Home/ 内山雅彰 内山雅彰 執筆者:内山雅彰 政務本部部長代理 ロボット技術によるイノベーションの実現を 2014.06.28 文/政務本部部長代理 内山 雅彰 ◆新成長戦略について 政府は、6月24日、経済財政運営の方針「骨太方針」と、新たな成長戦略にあたる「日本再興戦略改訂版」、規制改革実施計画の3つを閣議決定しました。企業の「稼ぐ力」を牽引役に、「アベノミクス」を推し進める考えです。 新成長戦略では、日本経済全体としての生産性を向上し、「稼ぐ力(収益力)」を取り戻すことを目標に掲げています。(6/24産経ニュース) そして、「稼ぐ力」向上のためにイノベーションが必要であるとしており、日本においてこのイノベーションの象徴ともいえる技術はロボット技術であるとしています。 近年の飛躍的な技術進歩とITとの融合化の進展で、医療、介護、農業、交通など様々な分野でロボットが人の働きをサポートしたり、単純作業や苛酷労働を軽減しており、ロボットは近い将来私たちの生活や産業を革命的に変える可能性を秘めています。 ◆ロボットによる新たな産業革命の実現 そのため、新成長戦略である「日本再興戦略改訂版」においては、ロボットによる新たな産業革命を実現することを掲げています。 具体的には、製造業やサービス分野の競争力強化や、中小企業、医療・介護サービス現場、農業・建設分野での働き手の確保、物流の効率化などの課題解決を迫られている日本企業に対して、ロボット技術の活用により生産性の向上を実現することです。 また企業の収益力の向上、賃金の向上を図るために、「ロボット革命実現会議」を立ち上げ、現場ニーズを踏まえた具体策を検討し、アクションプランとして「5か年計画」を策定するとしています。 そして、技術開発や規制緩和、標準化により、2020年までにロボット市場を製造分野で現在の2倍、サービスなど非製造分野で20倍に拡大。こうした取り組みを通じて、様々な分野の生産性を向上させ、例えば製造業の労働生産性について年間2%を上回る向上を目指すということです。 さらに、2020年、オリンピック・パラリンピック東京大会等に合わせたロボットオリンピック(仮称)の開催を視野に入れるなど、ロボットスーツや災害対応ロボットをはじめとした様々な分野のロボットやユニバーサルデザインなどの日本の最先端技術を世界に発信するということです。 上記のような、ロボットによる新たな産業革命が実現すれば、経済成長の大きな要因となりますので、推進すべきであると考えます。 ◆産業用ロボットの現状 一方、現状については、産業用ロボットの2011年の日本企業のシェアは50.2%となっています。日本市場は直近5年間に台数ベースで約25% 縮小したものの、2011時点では全体として世界最大市場の地位を維持(「2012年ロボット産業の市場動向」平成25年7月経済産業省産業機械課)しており、世界を席巻しています。 その中において、新たなロボットも誕生しています。平べったい頭に2つの目、二足走行はできないが、2本の腕は肩、肘、手首と3つの関節を持ち、自由自在に動かすことができます。 ――川田工業が開発したロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」は、これまで日本で普及してきた産業用ロボットの無骨な外見とは、まったく異なる、親しみやすい人型をしています。 従来の産業用ロボットが、ハイパワーとスピードを誇り、周囲に人が近づかないことを前提としているのに対し、ネクステージは人との共存を目指しています。“設備”ではなく、“パートナー”として、人が並ぶ生産ラインに入り込めるロボットを開発したのです。 通貨処理機などを製造するグローリ―では、埼玉工場に18台を導入し、あるラインでは、4台のネクステージが並び、最後の工程を人間が担当しています。つまり、人間が担当する工程を代替できるロボットであるのです。(6/14号週刊ダイヤモンド) このようなロボットの発展により、産業革命を起こしていくことが可能となると思われます。 ◆ロボット産業の将来市場予測 また、経済産業省と独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」は、2010年に、ロボット産業の将来市場予測を発表しています。(2010/5/13 日本インタビュー新聞社) それによれば、ロボット産業の将来市場は、2025年に5.3兆円、2035年に9.7兆円まで成長すると予測されています。(2035年に向けたロボット産業の将来市場予測② 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)) 現状と比較すると、2010年のロボット産業市場規模は約8,600億円であると推計されています(「2012年ロボット産業の市場動向」平成25年7月経済産業省産業機械課)ので、2025年に約6.2倍、2035年に約11.3倍に成長するという試算となっています。 上記の2035年の内訳としては、製造分野が2.7兆円、ロボット・テクノロジー分野が1.5兆円、農林水産分野が0.5兆円、サービス分野が5.0兆円となるとしています。この中で、サービス分野の成長は大きく、2010年の市場規模が約600億円であるため、約80倍の成長を見込んでいます。 その内容としては、介護福祉の「自立支援」「介護・介助支援」、「清掃」、「警備」、「移動支援(業務用)」、「次世代物流支援」などです。これらの分野でのロボット産業の成長は、高齢化の進む日本には必要なことであり、それにより私たちの生活自体も変わっていく可能性があります。 このようなロボット産業の成長により産業革命を起こし、日本を発展させるべきであると考えます。 シェールガスの現状及びその打開策について 2014.03.21 文/政務本部部長代理 内山 雅彰 ◆シェールガスに関する最近の報道 米エネルギー省は、2月11日に北米産シェールガスの輸入のための日本勢の3か所4事業を全て承認しました。(2/13日経) 現在計画中の輸入量は、カナダ産と合わせて合計年2500万トンになり、このシェールガスを火力発電の燃料とすれば原発20基以上に相当する発電容量を得られます。またシェールガスはLNGの輸入価格に比べて、2~3割安い価格が期待できるとの見方が有力と報道されました。(2/13日経) 日本では3月14日 、中部電力が経済産業省に申請した家庭用電気料金の引き上げで、料金審査をする専門委員会は、2018年に米国からシェールガスの輸入を始めることにより燃料費を年50億円削減できると見込んでいます。(3/14日経) ◆シェールガスとは 「シェールガス」とは、シェール(頁岩層)に埋蔵される天然ガスのことです。 オバマ大統領が2012年の年頭教書演説で、地下の岩層に水や砂、化学物質を高圧で吹き込み天然ガスを抽出する水圧破砕技術の推進により、2010年代末までに60万人の雇用が創出できると説明し、米国には100年近く持続可能な天然ガスの供給量があると言明しました。(2012 1/25 ブルームバーグ) そのため、シェールガスは、LNGよりも安いコストで輸入ができるため、企業や家計が負担するエネルギー料金の上昇にも歯止めがかかり、個人消費にも好影響を与え、国内での経済活動の余地も広がると、バラ色のイメージが先行しています――しかし思惑通り進むとは限りません。 ◆今起こっていること 大阪ガスは米国で米テキサス州のシェールガス鉱区の開発に失敗したとして、3月決算で、約290億円の特別損失を計上すると発表しました。現在の技術では想定した量を掘削できなかったためです。(2/13 日経速報) 大阪ガスは今年度、天然ガスを約11万トン(液化天 然ガス換算)、原油は1050バレルをそれぞれ取得、販売する計画でしたが、掘削には技術的な問題点が多いことが分かり、開発の中断を決めました。 (2013 12/20産経) ◆シェールガスの問題点は何か シェールガスについては、次の問題点が指摘されています。(1/24東洋経済「なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか」) 一つ目は、ガスの生産量の減少が従来型のガス田よりも早いということが明らかになっています。多くのガス田は、ガスの産出が始まって3年経つと、産出量が75%以上減少します。 ガス産出量を維持するためには、次々と新しい井戸を掘り続けなければならず、典型的な自転車操業で、米国全体で2012年に420億ドルものコストがかかったと言われています。 一方、米国全体で産出されるシェールガスの売上高は325億ドルなので、年間100億ドルもの赤字経営を強いられていることになります。 二つ目には、米国の天然ガス価格はシェールガスの急増で値崩れし、2013年を通じ3ドル~4ドルと低迷していますが、シェールガス田の多くはガス価格が8ドルにまで回復しないと採算が合わないといわれています。 2013年には、オクラホマ州でシェールガスなどを生産するGMXリソーシズが破綻しました。この会社は天然ガス価格の値崩れのせいで8期連続の赤字を計上していましたが、過熱する開発ブームで鉱区の権益価格が急騰し、買い手がつかなかったのです。 過去5年間のような急激な生産増の予測が反転すれば、米国内の天然ガス価格が急激に上昇する可能性もあります。そうなれば、バラ色のイメージが崩れてしまうことになります。 ◆現状をどう打開するか このようにシェールガスの先行きが厳しい状況となっている現在、他の方法を模索しなくてはなりません。現在の日本において、輸入天然ガスは100%LNGであり、安定供給のために20年30年といった長期契約で、原油価格連動という極めて不自由で割高な取引条件に縛られています。 他の需要国はパイプラインによる天然ガスと比較し有利な価格を選択することができますが、パイプライン網のない日本はそれができません。 そこで、サハリンからパイプラインを敷設して、ロシアの天然ガスを日本に持ってくる方法が考えられます。(1/24東洋経済「なぜシェールガスはカベにぶつかっているのか」) 実際、2000年代初頭にサハリンから海底パイプラインを敷設して首都圏まで供給する構想が検討されましたが、実現しなかったという経緯があります。(2/18 ロイター) 日本がサハリンから天然ガスをパイプラインで輸入する場合、現在の西欧向けのパイプライン価格で輸入できれば、年間6兆円のLNG輸入額(2012年)を3兆6千億円に縮減できます。(1/31 JBpress「機は熟した、サハリンの天然ガスをパイプライン輸送せよ」) パイプライン敷設のコストは、5000~6000億円程度と想定されるため、初期投資が早期に解消できることは確実です。 そして、ロシアからの天然ガス供給が実現すれば、ロシア以外の国から新規LNGを購入する際の価格引き下げへの効果的な交渉カードとすることができるのです。 また、現在、ウクライナ問題などはありますが、ロシアとの関係を強化することは日本の安全保障上も重要であり、その意味でもこの方法の早期実現を期待します。 すべてを表示する