Home/ 小川 佳世子 小川 佳世子 執筆者:小川 佳世子 幸福実現党政務調査会長代理 高齢者雇用で若者の雇用機会は失われるのか? 2013.05.15 幸福実現党は、この夏の参院選に3本の政策の柱を掲げて戦っています。⇒http://www.hr-party.jp/topic/policy3/ その中の一つに「生涯現役社会の実現」があり、高齢者向けの仕事を増やし、75歳まで生きがいを持って働ける社会を目指しています。 これは高齢者にとっても経済的自立や生きがい、健康を維持でき、現役世代にとっても社会保障費増大(に伴う増税)を抑えることができる効果的な施策で、幸福実現党は立党以来、提言を重ねて参りました。 そして今年4月から「改正高年齢者雇用安定法」により、「65歳定年制」が施行。また、厚生労働省が今年に入り、「生涯現役社会の実現に向けた就労のあり方に関する検討会」を開催するなど、政府の取り組みも急ピッチで進んでいます。 こうした「生涯現役社会」の進展に伴い、「高齢者の雇用機会が増えることで、若者の雇用機会が減るのではないか?」というご指摘を頂くことがあります。 今回は、高齢者の雇用拡大が、若者世代にとってマイナスになるのかについて考えて参ります。 (1)景気回復で、雇用のパイの拡大を 本年4月1日より、希望する社員を65歳まで雇用することを企業に義務付ける「65歳定年制」が施行され、「若者の雇用が圧迫されるのではないか」という声も出ていました。このことについて、過去の統計から推測してみましょう。 1994年には「高年齢者(対象は主に55歳以上)雇用安定法」が改正され、1998年以降の60歳以上定年制が義務化されました。しかし、これに伴って若者の求人倍率が著しく下がったというデータはありません。 例えば、1995年の20~24歳の常用労働者の有効求人倍率は0.68倍、同じく60~64歳の倍率は0.08倍でしたが、雇用義務化導入後の1999年は、20~24歳の有効求人倍率が0.63倍、60~64歳が0.06倍であり、義務化によって年齢別の差は大きく変わっていません。(厚生労働省職業安定局「労働市場年報」より) むしろ、有効求人倍率の変動要素として最も大きかったものは「景気」です。2006年には、有効求人倍率が14年ぶりに1.0を上回りましたが、その際には、20~24歳の有効求人倍率も1.16倍となりました。 その意味で、「生涯現役社会」の実現は、幸福実現党の経済政策、景気回復策とセットで進め、若者も高齢者も雇用を増やしていくことが大切です。 幸福実現党の政策が実現すれば、新たな基幹産業を創り出すことで、若者にとっても魅力的な職場が増えていくことが期待されます。 (2)少子化により、労働力の需要が増える 第二に、労働力人口の減少を若者だけでは補えないという現実があります。 満15歳以上で、実際に就業している人、休業・失業中の人の合計を「労働力人口」と呼びますが、2004年と比べると、2015年には労働力人口は約110万人減少すると見込まれます。 その中で、若者世代(15~29歳)は約220万人も減少します。一方、働く意欲のある高齢者が増えているため、60歳以上の労働力人口は約170万人増加するとされています。 もちろん、様々な希望職種がありますので、労働力人口の多寡だけで単純に若者の雇用機会が確保されるとは言えませんが、社会の活力を維持するためには働く高齢者が増えていくことが不可欠です。 (3)成果主義の採用で、お互いの強みを生かす 「高齢者の高い給与で人件費が圧迫され、若者の雇用が減らされるのではないか」という指摘もあります。これは、各企業の工夫と努力によるところが大きいと思われます。 例えば、パソナキャリアが提供している「キャリアエージェントサービス」では、高齢者も若手と同じようなノルマがあり、ノルマの達成率によって給与が変動する成果主義を採用しています。 このような成果主義であれば、若手と高齢者に公平なチャンスが与えられますので、お互いの不満が出にくく、高齢者もやりがいを持って仕事にあたれます。 実際、顧客が高齢者であるため、高齢者の立場に立てる高齢社員が重宝され、若手も高齢者に学ぶことができ、お互いの強みを生かし合っています。 (4)「自助努力」社会の到来で、現役世代の社会保障負担が軽減される 現在のままであれば、年金制度は確実に破綻します。ある試算によれば、2010年は高齢者1人に対し、生産人口2.77人、2031年には1.83人の生産人口で1人の高齢者の年金を負担することとなるそうです。 そのために、消費税を上げようとしているわけですが、消費税増税は景気を冷え込ませ、そのしわ寄せは全世代に及びます。 仮に社会保障にかかる費用をすべて消費税でまかなおうとすれば、今世紀の半ばには、消費税率はなんと60%に及ぶと予測されています。 過去のHRPニュースファイルにもありますように、高齢者が仕事を続けることによって、老後も自活ができ、健康の増進や長寿をもたらします。 ⇒「超・高齢化社会」に備えよ(2)――エイジレス社会への突破口 「自分の老後は自分で面倒を見る。また、納税もできる」という自助努力型の高齢者が増えることは社会保障費の削減になり、これは高齢者を支える若者世代にとってもありがたいことでしょう。 高齢者と若者世代が雇用のパイを奪い合うのではなく、お互いの強みを生かし合い、力を合わせて社会を発展させていくことが、「生涯現役社会」が目指すところでもあるのです。(文責・小川佳世子) 強まる米中接近――日本は自主防衛体制構築を急げ! 2013.05.01 尖閣の危機と日米同盟 4月26日、中国外務省の華春瑩報道官が、尖閣諸島について「中国の核心的利益だ」と明言しました。 中国はこれまでも、尖閣諸島を「核心的利益に準ずる地域」としてきましたが、公の場で「核心的利益」と明言したのは初めてのことです。 これに先立つ23日には、「中国の主権を侵害する日本船の監視」を名目に、尖閣諸島周辺の日本領海内に中国の海洋監視船8隻が侵入しています。 現在では、国際的批判を恐れ「核心的利益」との表現から若干のトーン調整を図っているようですが、中国が尖閣諸島の領有権を主張していることに変わりはありません。(4/28 産経「『尖閣は核心的利益』発言をあいまいに修正」) このような中国の野心丸出しの行為に対して、現在のところ、日本は日米同盟に頼るしかない状況です。 小野寺防衛大臣は、4月29日、アメリカのヘーゲル国防長官と会談し、尖閣諸島が日米同盟の適用対象であることを改めて確認。ヘーゲル国防長官は「アメリカは、一方的、抑圧的な行動や、日本の行政コントロールを軽視する目的の行動には反対する」と述べて中国をけん制しました。 沖縄の反米運動と日米同盟の危機 日本にとっては歓迎すべきことではありますが、日米同盟自体が、現在、危うい状況に置かれているため、決して安心することはできません。 その理由の一つは、日本国内に日米同盟を脅かす勢力があるということです。 極東地域の防衛に欠かせないオスプレイ導入に反対する勢力があることはその一例で、反対派の意見を無視できない地方自治体の長も難しい対応を迫られています。 昨年7月、オスプレイが山口県の岩国基地に陸揚げされた後、普天間基地に配備されましたが、今年も追加配備が予定されています。 岩国基地容認派である岩国市の福田市長も、最終的には岩国基地への搬入を認めたものの、4月26日時点では反対派に配慮してか「(オスプレイは)岩国を経由せず、沖縄の那覇港湾施設に陸揚げすることが筋だ」と難色を示しました。(4/27 中国新聞「オスプレイ『那覇に直接搬入を』 岩国市長 追加配備控え言及」) 「正論」(2013年6月号)によれば、沖縄県普天間基地周辺では基地に反対する「活動家」たちが、アメリカ兵に対して罵声を浴びせ、自動車を蹴飛ばすといった暴力行為を起こしていますが、警察は適切な取締りをしておらず、エスカレートしています。 ある米海兵隊員は胸を殴られ、診断書を持って被害届を出したのに、宜野湾署に受理されなかったといいます。 米中接近を警戒せよ! 二つ目の理由は、米中接近の動きが加速しているということです。アメリカは、財政面でも世界の警察官としての機能を失いつつありますが、現政権の思想傾向からも、親中の動きが出始めています。 オバマ大統領が国務長官(日本の外務大臣にあたる)に指名したジョン・ケリー氏は、ベトナム戦争に従軍後、ベトナム戦争で得た勲章を投げつけるといった反戦運動を行っているリベラル色の強い人物です。 さらにケリー長官は、中国はアメリカの最大の債権国であり、最もありがたい「銀行」であるとして、米中経済一体論を提唱するなど「親中」の思想を持っています。 ケリー長官は北朝鮮のミサイル発射問題に際し、アジア諸国を歴訪した際も、中国に対し、「中国がより強く北朝鮮を説得しようと努力するなら、ミサイル防衛システムや北朝鮮沖合に派遣されているイージス艦などの米軍事力を撤回する」との趣旨の発言をしています。(4/15 ウォールストリートジャーナル「北朝鮮が核廃棄開始なら、対話の用意=米国務長官」) このことからも、ケリー長官は、北朝鮮や中国が理性的な交渉に応じ、軍事力を放棄するような国であるという誤った認識を持っていると考えられます。 一方、同盟国である韓国に対して「北朝鮮の挑発的行為を阻止するために連携する」と言いながら、北朝鮮が反発を強めていた米韓軍事演習で多くの訓練を中止したことを明らかにしました。 これは、同盟国を守るより、好戦的な態度の北朝鮮に屈したことを意味します。「中国包囲網」を形成して来たヒラリー・クリントン前国務長官時代から一転、米国が親中姿勢を強めていることは要注意です。 このような思想傾向を持っている人物が国務長官にいる以上、今後、中国が日本に脅しをかけてきた際、米国は日本より中国を選択する可能性もあり得ます。 早急に自主防衛体制を築け! 北朝鮮のミサイルはもちろん脅威ですが、北朝鮮問題をきっかけに米中が接近し、中国に圧力をかけてきたアメリカの軍事力が失われることを、日本は何よりも恐れるべきでしょう。 実際、日米同盟は、1年前に相手国に予告することによって、一方的に廃棄できることになっています。すなわち、いつアメリカから「破棄する」と言われてもおかしくないのです。 たとえ、今まで通り日米同盟が存続されるとしても、日本が早急に集団的自衛権の行使を認め、同盟国としての義務を果たすとともに、「自分の国は自分で守る」という自助努力の姿勢を見せなくては機能しません。 日本は一刻も早く、「自分の国は自分で守る」という自主防衛体制を築き、自由主義・民主主義の価値観を共有する諸外国とも力を合わせ、自由を抑圧する国の脅威を打ち破らねばなりません。(文責・政務調査会部長代理 小川 佳世子) 「生涯現役社会」に向け、規制緩和と減税でパイを増やす発想を! 2013.04.03 希望者を65歳まで雇用するよう義務づける「改正高年齢者雇用安定法」施行 本年4月1日より、希望する社員を65歳まで雇用することを企業に義務付ける「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。 2006年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」は、65歳まで働ける制度を導入するように促すもので、労使協定や就業規則等で定めた基準に合わなければ、希望者であっても再雇用されないこともありました。 今回の改正法では、企業は雇用する社員を選別することはできなくなり、「60歳以降も働きたい」と希望する社員は、原則65歳まで働くことができるようになります(2025年までは経過措置あり)。 ただ、それぞれの事情を考慮することなく、各企業に高齢者雇用を義務付けることは歪みを生みます。 みずほ総合研究所の試算によれば、事実上の定年が65歳になる2025年度には、企業全体で年間の人件費は1.9兆円、約1%程度増加するとのことです。 この数値をベースに計算すると、各産業の利益率を0.1ポイント押し下げるとの試算も出ています。(3/4 日経ビジネス) しかし、ドラッカーが述べているように「知識労働者をコストではなく資産として遇すること」によって、生産性を高め、人件費増加を補って余りあるだけの利益を上げる道はあります。 実際、多くの企業は高齢者の智慧と経験を活かそうと、様々な工夫を凝らしています。 消費増税を中止し、景気回復を優先せよ! ただ、企業が雇用を維持・増加しようとする前提として、景気の回復と経済成長が必要です。 その足を引っ張るのが消費増税です。消費増税で景気が悪くなって倒産が増えれば雇用も減ります。 1997年に消費税が3%から5%に引き上げられた際には、それまで3%台だった失業率が、その翌年の98年には4.11%に上がりました。その後も少しずつ上昇し、2001年には5%台になりました。 経済成長の足かせとなる消費増税を阻止し、新産業への投資を行って若い世代に魅力的な職場を与えると共に、高齢者も貴重な戦力とされるような環境作りを急がねばなりません。 労働市場の流動化を進め、「チャンスの平等」を実現せよ! その上で、長期的には、労働市場の流動化を進めることが重要です。 この度の法改正は、一律に65歳まで雇用し続けることを義務化するものですが、業種によっては高齢者に向かない仕事もあります。 例えば、住宅建材等の運送を手掛けるアルプス運輸建設では、体力や判断力が衰える高齢者にトラックの運転をし続けてもらうことはリスクがあると判断し、新規事業として農業を始め、高齢社員に稲作に従事してもらうことにしています(3/4 日経ビジネス)。 ただ、これは全ての企業ができることではありません。 現在の日本では、正規社員の解雇についての規制が非正規社員に比べて強すぎるため、一度職を失った人、これから社会に出る若者にとって不利な状況が生まれています。 今後、65歳までの雇用が義務付けられるようになれば、ますます正規雇用を控える企業が増えるでしょう。 雇用に関する規制を緩和して労働市場の流動化を進め、転職をしやすくする環境をつくることで、長期的にはチャンスの平等が生まれます。 転職が当然の社会になれば、各自の年齢や経験、体力や技能に応じた職場への道も開けるでしょう。 ドイツでは、一度採用したら解雇はほとんど無理と言われるほど厳しい規制がありましたが、法律を改め、解雇をしやすくしたところ、短期的には失業者が500万人を超えましたが、長期的には雇用の流動性が高まり、企業の活力も高まって失業者が減りました。(2011/8 WEDGE http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1422?page=1) 高齢者雇用のパイを増やせ! さらには、高齢者雇用のパイをいかに増やしていくかを考えるべきです。 介護人材派遣業を営む㈱かい援隊本部は「介護分野の人手不足の問題を元気な高齢者を雇用することで克服したい」という志でスタートしたベンチャー企業です。 このような高齢者雇用を積極的に推し進めようとする企業や、高齢者による起業に対して、投資や税制優遇などの支援を行うことも必要です。 「生涯現役社会」に向けたマインド転換を! 最後には社会全体のマインド転換が必要です。 幸福実現党は「セルフヘルプの精神」に基づいて、老後の生活を政府に依存するのではなく、個人や民間企業の力、家族の助け合いで生計を立てることができる、充実した「生涯現役社会」を目指しています。 その具体的政策として「75歳定年制」を提唱しています。 戦後長らく55~60歳定年が常識だったため、75歳は突拍子もなく聞こえるかもしれませんが、55歳定年が一般的だった1951年に男性60.8歳、女性64.9歳だった平均寿命は、50年間で男性18年、女性20年も伸び、男性78歳、女性84.9歳となりました。 余命を考えれば、「75歳定年」はむしろ自然の流れだと言えるでしょう。(文責・政務調査会部長代理 小川 佳世子) 薬事法改正で、医療分野における規制緩和を進めよ! 2013.02.08 今年に入って、薬事法に関するニュースが続いています。 1月11日、医師の処方箋なしで買える一般用医薬品(大衆薬)のインターネット販売を原則禁止している厚生労働省令は違法だとする最高裁判決が出ました。(1/11 産経「大衆薬のネット販売規制は『違法』 最高裁が上告棄却し国が逆転敗訴」) 「一般医薬品」は副作用リスクの程度によって3つに分類されています。 2009年の改正薬事法では、比較的リスクの高い第1類医薬品以外は、条件を満たせばコンビニでも販売できるようになりましたが、厚生労働省は、比較的リスクの高い第1、第2類医薬品は、「安全のため、対面販売を原則とする」として、省令によってインターネットでの販売を禁止しました。 省令とは、各省の大臣が制定する命令で、法律と同じような効果を持ちます。国会で成立する法律と異なり、情勢に合わせて比較的短時間で改正できる反面、民主的な手続きを経ていないため、あくまでも法律が想定する範囲内での内容に限られます。 これに対して、一般医薬品のネット販売を行っていた会社2社が原告となり、「省令による規制は、憲法で保障された営業の自由を侵害している」として訴訟を起こしました。 ネット販売業者にとって、第1、2類医薬品は一般医薬品の約7割を占め、売り上げの柱でした。実際、ネット販売を禁止されてから、原告の一社「ケンコーコム」の年間売上は5億円も減少したそうです。 この裁判は最高裁まで争われ、「薬事法では、第1、2類のネット販売を禁じておらず、厚生労働省の出した省令は法律が想定する範囲を超えた違法な規制である」という趣旨の司法判断がなされ、事実上、ネット販売が解禁となりました。 この判決確定後、原告の一社「ケンコーコム」の株価は前日比26.6%と上昇。安易な規制が、いかに経済活動の自由を圧迫しているかの好例といえます。 ただし、今回の判決では、営業の自由の侵害などの憲法論までは踏み込んでいません。 あくまでも、厚生労働省の出した省令が法律の意図した範囲を超えていたことが指摘されたため、法律そのものを改正し、一定の規制をかけようという動きが出ています。 今のところは、比較的副作用の少ない第2類の一般医薬品のネット販売は認め、第1類については禁止しようという方向で検討されているようですが、なるべく規制はかけない方向で進めてほしいものです。 ネット販売のリスクがゼロであるとは言えませんが、外出が困難な人や、薬局まで遠い地域に住んでいる人にとってもメリットが大きいものです。また、店舗では買いにくい医薬品の購入など、新たなニーズも掘り起こしています。 例えば、第2類の医薬品には妊娠検査薬も含まれており、これを対面で販売しなくてはいけない合理的理由は見当たりません。 薬局で購入できる風邪薬や鼻炎薬、胃腸薬なども、副作用の程度によって第1類、第2類に分かれていますが、薬局で薬剤師と顔を合わせて購入すれば安全で、ネットで購入すると危険性が高まるとも、一律には言い難いと思われます。 丁寧に副作用の可能性を説明してくれる薬剤師もいると思いますが、ネット業者も、法律に従って画面上で副作用を明記し、薬剤師を配置してメールや電話での問い合わせに対応する体制を整えています。 また、どんな薬であっても一定の副作用リスクはあり、このリスクは薬の販売方法によって減らせるものではありません。 偽造医薬品を販売するような悪徳業者の取り締まりは当然ですが、むやみに販売方法を規制することは、商業活動の自由を阻害し、正しいあり方とはいえません。 また、最近では、国内企業の医療機器製造・販売への参入促進を図るため、政府が規制を緩和する方針を固めたとの報道がありました。(1/31 産経「薬事法改正で規制緩和 政府方針 医療機器、成長戦略へ一歩」) 詳細はこれからですが、規制緩和の動き自体は歓迎すべきと言えるでしょう。 現在、医療機器は、薬事法で製造許可や認証が厳しく規制されています。 医療機器製造の許可は製造所ごとに取得する必要があり、販売・譲渡・賃貸の許可も別途必要です。さらに、心臓ペースメーカー等の高度管理医療機器を販売する場合は、通常の販売許可とは別の許認可が必要です。 また、医療機器の製造販売事業者は一定の経験を積んだ製造販売責任者、品質保持者、安全管理責任者等の責任技術者を配置して、省令で定められた品質保証、安全保障の基準を満たさなくてはならず、こうした複雑な許認可が新規参入を拒んでいます。 医療分野の規制緩和は、人の命がかかっている分、慎重にならざるを得ませんが、時代にそぐわなくなった規制、リスクを過大に評価しすぎてメリットを奪っている規制については、一つ一つ検証し、緩和していくことが必要です。(文責・HS政経塾 小川佳世子) 国民の領土・領海意識向上のために正しい教育を! 2012.10.25 10月23日午後、韓国の国会議員15名が島根県の竹島にヘリで上陸しました。 韓国議員の行動は、実効支配を強調し、竹島の領有権が韓国にあることを強くアピールする狙いがあると思われます。 一方、日本政府は、韓国外交通商省に中止を要請していたものの、結局不法上陸を止められず、いつものように「極めて遺憾であり強く抗議する」と言うのみです。 竹島をめぐる問題における両国のアピールを見ると、明らかに韓国に軍配が上がります。 これは、日本人の領土意識の低さとも無関係ではありません。そこで、今回は領土問題を教育の面から考えてみたいと思います。 2011年に日本青年会議所が、全国の高校生400人を対象に、地図上で北方四島、日本海、東シナ海の3つの場所に境界線を引かせる調査を行ったところ、すべてを正しく答えられたのは、わずか7名(2%以下)に過ぎませんでした。 特に、日本海において、竹島とウルルン島の間に境界線を引く問題の正答率は低く、正解者は全体の37人(9.3%)でした。 本年9月には、同様の調査を東京都内の学生534人を対象に行いましたが、全問正解率は28名(5.2%程度)と相変わらず低い数字でした。 領土や領海についての正しい知識と理解なくして、領土を守ろうという意識が生まれてくるはずはありません。 日本は、自国の領土についてどのように教えているのでしょうか。 文部科学省作成の、中学の社会科の指導要領は「北方領土が我が国の固有の領土であることなど、我が国の領域をめぐる問題にも着目させるようにする」というあいまいな表現で示されており、竹島については明確に出てきません。 実際、2005年までは、竹島について記述した中学教科書は扶桑社のみでした。 島根県が「学校教育で竹島問題を積極的に扱ってほしい」と要望したこともあり、2006年からは、中学の公民教科書3社、地理教科書2社が竹島について触れました。 しかし、「竹島、尖閣は日本の領土です」としか書かれておらず、韓国や中国の主張や、日本領土である根拠や歴史的事実については十分に学べる状況にありません。 それは、現在においても大きくは変わりません。 2012年度から実施された新たな指導要領の解説書には、初めて「竹島」という文言が入りましたが、「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ…」と、非常に回りくどい表現を使っています。 なお、この解説書を発表した2008年当時、韓国は駐日大使を一時帰国させたり、民間の交流事業でも中止や延期を行ったりなどの措置を取りました。 そうした韓国の感情に配慮してか、高校の地理歴史科の教育指導要領には、解説書も含めて未だに「竹島」の文言が盛り込まれていません。 一方、韓国の教育方針は、非常に具体的で明確です。中学の国史教科書では「日本は一方的に独島(竹島の韓国名)を、日本の領土に編入した」と記述し、高校では「日本は独島を「竹島」と呼んで、自国領土のように歪曲する」などの主観に満ちた書き方をしています。 更に2011年3月、韓国教育科学技術省は、韓国が竹島の領有権を持っていることを理解させるため、小・中・高校別に体系的な教育指導書を作成しました。 小学校では地名の由来などを通じて「独島(竹島の韓国名)がいかに韓国にとって重要か」を強調し、中学校では、日韓の資料を引用しながら韓国領である根拠を示すと共に、実効支配の現状などを説明するなどの力の入れようです。 教科書だけ見ても、両国の領土に対する意識やスタンスの違いが明らかに現れています。 こうした教育を受けた韓国の大学生は「96.5%が『独島』を韓国領として認識し、そのうち93.5%が就学前、もしくは小学校から認識していた」という調査結果もあるようです。 日本の弱腰外交は、国民が自国の領土について正しい知識を持たず、愛国心が育っていないことにも起因するのではないでしょうか。 竹島も尖閣諸島も、私たちの先人たちがフロンティア精神を持って切り拓いてきた場所です。日本は当時の国際法に則って平和裡に領有を開始し、経済活動を営み、繁栄を築いてきました。 こうした真実を教える教育こそ、国家繁栄の基礎です。日本を導いてくださった方々の努力の跡を教え、先人への感謝と自国への誇りを持てる歴史教育を行っていくことで「竹島、尖閣、北方領土は、日本固有の領土である」と確信を持つ国民が増えていきます。 これが、領土を守る抑止力向上にもつながっていくはずです。(文責:小川佳世子) 「核兵器の使用は悪である」――戦後の呪縛から脱し、主権国家として当然の抑止力強化を。 2012.08.06 8月6日、広島は67回目の「原爆の日」を迎えました。世界初の核兵器投下により、一瞬の内に約14万人が死傷し、その後も多くの人が被爆などが原因で亡くなりました。犠牲になられました多くの方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 同日、「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」が行われ、広島、長崎への原爆投下を命じたトルーマン元米大統領の子孫が初めて参列し、「私が広島にいることを許さない人もいるかもしれないが、米国に帰って核兵器をなくす活動を続け、広島で会った被爆者の心に応えたい」と語りました。 広島の原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠って下さい。過ちは 繰返しませぬから」という言葉が刻まれていますが、明確にすべきことは「原爆は、落とされたほうが悪いのか、落としたほうが悪いのか」という一点です。 私達は日米同盟を重視しており、今後とも安全保障の基調と考えるものですが、「原爆は落としたほうが悪い」「人道に対する罪である」「使ってはいけない道具である」と考えます。 戦後、日本への原爆投下について、アメリカが責任を問われることはありませんでした。原爆投下は当時の事情から見てやむを得なかったとの説があるからですが、これは本当でしょうか? 「原爆投下はやむを得ない」とされている背景には、主として以下の3つの主張があります。 1.原爆投下は、真珠湾攻撃などの卑劣な行為をした日本への当然の報復行為である。 2.日本の抵抗が激しく、日米両国の被害を最小限に抑えるためにやむをえなかった。 3.日本が最初の段階でポツダム宣言を受け入れなかったため、投下せざるを得なかった。 これについては、以下のような反論があることを知っておくべきでしょう。 1.原爆投下は、真珠湾攻撃などの卑劣な行為をした日本への当然の報復行為である。 宣戦布告の通告が遅れたため、真珠湾攻撃は「だまし討ち」と非難されていますが、これをもって原爆投下を正当化することは出来ません。 まず、真珠湾攻撃は軍事基地に限定されており、広島や長崎への原爆投下のように無防備な市民を多数死傷させたわけではありません。 また、原爆開発を指示したルーズベルトは、日本の真珠湾攻撃の前から核兵器の製造を考えていました。 実際、原爆開発の予算6000ドルを計上し、議会を通過させたのは、日本の真珠湾攻撃の前日だったとのことです。(『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高義樹著による) 2.日本の抵抗が激しく、日米両国の被害を最小限に抑えるためにやむをえなかった。 アメリカ側の主張として、「原爆を使わなければ日本は降伏せず、より多くの人の命が奪われた」というものがあります。 しかし、ルソン島、硫黄島、沖縄戦におけるアメリカ軍の戦死者の総計は2.7万人程度でした。さらに、九州への上陸作戦を予定していたマッカーサーも、戦死者は多く見積もって6万人であると考えていました。 ゆえに、広島・長崎合わせて、20万人以上とも言われる死傷者を出した原爆を使う必要はなかったといえます。 当時のアメリカ軍指導者も、原爆投下は不要であったと述べています。第二次世界大戦でヨーロッパ戦線における連合軍の最高司令官を務め、後に34代大統領となったアイゼンハワーも「日本の敗色は濃厚で、原爆使用はまったく不必要であり、もはや不可欠ではない兵器を使用することで、世界の世論に波紋を広げることは避けるべきだと考えていた」と語っています。 3.日本が最初の段階でポツダム宣言を受け入れなかったため、投下せざるをえなかった。 『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』の著者、鳥居民氏は「ポツダム宣言は正式な外交文書とは思わせないように作成し、また原案から天皇の地位保全の条項を削り、あえて日本側が「黙殺」するような状況を仕組んだ」「戦争が終わってしまえば、原爆開発に費やした巨額な資金の支出について国民と議会に納得させることが難しくなると考え、原爆投下まで日本を降伏させたくなかった」と指摘しています。 そもそも、原爆使用が「国際法違反」であったという説もあります。 東京裁判において、日本人弁護士団を補佐したアメリカ人弁護士たちは、「原子爆弾という国際法で禁止されている“残虐な兵器”を使用して、多数の一般市民を殺した連合国側が、捕虜虐待について日本の責任を問う資格があるのか」と主張しました。 このような反論を見るまでもなく、核兵器のような残虐な兵器を使うことは悪であり、「落とした方が絶対に悪い」ことは明らかです。 しかし、日本は、「落とされた方が悪い」かのごとくのスタンスに立ち、学校教育でもそのように教えています。 1979年から1995年の4期にわたって長崎市の市長を務めた本島等氏は、1998年の産経新聞のインタビューに対して「米国やアジア太平洋諸国は原爆投下を『正しかった』『天罰だ』『救世主だった』と思っている。 確かに、日本がアジア太平洋戦争などで行った数々の悪魔の所業を思うと、原爆投下は仕方なかった、やむを得なかった、と言わざるを得ない。東京大空襲や沖縄戦も同じだ」などと発言しています。 また、2001年度の文科省の検定を通った、東京書籍発行の中学校歴史教科書には、「広島は軍都であったから原爆が投下された。そのような過ちを繰り返さないことが大切」と、原爆投下の責任が日本側にもあるかのような記述がなされています。 さらに、1955年、5名の被爆者を原告として「原爆投下は国際法に違反する戦争犯罪である」とする賠償訴訟が起こされた際、日本政府は「原爆投下によって日本の降伏が早まり、交戦国双方の人名殺傷を防止する結果をもたらしたので、原爆投下が国際法違反であるかどうかは、何人も結論を下しがたい」という趣旨の陳述をしています。 このあたりにも、アメリカと事を荒立てたくないという政府の姿勢が見て取れます。 もちろん、戦後、日本がアメリカに安全保障面や経済面で助けられてきたことには感謝すべきであり、ことさらにアメリカに抗議を行うことは外交上得策とはいえません。 かといって、「日本が悪かったから、原爆を落とされてもやむを得ない」と卑屈な立場に立つこともバランスを欠いています。 必要以上に自らの非を認め、謝罪するだけでは平和は訪れません。それどころか、アメリカの軍事力にかげりが出てきている今、日本の非を強調すれば、中国や北朝鮮に核兵器使用の口実を与えかねません。 幸福実現党は、世界平和の実現を目指す政党として、「侵略目的を持つ国家の核の廃絶」を目指しています。 広島・長崎の惨劇を繰り返さないためにも、「核兵器の使用は悪である」ことを明確にし、悪意を持った周辺諸国から国家と国民を守るため抑止力を強化していくべきです。(文責・HS政経塾 小川佳世子) 増税ではなく税収増につながる経済成長戦略を――未来産業、ロボット産業に積極投資せよ! 2012.06.25 台湾の中央気象局からの受注で、スーパーコンピューター「京」の商用機が初めて輸出されることになりました。(6/24 日経「スパコン『京』、富士通が初輸出 台湾に商用機」⇒http://goo.gl/s4kzu) 計算速度の性能ランキングでは世界一の座から転落したスパコン「京」ですが、ITを用いた日本の防災ノウハウも含め、日本の技術への期待は相変わらず高いようです。 開発メーカーの富士通によれば、スパコン事業の売上高は年200億円程度で、2015年には約1000億円になることを見込んでいるそうです。 高度なシミュレーション精度や解析計算速度を持つスパコン「京」は、製薬会社や大学による抗がん剤開発や、精密な気象や地震・津波影響予測など、幅広い分野での活用が進んでいます。 「京」は約1000億円の国費を投じ、国が主導して開発しました。事業仕分けで話題になりましたが、優れたスパコンが開発されれば、様々な産業の活性化や防災に役立つため、その経済効果や国民の生活・安全性への貢献は計り知れません。 新産業の創出や新技術開発には、莫大な初期投資が必要となります。これを一企業だけで賄うのは難しいため、どの分野に投資すべきか、国家の長期戦略とビジョンが求められます。 例えば、ロボット産業は、2025年には約8億円程度の市場規模が見込まれている有力な分野の一つです。日本は、産業用ロボットでは既に生産・稼動台数ともに世界一のロボット大国で、特に生産台数においては世界の7割程度を占めています。 しかしながら、産業用ロボット以外の分野では、必ずしも技術力、競争力が高いとは言えません。 日本ロボット工業会は「我が国のロボット分野の国際競争力を商品化レベルから見た場合、製造業分野で競争力が高いことから総じて『ロボット技術力』も高く、競争力があると思われがちであるが、原子力、宇宙、海洋、災害対応、医療・福祉などの非製造業分野は、欧米と比較して必ずしも高くはない」という報告書をまとめています。⇒http://goo.gl/Dq2LM 実際、東日本大震災で被災し、放射能汚染を起こした福島原発では、放射線を浴びたがれきを運び出したり、内部の様子を調査したりするなど、災害ロボットの活躍が報じられました。しかし、日本製は1台のみでほとんどが欧米製でした。 アメリカではロボットは軍需産業の一つとみなされ、ロボット開発費には多額の軍事予算が付き、特殊なロボットを開発するための環境が整っています。 米国防高等研究計画局(DARPA)は、軍隊使用のための新技術開発および研究を行うアメリカ国防総省の機関ですが、アメリカ国防総省の科学技術開発費の25%を予算の上限とし、自由な研究を行うことができます。 来年度予算は28億ドル(約2240億円)に及び、その内、二足歩行ロボットを兵士の代理(アバター)として行動させる「アバタープロジェクト」に700万ドル(約5.6億円)が割り当てられるとのことです。(2/20 産経「人間代用ロボ 米軍が開発へ」⇒http://goo.gl/G0Gc1) 一方、日本では多額の予算がロボット開発に付くことはまれです。 99年に東海村JCO臨界事故が起きた際、事故対策用ロボット開発のため約30億円の予算が投じられましたが、半年の突貫工事で開発されたロボットは「現時点では現場投入できない」「原子炉で事故は起きない」等の理由で不採用となり、1年の短期間で国家予算の投入が打ち切られてしまいました。 そのため、開発が不十分で今回の原発事故でも採用されず、結局ムダな投資となってしまいました。中途半端で戦略のない投資は、あまり意味がありません。 産業用ロボットは、ロボット産業界が自動車工業や電子工業からのニーズに応え、そのニーズに特化した製品を生み出し、好景気の時期とも相まって普及が進みました。 一方、日本のロボット産業の競争力が弱い、災害対応、医療・福祉などの非製造業分野は、短期的に見れば採算が合わない分野であることは確かです。しかし、そうした分野こそ、今後、大きなニーズが見込まれます。 既に、リハビリ支援のロボットや、病院内で物品を搬送するロボット、手術支援ロボット等の開発がなされています。特に介護、医療分野は、安全性の向上、使いやすさなどにおいて、より一層の技術開発が望まれます。 また、産業として成立させるためには、コスト削減のための研究も必要です。国家として「ロボット産業に投資し、次世代ロボットの分野でも世界一になろう」といった方針を出し、大規模かつ長期的な投資をすることで、産業化が進むことが期待されます。 他にも、航空・宇宙産業、交通インフラ、新エネルギー開発、食料増産、軍事など、投資価値の高い、有力な分野はたくさんあります。 少なめに見積もっても、日本のデフレギャップは約20兆円あると言われています。デフレ期で民間が投資を渋る今こそ、国家が未来産業や新技術開発に積極的に投資すべきです。 先般、メキシコで開催されたG20首脳会合のメインテーマが「強固でバランスの取れた成長」であったにも拘わらず、野田首相の意見表明は増税一本槍で成長戦略に乏しく、各国との落差が目立ちました。(6/20 東京「成長戦略の弱さ露呈 首相のG20意見表明」⇒http://goo.gl/BGr5t) 野田首相は「増税」という、政府にとって何の努力も工夫も要らない政策に政治生命をかけるのではなく、「力強い経済成長は可能である」と断言し、明るい未来ビジョン、夢のある政策を打ち出すべきです。(HS政経塾 部長代理 小川佳世子) すべてを表示する « Previous 1 2 3