Home/ webstaff webstaff 執筆者:webstaff 中国の金銭外交で台湾孤立危機。アメリカの台北法案とは何か? 2019.09.28 本日は、先日、「中国の金銭外交で台湾孤立危機。アメリカの台北法案とは何か?」について釈量子党首のお話を伺いましたのでご紹介します。 ぜひご覧ください。 (広報本部) ■中国の金銭外交で台湾孤立危機。アメリカの台北法案とは何か? 幸福実現党 党首 釈量子 ※下記は上記映像を要約したものです。詳しくは映像をご覧下さい。 ◆台湾の孤立化を図る中国の金銭外交 南太平洋のソロモン諸島と太平洋のキリバスが、長年外交関係のあった台湾との断交を発表しました。これにより台湾が外交関係を持つ国はわずか15か国に減りました。 ソロモン諸島のソガバレ首相は親中派として知られる人物で、今年4月に4度目の再選を果たした後、中国と台湾の両方に派遣団を送り、どちらがより多くのお金を出すか天秤にかけました。 しかしながら、蔡英文総統は、キッパリと断りました。そして、「台湾は不合理な要求を満たすために、中国の金銭外交に関わるつもりはないことを強調したい」と明言し、中国の弾圧に屈しない姿勢を示しました。 また、台湾の呉ショウショウ外交部長(外相に相当)によると、キリバスのタネティ・マアマウ大統領も台湾に対して民間航空機を求めてきたようです。 中国はこうした島国のニーズがあることを知り、キリバスを含む南太平洋の国々に対して、航空機や船の提供を約束しました。その結果、キリバスはこの誘惑に負け、中国に忠誠を誓う外交に変更してしまいました。 こうした中国の金銭外交の動きを見ると、今後、ナウル、ツバル、パラオのような南太平洋の国々が台湾と断交する可能性があるのではないかと言われています。 ◆米国議会が新たな「台湾法」制定に動く! ここで注目なのが、米国の動きです。 ペンス副大統領は、ソロモン諸島が台湾と断交したことを知った後、予定していたソバカレ首相との会談をキャンセルしました。 また、共和党のマコール下院議員は、「太平洋で最も大きな国の一つが中国の『一帯一路』を選ぶのを見て失望している」とツイートしました。 さらに、マルコ・ルビオ上院議員が、台湾の外交関係を守り、米国は黙っていないことをハッキリと示すために「台北法案(Taipei Act)」を議会ですぐに可決すべきだと訴えました。 「台北法案」は、法案可決後90日以内、その後も180日毎に、国務長官は世界中の台湾の国際的な同盟関係を強化するためにどんな行動を行ったかをレポートにまとめて、議会の委員会に提出しなくてはならないことになっています。 また、国務省に対して、台湾に敵対的な行動を行う国への支援を中止する権限を与えようとしています。 さらに、米国は台湾が国際機関に参加できるよう、支援すべきことが明記されています。 この「台北法案」については、今年5月に上院の外交委員会で検討されましたが、その後、表立った進捗はありませんでした。 ところが、台湾と断交する国が次々と出てきたことで、米国議会の中で台湾を支援する声が高まってきたのです。 「台北法案」が成立すれば、台湾の強力なバックアップになることは間違いありません。 今回、台湾は小国との関係を断たれましたが、自由や民主主義の理念を貫くことで、大国米国との関係を一層強固なものにしたとも言えます。 また香港デモが起きた後、自由や民主主義の価値を再確認した台湾の人々の蔡英文総統に対する支持率が上昇しています。 中国の圧力に屈せずに、自由と民主主義を守るために戦い続けている蔡英文総統を支持する台湾の人々も多いのかもしれません。 中国の金銭外交が効果的かどうかは、来年1月の台湾総統選で明らかになるはずです。 ◆日本版「台湾基本法」の制定を さて、日本は来年中国の習近平国家主席を迎えることもあり、香港や台湾に関することは「戦略的沈黙」を守っているようです。 しかし、香港の危機は、明日の台湾、明後日の沖縄・日本です。そういう意味で日本にとって香港・台湾は運命共同体とも言えるのではないでしょうか。 幸福実現党としては日本版の「台湾基本法」を制定するなど、日台関係を強化するための議論をもっと行っていくべきではないかと考えています。 『香港革命』日本にできること 2019.09.12 皆様、おはようございます。 本日は、先日、香港を実際に訪問した際の様子について釈量子党首のお話を伺いましたので紹介致します。 【映像リンク】 「『香港革命』日本にできること」 https://www.youtube.com/watch?v=NO8_Kak5_uo ※本寄稿は上記映像のポイント部分を文字起こししたものです。詳しくは映像をご覧下さい。 ◆傘を掲げる香港市民、過激化する警察 皆さま、こんにちは。幸福実現党の釈量子でございます。 8月31日、香港に行ってまいりました。 前日には民主活動のリーダーたちが逮捕、デモや集会が禁止され、いったいどうなるのかということで、私も行ってきましたが、現地の様子は、私の予想を裏切るような展開となっていました。 お昼には、キリスト教の賛美歌「Sing to Hallelujah」を歌う宗教の集会があったり、小さな子供を連れたお父さん、お母さんたちがいたり、愛と平和を基調とした活動が繰り広げられていて、非常に心打たれるものがありました。 夜になると、報道でもあるような、全共闘的なヘルメット姿というのは確かに見られましたが、基本的に彼らには傘しかなく、フランスの記者は、倫理性の高さに非常に驚いておりました。 一方で、過激化しているのは、香港警察でした。 本来、市民を守るはずの警察が、地下鉄で民主派の議員を襲撃したり、市民に向け催涙弾を撃ったり、ゴム弾で若い女性の眼球が破裂して失明したり、あるいは実弾の発砲までしております。 そうした実態というものは、現地に赴かなければ分からないことがありました。 ◆反故にされた香港の「一国二制度」 さて、いま大変危惧されているのが、中国建国70周年の国慶節にあたる10月1日です。 この日に向けて、「第二の天安門」と言われる武力鎮圧の可能性が言われています。 しかし、香港返還時の英中共同声明においては、「言論・出版・集会・結社・学術研究・宗教信仰の諸権利と自由」等というものが認められ、50年間は規定を変えないという「一国二制度」の約束がありました。 それを20年あまりで約束を反故にし、銃を突き付けて、香港市民の自由を奪おうとしているのは、中国共産党政権であるのを忘れてはなりませんし、私たち日本人は、それに対し腹をくくって正邪を決しなければなりません。 私たちは、「自由・民主・信仰」が政治の基本原則として不可欠なものだと考えております。 香港市民はまさに、この三つの原則を守るために、いま、中国の専制から立ち上がっているのです。 ◆邦人救出のために自衛隊派遣は不可欠 もう一つ、香港には観光客や出張者など、2万人とも、2万5千人とも言われるたくさんの日本人がおりますが、もし人民解放軍が香港に入るということになれば、彼らを守るための自衛隊派遣の必要性こそ、香港で感じたことです。 振り返れば、アルジェリアで日本人が人質になり、そして無念にも日本の企業戦士10名が殺害されましたが、邦人救出をどうするかということは、安倍政権発足時の原点でもあったのではないかと思います。 自衛隊法の制限や、香港政府や中国が合意しないからといって、自国民を助けに行けないというのは、おかしなことではないでしょうか。アメリカやイギリス、他の近隣の国と協力しながら、可能なことはすべてやるべきだと思います。 いま、習近平主席が一番いやがるのは、日本が強くなることです。意見をはっきり言う国になって、万一の時には行動を起こす国になる。そうした気概のある国になることを、一番いやがっていると思います。 自分の国を守る意思を示すことが、いま大事なのではないでしょうか。 ◆香港革命はここからが正念場 いずれにしても、香港は今年の後半が正念場です。 今回、香港は、「香港革命」というような状況になっています。 単なる暴動がいい革命ではありません。自由の創設、自由が広がることが、いい革命です。 香港で起きているのは、破壊のための破壊、共産主義革命とはまったく違う、神を信じる人たちが愛と平和を基調とした「香港革命」です。 日本は、この「香港革命」から、自由と権利の尊さ、民主主義を命懸けで守るその気概を、真剣に学ばなければならないと感じました。 「今日の香港は明日の台湾であり、明後日の沖縄」と言われています。 日本は、東京五輪があろうとも、大阪万博があろうとも、中国から観光客やビジネスチャンスが来ようとも、それに振り回されずに中国に言うべきことははっきりと言える国、正義のために行動する国になろうではありませんか。 「香港革命」は、これから大きな山場を迎えます。日本からもしっかりと温かい応援の声を上げていきたいと思います。 【参考記事】 ◆【お知らせ】9/16(月・祝)新宿デモのご案内 #香港革命 ─自由のために、戦うべきは今!─ https://info.hr-party.jp/2019/9937/ ◆【幸福実現NEWS】日本は『香港革命』への支援を 「第二の天安門事件」の危機迫る 幸福実現NEWS vol.115 https://info.hr-party.jp/2019/9913/ ◆【活動関連】東京都本部が東京都知事と東京都議会に「日本政府に香港の『自由』と『民主主義』を守る行動を求める」要望書を提出 https://info.hr-party.jp/2019/9857/ ◆【幸福実現NEWS号外】自衛隊を派遣して香港の自由を守れ(改訂版)香港デモへの「弾圧」が激化 https://info.hr-party.jp/2019/9831/ ◆香港の民主活動家の逮捕について(党声明) https://info.hr-party.jp/press-release/2019/9790/ エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(12) 送配電の費用負担方法を変える 2019.07.24 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(12) 送配電の費用負担方法を変える 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆電気料金の3割を占める託送料金 小売全面自由化が施行された2016年4月以降の電気料金は、原則として事業者の裁量で算定される費用(発電費、購入電力料、販売費等)と、法令に基づき算定される費用(託送料金、再生可能エネルギー発電促進賦課金等)で構成されています(※1)。 このうち託送料金は、おもに送電・変電・配電にかかる費用で、一般送配電事業者が総括原価方式により算定し、政府が認可する料金です(※2)。 電気料金のうち託送料金の占める割合は、家庭用で約30%、産業用で約20%となっています(※3)。 ◆日本では固定費の多くが従量料金で賄われている 送配電事業は典型的なインフラ型産業であり、総費用のうち約80%が固定費、約20%が可変費(変動費)です。 一方、託送料金の内訳は27%が基本料金、73%が従量料金であり、固定費を基本料金で回収する英国やドイツと異なり、日本では固定費の大部分を従量料金に上乗せして回収する仕組みになっています。(※4) これは、電気を多く使う利用者が、あまり使わない利用者に比べて多額の固定費を負担することを意味しますが、日本では省エネを促し社会的弱者を保護する目的もあって、これまで正当化されてきました。 しかし、今後再エネのコストが下がり、ほぼ「限界費用ゼロ」(※5)で供給できるようになると、固定費を従量料金で回収する制度は潤沢なエネルギーの使用を妨げます。 また、需要側の蓄電池や電気自動車(EV)などを送配電ネットワークの安定運用に用いる際にも、充放電のたびに従量料金が発生すると、有効活用が難しくなってしまいます。 送配電ネットワークの固定費負担の公平性を高め、柔軟なアクセスを可能とするため、託送料金における基本料金の比率を高めることが望ましいといえます。 ◆固定費回収をめぐる経済学の論争 インフラの費用負担の方法について、経済学では古くから論争があります。 米国の経済学者ホテリングは、あらゆるものは限界費用で販売されるときに社会的厚生が最大となることから、電気、水道、鉄道など固定費の比率が高い事業においては、価格を限界費用の水準まで下げるため、政府が税金を通じて固定費を賄うべきだと主張しました。 彼は橋の例を引いて、「通行料金が無料の橋と有料の橋で建設費は変わらないが、無料の場合は橋を迂回することなく通行者が増えるため、社会が受ける恩恵は、無料の橋のほうがはるかに大きい」と説明しています。 実際に、米国のF・ルーズベルト(民主党)政権がニューディール政策の一環として設立したテネシー川流域開発公社(TVA)では、このような考え方に従って連邦政府の資金を大胆に拠出して送電網や発電設備が建設され、ほぼ「限界費用ゼロ」の水力発電によって安い電気を広い地域に供給し、経済発展を後押ししました。 これに対して米国の経済学者コースは、価格は限界費用と同じであることが望ましいという点は認めつつも、政府が消費者の需要を正確に見積もることはできず、非効率な設備投資を招くおそれがあることから、民間の独占企業に委ね、限界費用に一定の料金を上乗せして固定費を回収すべきだと主張しました。(※6) 日本では、1951年に松永安左エ門氏が地域独占・民営の電気事業体制を構築したときから、政府が平均費用で価格規制を行い、固定費を税金ではなく電気料金で回収する制度となっています。 前述の2人の経済学者の中では、どちらかというとコースの考え方に近いといえます(※7)。 ◆インフラの費用負担に対する日米の考え方の違い しかし、米国では民主党だけでなく、「小さな政府」を標榜する共和党政権であっても、インフラに巨額の国費を投入してきました。 例えば、アイゼンハワー政権は、ドイツのアウトバーンに倣い、全米の都市を結ぶ原則無料の州間高速道路(※8)を建設しました。総延長は約8万kmに達し(※9)、経済成長と安全保障を支えてきました。 また、現トランプ政権も、総額2兆ドル(約220兆円)のインフラ投資に向けた協議を進めています(※10)。 一方、日本では伝統的に、インフラのコスト負担を直接の利用者に求めてきました。日本では高速道路の建設費を通行料金で返済する「償還主義」が採用され、諸外国と比べて非常に高い水準の通行料金が課されています。 これは戦後の資金不足も理由の一つですが、自家用車がぜいたく品だった頃に、税金で高速道路を整備することには国民の理解を得られなかったという事情もあります。 現在も日本では、インフラに投資するよりも社会保障の充実や教育の無償化など消費的経費に税金を使うほうが、政治家が票を集めやすい傾向があります。 しかし、自家用車の有無にかかわらず、高速道路は人の移動や物流の大動脈として全国民に恩恵を与えており、直接の利用者からの通行料金で固定費を回収する考え方には、あまり合理性がありません。 ただ、日本では高速道路の料金が高いことが、新幹線や大都市圏における鉄道網の健全経営をもたらしたことも事実です。 ◆送配電ネットワークに国費を さて、今後は送配電ネットワークの増強・更新・次世代化のために、多額の投資が必要です(※11)。 現政権はそのコストを託送料金に上乗せして回収することを検討していますが(※12)、これでは日本の電気料金はますます高くなり、製造業の国際競争力の低下や国外流出が一段と進む可能性があります。 将来の送配電ネットワークの役割は、これまでの単なる電気の流通・販売経路から、海洋や地下を含む各地の未利用エネルギーへのアクセス、植物工場等における農業生産のエネルギー源、EVや空飛ぶクルマによるモビリティ(交通)サービスの基盤などにも拡大し、その便益は電気の直接の利用者だけでなく、広く社会に及ぶものです。 このことを考慮すれば、送配電ネットワークのコストは、託送料金を通じて直接の利用者だけに負担を求めるべきではなく、国費を投入し、公共財として整備していくことも有力な選択肢の一つです。政府が低金利の長期資金を確保し、託送料金の固定費を税金で賄うようにすれば、託送料金を安く抑えることができます。 なお、国内のエネルギー資源が乏しく、日本と似た一次エネルギー供給構造を持つ韓国の電気料金は、資源国である米国よりは高いものの、日本の半額程度です(※13)。このため、製造業が安い電気を求めて韓国に立地し、コスト高の日本と競争しています。 韓国の電気料金が安い理由は、政府出資の電力会社が電気を供給し、電気料金を政策的に安く抑え、全てのコストを電気料金で回収していないことにあります。 このため、電力会社が赤字になっても、安い電気料金が維持されています。韓国の電気事業体制には、政治が過度に介入して経営の非効率を招くなど問題も数多くありますが、日本の製造業は、このような国家戦略を持った国の製造業とも戦わなければならないのです。(※14) ◆安くて無尽蔵のエネルギーで社会が変わる 原発や再エネなどの化石燃料に依存しない電源は、多額の固定費を長期にわたって回収する仕組みがあれば、安い電気を生み出すことができます。また、送配電ネットワークの費用負担方法を変えれば、託送料金を安く抑えることができます。 エネルギーの制約がなければ、未来の社会は大きく変わります。 リニア新幹線で都市間を移動し、都市内では自動運転の「空飛ぶクルマ」やEVで素早く目的地に到達。高品質で安全な農産物が植物工場で生産され、注文した新鮮な野菜がすぐにドローンで配達される。そして、そのコストは驚くほど安い… 幸福実現党は、2050年の社会の大変革を見据え、政府主導で送配電ネットワークの抜本的な再構築を行い、安くて無尽蔵のエネルギーが自由に使える環境を整備していきます。 参考 ※1 「料金設定の仕組みとは?」 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/pricing/ ※2 「各一般送配電事業者の託送料金平均単価等」 資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/pricing/pricelist.html 例えば、低圧の場合の1kWhあたりの託送料金平均単価(税込)は、東京エリアでは9.26円、関西エリアでは8.43円で、小売会社が受け取った電気料金から支払っている。 ※3 「小売電気料金及び託送料金の推移 日本と海外の比較」 消費者庁 2016年6月29日 https://www.cao.go.jp/consumer/history/04/kabusoshiki/kokyoryokin/doc/004_160629_shiryou2.pdf ※4 「送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討WG」資料 電力・ガス取引監視等委員会 2017年6月20日 https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/saisei_dounyu/pdf/004_03_01.pdf ※5 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※6 『限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭』 ジェレミー・リフキン NHK出版 ISBN978-4-14-081687-5 ※7 正確には、基本料金と従量料金の「二部料金制」を支持した日本の経済学者・植草益(産業組織論)の考えに近い。 ※8 州間高速道路: インターステート・ハイウェイ(正式名称はDwight David Eisenhower National System of Interstate and Defense Highways) ※9 Public road length by functional system and Federal-aid highways, Highway Statistics 2017, Federal Highway Administration, US Department of Transportation https://www.fhwa.dot.gov/policyinformation/statistics/2017/hm18.cfm ※10 「トランプ氏と野党、2兆ドルインフラ投資へ協議開始」 日本経済新聞 2019年5月1日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44378660R00C19A5000000/ ※11 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(11) 送配電ネットワークを次世代化」 HRPニュースファイル 2019年6月24日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3671/ ※12 「再生エネ、送電線増強へ全国負担 コストなお課題」 日本経済新聞 2019年5月16日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44890860W9A510C1EE8000/ ※13 「電気料金の国際比較 2016年までのアップデート」 筒井美樹ほか 電力中央研究所 2018年1月 https://criepi.denken.or.jp/jp/serc/source/pdf/Y17504.pdf ※14 「『電力がぶ飲み大国』韓国の現実」 野口透 JBpress 2011年8月4日 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/17408 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(11) 送配電ネットワークを次世代化 2019.07.23 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(11) 送配電ネットワークを次世代化 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆送配電ネットワークは増強・更新・次世代化の時期に 日本では1951年に地域独占・民営の電気事業体制が構築されたときから、電力会社ごとに最適な経営が行われてきました。 このため、地域内の送配電ネットワークはとても充実し、高い電力品質が維持されてきた半面、会社をまたぐ地域間連系線の整備があまり進まないという問題がありました。 東日本大震災の際にはこれがボトルネックとなって、西日本から東日本に十分な電気を融通することができませんでした(※1)。 近年は、送電線の容量の制約により、再生可能エネルギーがあっても活用できない問題が顕在化しています。北海道・東北には大量の再エネ資源がありますが、一部しか使うことができません(※2)。 九州では太陽光発電(PV)のピーク時に余った電気を本州に全て送電することができず、PVの出力制御を行っています(※3)。関東でも東京電力が千葉県内での出力制御の検討を始めたと報道されています(※4)。 また、従来の送配電ネットワークでは、火力・原子力発電所などの大規模集中型電源から需要側に向けて、高圧から低圧への一方向に電気を供給することを前提としていたため、分散型の再生可能エネルギーや需要側の蓄電池の利用などには、あまり適していません。 分散型電源、蓄電池、電気自動車(EV)などを既存の大規模電源と柔軟に組み合わせて、未利用エネルギーを効率的に使いながら安定的な電力供給を行うには、送配電ネットワークの仕組みを変えていく必要があります。 日本の送配電設備の多くは1960年代以降の高度経済成長期に建設されたため、老朽化した設備の更新時期が到来することから(※5)、幸福実現党は、この機会をとらえて新しい考え方を導入し、送配電ネットワークの次世代化を進めます。 ◆全国を結ぶ直流の基幹送電線を新設 我が党は送配電ネットワーク増強の一つとして、高圧直流(HVDC)による基幹送電線を新設することを提案しています。 これは、地域をまたぐ再エネの利用促進や災害時の安定供給のためだけでなく、今後開発が期待される海洋温度差、潮力、洋上風力、次世代地熱(EGS)等の再エネを大量に導入する際に、インフラとして不可欠なものです。 HVDCは大容量・長距離の送電に適し、再エネとの連系が容易という特長があります。日本では北海道・本州間や紀伊水道等の連系に用いられ、欧州では英仏、英蘭、ポーランド・スウェーデン、イタリア・ギリシャ等の国際連系に数多く導入されています。HVDCの世界市場は今後10年で2倍になるとの見通しもあります(※6)。 我が党は、HVDC送電線を全国の海岸線に沿って新設し、これらを亜熱帯の領海に設置した海洋温度差発電のプラントとも接続し、大量の再エネを利用できる環境を整えます。 また、HVDC送電線を陸上にも新設し、将来は小型モジュール炉(SMR)を含む分散型電源を結び、多重化された強靭な送電ネットワークを構築します。 ◆空の有効利用のため送電線・配電線を地中化 さらに、今後の交通・運輸の変化を考慮すると、架空電線は大きな支障となるため、できるだけ地中化しなければなりません。 現在、オペレーター(操縦士)によって運行されているドローン(小型無人機)は、近い将来に自律飛行が一般的となり、都市内の管制された空間(ドローン航空路)を縦横に飛び交い、物流の“ラストワンマイル”(※7)になることが期待されています。 米アマゾンは2019年にもドローン配送を始めるとしており(※8)、今後日本でもドローン物流が一般的になると予測されます。その際に、架空電線は目印にもなりますが、円滑な飛行の支障になります。 また、「空飛ぶクルマ」の開発が世界で急速に進められていますが、日本でも2025年頃からeVTOL機(電動垂直離着陸機)の運行サービスが始まり、2030年代には本格的に普及するとの予測があります(※9)。 「空飛ぶクルマ」は、当初は空港や高層ビルの屋上などを結ぶ拠点間の交通として始まると考えられ、この段階では架空電線が支障になることはありませんが、都市内の低いビルや道路面にも離着陸の場所を拡大するには、電線を撤去し地下に埋設する必要があります。 また、eVTOL機ではなく、高速道路で助走して離陸するような空陸両用機の場合、日本では道路を横断する送電線や跨道橋が数多くあることから、このままでは離着陸の支障になるため、道路と送電線の両方を改築する必要があります。 このように、現在の送電線・配電線はドローンや「空飛ぶクルマ」等の低空飛行の物体を想定していないことから、我が党は都市景観や災害対策上の理由だけでなく、将来の空の有効利用の観点からも、送電線・配電線の地中化を進めていきます。 参考 ※1 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(2) 電気事業の『ゲームチェンジ』」 HRPニュースファイル 2019年5月15日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3536/ ※2 「再生エネ、送電線増強へ全国負担 コストなお課題」 日本経済新聞 2019年5月16日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44890860W9A510C1EE8000/ ※3 「太陽光発電の出力制御、対象を500kW未満にも拡大へ」 スマートジャパン 2019年5月10日 https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1905/10/news040.html ※4 「再生エネの出力抑制 東電が千葉で要請検討」 日本経済新聞 2019年5月17日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44962890X10C19A5TJ2000/ ※5 送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討WG資料 電力・ガス取引監視等委員会 2017年6月20日 https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/saisei_dounyu/pdf/004_03_01.pdf ※6 「高電圧直流(HVDC)は知られざる成長分野、EVやデータセンター向けも追い風に」 ビジネス+IT 2018年2月19日 https://www.sbbit.jp/article/cont1/34592 ※7 ラストワンマイル: ここでは、最終拠点から顧客への物流サービスのこと。 ※8 「アマゾン、ドローン配送を開始へ 数カ月以内に」 日本経済新聞 2019年6月6日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45750120W9A600C1000000/ ※9 『空飛ぶクルマ 電動航空機がもたらすMaaS革命』 根津禎 日経BP社 ISBN978-4-296-10187-0 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(10) 地球温暖化政策を無害化 2019.06.21 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(10) 地球温暖化政策を無害化 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆一種の「ポリコレ」となった地球温暖化説 幸福実現党は、人為的な温室効果ガス(GHG)の排出が地球の気温上昇の主な原因であるとする仮説には大きな不確実性があることから、地球温暖化政策を抜本的に見直すべきであると主張してきました。 地球温暖化を専門とする世界の科学者の機関である、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、GHGの濃度が気温上昇に寄与する程度(平衡気候感度)についての不確実性を認めており(※1)、我が党は事実としてこれを指摘しています(※2)。 また、地球温暖化対策の国際枠組み(国連気候変動枠組条約、パリ協定)への参加は、国際衡平性が担保されることが大前提であり、日本が不利になるおそれがある場合には、枠組みからの脱退も含めた措置を講じることを訴えています。 しかし、このような主張を堂々と行う政党は我が党以外になく、特に温暖化の原因に踏み込むことは、政治家も財界人も避けています。この問題は一種の「ポリコレ」(※3)となり、私的にどう考えるかは別として、公的な場で発言すると激しい攻撃を受ける可能性があるからです。 米国のトランプ氏も実業家時代には果敢に“放言”していましたが(※4)、大統領就任後は穏当な発言に抑えています(※5)。 ◆パリ協定における削減目標と負担 パリ協定は、全ての国が参加する2020年以降のGHG排出削減の国際枠組みとして、2015年に採択されました。締約国は、産業革命以前からの地球の温度上昇を2℃より十分下方にとどめ、さらに1.5℃以下に抑えるよう努力することを合意しています。 各国が自国の事情に応じて提出した削減目標の達成には、国際法上の義務はなく、努力目標と解釈されます。 この点は、国連が先進国だけにトップダウンで削減義務を割り当て、中国を含む途上国には削減義務がなかった京都議定書(1997年採択)とは決定的に異なるものであり、日本や米国の主張が反映されています。(※6、※7、※8) しかし、削減目標の実質的な負担には、国によって大きな違いがあります。 日本は2030年に2013年比26%削減、米国は2025年に2005年比26~28%削減、欧州連合(EU)は2030年に1990年比40%削減など、基準年比で排出量を削減する目標を提出していますが、中国は「2030年までに2005年比でGDPあたりの排出量を60~65%削減」と、GDPが増えれば排出量も増やせる目標となっています。 米国トランプ政権は2017年に、米中間にはこのような差異があることを理由にパリ協定からの離脱の方針を発表し、我が党はこれを支持する党声明を発表しました(※2)。 2019年6月に20か国・地域(G20)エネルギー・環境相会合のために来日した米環境保護局(EPA)のウィーラー長官は、記者団の取材に応じ、パリ協定は「米国に不公平な内容だ」と批判しています(※9)。 地球環境産業技術研究機構(RITE)は、削減目標を達成するための2030年における限界削減費用(※10)について、日本は378ドル、EUは210ドル、米国は85ドル(2025年)、オーストラリアは33ドル、ロシアは4ドル、中国・インドはほぼ「ゼロ」と試算しており、日本の経済的負担がきわめて大きいことがわかります(※11)。 ◆国内での規制強化を狙う現政権 パリ協定の削減目標の達成には国際法上の義務がないため、仮に日本が2030年にこれを達成できる見込みがなくても、自国の安全保障や経済成長を犠牲にしてまで無理に達成する必要はないのです。 しかし、日本では環境省等の政府機関、東京都等の地方公共団体等が、まるで削減が義務であるかのように規制の強化や業務・権限の拡大を進め、マスコミや環境NGO等がこれを助長しています。 日本では1978年から、省エネの目的で石油石炭税が導入されていますが、2012年からは「地球温暖化対策のための税」(温対税)をこれに追加して段階的に税率を引き上げました。現在の税収は約2,600億円であり、経済産業省と環境省が半分ずつ所管し、この税収に対応する事業を執行しています(※12)。その税率は二酸化炭素(CO2)1トンあたり289円と、実際にCO2削減の誘因となるほどには高くありません。 しかし、環境省では、化石燃料を使いにくくするために、炭素税や排出量取引等のカーボンプライシング(炭素の価格付け)の導入を検討しており(※13)、その税率・価格は1トンあたり1万円以上ともいわれます。仮に1トンあたり1万円の炭素税をかけると、1リットルのガソリンには23円が課税されます(※14)。 ◆CO2排出規制は日本の安全保障と経済成長を脅かす 現在、日本の火力発電用燃料に石油はあまり使われておらず、液化天然ガス(LNG)が約50%、石炭が約40%という比率です(※15)。 1kWhの発電に伴うCO2排出量は、LNG火力(複合発電)の376gに対して、石炭火力では864gと2倍以上もあることから(※16)、高い炭素税をかければ石炭火力が経済的に不利になるため、石炭からLNGへの転換を誘導することができます。 しかし、LNGの多くはオーストラリア、インドネシア、中東等から南シナ海を含むシーレーンを経由して輸入されるため、中国が台湾や南シナ海で軍事行動を起こせば、供給が止まる可能性があります。 LNGだけに依存せず、不測の事態に備えて、LNGとは異なる資源分布をもち世界各地から輸入できる石炭も利用可能にしておかなければなりません。 また、現状の発電コストはLNGが石炭よりも高く、経済合理性を無視して石炭からLNGに転換すれば、高い日本の電気料金がさらに上昇して経済成長を妨げ、製造業の国外流出が加速するおそれがあります。 ◆不合理な規制は低炭素・脱炭素時代の到来を遅らせる なお、非常に大きな視点で見れば、世界が脱石油文明にシフトしていく潮流はもはや止まることがなく、いずれ低炭素・脱炭素時代が来ることは確実です(※17)。 既に世界で再生可能エネルギーに関する急速な技術革新が始まり、今後は次世代の原子炉や核融合に関する技術や、送電等のエネルギーの輸送方法、交通の電動化なども大きく進化すると考えられます。 しかし、それは政府の規制ではなく技術革新によって起こることであり、規制によって経済成長を阻害すれば、民間による技術開発の原資や低炭素化に向けた投資意欲を奪い、むしろ低炭素・脱炭素時代の到来を遅らせることにつながります。 我が党はCO2排出規制の撤廃を繰り返し訴えていますが、それは当面の日本の安全保障と経済成長を守るためだけではありません。経済成長の中で潤沢な資金を技術開発に回し、新技術を次々と生み出して技術革新を一段と進め、化石燃料に依存しない「新文明」の到来を早めるためでもあるのです。 参考 ※1 「地球温暖化の科学的不確実性」 杉山大志 キヤノングローバル戦略研究所 2018年4月23日 https://www.canon-igs.org/column/energy/20180423_4978.html ※2 「米大統領によるパリ協定離脱表明を受けて(党声明)」 幸福実現党 2017年6月3日 https://info.hr-party.jp/press-release/2017/4762/ ※3 ポリコレ: ポリティカル・コレクトネス(political correctness)、政治的建前。 ※4 “The concept of global warming was created by and for the Chinese in order to make U.S. manufacturing non-competitive.” Donald J. Trump, Twitter Nov. 7, 2012 https://twitter.com/realDonaldTrump/status/265895292191248385 ※5 「トランプ米大統領、米政府の気候変動報告『信じない』」 BBCニュース 2018年11月27日 https://www.bbc.com/japanese/46354080 ※6 「『パリ協定』の曲解で国を滅ぼすことなかれ【前編】」 HRPニュースファイル 2015年12月29日 http://hrp-newsfile.jp/2015/2554/ ※7 「『パリ協定』の曲解で国を滅ぼすことなかれ【後編】」 HRPニュースファイル 2015年12月30日 http://hrp-newsfile.jp/2015/2556/ ※8 パリ協定では各国が当面の削減目標だけでなく、「長期低排出発展戦略」の策定を努力するよう定めており、日本は長期目標として、2050年までに80%のGHGの排出削減を目指すことを決定している。以下を参照されたい。 「『地球温暖化対策計画』の閣議決定について」 環境省 2016年5月13日 https://www.env.go.jp/press/102512.html ※9 「パリ協定は不公平=温暖化軽視を否定-米環境長官」 時事通信 2019年6月16日 https://www.jiji.com/jc/article?k=2019061600290 ※10 限界削減費用: ここでは、追加的に1トンのCO2を削減するために要する費用(ドル/トン)。 ※11 「パリ協定国別貢献NDCの排出削減努力・政策評価」 秋元圭吾 地球環境産業技術研究機構(RITE) 2017年12月6日 http://www.rite.or.jp/news/events/pdf/akimoto-ppt-kakushin2017.pdf ※12 「地球温暖化対策のための税の施行について(お知らせ)」 環境省 2012年10月1日 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15769 ※13 「『カーボンプライシングのあり方に関する検討会』取りまとめ」 環境省 2018年3月 https://www.env.go.jp/earth/cp_report.pdf ※14 ガソリンのCO2排出原単位:約2.3kg/Lより、炭素税率を1トンあたり1万円とすれば、ガソリン1リットルあたり約23円。 ※15 エネルギー白書2018 資源エネルギー庁 ※16 「日本における発電技術のライフサイクルCO2排出量総合評価」 今村栄一ほか 電力中央研究所 2016年7月 https://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/detail/Y06.html ※17 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6) 自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠」 HRPニュースファイル 2019年5月30日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3562/ エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(9)政府の支援で原子力事業環境を整備 2019.06.08 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(9)政府の支援で原子力事業環境を整備 ◆英国では政府の支援で原発を新増設 前回、「電力システム改革」や再生可能エネルギーの大量導入といった事業環境の変化により、民間企業による原子力事業が困難になり、特に原発の新増設はほぼ不可能になることについて述べました。 この問題を解決するため、米国の一部の州や英国では、制度的措置により原発の支援策を講じています。 例えば英国では、差額決済型固定価格買取制度(FIT-CfD)により、事業の予見性を高め、原発の新設を支援しています。 FIT-CfDは、原発や再エネなどの低炭素電源から供給される電気について、政府機関と発電会社とで投資回収可能な基準価格(ストライクプライス)を事前に契約し、基準価格よりも市場価格が安い場合には差額を政府機関が補填し、市場価格が高い場合には差額を発電会社が政府機関に支払う制度です(※1)。 この制度は固定価格買取制度(FIT)と異なり、買い取りが保証されていないため、発電会社にも経営努力を促す利点があります。 しかし、英国では先行するヒンクリー・ポイントC原発(※2)で市場価格の2倍近い基準価格(※3)を設定し、批判を受けました。 このため、日立製作所が建設を検討してきたホライズン原発事業では、基準価格が約20%引き下げられ(※4)収益性が見込めなくなったことが、計画凍結の原因の一つともいわれています(※5)。 このように、再エネの普及でほぼ「限界費用ゼロ」の電気が増えていく現状では、FIT-CfDのような市場価格を参照する制度で原発を支援することには限界があります。 ◆政府出資の原発会社も選択肢の一つ 原発は、市場原理の中で運営することが難しい一方、日本の安全保障の観点からは、絶対に手放せないものです。 このようなインフラは、道路、鉄道、河川、空港、港湾、防災施設、防衛施設など数多くあり、これらの管理の一部を民間に開放したとしても、公共財として政府が最終責任を持つことに違和感はないでしょう。 実際に、原発を強力に推進する中国・ロシア・インドは国営、原発大国フランスは実質国営、カナダは州営、米国は民営と州営の混在で原子力事業が営まれています。 日本は福島事故以前には、民間企業のみが原発を運営する、世界でも珍しい国でした。 これは、地域独占による発電・送配電・小売の一体経営(垂直統合)と、総括原価方式による規制料金が可能にしたものであり、核燃料サイクル等には多額の国費も投入されていたことから、諸外国と同様に、政府による原発への強い政策的支援があったといえます。 核燃料の調達や再処理は、核兵器の拡散とも絡んだ重要な外交問題であり、政府の関与なしに原子力事業が進むことはありませんでした。 現在、東京電力は実質国営化されていますが、東京電力の廃炉部門と原発部門をそれぞれ分離して、東京電力の原発部門を母体とした、政府出資の原発会社を設立することも選択肢の一つです。 この会社に希望する原子力事業者を統合して大規模化し、低金利の長期資金を政府保証で調達するなどして、将来に備えた原発の新増設を国策として推進することが、現実的な方法であるといえます。 これにより、日本国内での原子力利用を堅持するとともに、中国やロシアなどの「原子力強国」に対抗して、海外の原発事業にも参画し、日本の原子力技術を維持・向上することができます。 ◆原発の小型化は「救世主」となるか なお、別のアプローチとして、現在の主流となった100~150万kW級の大型原発とは別に、小型モジュール炉(SMR)と呼ばれる30万kW以下の小型原発の開発が、米国を中心に英国、中国、韓国、フランス、カナダ等で進められています。商用化は2020年代後半といわれていますが、日本はやや出遅れています。(※6) SMRは設備の大部分を工場で製作し、5万kW程度のモジュールをトラック等で運んで現場で組み立てるため、工期を短縮し、建設にかかる初期投資を抑えることができます。熱出力が小さいため、外部電源等がなくても自然循環で冷却できることから、受動安全性に優れ、燃料交換をせずに長期間運転できるため、核拡散防止の観点からもメリットがあります。(※7) SMRは、1モジュールあたりの設備投資額が小さいことから、投資に伴うリスクを限定することができます。 また、負荷追従運転が容易であり、出力が変動する再エネと協調して運転でき、小型のため分散型電源として設置することも可能です。SMRは、「電力システム改革」や再エネの大量導入といった事業環境の変化に適応する、新しい原発といえます。 ◆政府の支援で事業環境整備を 幸福実現党は、現在建設中・計画中の原発(軽水炉)に加えて、軽水炉およびSMR等の原発の新増設を訴えています。 しかし、上記のような特長をもつSMRであっても、やはり政府の支援で原子力の事業環境を整備することが、開発の前提となります。 我が党は、政府の強力な支援と制度的措置により、国家の独立と安全保障の基盤である原子力エネルギーを堅持し、原子力の利用を着実に推進します。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「世界の電力事情 日本への教訓 英国編:自由化・制度改革で先行した英国が抱える課題」 丸山真弘 日本工業新聞社・電力中央研究所「月刊Business i. ENECO 地球環境とエネルギー」 2013年12月 https://criepi.denken.or.jp/press/journal/eneco/2013/004.pdf ※2 英国で約20年ぶりに建設される原発で、フランス電力(EDF)と中国広核集団(CGN)の合弁事業。 ※3 1MWhあたり92.5ポンド(1kWhあたり13円程度) ※4 「原発輸出ゼロでも再編はない 日立・東芝・三菱の袋小路」 宗敦司 エコノミスト 2019年2月4日 https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190212/se1/00m/020/068000c ※5 「日立、原発プロジェクト凍結は大英断なのか」 山田雄大 東洋経済 2019年1月21日 https://toyokeizai.net/articles/-/261236 ※6 「原子力イノベーション政策の追求」 資源エネルギー庁 2018年12月5日 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/018_04_00.pdf ※7 「海外で開発が進む小型原子炉の可能性」 阿部真千子 三菱総合研究所 MRIマンスリーレビュー2018年9月号 https://www.mri.co.jp/opinion/mreview/topics/201809-2.html エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(8)民間による原子力事業は困難に 2019.06.07 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(8)民間による原子力事業は困難に 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆原子力発電は「電力システム改革」と相性が悪い 現政権が進める「電力システム改革」により、2016年度から小売全面自由化が施行され、2020年度からの発送電分離に向けて準備が進められています。しかし、「電力システム改革」によって、民間による原子力事業が難しくなり、特に原発の新増設がほぼ不可能となる可能性が指摘されています(※1、※2)。 原発は火力発電と異なり発電コストに占める燃料費の割合が低く(※3)、ひとたび巨額の設備投資をすれば、少ない限界費用(※4)で長期間発電できる特長があります。この点は再生可能エネルギーと似ていますが、原発の建設には数千億円を要するため、低金利の長期資金を調達し、数十年かけて安定的な電気料金収入を得て設備投資を回収することが事業の前提になる点が、小規模な再エネとは異なります。 電力会社はこれまで、発電と送電の設備の建設時期をずらし、キャッシュフローを融通することで巨額の長期投資を行ってきましたが、発送電分離により、これが不可能となります。 また、小売全面自由化で、発電会社と小売会社が長期間一定の価格で電気の売買を確約することは難しくなったため、低金利の長期資金を調達することが困難になります。 電力会社の長期資金の一つであった一般担保付社債(※5)も、対等な競争条件(イコールフッティング)の観点から2020年度に原則廃止され、2025年度には経過措置も含めて全廃される予定です。 ◆政治の影響で原子力事業の予見性が低下 日本の原子力事業は「国策民営」で、政府が制度をつくり事業環境を整備し、民間が営利事業を行うことによって、民間の効率性を生かした公益事業を展開してきました。 しかし、福島事故の際には、民主党(当時)政権の菅直人・元首相が自ら事故現場に介入、政府が事故処理の前面に立つことを避けて「東京電力の第一義的責任」を強調し(※6)、住民に対しても避難指示の混乱を招くなど、事故対応コストは政治の失敗で大きく膨らむことが判明しました。 例えば、民主党(当時)の細野豪志氏が政治主導で除染目標を「年間1ミリシーベルト」と決めたことにより、除染費用の総額は6兆円(※7)となり、民主党(当時)の失政で数兆円増加した可能性が指摘されています(※8)。 また、福島事故後には、原子力規制委員会による既設の原発の新規制基準への適合性審査が行われていますが、審査に合格するには莫大な工事費と長期間を要し、その間は原発が運転できないばかりか、合格しても運転期間が40年に制限され、地元の同意が得られなければ、さらに運転期間は短縮してしまいます。 原子力事業は制度変更や政治の影響により、当初は想定されなかった大きな不確実性に直面しています。 ◆政府のリーダーシップで原発の新増設を推進 このような事業環境の変化により、政府の関与や制度的措置がなければ、やがて民間企業は原子力事業から撤退し、特に原発の新増設を民間に期待することは困難になると考えられます。 現在、日本には廃炉を決めていない既設の原発が約30基あります。これらは新規制基準に対応するために安全対策工事を行ったとしても、運転を継続すれば一定の収益性は見込めます。 しかし、このままでは新増設はリスクが大きく、民間が投資を決めるだけの経済合理性がありません。 幸福実現党は、「電力システム改革」や再エネの大量導入に伴い、原子力事業の環境が大きく変化する中でも、政府の強力なリーダーシップによって原子力利用を堅持し、原発の新増設を進めることを訴えています。 その具体的な方法については、次回に述べたいと思います。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「原発と電力自由化が両立するには」 日本経済新聞 2016年10月3日 https://www.nikkei.com/article/DGXKZO07912890T01C16A0PE8000/ ※2 『エネルギー産業の2050年 Utility 3.0へのゲームチェンジ』 竹内純子ほか 日本経済新聞出版社 ISBN978-4-532-32170-3 ※3 「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告」 資源エネルギー庁 2015年5月 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/007/pdf/007_05.pdf これによると、原発の1kWhあたりの燃料費(核燃料サイクル費用)は1.5円で、発電コスト(10.1円~)の15%程度。 ※4 限界費用: ここでは、追加的に1kWhの電気を発電するためのコスト。 ※5 一般担保付社債: 発行会社の全財産によって他の債権者よりも優先して弁済を受けられる権利がついた社債。財投機関債、電力債、NTT債など、特別法に基づいて発行される。 ※6 「政府の第一義的責任のなかでの東京電力の責任」 森本紀行 2012年2月9日 https://www.fromhc.com/column/2012/02/post-167.html ※7 「原子力損害賠償・廃炉等支援機構 説明資料」 原子力損害賠償・廃炉等支援機構 2019年4月 http://www.ndf.go.jp/capital/ir/kiko_ir.pdf ※8 「除染『年1mSv』は民主党政権の大失策だ」 GEPR 2016年2月15日 http://www.gepr.org/ja/contents/20160215-03/ エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(7)原子力発電所は直ちに再稼働できる 2019.06.01 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(7)原子力発電所は直ちに再稼働できる 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆世界最速で「脱原発」に向かう日本 2010年には全国に54基の原子力発電所があり、日本は米国、フランスに次ぐ世界第3位の原発大国でした。 しかし、2011年の東日本大震災・福島原発事故をきっかけに原発が次々と停止し、2019年6月現在、原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査に合格して再稼働に至った原発は、わずか9基しかありません。 残りの45基のうち、規制委の審査に合格し地元同意など再稼働に向けて準備中のものが6基、規制委が審査中のものが10基(ほか新設2基が審査中)、未申請のものが8基(ほか新設1基が未申請)です(※1)。 一方、損壊した福島第一原発の4基を含む、全国21基の原発が廃炉を決定しています(廃炉の方向で検討中のものを含む)。また、未申請のうち柏崎刈羽原発の5基などは、地元の政治に配慮して廃炉になる可能性も否定できません。 福島第一原発以外は設備が損壊しているわけではないため、技術的には運転継続が可能ですが、廃炉の決定が相次いでいる背景には、2012年に民主党(当時)政権が法律を改正し、原発の運転を原則40年に制限(規制委の認可で1回に限り最長20年の延長も可能)したことがあります(※2)。 このため、運転開始から30年程度が経過した原発は安全対策工事をしても数年しか運転することができず、電力会社は設備投資を回収できないため、早期廃炉を決定せざるを得ない事情があります。 現行の「40年運転制限」のままでは、全国の原発が審査に合格し地元同意を得て再稼働したとしても、早期廃炉が進み、楽観的に見積もっても2030年には25基程度、2050年には10基程度に減少する可能性があります(※3)。 ◆原発の「40年運転制限」を撤廃せよ しかし、日本ではもともと、原発の60年運転を前提とした合理的な検査体系が運用されていました。 原発の「40年運転制限」は、震災後の政治的な「空気」の中で、民主党(当時)が主導し自民党・公明党の一部の議員の賛成で決めたものであり、科学的根拠は全くありません。 原子炉等の主要設備はもっと長寿命であり、廃炉の時期は個別の設備の劣化状況に応じて決めるべきであって、一律に40年で打ち切ることに合理的な理由はないのです。(※4、※5、※6) 実際に、日本とほぼ同型の原発が運転されている米国では、大部分の原発が60年運転を許可され(※7)、さらに、一部の原発では80年運転に向けた米原子力規制委員会(NRC)の審査が行われています(※8)。 米国物理学会は、原発の80年運転に技術的障害はないとし、NRCが運転制限を80年まで延長することを提言しています(※9)。 幸福実現党は2016年より、原発の「40年運転制限」の即時撤廃を訴えていますが、少なくとも原則60年の運転を可能とすれば、原発事業の予見性が高まって不合理な早期廃炉が回避されるため、日本の急速な「脱原発」を緩和することができます。 ◆実質的な安全性が確保された原発は、政府の責任で再稼働を 日本の原発は福島事故をきっかけとして、外部電源の喪失や過酷事故への対応が十分になされ、安全性が一段と高まっています(※10)。 一方、このように実質的な安全性が確保された原発の再稼働が遅々として進まない主な原因に、規制委の審査に膨大な時間を要していることがあります。 法律には、原子力の安全の確保は「確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として」行うとあり(※11)、また、これに基づく規制委の任務が規定されています(※12)。 しかし、現状の原子力規制行政は、国家としての大局観を欠いた、技術専門家による「議論のための議論」に陥っており、審査の長期化により莫大な経済的損失が発生し、国民の財産を毀損しているほか、電力の安定供給を阻害し、国民の生命、健康、我が国の安全保障を脅かすおそれもあります。 このため我が党は、2018年9月に規制委に要望書を提出し、原子力規制行政の適正化と審査の迅速化を求めました(※13)。 しかし、より根本的な原因は、規制委の審査への合格が、事実上「再稼働の許可」のように誤認され、それを政府自らが追認していることにあります。 原子炉等規制法は、新規制基準適合性に係る審査の途上にある既設の原発の運転を禁止しているわけではなく、本来は運転を継続しながら原発の安全性を高めていくことが可能です。また、規制委に原発の再稼働を止める権限はありません。(※14、※15) つまり、既存の原発の多くが再稼働できないことに法的根拠はなく、政治的な「空気」によって停止を余儀なくされているというのが実情なのです(※16、※17)。 我が党はこれについても、2018年10月に内閣総理大臣に要望書を提出し、政府の責任において直ちに再稼働を進めることを求めました(※18)。 我が党は、国民の生命・健康・財産を守るため、「脱原発やむなし」の“空気”に負けることなく、今後も原発の再稼働を力強く訴えていきます。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「原子力発電の現状」 資源エネルギー庁 2019年5月24日現在 https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf ※2 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(原子炉等規制法)第43条の3の32において、「発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉の設置の工事について最初に第43条の3の11第1項の検査に合格した日から起算して40年とする。」と規定。 ※3 幸福実現党による推定。 ※4 「“原発40年規制”の根拠は『科学と技術』でなく『政治と空気』 ~ 専門家でない政治家が決めた危険な安全ルール」 石川和男 現代ビジネス 2015年2月25日 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/42231 ※5 「おかしな原発廃炉40年ルール 科学的根拠なし」 GEPR 2015年3月23日 http://www.gepr.org/ja/contents/20150323-03/ ※6 「原子炉規制法 原発の40年制限を見直せ」 産経新聞 2017年3月12日 https://www.sankei.com/column/news/170312/clm1703120002-n1.html ※7 「世界の原発はどうなっているのか?」 経済産業省METI Journal 2018年1月22日 https://meti-journal.jp/p/170/ ※8 「原発、米で80年運転申請 新設コスト増、延命で収益狙う」 朝日新聞 2018年12月14日 https://www.asahi.com/articles/DA3S13810875.html ※9 “APS Report Calls for Extending Nuclear Reactor Lifetimes” American Physical Society, December 2013 https://www.aps.org/publications/apsnews/201312/apsreport.cfm ※10 原子力発電所の安全対策 電気事業連合会 https://www.fepc.or.jp/nuclear/safety/torikumi/taisaku/ ※11 原子力基本法第2条第1項において、「前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。」と規定。 ※12 原子力規制委員会設置法第3条において、「原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ること(< 略>)を任務とする。」と規定。 ※13 「エネルギー部会は原子力規制委員会に対して要望書を提出いたしました。」 幸福実現党政務調査会エネルギー部会 2018年9月20日 https://info.hr-party.jp/2018/7189/ ※14 「原発はなぜ再稼動できないのか」 池田信夫 アゴラ 2018年9月22日 http://agora-web.jp/archives/1629639.html ※15 「原発のテロ対策工事で運転を停止する必要はない」 池田信夫 アゴラ 2019年4月25日 http://agora-web.jp/archives/2038638.html ※16 「『安倍首相が再稼働を表明すべきだ』 安念潤司中央大学教授に聞く、『空気主権がむしばむ原発行政』」 井本省吾 JBpress 2014年6月13日 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40936 ※17 「原子力規制委員会と法治主義」 安念潤司 GEPR 2015年9月7日 http://www.gepr.org/ja/contents/20150907-01/ ※18 「内閣総理大臣宛てに『全国の原子力発電所の早期再稼働を求める要望書』を提出」 幸福実現党政務調査会エネルギー部会 2018年10月17日 https://info.hr-party.jp/2018/7397/ エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6)自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠 2019.05.30 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(6)自給率を高めるには再生可能エネルギーが不可欠 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 (本稿では、読者の皆さまからいただいたご意見・ご質問にお答えします。) ◆原子力発電だけで経済成長を支えられるか 幸福実現党は、2050年頃までに日本の一次エネルギー自給率をフランス並みの50%以上に高めることを目標としています(※1)。 この目標を達成するために、再生可能エネルギーの主力電源化ではなく、原子力発電をさらに推進してはどうかというご意見があります。 我が党は原発の再稼働・新増設を訴えており、現在原子力規制委員会が新規制基準への適合性審査を進めている新設2基(※2)に加えて、合計13基(計画・構想段階の原発9基および我が党独自の提案分4基)の軽水炉の新増設、さらに高速増殖炉等の開発を目指しています。 これが実現すると、2050年の原発による発電電力量は3,000億kWh以上となりますが、それでも過去最高だった1998年度の原発による発電電力量(※3)を超えることは厳しい状況です。 我が党は、減税、規制緩和、大規模なインフラ投資などの成長戦略により、実質経済成長率3%程度を実現することを目指しており、これに基づく2050年の最終エネルギー消費は約1.7倍、電力需要は約3倍(いずれも2016年比)と推定しています(※4)。 2050年における電力需要は約2兆8,000億kWhとなり、このうち原発で供給できる電気は約10%しかありません。 ◆エネルギー自給率を高めるには再エネが不可欠 したがって、残りの90%の電力供給を火力発電と再エネで分担することになりますが、一次エネルギー自給率を50%以上に高めるには、電源のうち再エネの比率を80%程度まで高め、火力発電の比率を10%程度とする必要があります。 ここで、発電用の燃料のうち液化天然ガス(LNG)の一部は、日本近海に豊富に賦存するメタンハイドレートに置き換わることを想定しています。 再エネ比率80%は非常にチャレンジングな目標ですが、日本は海洋・地熱等の未開発の豊富な再エネ資源に恵まれ、先行している太陽光発電についても、システムの低価格化が進んでいます。 大川隆法・幸福実現党総裁は2009年2月の講演(※5)で、時代が脱石油文明にシフトしていくとの見通しを示していますが、実際に2010年代には、世界で再エネに関する技術革新が飛躍的に進み、低炭素技術や化石燃料を削減する技術の普及が一段と進んでいます。この「新文明」の潮流はもはや止まらないと考えられます。 再エネに投資を行い国産資源として活用することは、日本の安全保障を高め、低廉なエネルギーが潤沢に供給される社会の基盤をつくり、政策を誤らなければ投資の大部分を国内経済に還流することも可能なため、国家としての総便益はきわめて大きいといえます。 ◆仮に原発だけで自給率50%以上を目指すなら 仮に、自給率を50%以上に高めるために原発だけを使うとした場合には、現時点で国内最大級の原発(1基あたり138万kW)を250基以上新増設する必要があります(※6)。 日本のような民主主義国で、わずか30年間に250基の原発を新増設することは非現実的ですが、中国のような共産党一党独裁の全体主義国家であっても、ほぼ不可能でしょう。 なお、現在の経済状態が2050年まで続き、エネルギー需給構造や電力需要が変わらないと仮定した場合には、火力発電を全て廃止して原発と再エネに置き換えれば、一次エネルギー自給率は50%程度になります。 その場合にも、再エネを利用しない場合には原発を80基以上新増設する必要があり、現実的ではありません。 ◆エネルギー政策にはバランスが重要 特定のエネルギーに偏る政策は、それが実現しなかった場合の代替エネルギーの確保を困難にするため、リスクが大きいといえます。原発に過度に期待すると、それが実現しなかった場合には、結局は化石燃料への依存から脱却できないことになります。 我が党は、原子力を重要なエネルギー源として位置づける一方、太陽光・陸上風力などの在来型再エネ、洋上風力、潮力、海洋温度差、次世代地熱(EGS)などの新しい再エネに加え、メタンハイドレートの新規開発も進め、石油、石炭、LNGなどの在来型の化石燃料も戦略的に維持することを目指しています。 エネルギーに関するあらゆる可能性を否定せず、情勢の変化に柔軟に対応できるエネルギー供給体制を構築し、日本の独立と繁栄を守ります。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。 ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(1) 総論」 HRPニュースファイル 2019年5月12日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3534/ ※2 電源開発の大間原発1号機と、中国電力の島根原発3号機 ※3 エネルギー白書2018 資源エネルギー庁 1998年度の原発による発電電力量は3,322億kWで、電源比率は36.8%と、ともに過去最高。 ※4 「エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か」 HRPニュースファイル 2019年5月26日 http://hrp-newsfile.jp/2019/3558/ ※5 『創造の法』 大川隆法 幸福の科学出版 ISBN978-4-86395-014-6 ※6 改良型沸騰水型原子炉(ABWR)で想定。出力138万kW、設備利用率85%とすると、1基あたり年間約103億kWhの発電電力量となる。 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か 2019.05.26 エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(5) 原子力発電はなぜ必要か 幸福実現党 政務調査会エネルギー部会 ◆原子力発電の推進を一貫して訴えてきた幸福実現党 2011年の東日本大震災・福島第一原発事故後、民主党(当時)の菅直人元首相による法的根拠のない要請で浜岡原発が停止して以来、被災していない全国の原発が相次いで止まり、再稼働ができなくなりました。 当時の世論やマスコミの多くが「脱原発」に傾く中で、幸福実現党は震災直後から、全国の原発の再稼働を強く訴えてきました。 我が党は、エネルギー資源に乏しい日本が液化天然ガス(LNG)や石油等の化石燃料に過度に依存することは、安定供給と経済性の両面で問題があるため、一貫して原発の再稼働や新増設を主張しています。 ◆世界の流れは原発推進 日本ではしばしば、「世界の流れは脱原発」と言われます。韓国、台湾、ドイツ、ベルギー、スイス等での脱原発の動きや、日立製作所による英国原発事業の中断(※1)、再生可能エネルギーの急速な拡大などがある一方で、日本のマスコミは脱原発を強調し、世界の原発推進の動きをあまり報道しないため(※2)、そのような印象があるのかもしれません。 しかし、米国、フランス、中国、ロシア、インド、英国、カナダ等は今後も原発を推進する方針であり、UAEやサウジアラビア等は新たに原発の利用を計画しています。 また、脱原発を表明した前述の国でも、代替エネルギーの目途が立たないため、実際には脱原発が難航しています(※3)。 世界の流れは、明らかに原発推進に向かっています。その最大の理由は、世界の国々が豊かになり、エネルギー需要が大幅に増大することにあります。 国際エネルギー機関(IEA)が2018年に発行した報告書(※4)によれば、エネルギー効率を野心的に高めた「新政策シナリオ」でも、2017年から2040年にかけて、世界のエネルギー需要は25%以上増加すると予測しています。 また、エネルギーの電力化が大きく進み、世界の発電電力量は約57%増加し、再エネの大幅な増加(約2.6倍)を織り込んでも、さらに原発は約41%増加すると予測しています。 ◆日本だけは経済成長しないのか 一方、「人口減少・少子高齢化・低成長の日本ではエネルギー需要の大幅増加は見込めないため、原発がなくても再エネで十分」という、“下山の思想”のような主張があります。 しかし、米国トランプ政権下で景気が好転したように、米国のような成熟国であっても、政策次第で3%程度の経済成長率になることは珍しくありません(※5)。 日本の「失われた30年」の低成長は、バブル期以降の相次ぐ財政・金融政策の失敗、消費税の増税、高い法人税、低い生産性を温存する諸制度、企業活動を制約する不合理な規制等によるものであり、国民がこれらを前提とした低成長を当然視して自縄自縛に陥っている、世界でも特殊な状況にあるといえます。 したがって、これらの政策を変えれば、3%程度の経済成長が実現しても何ら不思議はありません。 ◆経済成長で電力需要が大幅に増える 我が党は、減税、規制緩和、大規模なインフラ投資などの成長戦略により、実質経済成長率3%程度を実現することを目指しています。 経済成長とエネルギー消費には強い正の相関があることが知られており、経済成長に伴いエネルギー消費は増加します。また、経済成長と電力需要には、特に密接な関係があります。 このため、経済成長率を平均3%程度とすれば、2050年の最終エネルギー消費は約1.7倍、電力需要は約3倍(いずれも2016年比)と推定されます(※6)。 電力需要の伸びが特に大きいのは、電力化率(※7)が高まるためです。 これは、国民がより便利な生活を求めて電化製品、IoT(モノのインターネット)機器、ロボット等が増えること、電気自動車(EV)、ドローン、「空飛ぶクルマ」などの交通の電動化、リニア新幹線など高速鉄道の充実、再エネの急拡大、省エネルギーの要請でエネルギー効率の高い電気に転換が進むことなどが理由です。 ◆原子力利用は国家の独立と安全保障の基盤 経済成長には電力の安定供給が不可欠ですが、他国の支配を受けずに安定供給を確保するには、化石燃料への依存を減らし、原発と再エネの利用を進めなければなりません。 そして、今後の電力需要の増大を考えれば、今世紀中に原発が世界の主力電源の座から降りることは絶対にありません。当面は、原発が大量の電気を安定して発電できる最も効率的なシステムだからです。 さらに、原子力関連の技術は原発に役立つだけでなく、医療、新素材の製造、放射性物質の無害化など、多分野の有用な技術につながるほか、次世代原子炉の開発や核融合炉の実用化に向けた技術開発にも役立つものです。 また、日本に向けて核ミサイルを配備する全体主義国家が存在する現状にあっては、潜在的核抑止力としても重要な意味を持っています。再エネがいかに普及したところで、原子力技術およびその利用の重要性は変わりません。 我が党は、今後も国家の独立と安全保障の基盤である原子力エネルギーを堅持し、原子力の利用を着実に推進します。 ◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.comまでご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。 参考 ※1 「日立、英原発事業を中断 2000億円規模の損失計上へ」 日本経済新聞 2019年1月11日 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39897670R10C19A1MM0000/ ※2 「『脱原発』は世界の流れに逆行する メディアが報じない欧米・アジアの大半が『原発推進』という現実」 石川和男 JBpress 2019年4月30日 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56257 ※3 「原子力をめぐる“世界の潮流”」 竹内純子 国際環境経済研究所 2019年4月22日 http://ieei.or.jp/2019/04/takeuchi190422/ ※4 World Energy Outlook 2018, International Energy Agency https://www.iea.org/weo/weo2018/secure/ ※5 Gross Domestic Product, US Bureau of Economic Analysis https://www.bea.gov/data/gdp/gross-domestic-product ※6 幸福実現党による試算。 ※7 電力化率: ここでは、最終エネルギー消費に占める電力需要の割合。 すべてを表示する « Previous 1 … 4 5 6 7 8 … 16 Next »