては、米国は弱い者を助けているように見せながら、ロシアを弱体化させることができます。 しかもトランプ叩きにつながり、選挙対策としても、実に都合のよい構図だということです。 4月25日にはオースティン国防長官が、「西側諸国から適切な軍備支援が行われたら、ウクライナは戦争に勝利することができる」とも述べています。 ◆バイデン政権を批判する米報道 しかし、米国ではバイデン政権が、ロシアとウクライナの停戦に関心を示さず、さらに軍事的支援を強化をしていることに対する批判が増えてきました。 例えば4月14日、米国の保守系メディア「The American Conservative」に、「ワシントンはウクライナ人が最後の一人になるまでロシアと戦うだろう」という記事が出ました。 記事では、「ロシアとウクライナの外交的解決を妨げているのは米国だ」「欧米は戦争への支援と同じくらい平和に向けた努力を行うべき」などと主張しています。 このバイデン政権による「代理戦争」から、戦線はどうやら「世界大戦」の方向へと拡大しつつあります。 ◆戦争が世界に飛び火、核攻撃も 今後戦争が、飛び火していく可能性をみて参ります。 (1)ロシアとNATOの全面戦争 プーチン大統領は「作戦に干渉するなら、電撃的な対抗措置を取る」と強気の姿勢を崩しておらず、「他国の持っていない兵器がある」とまで語っています。 当然、「戦術核」の攻撃も辞さずということです。 5月9日の対独戦勝記念日に、「特殊軍事作戦」ではなく「戦争宣言」をする可能性が高いと言われています。 そうなれば、今までのような限定的でゆっくりした攻撃ではなく、軍事支援をしている国への攻撃を開始する可能性があります。 例えば、ポーランドは旧ソ連型の戦車200台やドローンを供与するなど、相当な軍事支援も行っています。 また、ウクライナとの国境から約70キロメートルのジェシュフに重要な補給拠点があり、頻繁に着陸する軍の輸送機からトラックに装備を積み替え、ウクライナに向かいます。 ジェシュフ近郊では、米国が派遣した欧州への増派部隊約2000人の大半が駐留しており、人道支援物資もここを経由します。 ロシアはポーランドへの天然ガス供給をすでに停止していますが、欧米の軍事支援が続けば、プーチン大統領はポーランドのジェシュフの補給拠点を攻撃するかもしれません。 もし、ロシアがポーランドに戦術核を落とした場合、NATOが報復攻撃を行えるかどうか。もし報復を行えば、ロシアとNATOの全面戦争になる可能性もあります。 (後編につづく) ウクライナ戦争から学ぶべき二つの教訓、憲法9条改正と核装備【後編】 2022.05.04 https://youtu.be/8oXLpFXBTOc 幸福実現党党首 釈量子 ◆非核三原則見直しと核装備 前編では、日本がウクライナ戦争から得るべき、一つ目の教訓は、憲法9条改正が必要であることを述べました。 二点目の教訓は、「非核三原則」の見直しと核装備です。 ソ連邦崩壊後、ウクライナは核保有国でしたが、1994年に米国とロシアとの間で「ブタペスト覚書」に合意し、全ての核兵器を放棄することを決めました。 もしウクライナが核放棄せずに、核兵器を保有していれば、今回のようなことは起きなかったかもしれないと言われています。 ウクライナ戦争を機に、日本でも「持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を見直し、米国との核シェアリングが必要ではないかという議論が出てきました。 しかし、日本が核シェアリングするには、粘り強い外交交渉が必要です。 国連の常任理事国は全て核保有国です。しかし、米国は自分の核抑止力は強化するけれども同盟国や他の国に核を持たせないのが基本方針です。 日本と同じ敗戦国であったドイツが米国と核を共有することで、核抑止力を保っています。 ◆ドイツの核シェアリング 1964年中国が初の核実験を行った後、1968年に米国のジョンソン政権は核保有国が広まるのを警戒し、一気に「核不拡散条約NPT」に舵を切ります。 要するに、米国の同盟国である西ドイツや日本には核を持たせないで、「核の傘」で守ることにしました。 ところが米ソ冷戦時代の最中、米国はソ連との最前線にある西ドイツに大量の核を持ち込んでいました。 当時、西ドイツのクルト・キージンガー政権は何とか核使用への関与を強めるために、西ドイツ領内から核を使う場合、西ドイツの意見を聞くよう粘り強く交渉しました。 その結果、西ドイツと米国は核の運用を共同管理する「核シェアリング」が成立したわけです。ドイツの核シェアリングの背景には、粘り強い外交交渉があったわけです。 冒頭申し上げた通り、現在の日本の状況は、冷戦期の西ドイツ以上に厳しいものです。 ◆核シェアリングを否定した岸田首相 岸田首相は3月上旬、非核三原則に反するので「核シェアリングは認められない」と即座に否定しました。 核シェアリングに至るまでには、まず「核を積んだ米海軍艦艇の日本寄港を認めるか」という問題があります。 「核を持ち込ませず」に反するので、大議論になると思いますが、議論を前に進めていく必要があります。 日本が核シェアリング導入に成功した場合でも、核を使用するかどうかの最後の判断を、日本がするのか、米国がするのかという問題が残ります。 米国に最終判断を委ねた場合、米国は報復を恐れて、躊躇するかもしれません。やはり、最終的には、日本は主権国家として自前の核装備をすることが必要なのです。 ◆米国の「核の傘」では日本を守れない 戦後日本の平和は日米安全保障条約によって守られ、その中核に「米国の核の傘」があったのは事実です。 しかし、「米国はワシントンを犠牲にしてまで、核兵器を撃ってくれるのか」という疑問が残っています。 日米安全保障条約の中には、「日本が核攻撃を受けたら、米国が核兵器で報復する」という文言は一言も書かれていません。 例えば、「北朝鮮が日本に核攻撃したら、米国が核で報復する」という見込みがあれば、核の抑止力が成立します。 しかし、北朝鮮はすでに米国本土に到達可能な大陸間弾道ミサイルを保有し、さらに迎撃の難しい極超音速ミサイルを開発しています。中国やロシアも同じです。 ワシントンを危険に曝すことはできないので、米国の大統領次第で、核を使用しないという判断もあり得るわけです。その場合、北朝鮮は日本に核攻撃する可能性が出てきます。 広島的世界平和主義が限界を迎えた今、核なき国ではなく、核を落とさせない国を目指すべきです。 日本は戦後のマスコミや教育がタブー視してきた憲法9条や非核三原則の問題に踏み込み、「自分の国は自分で守る」体制を構築すべきです。 主権国家として「奴隷の平和」ではなく、「正義のある平和」を実現しなくてはなりません。 ウクライナ戦争から学ぶべき二つの教訓、憲法9条改正と核装備【前編】 2022.05.03 https://youtu.be/8oXLpFXBTOc 幸福実現党党首 釈量子 ◆国家存続の危機にある日本 ウクライナで戦争が続いていますが、終結の目処は立ちません。 欧米はウクライナへの軍事支援を強化し、4月24日に米国の国務長官、国防長官までキエフ入りしています。これは、ロシアへの宣戦布告に近い、危険な行動です。 4月27日、プーチン大統領は「電撃的で、素早い対抗措置を取る」と話し、核兵器の使用も辞さない姿勢を示しました。 このままでは、ウクライナ戦争が欧米を巻き込んだ「世界戦争」「核戦争」になる可能性が濃厚です。 岸田政権の動きも極めて危険で、米欧に追随し、ロシアに対して強硬に出たために、日本は一気に「ロシアの敵対国」になってしまいました。 津軽海峡のロシア艦艇通過や、北方領土の軍事演習、ロシアによる北海道侵攻が現実味を帯びています。 中国とロシア、北朝鮮の核を保有した三カ国が連携し、台湾・沖縄侵攻、北海道侵攻、韓国侵攻などの共同軍事行動を取る可能性も高いと言えます。 日本の最大の危機が現れていることに、日本人は気づかなくてはなりません。 ◆憲法9条改正 日本がウクライナ戦争から得るべき、一つ目の教訓は、憲法9条改正です。 幸福実現党は立党間もない段階から『新・日本国憲法試案』を発表し、憲法改正に積極的に取り組んできましたが、その必要性は日増しに高まっています。 例えば、日本国憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意した」と書かれています。 これは簡単に言うと、「日本人の生存と安全を、国際社会の善意に委ねる」ということです。中国や北朝鮮、これらの国に日本の命運を委ねたい人はいないのではないでしょうか。 これが戦後日本の空想的平和主義の土台になっています。自分の国は自分で守らなくてはなりません。 ◆自衛隊を国防軍に 憲法9条1項で「戦争放棄」を、9条2項で「戦力の不保持」「交戦権の否認」を定めています。 この条文は、周りの国も一緒に戦争放棄していれば成り立つかもしれませんが、日本の周辺には軍備増強を加速する核保有国ばかりです。 憲法9条2項では「戦力の不保持」を定めているので、日本は本来、戦力を意味する軍隊を持つことはできません。 しかし、自衛隊はすでに存在し、22万人の自衛隊員と巨大な組織、装備を持っています。 世界の軍事力ランキング5位、英語では「セルフ・ディフェンス・フォース」と訳され、海外からは軍隊として扱われています。 幸福実現党としては、憲法を抜本的に改正し、自衛隊を国防軍として明確に位置づけるべきだと思っています。 幸福実現党の大川隆法総裁は、2009年に発表した『新・日本国憲法試案』の第5条で、次のようにと定めています。 「国民の生命・安全・財産を護るため、陸軍・海軍・空軍よりなる防衛軍を組織する。また、国内の治安は警察がこれにあたる」 「軍隊を持てば戦争を始める」という意見もありますが、極論です。世界中の国が軍隊を持っていますが、世界中で戦争が起きているわけではありません。 ◆自民党の「加憲」で国は守れるのか 自民党は安倍政権の時に、憲法9条に「加憲」し、自衛隊の存在を憲法上で認めることを憲法改正案で示しています。 しかし「自衛隊は軍隊ではない」という解釈は同じなので、本質的には何も変わりません。 自民党案は「白馬は馬にあらず」を憲法に書き込むことであり、解釈論と条文の改訂を混同しています。 いずれにしても、国の交戦権を認めず、戦力を保持しないまま、自衛隊が憲法上の存在となるのは、国の主権を考えていない無責任な政治といわざるを得ません。 自衛隊が軍隊になれば、日本の抑止力は、格段に強くなります。 「ウクライナに便乗して、憲法改正するな」という野党の意見も現実離れしていますが、自民党の「加憲」であっても日本の独立を守るためには十分ではありません。 いまこそ、憲法9条を抜本的に改正し、日本の「戦後」に終止符を打つべきです。 (後編につづく) ウクライナのネオナチ「アゾフ大隊」とは。ロシアの軍事作戦の正当性はあるのか? 【後編】 2022.04.21 https://youtu.be/pAj1tFBXNr4 幸福実現党党首 釈量子 ◆アゾフ大隊の残虐さ ネオナチ「アゾフ大隊」の残虐さは、国連も調査しています。 国連人権高等弁務官事務所は、2015年の11月から2016年2月にかけて、紛争が起きていたウクライナ東部の現地調査を行いました。 現地住民へのヒアリングから、アゾフ大隊によって、民間人の殺害、拷問、虐待、略奪があったことを報告しています。 例えば、2015年1月28日、マリウポリの男性が「ドネツク共和国を支援している」との理由でアゾフ大隊によって拘束され、2月6日まで、電気ショックや水責めの拷問を受けた事例が載っています。 これは国際法違反であり、ミンスク合意違反です。 ヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した2016年のレポートでは、ハリコフやマリウポリなどに秘密の監禁施設があり、親ロ派の住民を恣意的に拘束し、虐待していると指摘しています。 また、2014年5月に起きた「オデッサの虐殺」では、アゾフ大隊が大勢のロシア人を建物の中に追い込み、放火し火炎瓶で焼き殺しました。 これらの報告を見ると、プーチン大統領の指摘通り、親ロ派住民の安全は全く確保されていなかったことが明らかです。 ◆アゾフ大隊の称賛が可能に フェイスブックは2016年、アゾフ大隊を白人至上主義者のKKKやイスラム過激派のISISと同じレベルの危険組織と認定しました。 アゾフ大隊は、フェイスブックを通じて世界中から隊員をリクルートしており、2019年には、その利用が禁止されています。 同時期、米国下院議員40名がアゾフ大隊を海外テロ組織として認定するよう国務省に働きかけを行っています。 ところが、今年2月、なぜかロシアの特別軍事作戦後、アゾフ大隊のフェイスブックの利用禁止が解除され、アゾフ大隊を称賛することも可能になっています。 ◆米欧が隠すアゾフ大隊の「不都合な真実」 3月8日の国際女性デーにNATOの公式ツイッターに、ウクライナの女性兵士の写真が4点アップされました。 その中の1点に、迷彩服の胸にナチスのシンボルである「黒い太陽」の紀章をつけた民兵が写っていたため、NATOは慌てて、削除しています。 「黒い太陽」は、聖書の黙示録の解釈として、中世から提唱されてきた理想の国家「第三帝国」の紋章で、ナチス親衛隊SSが神聖視していたものです。 また、ゼレンスキー大統領が、ギリシャ議会でネット演説した際に、ギリシャ人が数多く住むマリウポリを守る2人のウクライナ民兵を紹介しました。 しかし、そのうちの一人がアゾフ大隊の隊員であることを話してしまい、ギリシャの議員から反発の声が上がりました。 このように、ウクライナを支援する米欧にとって、アゾフ大隊は表に出したくない「不都合な真実」なのです。 ◆ゼレンスキー大統領の責任 2014年以降、ウクライナ東部ではウクライナ政府と、親ロ派住民との内戦で1万4000人以上の死者が出ています。 少なくとも、ウクライナ政府には東部まで統治が行き届かず、大きな責任があります。 この紛争を止めるために、2014年9月にロシアとウクライナの間で結んだ「ミンスク合意」(ウクライナ、ロシア、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国が調印)があります。 さらに、2015年には「ミンスク2」がフランスとドイツの仲介で結ばれ、ウクライナ東部の2つの共和国に幅広い自治権を認めるという約束がありました。 しかし、ゼレンスキー大統領は、親ロ派の自治権を認めるどころか、更なる攻撃を加え、低迷していた支持率を回復するために利用しました。 プーチン大統領の演説の通り、ウクライナ東部の2つの共和国を守ることを目的とした、「特別軍事作戦」だったことも一定の合理性があります。 ◆バイデン大統領の罪 一方、バイデン大統領は、選挙を控えて、人気取りのために、ロシアをたたき、しかも息子ハンター・バイデン氏がウクライナや中国からお金を得ていたという疑惑を隠蔽しています。 バイデン大統領のロシアたたきは、中国が仕掛けているコロナウイルス戦争の悪事から、世界の目を背けさせています。 世界が非難すべきは、ウイグルやチベット、香港の人権弾圧を行っている中国共産党であることを忘れてはなりません。 ◆日本は独自の外交努力を 日本政府は、ゼレンスキー大統領が「世界戦争の火付け役」だと見抜かなくてはいけません。 幸福実現党としては、岸田政権によるロシアへの追加制裁にも反対です。日本政府は世界大戦を防ぐためにも、ウクライナの中立化に向けて外交努力すべきです。 そして、日本は日露関係をいち早く修復し、中露の離間を図り、ロシアを含めた信仰ある国々で、対中包囲網を築くべきだと考えます。 さもなければ、日本は、中国・北朝鮮・ロシアの共同軍事行動に対処しなくてはならなくなります。 日本の国益を考えた時に、ウクライナよりロシアのほうが日本の将来には大切です。同情だけで人気と票を取ろうとするなら、日本の国を危うくします。 ウクライナのネオナチ「アゾフ大隊」とは。ロシアの軍事作戦に正当性はあるのか? 【前編】 2022.04.20 https://youtu.be/pAj1tFBXNr4 幸福実現党党首 釈量子 ◆経済制裁でロシアを止められる? 岸田首相は4月9日、記者会見を開き、ロシアからの石炭輸入禁止など、ロシアへの追加制裁を発表しました。 岸田首相からは「平和秩序を護る正念場」という言葉もありましたが、「経済制裁でロシアを止められる」と考えている点は、バイデン大統領と認識が同じです。 ロシアは、中国やインドとの貿易を継続しているため、経済制裁でロシアの妥協を引き出すのは困難です。 逆に、全世界でエネルギー価格や小麦が値上がりし、ペルーやスリランカでは暴動が発生しています。 ここで米国がインフレを抑えるために利上げを急げば、世界経済は大打撃を受けるでしょう。 さらに、ゼレンスキー大統領の「ウクライナへの侵攻は欧州への侵攻だ」との主張は、ロシアとNATOの全面戦争をもたらす極めて危険な考えです。 ◆ロシアに軍事作戦の正当性はあるのか 岸田首相は「ロシアがウクライナの主権および領土の一体性を侵害し、国際法に違反するもので決して認められるものではない」と主張しています。 ロシアのプーチン大統領は2月24日の演説で、ウクライナの「中立化」「非軍事化」「非ナチ化」を理由に挙げて、「特別軍事作戦」を行うと宣言しています。 つまり、ロシアは国家承認した「ドネツク共和国」「ルガンスク共和国」の2か国から軍事支援の要請を受けて、集団的自衛権の行使として「特別軍事作戦」を行っているということです。 国連憲章では、「武力の行使」を原則禁止(第2条)していますが、二つの例外を認めています。 一つ目は、自衛権、集団的自衛権(国連憲章第51条)です。 主権国家である以上、当然のこととして、「自分の国は自分で守る」権利である「自衛権」が認められています。 また、自国の防衛力だけでは守れない場合には、他国と同盟を結びます。これが、「集団的自衛権」です。 二つ目が、国連が決議して進める「集団安全保障」です。 例えば人道的危機が生じた場合、国連の安全保障理事会が、全会一致で決めたら、軍事介入できる場合もあります。 ただ常任理事国の5か国の意見が一致することは難しく機能していません。 ロシアの主張は、ウクライナへの「侵略」ではなく、国連憲章で認められた「自衛権の行使」だということです。 しかし、プーチン大統領が言うような「ウクライナにネオナチなど存在せず、東部のロシア系住民を排斥するような事態はなかった」と反論する人もいます。 ◆ネオナチ「アゾフ大隊」とは プーチン大統領が非難するネオナチとは、ウクライナの「アゾフ大隊」のことで、ウクライナ東部には、アゾフ大隊を含めて約40の極右グループが存在します。 アゾフ大隊の創設者、アンドリー・ビレツキーという人物は、ナチスの信奉者で、白人至上主義者として知られています。 日本の公安調査庁は「国際テロリズム要覧2021」でアゾフ大隊について次のように言及しています。 「アゾフ大隊は、欧米出身者を中心に白人至上主義やネオナチ思想を有する外国人戦闘員を勧誘したとされ、同部隊を含めウクライナ紛争に参加した欧米出身者は約2000人とされる」 しかし、不思議なことに、公安調査庁は4月8日、「この記述が誤解を生むので削除する」と発表しました。 ◆「アゾフ大隊」が頭角を現した背景 2014年に親ロ派のヤヌコビッチ大統領が退陣に追い込まれた過激なデモ(マイダン革命)がありましたが、そこで「アゾフ大隊」は頭角を現しました。 この時、米政権がデモをバックアップしたことが、オリバーストーン監督のドキュメンタリー映画「Ukraine on Fire」に描かれています。 ■ドキュメンタリー映画『Ukraine on fire』全編公開中!【日本語字幕版】 https://youtu.be/pSDZpw1EZsQ その後、ウクライナ東部の民兵として、親ロ派勢力から港湾都市マリウポリを奪還しました。 この功績が認められ、アゾフ大隊はウクライナの正規軍に編入され、正式に「国家親衛隊」になりました。 2019年、米メディア「The Nation」は、「ウクライナは、ネオナチが正規軍になっている世界で唯一の国だ」と指摘しました。 ヤヌコビッチ大統領がロシアに亡命してからは、アゾフ大隊の影響力は政治の世界にも広がり、アゾフ大隊の創立者アンドリー・ビレツキーは2014年に国会議員になっています。 他にも閣僚級を輩出するなど、ネオナチの影響力は軍隊のみならず、政治の世界まで及びました。 ネオナチが国家権力に浸透しているのは、世界の中でウクライナしかありません。 (後編につづく) メディアが隠蔽したバイデン父子とウクライナ・中国との「黒い関係」【後編】 2022.04.09 https://youtu.be/BUdfIJTh_dA 幸福実現党党首 釈量子 ◆メディアとビッグテックの隠蔽工作 前編から続く、二点目の問題点は、「メディアやビッグテックの隠蔽工作」です。 前編で述べた 「ニューヨーク・ポスト」のスクープは2020年10月で、11月の大統領選を目前に控えていた時期です。 そのため、バイデン押しのCNNや「ワシントン・ポスト」などの主流メディアは、このスクープ記事を完全に無視し「信憑性がない」「バイデン候補を貶めるための罠だ」と言って、攻撃しました。 また、ビッグテックと言われる「ツイッター」や「フェイスブック」も、スクープ記事が出てからわずか数時間で拡散されないようブロックをかけました。 スクープ記事を掲載した「ニューヨーク・ポスト」の公式ツイッターアカウントは凍結され、テレビや新聞、SNSなどが足並みを揃えて、情報統制をかけたのです。 さらに、CIAなどの情報機関にいたことのある専門家51人が、2020年10月19日、公式声明として、「これはロシアの典型的な情報工作」と主張し、隠蔽工作の片棒を担ぎました。 この51名はいずれも民主党の支持者ばかりです。 結果、バイデン氏は僅差でトランプ氏に勝利し、大統領に就任しました。 しかし、ある調査によると、バイデン大統領に投票した人の半数以上がバイデンファミリーの腐敗を知らず、そのうちの一割は「もし知っていたら、バイデン氏に投票しなかった」と答えています。 ◆マスコミ権力とは これは、メディアが情報操作を行えば、民主主義の大国と言われる米国の大統領さえ決めることができるということです。 メディアは「言論の自由」を守る守護神を標榜していますが、全く逆の「マスコミ権力」を行使できる立場にあるわけです。 現在、共和党議員の多くが、ハンター・バイデンに関する新たな調査を要求しており、共和党のテッド・クルーズ上院議員は、次のように主張しています。 「バイデンファミリーの腐敗を、ロシアの偽情報として扱った人々(メディアなど)は説明責任を果たすべきだ」 「事実を検閲したビッグテックの経営陣は、宣誓の下、米国議会と米国民に答えるべきだ」 ◆ロシア疑惑と同じ構図 ここで思い出すのが、「ロシアゲート疑惑」です。 ヒラリー・クリントンが大統領選でトランプに負けた後、「トランプがロシアと共謀し、大統領選でトランプを当選させた」と批判しました。 しかし、2019年3月、ロバート・ムラー特別検察官の捜査報告書によって、「ロシアゲート疑惑」のような事実はなかったことが確定しています。 前述のハンター・バイデン氏のパソコンスキャンダルはロシアの偽情報だと主張した51人の専門家の一人、元CIA長官のマイケル・ヘイデン氏は、ツイッターでプーチンをトランプに見立てて批判しています。 ◆真実は無視、反論は圧殺する「マスコミ全体主義」 一方、保守メディアFOXニュースで、人気キャスターのタッカー・カールソン氏が、ウクライナについて次のように指摘しています。 「ウクライナでは、ゼレンスキー氏に反対する政党(つまり野党)が、国内での活動を禁止されたが、どこも報道していない」 日本でも民主主義の英雄のように扱われるゼレンスキー氏が、戦前の大政翼賛会のように、野党の活動を停止して一党体制にしていることはまったく知られていません。 ちなみに、ロシアのテレビ番組で放送中に戦争反対のプラカードを出した女性は、罰金3万5千円程度で済んだそうです。 それを見ると、ウクライナとロシア、どっちが民主主義的なのかわからない気がします。 元CIA長官のヘイデン氏は、カールソン氏のことを「ロシアのスパイ」だと批判していますが、反論や逆の立場からの報道を圧殺していくことは恐ろしいことです。 現在行われているロシアのウクライナに対する軍事作戦についても、ロシアの立場を理解しようとするだけで魔女狩りにあうような雰囲気があります。 日本のメディアもアメリカに追随し、反対意見が出せなくなったら、それは「マスコミ全体主義」です。 こうした視点を持ちながら、ウクライナ問題についても見ていく必要があると思います。 メディアが隠蔽したバイデン父子とウクライナ・中国との「黒い関係」【前編】 2022.04.08 https://youtu.be/BUdfIJTh_dA 幸福実現党党首 釈量子 ◆PCに保存されていた驚愕のデータ 3月16日、「ニューヨーク・タイムズ」が、2019年4月にパソコン修理店に持ち込まれたノートパソコンが、バイデン大統領の息子、ハンター・バイデン氏のものであることを認めました。 このパソコンは期日になっても持ち主が引き取りに来なかったもので、店主が中身を確認したところ、驚愕のデータが入っており、FBIに報告していたものです。 そして、2020年10月14日「ニューヨーク・ポスト」が、そのパソコンに保存された電子メールのやりとりをスクープとして掲載しました。 今回、そのスクープ記事を否定に回っていた大手紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じたことで、その実態が浮き彫りになりました。 ◆バイデンファミリーの腐敗 一点目は、「バイデンファミリーの腐敗」です。 中でも重要なことは、電子メールの中に中国やウクライナと、数百万ドル規模のビジネス契約に関する情報があったことです。 ハンター氏が、バイデン副大統領の息子としての立場を使って、海外ビジネスでどのように政治的影響力を利用していたかが報道から明らかになりました。 【ウクライナ】 まず、ウクライナ疑惑です。 「ハンター氏がウクライナのエネルギー企業ブリスマ社の取締役に加わり、月額最大5万ドル(約500万円)の給与をもらっていた」ということです。 また、2015年にプリズマ社幹部からハンター氏へ「あなたの父親と面会する機会をつくってくれてありがとう」というメールがあったことが発覚しました。 バイデン氏は「息子と海外ビジネスについて話したことがない」と否定していたのですが、それが嘘だったわけです。 しかも、副大統領だったバイデン氏は、ウクライナの政府高官に圧力をかけ、プリズマ社に対する汚職の捜査を主導していたウクライナの検察官を解雇させました。 2019年当時、トランプ大統領は、この政治介入を問題視して、ゼレンスキー大統領に調べてみるよう促しましたが断られています。 バイデン氏はゼレンスキー氏に「借り」があるともいえます。 2019年に当選したゼレンスキー氏は、大統領選挙で「腐敗撲滅」を訴えて当選しましたが、汚職は減らず、支持率は41%まで低下していました。 ウクライナとバイデン父子の関係はもっと追及されるべきでしょう。 【中国疑惑】 次に、中国疑惑です。 「2017年、ハンター氏は、中国上海の民間投資ファンド「渤海華美」の株式を10%取得し、取締役に加わっていた」ということがはっきりしました。 ハンター氏は、中国でも海外ビジネスを通して、数百万ドル、億単位の金を得ていたと言われます。 しかも、当時副大統領だったバイデン氏にも、一部の資金が渡っていたという疑惑があります。 3月24日、アメリカのケーブルテレビのニュース番組「FOX BUSINESS」に、バイデン氏の中国疑惑を追及した『RED HANDED』の著者ピーター・シュワイツァー氏が登場し、次のように指摘しました。 「バイデンファミリーは、中国から約31億円、ウクライナから約5億円を得ている」 「パソコンから4人の中国人ビジネスマンが分かっているが、そのうちの一人は中国情報機関の高官だ。これは単なる腐敗ではなく、安全保障上の問題だ」 現在、司法当局は、「どのようにハンター・バイデン氏がウクライナや中国から不正な資金を受け取っていたのか」を明らかにするために、関係者から証言を集め捜査しています。 また最近も、ハンター氏の新たな取引が明らかになりました。 3月29日、共和党上院議員のチャック・グラスリー氏とロン・ジョンソン氏が、中国国有企業「中国華信能源」から、ハンター・バイデンの口座に直接10万ドルが振り込まれていたことを発表しました。 この口座情報は、オバマ政権時代の政府資料から判明したもので、ジョンソン上院議員は、「民主党は、この政府資料をロシアの偽情報だと言って無視した」と指摘しています。 (後編につづく) ウクライナ紛争で核戦争も辞さず。プーチンの覚悟とは? 【後編】 2022.04.03 https://youtu.be/0gkDzQ4tQA0 幸福実現党党首 釈量子 ◆北朝鮮のミサイル発射 アジアに目を転じると、北朝鮮の金正恩総書記が、核兵器の有効性を確信して、ミサイル発射を繰り返しています。 3月24日には、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と言われている「火星17型」を発射しました。 高度6000キロメートル、滞空時間70分と言われ、米国に到達可能なミサイル開発が成功したことになります。 今回のミサイル発射には、金総書記の「ウクライナ問題を見ても、米国には核戦争の勇気はないが、北朝鮮はその覚悟がある」というメッセージが込められているように思います。 ◆ウクライナの次は台湾? そして、中国がいま、虎視眈々と台湾を狙っており、トランプ前大統領は、2月22日に出演したラジオ番組で、「次は台湾だ」と警告しました。 3月18日、バイデン大統領が習近平国家主席との電話会談で、「同盟関係強化による対中包囲網を形成せず、台湾独立を支持しない」と述べました。 この電話会談で、習氏は「あなた(バイデン大統領)の表明を非常に重くみている」とクギを刺したと報じられています。 ロシアを制裁するために中国に協力をお願いするようなバイデン大統領を、習氏は足元を見ているわけです。 ◆バイデンは台湾を守るのか ウクライナは独立国ですが、NATOに加盟していないため、NATOは軍事行動をしていません。台湾がウクライナと異なる点は、米国と台湾の間に「台湾関係法」があることです。 しかし、「台湾関係法」には、台湾防衛に必要な戦闘機やミサイルなどの供与は書かれていますが、軍事的関与は、明記はされていません。 ◆蔡英文総統の台湾国防策 一方で、台湾の蔡英文総統は米国に頼るだけではなく、自衛力を強化しています。 台湾では2018年に徴兵制を止め、現在志願制を採用していましたが、少子化などで十分な兵員数を確保できていません。 そこで、志願していない18歳~36歳の男性を対象に4か月の軍事訓練義務を今後、1年間に延長しようとしています。 さらに、台湾政府はハンドブックを作成し、緊急事態やゲリラ戦を想定し、市民の戦争への準備を行う予定です。 5月には、ミサイル攻撃を受けた場合の避難訓練も行います。まさに戦争前夜です。 ◆バイデン外交の限界 3月24日、バイデン大統領は訪問先のブリュッセルで、記者からロシアに対する「経済制裁による抑止」は見通しが甘かったのではないかという質問を受けました。 これに対してバイデン大統領は、「経済制裁で、プーチン氏を抑止すると言ったことはない」と語気を強める場面がありました。 「核を落とすぞ」といった強い姿勢があれば止められたのかもしれません。しかしバイデン大統領は「アメリカは軍事介入しない」と早々に言ってしまっています。 バイデン大統領は、アフガンに続いて、ウクライナへの対応についても「失敗した」と見られ始めています。 大川隆法党総裁は3月26日、『金正恩の霊言』の冒頭で、バイデン外交の問題点を次のように指摘しています。 「バイデン大統領が、権威主義VS民主主義の戦いで、独裁者スタイルでやっているところを全部敵に回しているが、勢いだけで煽って、人気を取ろうとした場合、後始末しなくてはいけなくなる。」 バイデン大統領から権威主義国家と見なされたロシアや中国、北朝鮮、イラン、パキスタンなどの国の結束がどんどん強くなり、世界大戦の構図が出来つつあります。 厄介なことに、権威主義国家はどこも核兵器を保有しており、国を護るためには核を撃つ決断ができる国家元首ばかりです。 ◆日本はいかにあるべきか ひるがえって日本の岸田首相は、3月27日、防衛大学校で「事態の展開次第では世界や日本も戦後最大の危機を迎えることになる」と話しました。 核シェアリングを含めた核装備など、戦後日本がタブー視してきた防衛策についても踏み込まないといけません。 ウクライナ問題は、「世界大戦、核戦争を防ぐためにどうすべきか」という大局的な観点から「ウクライナの中立化」を目指すべきだと思います。 最近、ゼレンスキー大統領が「中立化」を受け入れる準備があると報じられましたが、日本はロシアとウクライナが早く合意する方向で努力してほしいと思います。 ウクライナ紛争で核戦争も辞さず。プーチンの覚悟とは? 【前編】 2022.04.02 https://youtu.be/0gkDzQ4tQA0 幸福実現党党首 釈量子 ◆プーチン「核戦争も辞さず」の覚悟 ロシアとウクライナの紛争が長引く中で、「ロシアが核兵器を使用するのではないか」という見方が出ています。 マスコミは、ロシアの軍事介入は国際法違反といった枠組みの報道ばかりですが、プーチンの「核戦争も辞さず」の覚悟を理解しないと判断を見誤ります。 2月24日の開戦前のプーチン大統領が行った演説に、ロシアにとっての「大義」を表明しています。 ◆NATOのユーゴ軍事介入 演説では、冒頭でNATOの東方拡大がロシア国境に迫っていることを指摘した後、NATOや米軍の軍事介入の歴史を振り返っています。 最初に批判したのが、1999年にユーゴスラビアの首都で、ドナウ川の古都「ベオグラードに対する流血の軍事作戦」と「コソボ空爆」です。 「(NATOは)国連安保理の承認なしに、ベオグラードに対する流血の軍事作戦を行い、ヨーロッパの中心で戦闘機やミサイルを使った。数週間にわたり、民間の都市や生活インフラを、絶え間なく爆撃した」 バルカン半島南部のコソボ地方で、地域の9割以上を占めていたイスラム系のアルバニア人が、1998年に自治権を奪われ独立を要求しました。 ユーゴスラビア政府がこれを弾圧したことで、翌1999年NATOが軍事介入。NATOによる空爆は1万回を超え、古都は破壊されました。 ユーゴ側の発表では、民間人1200人、NATO側の発表で兵士5000人が亡くなっています。 ◆米軍のイラク侵攻 次にプーチン大統領は、米軍が2003年に「何の法的根拠もなく行ったイラク侵攻」について次のように非難しました。 「イラクに大量破壊兵器が存在するという、信頼性の高い情報をアメリカが持っているということだった。後になって、それはすべて、デマであることが判明した。イラクに化学兵器など存在しなかったのだ。」 「イラク戦争」では、2011年の米軍撤退までに、イラク民間人11万6000人と多国籍軍兵士4800人が亡くなっています。民間人併せて50万人が死亡したという説もあります。 後にこれがイスラム国台頭のきっかけとなり、イラクでは10万人単位での死者を出しています。しかしアメリカは「戦争犯罪」と非難されることもないというわけです。 ◆米国の傲慢さ さらに、同演説でプーチン大統領は次のように警戒しました。 「米国は気に食わない政権を転覆させるために軍事介入し、民間人も大量に殺してきた。冷戦は終わっているのに、NATOは加盟国を増やし攻撃的だ。ロシアの危機は国境まで迫っている。」 実際、最近バイデン大統領が「プーチン大統領は権力の座にいてはいけない」と思わず本音を言って、慌ててホワイトハウスが「政権転覆の意図はない」と釈明しました。 米国には、こうした傲慢な面があり、アメリカを嫌う国が結構あることを知る必要があります。 ◆戦術核の使用もあり得る 次に、プーチンが最も使う可能性が高いとされる「戦術核」ですが、戦術核は、戦略核である広島の原爆と比較して、威力の小さい核兵器のことです。 プーチン大統領が戦術核の利用を考えるきっかけが、前述の演説で取り上げた「ベオグラードに対する流血の軍事作戦」「コソボ空爆」でした。 ロシアは「コソボ空爆」を見て、NATOの爆撃が非常に精密なことを目の当たりにし、ロシア軍の通常兵力ではNATOに敵わないと思ったわけです。 そこでロシアは軍事方針として、「ロシア軍の防衛力を上回る、通常兵器による攻撃があった場合、戦術核による限定的な攻撃を行って、事態を好転させる」という作戦を立案しました。 当時、プーチン氏はロシアの国家安全保障会議のトップを務めていたのでこの作戦立案に深く関わっていました。 米議会の報告書によると、ロシアの戦術核の弾頭保有数は1000~2000発もあります。米国の保有数は200発強、そのうち100発前後が欧州にあります。 ◆NATOが報復に出る可能性 最近、米国は核兵器の使用を「敵国の核攻撃の抑止」に限定するという見直しを予定していました。 しかし、ウクライナ危機で、米国の核の傘に入っている同盟国から反対もあり、従来通り「先制攻撃」や、大規模な通常兵器による攻撃にも、核兵器で反撃できるという選択肢を残すことになりました。 ロシアが戦術核を使用した場合、NATOが報復に出れば、報復合戦で核戦争が起きてしまう可能性があります。 このように、プーチン氏は米欧の横暴から祖国を守るために「核兵器の使用も辞さない」という覚悟で臨んでいるわけです。 これはキューバ危機ときのケネディと同じ、国家元首としての覚悟です。 (後編につづく) ウクライナ侵攻、終結の行方は?米欧日を巻き込むゼレンスキー大統領【後編】 2022.03.25 https://youtu.be/xNP88lD_mnk 幸福実現党党首 釈量子 ◆ゼレンスキー大統領の限界 ゼレンスキー大統領は2015年、テレビドラマ「国民の奉仕者」に出演し、高校教師役を演じました。 この教師が政府の腐敗撲滅を叫ぶ様子を生徒が撮影して内緒でネットに投稿したところ、話題を呼び、最後はウクライナ大統領に就任するという内容です。 これで国民の人気を博し、2019年には、実際にウクライナ大統領に選ばれました。ゼレンスキー大統領がポピュリストと呼ばれる所以は、こうした経緯があるからです。 実際に、ポピュリズムの限界が如実に出てきているように感じます。 ◆ゼレンスキー大統領に足りない見識 2014年のクリミア危機以降8年間で、ウクライナ東部では、すでに1万5000人が亡くなっています。 その中、ゼレンスキー大統領は2021年10月、トルコ製攻撃無人機(ドローン)で東部の親露派を攻撃しました。 その後も、プーチン大統領の度重なる警告にも関わらず、ゼレンスキー大統領は、欧米への急接近を図りました。 NATOの東方拡大は、ロシアの安全保障上、致命的なものです。ロシアは、国が亡びる可能性があり、絶対に認めるものではありません。 アメリカにはキューバ危機がありましたが、ウクライナは、ロシアにとってのキューバになるわけです。そうした政治的な見識をゼレンスキー大統領は持っていないと思われます。 ◆NATO東方拡大に反対していた米国識者 NATOの東方拡大は、歴史的にも欧米外交筋は慎重に扱ってきた問題です。 ソ連封じ込めを立案した元外交官のジョージ・ケナン氏は、1998年5月ニューヨーク・タイムズで次のように警告しています。 「(NATOの拡大に関して)冷戦後の時代におけるアメリカの政策の最も致命的な誤りだ。NATOの拡大は、米露の関係を深く傷つけ、ロシアがパートナーになることはなく敵であり続けるだろう」 また、2008年にブカレストで行われたNATO首脳会議の場で、当時のブッシュ政権がジョージアとウクライナのNATO加盟を公式に進めました。 これについて、元国務長官キッシンジャー氏は「この2つの国をNATOに加盟させず、中立国として残すべきだ」という見解を示しました。 ロシアから見た場合、欧米諸国のNATO東方拡大を現状変更の行為と見る可能性が高かったからです。 ◆ウクライナ問題を解決する道 大川隆法党総裁は3月11日、『ゼレンスキーの霊言』の収録後、日本外交の道筋を次のように提言しています。 「幸福実現党としては、ウクライナの中立化と、戦争への抵抗の砲火を止めて、ロシアと話し合って、親ロシアの大統領を立てて、ロシアとEUと中立の関係で存続できる道を模索すべきである」 緊急発刊『ゼレンスキー大統領の苦悩と中国の野望』 大川隆法著/幸福の科学出版 https://www.amazon.co.jp/dp/4823303474/ref=cm_sw_r_tw_dp_8J6F6ZBTNHNM705Q7PEJ ウクライナがこれ以上、欧米や日本を巻き込んで戦おうとすれば、ウクライナでの火種は「世界大戦」へと発展します。 米国を呼び込んで、ロシアと戦わせるという戦略は、ゼレンスキー大統領の分を過ぎた戦略です。ウクライナはこうした「越権行為」を改めるべきです。 ウクライナ政府は抵抗運動を止め、傀儡政権と言われるかもしれませんが、新しい親露派政権の下で、ロシアとEUとの間で中立の姿勢を取って存続できる道を探るべきです。 ◆ロシアが日本に軍事的圧力を強める理由 日本は欧米に追随してロシアへの経済制裁を行ってきましたが、防弾チョッキまで提供しました。これは、ロシアから見れば、ウクライナへの軍事協力であり踏み込み過ぎではないでしょうか。 その後、ロシアは3月10日に、ロシア艦隊10隻で津軽海峡を横断、北方領土で軍事演習、さらに14日にはロシアの潜水艦など6隻が宗谷岬付近を航行するなど、日本への軍事的圧力を強めています。 ロシアの原潜基地は、カムチャッカ半島の先端にあるルイバチにあります。オホーツク海を要塞に見立て、核弾頭を搭載した原潜がオホーツク海を潜航していると言われています。 2020年に国後島や択捉島にミサイルを配備しており、北方領土での軍事演習を活発化しています。カムチャッカ半島から北方領土にかけて、ロシアは着々と軍備増強しているのです。 3月2日には、根室上空でロシアのヘリコプターの領空侵犯がありましたが、これは北海道を取り囲む形で、いつでも占領できるぞというメッセージではないかと思われます。 ◆日本はロシアとの関係強化を ロシアには、第二次大戦で北海道を取り損ねたと思っている人もいますが、一方で日露戦争の後、日本に尊敬の思いを抱き、あるいは親日的な人もかなり多くいます。 日本は、中国や北朝鮮に加えて、ロシアが新たな国防上の脅威になりつつあります。対中包囲網の形成を考えた時に日本はロシアと中国を分断する方向に努力を重ねるべきだと思います。 また、エネルギー安全保障の観点からも、日本はロシアとの友好関係を強化する方が国益に適うのは明らかです。 欧米に追随する対露封じ込めの方針を改め、停戦とウクライナの中立化に向けた独自の外交を展開していくべきです。 すべてを表示する « Previous 1 … 7 8 9 10 11 … 101 Next »