Home/ webstaff webstaff 執筆者:webstaff エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(4)火力発電を戦略的に維持 2019.05.19 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(4)火力発電を戦略的に維持 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆小売全面自由化で価格形成のメカニズムが変わる 電気・ガス・水道・鉄道などのインフラ型産業は総費用に占める固定費の割合が高く、生産量が増加するほど平均費用が低下し、自然独占が生まれやすい性質があります。 このような産業は「費用逓減産業」と呼ばれ、経済学では、一般に限界費用が平均費用を下回ることが知られています。 費用逓減産業においては、政府が独占企業の価格規制を「限界費用」で行うと、価格は下がりますが、企業は固定費を回収できず、政府が赤字を補填することになります。 一方、政府が価格規制を「平均費用」で行うと、独占企業は固定費回収の原資を得て独立採算で黒字経営を維持することが可能ですが、価格は前者に比べて高くなります。(※1、※2) 日本では、1951年に松永安左エ門氏が地域独占・民営の電気事業体制を構築したときから、政府が「平均費用」で価格規制を行い、審査のうえ適正な電気料金を認可する方式を採用しました。 その後、基本的には政府による赤字補填を受けることなく、独立採算で設備投資を行い、完全民営の電気事業が営まれてきました。 しかし、2016年度から始まった小売全面自由化で、電気料金は原則として市場メカニズムで決まるようになり、将来は規制料金が全廃される予定です。 電気には、貯蔵が難しく需要と供給が同時同量でなければならないという制約があるため、自由化された電力市場(kWh市場)では、「限界費用」(※3)で価格が形成されるようになります(※4)。 ◆火力発電は経営困難に 再生可能エネルギーの開発には多額の初期投資を必要としますが、ほぼ「限界費用ゼロ」で無尽蔵のエネルギーを供給できる可能性を秘めています。 しかし、電力市場(kWh市場)で大量の再エネが取引されるようになると、火力発電会社が固定費を回収できないという、厄介な問題が発生します。 例えば、太陽光発電(PV)の余剰買取制度(2012年度に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」に移行)は2009年度の開始から10年が経過するため、いわゆる「卒FIT太陽光」の電気を小売会社が買い集める動きがあります。 これらは既に初期投資の回収が終わっているため、1kWhあたり7~8円程度の安い単価で取引が成立しますが(※5)、今後はこのような低価格の再エネが大量に供給されるため、競争により火力発電にも単価引き下げの圧力が及び、固定費の回収が難しくなります。 その結果、短期的には電気料金を引き下げる効果がありますが、発電会社は火力発電への設備投資を控えるようになるため、安定供給に必要な設備が不足して、長期的には電気料金が上昇する可能性があります。 ◆再エネには火力発電のバックアップが必要 しかし、再エネは天候の変化で大きく出力が変動するため、火力発電が再エネの変動に備えて待機し、再エネを支えているのが現実です。このような火力発電の役割は電力の安定供給に不可欠ですが、小売全面自由化で、発電会社にこれを期待することが難しくなっています。 その傾向が顕著に出ているのがドイツです。ドイツではPVや風力発電が大量に導入され、2018年には電力需要の約38%を再エネで賄っています。国内需要約5,990億kWhに対して、全電源で約6,490億kWhを発電しており、約500億kWhをフランスなど欧州各国に輸出しています(※6)。 しかしこれは、「余った再エネを他国に押し付けている」と見ることもできます。 ドイツでは需要の少ない時間帯には風力発電などの電気が余り、電力価格がマイナスになることもあるため、火力発電の稼働率が大幅に低下し、経営困難となった火力発電の撤退が起きています(※7)。 また、日本でも、自由化以前に大規模災害等に備えて温存していた古い火力発電所が、経済的な理由で次々と廃止されています。 ◆政府の支援で火力発電を戦略的に維持 このように、FITおよび「電力システム改革」の結果として、必要な火力発電を市場原理の中で維持していくことが難しくなっていますが、不安定な再エネを支え、大規模災害など不測の事態に備えるためにも、日本は一定の火力発電を保有し続けなければなりません。 幸福実現党は、政府の支援や効率的な制度設計の導入により、今後も火力発電を戦略的に維持し、電力の安定供給と国益を守ります。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 例えば、『ミクロ経済学入門』 奥野正寛 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-01523-7 ※2 「容量メカニズムの必要性と必然性」 国際環境経済研究所 http://ieei.or.jp/2017/07/special201204062/ ※3 ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※4 『エネルギー産業の2050年 Utility 3.0へのゲームチェンジ』 竹内純子ほか 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-32170-3 ※5 例えば、「関電、家庭用太陽光1キロワット時8円で買い取り 四国電は7円」 日本経済新聞 2019年4月22日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44047450S9A420C1TJ1000/ ※6 The Energy Transition in the Power Sector: State of Affairs in 2018 Agora Energiewende 4 Jan. 2018 https://www.agora-energiewende.de/fileadmin2/Projekte/2018/Jahresauswertung_2018/Agora-Annual-Review-2018_Energy-Transition-EN.pdf ※7 『限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』 ジェレミー・リフキン NHK出版 ISBN978-4-14-081687-5 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(3)再生可能エネルギーは高い? 2019.05.17 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(3)再生可能エネルギーは高い? 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆すでに「戦力」となっている太陽光発電 民主党(当時)政権が2012年度から導入した「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」により、太陽光発電(PV)を中心として、再エネの利用が急速に進んでいます。 日本のPV導入量は4,300万kW(2018年末現在)を超え(※1)、既に重要な供給力の一部となっています。 例えば、九州エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約81%をPVで賄い、余った電気を他のエリアに融通しました。夏のピーク需要時には約27%をPVが供給しました(※2)。 また、需要の多い東京エリアでは、2018年春の最も多い時間帯で需要の約36%をPVで賄い、夏のピーク需要時には約11%をPVが供給しました(※3)。 このように、PVは特に昼の需要に対しては「戦力」として機能しており、夏の節電要請が4年連続で見送られていることからも、その効果の大きさがわかります。 一方、再エネを電力量(kWh)の点から見ると、2017年度の日本の発電電力量約1兆602億kWhのうち、PVは約551億kWh(約5%)であり、水力・風力・バイオマス等を合わせた再エネ全体でも約1,700億kWh(約16%)に過ぎません(※4)。 エネルギー源として期待するにはまだ量が足りないといえます。 ◆莫大な国民負担 このように、日本ではFITの導入により、PVを中心とした再エネの爆発的な普及が進みましたが、その代償として国民負担が急増しています。 FITを導入した2012年度には、再エネの賦課金総額(国民負担)は約1,300億円でしたが、2018年度には約2.4兆円に膨れ上がりました(※5)。 電力中央研究所は2017年に、このままでは2030年度の賦課金総額は3.6兆円、累計44兆円に達するとの試算を発表しました(※6)。 この試算はメディアでも取り上げられ(※7)、国民や経済界にも負担増への不満が高まってきたことから、経済産業省は国民負担の抑制のため制度設計を段階的に見直し、2019年4月にはFITの抜本的な改革に向けた検討を始めました(※8)。 ◆民主党(当時)の失政が巨額の国民負担を招いた なぜ、ここまで国民負担が増大したのでしょうか。 実は、再エネのコストは高くないばかりか、海外では急速にコストが低下し、既存の系統電力のコストを下回る例も出てきています(※9)。 また、バイオマス以外の再エネは燃料が不要なため、ひとたび初期投資を回収すれば、ほぼ「限界費用ゼロ」(※10)で電気を供給することができます。 国際エネルギー機関(IEA)によれば、日本でFITが始まった2012年当時でさえ、世界のPVの発電原価は既に急速な下落傾向にあり、1kWhあたり25円程度、入札価格はさらにこれを下回っていました(※11)。 ところが、日本はFITの導入時に、1kWhあたり42円(税込み)という、当時のドイツの2倍近い、世界の相場とかけ離れた非常に高い価格でPVの電気を買い取ることを決めました。 これは、メガソーラー事業への参入を予定していたソフトバンクの孫正義氏が、民主党(当時)の菅直人・元首相に強く要望したことが理由ともいわれています。 このように、民主党(当時)政権が再エネ事業者の過大な利益を誘導したことが、PVの爆発的な普及につながったことは間違いありませんが、再エネ事業者が法外な利益を得る一方で、巨額の国民負担が累積的に増加し、高い買取価格を織り込んで日本ではコスト削減が進まないなど、多くの弊害が出ています。 再エネはもっと安いものですが、日本の再エネをここまで高コストにしたのは、明らかに民主党(当時)の失政が原因です。 ◆FITの速やかな廃止で、再エネはもっと安く大量に導入できる 幸福実現党は、FITを速やかに廃止し、電気料金を原資としない補助金制度を創設することを訴えています。 FITでは買取価格が固定されているため、コスト削減の努力が生まれにくいことから、再エネの開発にあたり、競争入札を広く適用します。 また、陸上におけるPV・風力発電等の開発では、乱開発による深刻な環境破壊が各地で発生していることから、規制を強化し、秩序ある開発によって自然環境・生活環境を守ります。 このような施策により、我が党は国民が安心して再エネを受け入れられる条件を整えて、低コストの再エネの導入を拡大し、広く国民がメリットを享受できるようにします。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 固定価格買取制度 情報公表用ウェブサイト https://www.fit-portal.go.jp/PublicInfoSummary ※2 九州電力 系統情報の公開 http://www.kyuden.co.jp/wheeling_disclosure.html これによると、2018年4月29日(日)12:00頃、エリア需要793万kWのうち646万kWをPVが供給。2018年7月26日(木)14:00頃、エリア需要は1,601万kWのピークに達し、そのうち432万kWをPVが供給。 ※3 東京電力パワーグリッド エリアの需給実績公表について http://www.tepco.co.jp/forecast/html/area_data-j.html これによると、2018年5月20日(日)11:00頃、エリア需要2,616万kWのうち952万kWをPVが供給。2018年7月23日(月)14:00頃、エリア需要は5,653万kWのピークに達し、そのうち611万kWをPVが供給。 ※4 平成29年度(2017年度)エネルギー需給実績(確報) 資源エネルギー庁 2019年4月12日 https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/stte_025.pdf ※5 日本のエネルギー2018 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2018.pdf なお、買取費用から電力会社の回避可能費用等を減じたものが、賦課金の額となる。 ※6 「固定価格買取制度(FIT)による買取総額・賦課金総額の見通し(2017年版)」 電力中央研究所 2017年3月 https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/pdf/Y16507.pdf ※7 「再生エネ買い取り5年 国民負担は電気代の1割に拡大 論説委員・井伊重之」 産経新聞 2017年7月2日 https://www.sankei.com/premium/news/170701/prm1707010025-n1.html ※8 「経産省、再エネ固定価格買い取り制度を抜本見直しへ」 日本経済新聞 2019年4月25日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44175090V20C19A4000000/ ※9 Renewable Power Generation Costs in 2017, International Renewable Energy Agency https://www.irena.org/publications/2018/Jan/Renewable-power-generation-costs-in-2017 ※10 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※11 「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた今後の論点~第5次エネルギー基本計画の策定を受けて~」 資源エネルギー庁 2018年8月29日 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/007_01_00.pdf エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(2)電気事業の「ゲームチェンジ」 2019.05.15 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(2)電気事業の「ゲームチェンジ」 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆現政権による「電力システム改革」 2011年の福島第一原発事故後、日本の電力業界のリーダーであった東京電力の国有化を契機として、電気事業への政府の関与が強まっています。 政府は2013年4月に「電力システム改革に関する改革方針」を閣議決定し、第1弾=広域系統運用の拡大(2015年4月施行)、第2弾=小売全面自由化(2016年4月施行)、第3弾=発送電分離(2020年4月施行)という3段階の改革のための電気事業法改正案を、2015年までに国会で成立させました(※1)。 このうち第1弾は、東日本大震災の教訓を踏まえて、原則として地域ごとに行われてきた電力需給の管理を、新設した「電力広域的運営推進機関」(※2)が地域を越えて行い、安定供給を強化するものです。 大川隆法・幸福実現党総裁は、震災直後の2011年4月の講演(※3)で、緊急時に電力を広域融通できる仕組みの強化を訴えており、この施策は我が党の考え方とも合致します。 また、第2弾の小売全面自由化については、電力会社の経営が短期志向になるものの、サービスの向上など一定の効果が期待できるため、現政権の方針を静観してきました。 ◆発送電分離は、松永安左エ門氏による戦後の電気事業体制の解体 一方、第3弾の発送電分離は、送配電事業者を公的管理下に置く事実上の「電力国家管理政策」であることから、我が党はこれを見直し、発電・送配電・小売の一体経営(垂直統合)を維持したまま大規模化を図るべきと訴えてきました。 もともと日本の電気事業は、「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門氏などの起業家による民営事業として、明治時代に始まりました。その後、1938年の国家総動員法に続く電力国家統制により、発電・送電は特殊法人の日本発送電に接収され、政府の管理下に置かれます。 戦後、松永氏は9電力会社への地域分割・民営化・垂直統合を強く主張し、日本発送電による全国独占体制の維持や発送電分離を主張する勢力と激しく対立しました。 しかし、最終的にGHQが反対派をねじ伏せる格好で、1951年に民営の9電力(その後、沖縄電力が加わり10電力)体制が発足し、現在に至ります。 松永氏は、送電部門を分離すれば必ずそこに政府が介入し、民間による自由で効率的な経営ができなくなることを見抜き、断固として発送電分離に反対しました。 よって、発送電分離は、日本の電気事業体制の約70年ぶりの大きな方向転換となりますが、さまざまな弊害も指摘されています。 例えば、電力会社はこれまで、発電と送電の設備の建設時期をずらし、キャッシュフローを融通することで巨額の長期投資を行ってきましたが、発送電分離により、供給義務を負わない発電会社は短期的な利益で投資を判断するため、安定供給に必要な発電設備が不足します。 また、送電会社はこれまで以上に公共インフラとしての役割を求められるようになり、より政治的な理由で投資を判断するようになります。 その結果、供給安定性の低下と電気料金の上昇が起きる可能性がありますが、実際に、電力自由化と発送電分離を実施したフランス以外の欧州各国では、こうした傾向が見られます。 このような理由で、我が党は発送電分離の見直しを訴えてきました。 ◆「ゲームチェンジ」を受け入れ、電力システムを強化 しかし、もはや「電力システム改革」は後戻りできないところまで来ています。その理由は、再生可能エネルギーの急速な普及と低コスト化にあります。 今後は自由化された電力市場(kWh市場)に大量の再エネが流れ込んでくるため、このままでは火力などの大規模発電所は固定費が回収できなくなり、経営が困難になります。 仮に小売全面自由化と発送電分離を撤回したとしても、再エネを排除しない限り、大規模発電所の置かれた厳しい状況は変わりません。 しかし、低コスト化が進む再エネを排除して大規模発電所の経営を守ることは本末転倒であり、再エネを生かしつつ、供給安定性と経済性を確保できるよう、適切な制度設計によって電力システムを強化するしかないのです。 我が党は、このような電気事業における「ゲームチェンジ」をいったん受け入れ、2050年頃までは政府がこれまで以上に電気事業に関与することによって、再エネの大量導入と電力の安定供給を両立する体制を構築することとしました。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.com までご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 電力システム改革について 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform.html ※2 電力広域的運営推進機関 https://www.occto.or.jp/ ※3 「『震災復興への道』講義」 大川隆法総裁 2011年4月24日 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1)総論 2019.05.12 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1)総論 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆新しい「主要政策」におけるエネルギー政策 幸福実現党は、「夢は尽きない123の政策―2019年5月主要政策」を発表しました。 これは、昨今の社会・国際情勢の変化を踏まえて2017年10月版の主要政策を見直したもので、政務調査会が2019年2月に発表した「政策提言集2019」がもとになっています。 特にエネルギー政策については大幅な変更を行ったため、その内容について政務調査会エネルギー部会が解説します。 新しいエネルギー政策では、我が党が従来から訴えてきた原子力発電の推進やエネルギー資源調達の多様化など、日本の安全保障と経済成長に寄与する強靭なエネルギー供給体制を目指す基本方針は変わりません。 しかし、エネルギーを取り巻く情勢は大きく変化しており、難しい問題が山積する一方、新しいチャンスも生まれています。 このため、我が党は概ね2050年までの変化を見据えてエネルギー政策を再構築し、今後約30年間で実行すべき施策を提案することにしました。 ◆エネルギー自給率を高めて安全保障を強化 日本の一次エネルギー自給率は9.5%(2017年)で、OECDの35か国のうち34位と、きわめて低い水準にあります(※1)。 2010年の自給率は20.2%でしたが、2011年の福島第一原発事故後に全国の原発の再稼働が進まず、液化天然ガス(LNG)や石油等の化石燃料に大きく依存した結果、自給率が低下しました。 化石燃料は、南シナ海を含むシーレーンを通って日本に届きますが、海洋進出を進める中国が台湾や南シナ海で軍事行動を起こせば、供給が止まる可能性があります。 日本が将来にわたって国家の独立を守るうえで、自給率の低さは致命的です。 これを解決するため、我が党は自給率をフランス並みの50%以上に高めることを目指して、原発の再稼働・新増設だけでなく、再生可能エネルギーの主力電源化、国産メタンハイドレートの開発等を推進します。 従来の日本の再エネ開発は太陽光や陸上風力が中心でしたが、これに加えて、より大量のエネルギーを得るため海洋温度差、潮力、洋上風力、次世代地熱(EGS)等の開発を進めます。 再エネは開発に多額の初期投資を必要としますが、燃料が不要なためランニングコストが非常に安く、ほぼ「限界費用ゼロ」(※2)で無尽蔵のエネルギーを供給できる可能性を秘めています。 ◆送配電ネットワークを再構築 ところが、再エネのほとんどは分散型電源であり、大規模発電所のために建設された既存の送配電ネットワークでは、再エネを十分に受け入れることができません。 また、再エネは需要の変化に合わせて供給をコントロールできず、出力変動も大きいため、十分な調整力がなければ有効活用できません。 このため我が党は、再エネに適した高圧直流(HVDC)送電線(※3)を全国の海岸線に沿って新設するなど、公共インフラとして日本の送配電ネットワークを抜本的に再構築します。 また、電気自動車(EV)の普及を支援し、電力系統に接続されたEVを需給調整に活用するとともに、走行中にEVに充電できる道路インフラ(※4)を整備します。 これにより、EVが電力システムの一部となり、道路交通の石油依存度が低下し、エネルギーとモビリティ(交通)が融合して大きく変化します。 ◆国家の独立と繁栄は「強い電力システム」から 日本の電力化率(※5)は25.7%(2016年度)(※6)ですが、この値は経済成長と強い相関があり、日本では1960年代から現在まで、ほぼ直線的に増加してきました。 今後も再エネの大量導入、EVの普及、省エネの要請等により、エネルギーの電力化が一段と進むことは間違いありません。 我が党はエネルギー政策の中でも特に電力を重視し、原子力利用の堅持と電力システムの抜本的な強化で、国際情勢の変化に対応したエネルギー自給体制を確立し、日本の独立と繁栄を守ります。 参考 ※1 日本のエネルギー2018 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2018.pdf ※2 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※3 例えば、「三菱電機、再エネと連係容易な『直流送電』参入へ」 日本経済新聞 2018年11月16日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37833300W8A111C1000000/ ※4 例えば、「The UK is testing out roads that charge electric cars as they go」 Mashable Aug.18, 2015 https://mashable.com/2015/08/17/electric-car-charging-uk/ ※5 電力化率: ここでは、最終エネルギー消費に占める電力需要の割合。 ※6 エネルギー白書2018 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-1-1.html 御代がわりにあたって(党声明) 2019.04.30 https://info.hr-party.jp/press-release/2019/8871/ ※昨日4月30日、政党より下記声明を発信致しましたのでお知らせ致します。 (文面は、4月30日時点のものです。) ■御代がわりにあたって(党声明) 平成31年4月30日 幸福実現党 本日、天皇陛下が譲位され、平成は幕を閉じ、明日、日本は新たな令和の御代を迎えます。国民に常に寄り添ってこられた今上陛下のご功績に対し感謝を捧げるとともに、新天皇陛下のご即位を心よりお慶び申し上げます。 私たち幸福実現党は、皇室の弥栄を心より願うものです。この度の譲位は、天皇陛下のお気持ちを受けての、一代限りの特例法に基づくものと承知しております。 天皇陛下を「人間・天皇」とみる立場からは、ご体調や体力の面などを踏まえれば譲位も当然となるかもしれません。 しかしながら、天皇は天照大神のご子孫にほかなりません。その本務は、神道の祭祀の長としての祈りにあると私たちは考えます。 連綿と続く日本の国柄を守るべきというのが幸福実現党の考えであり、皇室のあり方をめぐっての議論が、その永続性を損なうことにならないよう強く願います。 令和の時代を、「この国に生まれてよかった」とあらゆる方が思える時代とするよう、わが党は全力を傾けてまいります。 以上 【活動報告】4月26日(金)消費税 10%への「増税中止」を求める署名を提出 2019.04.28 https://info.hr-party.jp/2019/8860/ 幸福実現党 広報本部 ◆消費増税中止を求める署名(二次締切分)を提出――署名累計は、306,842筆に 4月26日(金)、内閣府を通して安倍晋三首相宛てに 「消費税 10%への「増税中止」を求める署名」(二次締切分)、19,719筆分を提出し、政府に対して「消費税 10%への増税を中止し、消費税 5%に引き下げること」 を要望致しました。 署名筆数は、3月28日の一次締切分の34,212筆を合わせると総数は53,896筆となります。これで過去に提出した消費増税中止を求める署名の累計は、306,842筆となりました。 全国の皆様、ご協力ありがとうございました。心より感謝申し上げます。 今後も私たちの声を結集し、消費税減税を実現して参りましょう! https://info.hr-party.jp/2019/8860/ (写真有り) ◆トランプ政権の経済ブレーンが日本の消費増税に「反対」 なお、「The Liberty web」の速報では、トランプ政権の経済ブレーンが緊急提言として、日本の消費増税に真っ向から「反対」していると報じています。 トランプ氏の経済ブレーンの一人で米連邦準備制度理事会(FRB)の理事候補でもあるスティーブ・ムーア氏は、「The Liberty」のインタビューに応じ、日本の消費税の10%への増税に反対する考えを次のように述べています。 「10%への増税は、恐るべきアイデアであり、最悪の選択です。日本経済は成長していない上に増税したら、経済成長を取り戻すことはできなくなります。」 「私はこれまで、『税金を上げて豊かになった国』を見たことも聞いたこともありません。トランプ政権と良好な関係を持つ安倍政権が、成長政策とは真逆の方向に進もうとしていることは非常に残念です。日本政府が今すべきことは、消費税の増税ではなく、法人税と所得税の減税です。」 詳しくは下記をご覧ください。 ■速報 トランプ政権の経済ブレーンが緊急提言 日本の消費増税に真っ向「反対」(「The Liberty web」より) https://the-liberty.com/article.php?item_id=15699 1: 10%への増税は、恐るべきアイデアであり、最悪の選択です。 2:日本政府が今すべきことは、消費税の増税ではなく、法人税と所得税の減税です。 3:トランプ大統領は『アメリカを再び偉大な国に』した。次は『日本が再び偉大な国に』なることを願っています、とのエール 【活動報告】4 月23 日(火)文在寅政権の反日暴走に対する抗議行動 2019.04.27 https://info.hr-party.jp/2019/8770/ 幸福実現党 広報本部 文在寅政権は、「竹島の不法占拠・領海侵犯」「慰安婦像設置」「元徴用工訴訟」「海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射」「韓国国会議長による天皇謝罪発言」と反日暴走が止まりません。 しかも文在寅大統領の「南北融和政策」よって、万が一核を持ったまま南北統一が実現した場合には、軍事境界線が対馬まで南下し、日本の安全保障も脅かされかねません。 3 月23 日、幸福実現党は釈党首を先頭に、文在寅政権の反日暴走を糺すとともに、日米韓が協力して核施設廃棄を求めるよう、韓国大使館に対して抗議行動を行いましたので報告致します。 当日の映像はこちらから https://www.youtube.com/watch?v=hjdGHjG1D3k&t=6s ■文在寅政権の「反日暴走」に対する抗議文 平成31年4月23日 大韓民国 大統領 文在寅 殿 駐日本国大韓民国特命全権大使 李洙勲 殿 幸福実現党は、文在寅政権の反日的な暴走を大変危惧しております。いわゆる「元徴用工をめぐる韓国最高裁の異常判決」は、断じて容認できません。 これは「強制労働」ではなく「募集」「官斡旋」で来日し、合法的な民間企業での期限契約の賃労働であり、大法院判決にある「反人道的行為」ではありません。 この判決は1965年に韓国と締結した日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」と約束した国家間の取り決めを完全に反故にするものです。 根も葉もない「史実」が国際社会に拡散するのを防ぐためにも、日本は「戦後補償」名目での金銭の要求に応じることはできません。 また韓国海軍による「海上自衛隊哨戒機への危険なレーダー照射」に到っては事実を捻じ曲げ、日本側が間違っていると国際社会に対して喧伝しています。 さらには竹島の不法占拠・領海侵犯や、国会議長による「天皇陛下への謝罪要求」は、国際慣例から見ても許されるものではありません。 一方で文在寅大統領は、核開発を続ける北朝鮮に対して国際社会が経済制裁を続ける中、「南北融和政策」を最優先にしています。 これは北朝鮮の核の暴走を許し東アジアの平和と貴国の安全保障をも脅かす誤った判断です。「南北融和政策」を推進することにより、貴国から「自由」や「民主主義」の価値観を喪失させることになりかねません。 幸福実現党は貴国の真の平和と繁栄を願い、友好な日韓関係を築くために、下記を要望致します。 一、「元徴用工」訴訟の個別補償は韓国政府が行うこと。 一、国会議長による天皇陛下への「謝罪要求」を撤回させること。 一、徴用工像・慰安婦像を撤去すること。 一、日韓関係の悪化は北朝鮮の思う壺であり、日米と共に協力して北朝鮮に核施設廃棄を求めること。 以上 【釈量子の未来対談】マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密 2019.04.07 【釈量子の未来対談】マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密 幸福実現党 広報本部 3月13日、釈量子党首がパシフィック・アライアンス総研所長の渡瀬裕哉氏と「マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密」と題して対談をいたしました。 渡瀬氏は、トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍されています。 渡瀬氏は、今回の釈党首との対談直前までアメリカで開催されたCPAC(アメリカ保守政治行動会議)に参加しており、その中で2月末に行われた米朝首脳会談直後のトランプ大統領の演説を聞かれています。 CPACでのトランプ大統領の演説時間はそもそも50分でしたが冒頭で「みんなは原稿読むだろう。俺は一切読まないから」という話から始まって、ずっと漫談みたいな話を2時間もしたそうです。 米朝首脳会談の決裂直後とは思えない自信がトランプ大統領にはあるのかもしれません?そんなトランプ大統領の経済政策はすでに成果が出始めています。 今回は、最新のアメリカ事情を見てきた渡瀬氏と釈党首が日本のマスコミが報じないアメリカの最新事情を語っています。 下記よりご覧ください。 ◆未来対談vol.4 トランプ大統領がCPACで2時間演説!マスコミが報じないアメリカ経済絶好調の秘密 【対談】釈量子党首 ×渡瀬裕哉氏(パシフィック・アライアンス総研所長) https://info.hr-party.jp/2019/8616/ (主な内容) 【CPAC2019】 【好景気に沸くアメリカ経済の現状】 ◎トランプ政権の経済政策① 雇用の改善 ◎トランプ政権の経済政策② 規制の撤廃 ◎トランプ政権の経済政策③ 大幅な減税 【宇宙産業とAIについて】 【台湾との関係について】 【アメリカ政治と宗教】 ■過去の「未来対談」(動画) ◆未来対談vol.1 「首都直下型地震 日本の防災を考える」 釈量子 × 濱口和久 (防災教育推進協会常務理事) https://info.hr-party.jp/2018/7722/ ◆未来対談vol.2 「二宮尊徳精神が日本を変える」 釈量子 × 上田博和 (日本政策学校理事長) https://info.hr-party.jp/2018/7990/ ◆未来対談vol.3 「米中新冷戦、どうする日本!?」 釈量子 × 河添恵子 (ノンフィクション作家) (動画で観る) https://info.hr-party.jp/2019/8097/ 【活動報告】3月28日(木)「消費税10%への『増税中止』を求める署名提出集会」を開催 2019.03.29 幸福実現党 広報本部 本日は、3月28日に開催した「消費税10%への『増税中止』を求める署名提出集会」を政党のホームページからご紹介致します。 ■【活動報告】3月28日(木)「消費税10%への『増税中止』を求める署名提出集会」を開催 https://info.hr-party.jp/2019/8548/ (写真あり) 安倍首相と財務省に提出した要望書 ↓↓ 【PDF】消費税10%への「増税中止」を求める要望書 https://info.hr-party.jp/files/2019/03/28220132/j818npsq.pdf ◆『増税中止』を求める署名【34,212筆】を安倍首相に提出 幸福実現党は3月28日、首相官邸前で「消費税10%への『増税中止』を求める署名提出集会」を開催し、内閣府を通して安倍晋三首相宛てに【34,212筆】の署名を提出してまいりました。 同時に、「消費税10%への『増税中止』を求める要望書」も安倍首相と財務省宛てに提出しています。 首都圏を中心に集会にお集まり下さった有志の皆様、そして、全国で熱心に署名活動に取り組んでくださっている皆様、署名にご協力くださった数多くの皆様に心より御礼申し上げます。 ◆安い税金、小さな政府を目指す政党は幸福実現党しかない 集会では、釈量子党首が挨拶。「消費税の増税以降、地方の中小企業の経営は極めて厳しくなっています。 国内の企業の9割を占め、雇用の7割を支えている中小企業の経営者の悲鳴にも似たお声を伺うにつけ、増税の凍結のみならず、5%への減税が必要だと考えています。 私たちは、増税一本の国づくりはおかしいと考えています。そもそも日本では、安い税金、小さな政府を目指す政党は幸福実現党しかありません。 逆進性の強い消費税を減税することが、最大の福祉だと考えています」などと、消費増税への反対と減税の必要性を訴えました。 ◆増税対策は結局、国民をいじめることになる 神奈川県本部のいき愛子統括支部長は、「横浜の洋食屋の女将さんから、『キャッシュレス決済にするとポイント還元の対象になると言われるが、手数料を取られるのでうちでは儲からない』と聞きました。 増税対策が結局、中小企業やお年寄り、子供たち、生活に困っている人たちをいじめることになる。消費税を下げると、皆がお金を使えるようになり、企業の売り上げが伸び、税収が増えていくんです」と、減税の意義を訴えました。 埼玉県本部の小島一郎県代表は、「今年就職する若い世代は、生まれてこのかた、一度も日本の景気がいい時代を経験していません。彼らは消費税を3%から5%に上げた頃に生まれたと思いますが、その時と今年が良く似ていると言われます。 昭和の時代には、消費税などなかったんです。輸出景気が見込めない中で、消費税を10%に上げたら、8%に上げた時より厳しい不況がやってきてしまう。止めたいと思わないでしょうか!」と呼びかけました。 集会の中では、「消費増税は、家計の負担だ!」「軽減税率は、お店を困らせる悪法だ!」「政府は国民に増税を強いる前に『身を切る改革』を行え!」などのシュプレヒコールを上げました。 ◆増税は日本の未来にかかわる 七海ひろこ広報本部長が、署名と要望書の提出を報告し、「各地で署名を集めさせていただく中で、『増税はもう、決まってるんでしょ』『消費税、必要なんでしょ』という声をいただきました。 『いや、そうではないんです』と言って、消費税が導入されて30年、この日本の景気がいかに落ち込んできたか、そしてこの増税は日本の未来にかかわる、とお伝えすると、『それなら、増税反対の署名に協力する』と、多くの方から署名をいただくことができました。 私たち幸福実現党、この日本で減税による経済繁栄を実現したいと考えています」と語りました。 「消費税10%への『増税中止』を求める署名」は、最終締め切りを4月20日として引き続き募集しています。ご協力をよろしくお願いいたします。 ■「消費税10%への『増税中止』を求める署名」ご協力のお願い https://info.hr-party.jp/2018/7638/ ※ 集会の様子は下記でも報道されています。 ・【ザ・ファクトREPORT】どうなる消費税10%!~安倍首相はまだ増税の決断を迷っている!? (幸福実現党の署名提出集会を紹介) https://youtu.be/aebDD2EAYlQ ・【リバティWeb】幸福実現党が内閣府に「消費増税中止」求める署名提出 https://the-liberty.com/article.php?item_id=15586 政調会ニューズレターNo.18「首相による消費増税表明について」【概要版・後編】 2018.11.09 政調会ニューズレターNo.18「首相による消費増税表明について」【概要版・後編】 幸福実現党 政務調査会 *ニューズレター全文は、党HP(https://info.hr-party.jp/2018/7564/#_No18)に掲載しております。 安倍首相は、先月月15日臨時閣議で2019年10月に消費税率を8%から10%へ引き上げることを改めて表明しました。 今回は、増税と連動して行われる経済対策について、ポイントを整理します。 ◆経済対策の罠 安倍首相は増税表明の際、「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないように全力で対応する」と述べ、増税が個人消費に与える影響を抑えるための万全の対策を急ぐよう指示しました。 今回、経済対策として幼児教育・保育の無償化のほか、軽減税率の導入、中小店舗でキャッシュレス決裁を行った時のポイント還元、住宅購入時のポイント還元・住宅ローン減税の拡充などが検討されています。 このような一連の経済対策が行われるのであれば、「何のための増税なのか」というのが率直なところでしょう。 期間限定の経済対策については、駆け込み需要とその後の反動減を少しでも抑えようという狙いがあると思われますが、消費増税の影響は中長期に及ぶため、増税前後の短期的な現象が経済に与える影響を少しでも抑えようとするのは筋違いと言えます。 いずれにせよ、バラマキによる増税や複雑な税制の導入は、経済活動の自由の領域を狭めさせるほか、経済の歪みにもつながっていき、国の発展の阻害要因そのものとなります。 やはり、小さな政府・安い税金を心掛けるとともに、シンプルで公平な税制の構築を志向すべきです。 以下、補足点を列挙します。 ★軽減税率 増税で標準税率が10%になるのに対し、軽減税率は、酒類や外食を除く飲食料品、定期購読の新聞については税率を8%に据え置くとする制度です。 「スーパーやコンビニで買う食料品を持ち帰れば軽減税率が適用されるが、イートインコーナーなど店内で飲食する場合には適用されない」といった例があるように、どのような商品や消費形態が軽減税率の対象になるかが非常にわかりにくいと指摘されています。 そのほか、標準税率、軽減税率のどちらを適用するかを恣意的に判断できるようになるという意味で、政府は新しい権限を手にすることになり、この点にも非常に大きな問題を見出せます。政府による「恣意性」を排すには、消費税は一律5%に戻すのが得策と言えるのではないでしょうか。 また、消費税は事務手続き上、非常に複雑な税であると言われています(注2)。現在、軽減税率に対して準備を行っている中小企業は約8割に留まるとされていますが(注3)、来年、税率変更に加えて軽減税率が導入されることになると、企業は一層の負担を強いられることになります。 同様の制度を実施している欧州では、すでに課題が大きいとして制度を廃止すべきとの議論もあるようです。今、日本があえて軽減税率を導入する合理的な理由は見当たりません。 (注2)企業が行うすべての取引に消費税がかかるわけではないため、企業は消費税の納入に際しては、仕入れ、売上含めた全取引を「課税取引」「非課税取引」「不課税取引」に分類しなければならない。企業にとって多大な事務的負担を要している。 (注3)日本商工会議所「中小企業における消費税の価格転嫁および軽減税率の準備状況等に関する実態調査(第5回)」(2018年9月28日)より ★キャッシュレス決裁時のポイント還元 商店街の小売店など資本金の少ない中小店舗を対象に、クレジットカードなどのキャッシュレス決済を行った際に、期間限定で2%のポイント還元を行うとする支援策も検討されています。 ここには「キャッシュレス経済」の普及促進の狙いも垣間見られますが、クレジットカードや電子マネーなどに対応するレジを導入するための企業側の費用負担は大きいものです。政府が設備投資を行う企業に補助を行うとしても、そこに血税を使う正当性はあると言えるでしょうか。 キャッシュレスになじみのない高齢者などを考慮して「プレミアム付き商品券」を発行すべきとの意見も政権与党にはありますが、これも本質的な議論とは言い難いものがあります。 ★防災・減災対策 増税による需要喚起策の一環として、防災・減災対策に向けたインフラ整備費用が、第2次補正予算案、2019年度当初予算案に計上される見込みとなっています(注4)。 わが国では、高度経済成長期に建設されたインフラが「使用期限」を迎えており、修繕・補修の必要に迫られていますが、これまで、社会保障の財政予算が拡大する中で公共投資に対する予算が削減される傾向にありました。 防災・減災対策などをはじめとするインフラ整備に対して積極的な姿勢がとられていることについては評価できますが、インフラは国の資産になるほか、経済成長にもつながるものであることから、その整備に向けては増税実施の有無にかかわらず、国債発行をためらうことなく積極的に実施すべきと考えます。 (注4)今月15日には、西日本豪雨への対応など、今年相次いだ災害からの復興関連の歳出を中心とした第一次補正予算(9,356億円)が閣議決定されている。 (終わり) すべてを表示する « Previous 1 … 5 6 7 8 9 … 16 Next »