Home/ 中野 雄太 中野 雄太 執筆者:中野 雄太 幸福実現党 静岡県本部幹事長 日本経済は「バブル」ではない!「バブル論」は国民をミスリードする愚論 2013.02.13 日本経済は「バブル」なのか? 安倍政権誕生後、東京株式市場が活性化し始めたあたりから再び「バブル」という言葉がメディアに登場します。 確かに、週刊誌などでは、「株式の次は不動産だ」「勝てる銘柄はこれだ」という論調も目立ち、1980年代の「バブル経済」を二重写しにするかのような記事も散見されます。記事としてはなかなか面白いのですが、民主党から自民党へ政権交代してまだ二ヶ月弱であり、日経平均株価も1万1千円台で「バブル」だというのは時期尚早であり、違和感を覚えます。正確には、「アベノミクスへの期待感を反映し、デフレ不況下から回復中」と書くのが妥当です。 アナリストや経済学者からは、「実体の伴わない株価上昇はバブル」だとしています。 失業率やGDP成長率などの改善がなく、株式市場のみが活性化している場合は庶民には縁のない話だという論調も十分に成り立ちます。従って、投資家のみがおいしい思いをするので「バブル」だと評したいのでしょう。背景には、株価で儲ける人たちへの嫉妬もあります。ただ、投資をして成功する人は少数であり、誰もが株価上昇によって成功しているわけではないことは知るべきです。 いずれにしても、現時点の短期的な株価上昇だけを持って「バブル」だとするのは短絡すぎます。 「バブル」と聞いて日銀はどう動くか さて、世間ではアベノミクスへの期待と不安が入り混じっている状況ですが、アベノミクス自体は不況期のマクロ経済政策としては標準的なものです。インフレ目標や日銀法改正という技術的な問題はあるにせよ、真新しいものは特にありません。幸福実現党との違いについても、筆者が2月7日に出演した幸福実現TVで触れているので、興味がある方はご覧下さい。→http://youtu.be/Pk5hNDcqHlc 幸福実現TVでは「バブル」という言葉を使いませんでしたが、現在の株価上昇が今後も続いた場合、日銀がどう動くかを見ていく必要があります(ただし、実際は増税が始まる2014年までとなるだろう)。 内閣官房参与の浜田宏一イェール大学名誉教授の存在によって、日銀の金融政策と日銀法が改正される圧力が一気に高まったさなか、白川方明総裁が辞任を表明しました。次の日銀総裁が誰になるかは分かりませんが、日銀は典型的な官僚組織であること、独立性を守るためにあらゆる手段を使って安倍政権の動きに対して牽制をすることが予想されます。 具体的には、世間で「バブル大合唱」が起きてくると、日銀はゼロ金利の解除をするインセンティブを持ちます。つまり、金融引き締めに入る可能性が高いということです。時の日銀総裁のさじ加減次第で、アベノミクスの株価上昇が止まる可能性が高まります。つまり、日銀の金融引き締めが起こるようだと、景気回復は腰折れとなるのです。 産経新聞の田村秀男記者は、「株式や不動産市場が活性化する前にバブルを警戒して金融緩和をやめるのは、回復しかけた重病人から栄養剤を取り上げるようなものである」(ZAKZAK 2013年2月1日)と記していますが、実に適切な表現です。 問題となるのは、次の日銀総裁人事です。 財務省出身者とするのか。それとも、経済学者を登用するかによって日本経済に対する影響力は大きく異なってきます。アメリカのFRB議長やイングランド銀行の総裁は経済学者が座っているように、日銀総裁も学者となることは可能です。ただし、日銀の御用学者では無意味です。安倍首相の頭の片隅には、浜田宏一氏をそのまま日銀総裁に据える案があるのかもしれません(両者は父の安倍晋太郎氏の頃からの知り合いなので、十分に可能性はある)。 財務省はしたたかに増税路線を実現している 一方、安倍政権になって沈黙を保っている財務省はどうでしょうか? 政権交代をしたとはいえ、自公政権は基本的に増税路線です。現時点では麻生財務大臣が消費税増税は避けられないことを言及しているので、消費税増税が既定路線になっています。所得税や相続税の最高税率引き上げも、自公民の三党合意がなされました。 また、国土強靭計画のような大型の公共投資は、本来財務省が嫌う政策です。同時に、「経済成長をしても財政再建ができない」という奇妙な経済学を主張していた財務省が沈黙を保っているのは、2014年4月と2015年10月に待ち受けている消費税と富裕層増税ができるからです。彼らにとっては、自公政権になって多少経済成長路線に傾いても、全く痛くも痒くもないのでしょう。 言い換えれば、彼らが真に恐れるのは、本気で減税路線を実現する政党や政治家の出現であり、世論が減税に傾くことです。その意味で、幸福実現党の存在意義は十分にあります。 要するに、マスコミの「バブル大合唱」は、日銀の金融引き締めと財務省の増税を容易にする道が開けているわけです。バブルでもないのにバブルと騒いでいる日本の現状は世界から失笑を買うことになるでしょう。安倍首相は断固として、こうした愚論を退けるべきです。(文責:中野雄太) アベノミクスはどこまで耐えられるか 2013.01.30 2012年の安倍政権誕生後、アベノミクスと称される経済政策に関する内外の批判が急増しています。 民主党の海江田万里代表は、日銀法改正を見据えた金融緩和路線に対し、「日銀の独立性を損なう」と批判。同様の批判は、イングランド銀行のM・キング総裁をはじめとする世界の中央銀行家からも出ています。 また、同氏は「国土強靭計画」に見られる公共投資の復活を、「古い考え方」と切り捨てました。再び野党となった民主党は、民主党政権時代の国債発行44兆円枠の維持や再生可能エネルギーの推進にはじまり、対中国や韓国への強固姿勢を追求する構えであり、今後の党首討論は目が離せません。 また、経済学者では、金融緩和の有効性を疑う経済学者も多く出ています。 例えば、吉川 洋教授の最新刊『デフレーション』では、「貨幣供給量を増やせば物価が上がり、景気が良くなる」というのは必ずしも支持されないことを説明しています。 また、日本だけがなぜデフレとなっているかの根本原因として、日本特有の雇用制度が崩れて賃金が下落し、デフレが定着したことに求めています。本書は、デフレの歴史や学術的背景をきちんと説明しているので一読の価値はあるとはいえ、「ではどうしたらデフレを脱却できるのか」という政策提言としては疑問符がつきます。デフレが貨幣的現象ではなく、制度的なものに起因すると言うならば、労働市場の改革やイノベーションが起きてこないといけません。問題は、どのように変革していくかについて説明不足なため、不完全燃焼感が残ります。 さらに、安倍首相の進めるデフレ脱却路線は、いわゆる「リフレ」と呼ばれる経済政策を指します。特に、リフレ派の親分肌にあたる内閣官房参与の浜田宏一イェール大学名誉教授の存在も見逃せません。 これに対して、反リフレ派からの猛攻撃も始まっています。 代表的な論者としては、SBI大学院大学の池田信夫客員教授や慶應義塾大学の小幡績准教授が有名です。彼らの意見は、基本的には伝統的な経済系の保守思想に基づいているのは間違いありません。ハイエクに関する著書を出している池田氏が、反リフレ路線となるのは当然のことでしょう。なぜなら、生前のハイエクは、母国オーストリア・ウィーンでのハイパーインフレで家族の資産が紙くずとなった光景を目の当たりにしているからです。以後、ハイエクはインフレには断固として反対を表明しています。参考文献:『ケインズかハイエクか』(N・ワプショット著) こうした背景もあり、反リフレ派は、インフレ目標を設定する金融政策に極めて懐疑的になるのです。 中央銀行関係者以外の諸外国からの批判も出ています。 例えば、アベノミクスによって為替レートが円安に振れているのは周知の事実ですが、中央日報は「円安は、韓国の輸出鈍化につながりかねない」(2012年12月18日)とし、中国も通貨安戦争は他国にも波及するため、「近隣窮乏化」であると批判をしています。 上記のような意見は、欧州や南米諸国からも出ているとはいえ、金融政策は日本の問題であり、他国が文句をいう筋合いはありません。為替介入をしているのならまだしも、金融政策を通じて通貨価値を下落させることは日本の自由であり、他国への相談がいるわけではありません。よって、こうした批判は一蹴するべきです。 最近の研究によれば、通貨安戦争は必ずしもデメリットばかりではないことが知られています。→日銀の金融緩和から一ヶ月を総括 では、賛成意見や支持する声はあるのでしょうか? 例えば、日本でも有名なアメリカのノーベル経済学者であるP・クルーグマンは「円は下がっているが、それは非常に良いニュースである。日本の輸出を後押ししている」(ニューヨーク・タイムズ2013年1月13日)とし、アベノミクスに一定の評価を下しています。また、同じくノーベル経済学者であるJ・スティグリッツも同様のコメント発しており、デフレ不況を打開するためのマクロ経済政策を評価しています。 ただし、アベノミクスは特別な経済学ではありません。内容自体はシンプルですが、デフレの長期化とゼロ金利、莫大な長期債務という足かせがあるから、政策としては特殊ケースへの対応が取られているに過ぎません。ただし、増税路線が明確になっているので、幸福実現党とは政策の差異はあるとはいえ、不況期の経済政策としては正しい方向を歩んでいると考えます。 ただし、安倍首相が今後も経済成長を促進するならば、増税は見直すべきでしょう。そして、複雑な税制を大胆に改革して減税路線へと方針転換することも大事になります。財政再建が増税しかないというのはあまりにも発想が貧弱すぎます。TPPの参加に対しても様子見をしているのも、おそらく参院選前という事情と農協の票が逃げるからです。政治的配慮によって安全運転をしているのでしょうが、今後はそれだけでは許されません。 アベノミクスがどこまで批判に耐えられるかは定かではありませんが、景気の回復後に増税ではなく、むしろ減税や規制緩和、TPP参加などの「自由からの繁栄」路線にシフトに舵を切れるかどうかが課題です。現在の自公政権にはその遺伝子がありません。仮に、「自公から自幸」へシフトできれば実現の可能性が高まることは言うまでもありません。やはり、政府に頼りすぎず、「自由からの繁栄」を経済政策の基本に据えるべきです。(文責:中野雄太) アベノミクスに忍び込む財務省の思惑 2013.01.23 日本には増税政党しか存在しないのか 自民党・公明党・民主党の三党は、富裕層増税に合意しました。 2012年の消費税増税法案に時も、上記の三党による合意から法案可決に至りましたので、わが国では政権交代が起きても増税政党しか選択肢がないということが如実に現れています。 このまま路線に変更がなければ、2015年1月からは、所得税の最高税率は40%から45%へ、相続税の最高税率は50%から55%へと引き上げられます。背景には、「税と社会保障の一体改革」があり、新政権となっても踏襲されていることは言うまでもありません。 もちろん、小規模な宅地への相続税の優遇税制と贈与税に対する軽減策も導入されてはいます。特に相続税は、子孫に贈与する場合、1000万円超から1500万円以下なら40%と、低めの税率区分を設ける配慮がされました。富裕層を完全に敵にまわさないための政治的配慮が見え隠れしますが、ここはシンプルに考えた方がよいでしょう。 つまり、富裕層の増税負担を配慮しているならば、所得税と相続税の最高税率を上げる必要がないということです。 政治的配慮が税制度を複雑にしている 政治的配慮をするがために、複雑な税制度となり、公認会計士や税理士の無駄な仕事が増えることになります。現在の税制においてさえ、納税者にとっての手続きも煩瑣だとの意見もあるほどですが、今後もこのような「アメとムチ」を使い続ける限り、ますます複雑さは増していくと思われます。 既に国と地方には60種類の税金が存在しています(『増税亡国論』参照)。加えて、軽減税率や控除の基準が複雑で、一般国民が税制度を把握するのは至難の業です。自営業者などは、税理士や公認会計士を雇わないと対処できません。納税の時期には仕事の手を休めて煩雑な書類の作成や手続きに追われるという意見を何度も聞いたことがあります。 このように考えると、シンプルな税制度に改革をしていくニーズはあります。同時に、国税庁の役人もシンプルな税制度にしていく方が、仕事が楽になるというメリットがあります。理想的には、所得税か消費税のフラット化(例:一律10%)なのですが、わが国では逆の議論ばかりが横行しているのが現状です。 いずれにしても、現在の税制度は複雑過ぎますし、税の種類も多すぎます。これだけ多くの税金がありながらも財政赤字が膨らみ続けているということは、政府の仕事に無駄が多いという何よりの証拠です。だからこそ、幸福実現党はシンプルで安い税金を提唱しているのです。 財務省の狡猾さは未だ健在 2014年4月実施されようとしている消費税増税ですが、そのためには本年は名目3%以上の成長をする必要があります。本年は7月に参院選が予定されているので、安倍首相は外交や安全保障面での明確な主張を回避し、景気対策を強調するのは間違いありません。 実は、ここに財務省の狡猾な政治的思惑があります。 現在、安倍政権は日銀に大胆な金融緩和を提言しているのは周知の通りです。 一方、財務省は、本年の名目3%の経済成長率を達成できることを黙認することでしょう。また、財務省が嫌う「列島強靭化計画」のような公共投資についても黙認しているのも理由があるのです。つまり、政府のマクロ経済政策が効果を発揮し、「これだけ成長したならば、増税は仕方ない」と思わせる心理を使おうとしているのです。 すでに、消費税法案の可決の際には、国会議員の過半数が賛成票を投じています。経済政策の中でも、とかく複雑で難解な税制を得意とする国会議員は皆無です。ましてや、減税路線を実現するべく公民連携(PPPともいう)や公会計を導入して政府支出の無駄を省く行政手法に通じている議員はいません。つまり、財務省は見事に政治家を操っているのです。 アベノミクスによる経済成長路線は、大方正しい方向性を示しているのは事実です。ただ、本当に経済成長を継続して失業率を減らし、有効求人倍率を高め、設備投資や住宅着工指数や日経平均株価等を高めようと思うならば、増税は断じて控えるべきです。 しかしながら、富裕層増税が三党合意に至りました。そして、今年の経済成長が実現できれば、来年の4月から消費税は5%から8%へと上昇します。2015年には、さらに2%ポイント上昇して10%となります。 要するに、アベノミクスの成長路線は、増税をするための布石として使われているのです。自民党と公明党が増税政党であることも輪をかけているのはいうまでもありません。 だからこそ、本年の夏の参院選では、幸福実現党は消費税増税法案の廃止を再度主張するのです。もちろん、富裕層増税の撤回も同時に求めます。 徹底した金融緩和と未来産業への公共投資など、安倍政権の経済政策と重なっている点は多々あるのですが、最大の違いは、徹底した減税路線による経済成長の実現です。 「自由からの繁栄」こそ、幸福実現党の経済政策の柱であり日本経済再建に必要なキーワードなのです(参考資料:http://www.hr-party.jp/new/topic/tax)。(文責:中野雄太) 自由主義と国防強化は両立するのか 2013.01.16 幸福実現党は2009年の立党以来、国防の強化を主張しています。その一方で徹底した減税路線を実現し、日本を自由からの繁栄に導く政策提言を行っています。今回は、自由主義と国防強化は両立するのか否かについて論じていきます。 第一に、国を守るということは、生命・財産・安全を守ることと同義です。 仮に、中国や北朝鮮からのミサイル攻撃や侵略をされたらどのようになるか想像をしてみたらわかります。チベットや新疆ウイグルの例からは、言論の自由、表現の自由が奪われていることが見て取れます。最終的には、言語や国旗・国歌まで奪われているのが現実です。そして、仏教やイスラム教が国教となっていた国から信教の自由すら奪っているのです。 軍事的な覇権を握ろうとする中国が、実際に戦争や侵略行為を行えば、当然統制経済と全体主義へと突き進むことでしょう。その際、侵略を受けた側には営業の自由や財産権は一方的に略奪され、最後は全く自由が許されない暗黒社会となります。 現在、東アジアには社会主義や共産主義の名のもとに覇権主義・軍拡主義を続けている中国と北朝鮮があり、現時点では彼らが民主化を受け入れる様子はありません。むしろ逆に、一層軍事力を拡大して東アジアの制空権と制海権を掌握し、日本を締め出す方向に動いています。最近は、フィリピンやベトナムまでもが防衛に力を入れていることからもわかる通り、中国が平和を愛する国ではないことは明らかです。さらに言えば、国際社会のルールを無視してミサイルを発射し、核実験を強行する北朝鮮も、まともな国とは言えません。 安全保障全体に言えることですが、地味で何事もなければ国民はそのありがたさを実感することができないのは事実です。まるで空気や水道の水のように平和があると錯覚しているのが現代の日本人ですが、これは非常に甘い認識だと言わざるを得ません。国の安全はタダでは獲得できないのです。経済学では、フリーランチ(タダ飯)はないということが原則となっていますが、安全保障においても全く同じです。日本は立派な独立国である以上、相応の防衛力を持つのは当たり前であり、自衛隊を明確に軍隊に位置づけるべきでしょう。これは軍国主義でもなんでもなく、世界標準の考え方です。 だからといって、左翼が主張するように、自衛隊員が「暴力装置」にはなりません。むしろ逆で、戦争をいかに回避するかに全神経を使っているのです。どんなに勇気がある幕僚長がいても、部下が死ぬ可能性がある紛争や戦争を積極的進める人はいないのです。自衛隊は、国の安全を守っているだけではなく、自由をも守っているということは忘れるべきではありません。 国防と自由に関連して、古典的名作を紐解いてみましょう。この論考で何度も登場するL・V・ミーゼスの『ヒューマン・アクション』には、次のような記述があります。 自由を保持したいのであれば、独立を守る備えをしなければならない。(中略)ためらわずに侵略し奴隷化する者たちが満ちている世界では、完全な無条件平和主義は最も冷酷な侵略者に無条件降伏するに等しい。自由でいたい者は、自由を奪う意図を持った者たちに対して、最後まで戦わなければならない。(307p) 自由主義思想の最高峰に位置するミーゼスは無政府主義者でないことは、この文章を見ればよく分かります。ミーゼスは、国防に対する支出は市場経済と両立する旨を同書において展開しております。 同じく、1979年から1990年までイギリスの首相を務め、「鉄の女Iron Lady」とも呼ばれたサッチャー首相は、国防の充実を第一に上げていました。サッチャー首相は、1974年にノーベル経済学賞を受賞したハイエク教授の考え方を政策に応用したことで知られていますが、国防の重要性を誰よりも強固に主張していたのです(ハイエクも国防の重要性を認めていた)*参考文献 The Iron Lady John Campbell著(2009) 第二に、国防のような公共財と呼ばれる分野にも自由主義哲学は必要です。 いくら国の専権事項だからといって、税金を垂れ流して技術やサービスの向上を怠ることは許されません。世界一の軍事大国であるアメリカでさえ、「財政の壁」の影響もあり、軍隊の効率化を進めています。その意味では、今後は自衛隊の装備や兵器購入にあたって増税や国債の乱発が当たり前だと考えてはならないのです。安易に国債発行に頼らないためにも、今後は防衛産業を活性化させて国の負担減少を両立させる道筋はつけるべきです。 経済成長による税収増と防衛産業の発展は、今後の日本経済再生とも密接に関わっています。言い換えれば、幸福実現党が主張する「防衛力」と「経済力」の主張は、現代版の「富国強兵」「殖産興業」策だということです。当然のことですが、防衛産業は国家の主導ではなく民間主導で技術力と競争力を高め、将来的には技術を民間にスピンオフさせていくことまで考えるべきです。この流れは、科学立国とも連動しています。 今回は、主に思想面から自由主義と国防強化は両立できることを見ました。そして、国防強化と経済成長は密接に関係しており、安易な増税や国債発行に頼らないことを述べました。日本が独立国にふさわしい強国となるためにも、経済と軍事力の関連性について今後も研究を続け、政策提言していく予定です。(文責:中野雄太) 富裕層課税強化は社会的正義なのか 2013.01.09 増税ラッシュ加速 自民党と公明党の税制調査会では、所得税の最高税率を40%から45%へ引き上げを検討しています。背景には「税と社会保障の一体改革」があります。簡単に言えば、富裕層への課税強化し、貧困層へ分配するというものです。自公政権は増税政権であることは何度も指摘してきましたが、今後も増税ラッシュは止むことがないだけに、暗澹たる気持ちになります。 一方、アメリカは日本以上の格差社会です。 こうした現状の中、第二次オバマ政権は、「財政の壁」危機を回避しブッシュ減税を恒久化することを決定しましたが、富裕層への課税はしっかりと強化されています。→参照:日本も「消費税増税」という「財政の崖」を全力で回避せよ! しかしながら、レーガン大統領の経済政策アドバイザーのA・ラッファー氏に加え、ウォール・ストリート・ジャーナルのシニアライターS・ムーア氏と投資会社の経営者であるP・タナウス氏との共著『増税が国を滅ぼす』(日経BP社)では、アメリカ経済史を題材に投資減税や株価上昇による利益にかかるキャピタルゲイン税の減税、相続税の減税が、株価の上昇と経済成長率に寄与していることを証明しています。そして、幸福実現党が主張するように、「税率を下げれば税収が増える」という法則を示しています。 現在、アメリカでは多くの経済学者が富裕層への増税を支持しているのですが、上記のような保守系の論陣も健在だということは特筆に値するでしょう。 フランスでは違憲判決 さて、2012年末にはフランスから興味深いニュースが飛び込んできました。 現職のサルコジ大統領を破り当選を果たしたオーランド大統領は、オバマ大統領と同じ左派の政治家です。同氏は、富裕層への課税強化を主張していたのですが、違憲審査を行うフランスの司法会議は、2012年12月29日、2013年予算に盛り込まれた年100万ユーロ(約1億4千万円)を超える所得への75%の課税は違憲であると判断しました。 日本で言えば、日本国憲法29条に「財産権は、これを侵してはならない」という既定があります。最高裁判所の裁判官や憲法学者が、現在の増税路線を違憲と見ることができるならば、情勢は大きく変わってきます。ぜひフランスの事例から教訓を得て欲しいものです。 真に弱者を救済するなら 欧米や日本での富裕層課税の問題を扱ってきましたが、増税以外の方法はないのでしょうか。もちろんあります。 第一に、経済成長によって中間層や貧困層の底上げができます。その結果、税収増へとつながります。 第二に、富裕層が果たしてきた社会的使命を学ぶべきです。 アメリカには、石油王のJ・ロックフェラー、鉄鋼王のA・カーネギーがいます。彼らは多額の富を図書館や学校に寄付しました。現在で言えば、マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏が同じ仕事をしています。 富裕層への課税を強化すると、こうした社会に還元される資金が減少します。あるいは、政府や国に嫌気がさして、他国へ移住する方が続出する可能性が高くなることでしょう。 「富は、正しい使い方をすれば社会を繁栄させる」という考え方は、現在の学校教育では教えてくれません。上記のような偉人の伝記を学校教育の中で教えることができれば、国民の富に対する認識は変わります。あるいは、富裕層は必ずしも強欲な人ばかりではないと分かるでしょう。 さらに言えば、日本では自由主義に対して「市場原理主義」という考え方が強いため誤解が多く存在しますが、健全な自由主義には、秩序や責任が伴います。自由は無秩序と同義ではありません。この点、ハイエクやミーゼスが経済学で傍流に追いやられているのは残念でなりません。 第三に、富裕層が創設した財団を通して社会事業が充実した例があります。 インドの聖女と呼ばれたマザー・テレサは、貧しい子供達を支援するために生涯をスラム街で過ごしました。今でも世界から尊敬されているマザーですが、実はテンプルトン財団のJ・テンプルトン卿によるマザーの発掘と資金援助なしには語れません(1973年テンプルトン賞受賞)。その結果、マザーは全世界に知られる聖女となり、1979年にノーベル平和賞を受賞しています。 日本でも、こうした篤志家を輩出することは可能です。というのも、かつては二宮尊徳や岩崎弥太郎、安田善次郎のような方を輩出しているからです。 しかし、戦後は財閥解体と累進課税の強化、加えて税制が複雑で高いため、篤志家がますます輩出しにくい環境となっています。もちろん、独占や寡占による資源配分の歪みは避けるべきですが、民間が活性化して成功者や国富が増えることは正しいことです。 翻ってみれば、日本には既に国と地方を合わせて60種類以上の税金があります。社会保障やNHKの受信料などの「隠れた税金」として考えれば、日本の国民負担率はもっと高くなるでしょう。だからこそ、合法的略奪を働く政府に対しては Tax Enough Already(我々は十分に税金を払っている)! と言うべきです。 従って、格差是正とか財政再建などを名目に増税をしたがる政府や役人から自分を守る必要があります。言い換えれば、政府のプロパガンダを見抜く見識を得て「納税者としての目を開く」ことこそ、今最も大事なのです。 同時に、本気で減税を実現できる政党の出現が待たれます。幸福実現党は、その一翼を担えるように一層の努力研鑽を積んでいきたいと考えています。(文責:中野雄太) 日本経済再建に向けて 2013.01.02 新年の祝賀ムードを吹き飛ばす復興増税 2013年元旦から始まった東日本大震災の復興に向けた所得税増税。所得税増税は2.1%上乗せされ、1月1日から25年間も継続されます。更に住民税は2014年6月から10年間、年間千円の上積みとなります。 既に、2012年4月からは法人税増税が始まっており、3年間の税額が10%高くなっていますし、2012年8月10日には消費税増税法案が可決していますので、このまま景気弾力条項が適用されなければ、2014年4月から消費税は8%へ、2015年10月には10%へと引き上げられます。 安倍政権の誕生によって保守回帰へ向けた一歩を踏み出し、デフレ脱却に向けて日銀法改正まで実行しようとされていることは大いに結構なことです。しかしながら、前政権時代の遺産としての復興増税は始まっています。 今も住居がなく不自由な生活を余儀なくされている被災地の方のために増税をされたわけですが、被災地以外への流用問題も出ており、国民の政府に対する信頼は依然として低いと見るのが筋でしょう。 □11万の国民の声を無視した事実 幸福実現党は2011年の11月、復興増税に反対するために「増税が国を滅ぼす!国民集会」(実行委員長:内山優日本税制改革協議会会長)に協賛団体として参加し、時の政府に対して批判を行いまいた。 また、昨年は3月に消費税増税に反対するべく、同じ趣旨で国民集会を行いました。この時、同時に進めていた消費税増税反対の請願用紙が全国から集められ、総数111,234に達しました。⇒http://bit.ly/Vor3Rj 筆者も『日本経済再建宣言』『増税亡国論』(二冊とも共著で幸福実現党出版より刊行)を記し、増税よりも経済成長を優先する論陣を張りました。当ニュースファイルでも、様々な切り口から増税反対の意見を述べてきています。 例えば、他党にはない論点として、国民が承諾しない増税は「合法的略奪」であるということです。⇒参照:国民の信なく増税するのは合法的略奪。今こそ減税路線への転換を これは「代表なければ課税なし」という原理原則に則ったものです。その意味では、11万を超える国民の声を無視し、野田政権が消費税増税法案可決に向けて爆進したことは非難に値します。 また、自民党と公明党も消費税増税法案可決に加担していることをゆめゆめ忘れてはなりません。自公政権への回帰といっても、国民は増税政党を圧倒的に支持したことによって、増税を合法的に承諾してしまったのです。 日経平均株価2万円の回復を目指そう! 幸福実現党は、次の戦いに向けて新体制でスタートを切りましたが、復興増税と消費税増税の凍結・廃止を引き続き主張します。 安倍首相のデフレ脱却に向けた金融緩和、日銀法改正に向けた動きは評価できるのですが、それだけでは日本経済は再建したとは言えません。 景気弾力条項には、名目成長率3%、実質2%が明記されています。この数値を下回った場合は消費税増税を見送るということになります。 たとえ一時的に成長率が3%を達成したとしても、増税は敢行されてしまいます。消費税増税によって消費が停滞すれば、企業の収益が圧迫されて設備投資が落ち込みます。 消費税の税収は増えるかもしれませんが、個人が支払う所得税や企業が支払う法人税が落ち込む可能性が高いのです。 特に、法人税の場合は景気に左右されますので、欠損法人(赤字で法人税を納税しない企業のこと)が一層増える可能性があります。つまり、一般会計の税収は全体的に落ち込むわけです(拙著『日本経済再建宣言』197p~204pを参照のこと)。 せっかく成長率が高まっても、再び増税によって経済成長と税収を減らすならば意味はありません。例えるならば、アクセル(経済成長)とブレーキ(増税)を同時に進めたら車がおかしくなるのと一緒です。 従って、復興増税と消費税増税の廃止は、ブレーキペダルを離すことに相当します。 今は東日本大震災の復興のためにもアクセルを全開(=適切なマクロ経済政策を行うこと)にし、日本全体を元気にすることが先決です。 最終的には、幸福実現党が2009年の衆院選の時に提言した日経平均株価2万円台への回復を目指すべきでしょう。 2万円は今の水準の2倍です。株価が2倍になれば、銀行や企業の資産価値も相当高まりますので、銀行による貸出や企業の設備投資がしやすい環境が作られます。増税を廃止することで、消費者も安心して消費をすることができるでしょう。 国民の安心を考慮するならば、増税ではなく減税や経済成長です。そこに株価の上昇が伴えば、必然的に消費も高まります(専門的には資産効果と呼ぶ)。 要するに、幸福実現党は、日本経済は政策次第によってまだまだ成長ができると考えているのです。 私たちは、決して成長を諦めてはいません。むしろ、本年を日本経済再建元年とするべく努力精進していく所存です。 本年も引き続き、我が党の経済政策にもご指導・ご鞭撻を頂ければ幸いです。(文責・中野雄太) 日銀法改正の意義 2012.12.26 日銀法とは何か 安倍首相が金融緩和だけではなく、日銀法改正も口に出し始めました。そこで、今回は日銀法改正の意義を検討していきます。 内閣官房参与の経済担当として入閣が予想されているイェール大学の浜田宏一名誉教授が参画する意義は、前回の「デフレ脱却を本気で考えるならば幸福実現党からも民間登用を」で述べました。 浜田教授の最新刊『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)を紐解くと、やはり日銀法の改正にも言及されていますので、後ほど紹介します。 まず、問題となる日銀法のどこが問題なのでしょうか。 現在の日銀法は、正確には「新日本銀行法」と呼ばれています。97年に成立し、98年から施行されています。その中で、第三条の一には次のように明記されています。 「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」 文章だけを見れば別におかしなことは何もありません。ただ、背景事情を知ることで違う世界が見えてきます。というのは、日銀は旧大蔵省の影響下で金融政策は制限されていたため、独立性の確保は日銀の念願だったからです。 現在、大蔵省は財務省に名前を変えて金融政策にはほとんど関与しなくなりました。いわゆる「財金分離」と呼ばれ、増税や財政出動は財務省が、金融政策は日銀、金融監督は金融庁が担当することになりました。 98年当時では、独立性の高い中央銀行を持っていれば、マクロ経済の安定に寄与するという研究が主流でした。 実際、筆者が大学院生時代には、若田部昌澄教授(当時は助手)が主催した勉強会で、カルフォルニア大学バークレー校のD・ローマー教授が執筆したAdvanced Macro Economics(翻訳は『上級マクロ経済学』日本評論社。今でも必読テキストの一つ)を使っていました。 このテキストでも、独立性の高い中央銀行とマクロ経済の安定は正の相関関係にある実証研究が紹介されていました。 日銀の最大の目的は物価の安定 日銀の金融政策の最大の目的は「物価の安定」です(本年他界された三重野康元日銀総裁の霊言『平成の鬼平へのファイナル・ジャッジメント』でも同じことを述べていた)。 日銀法第二条には、「日本銀行は通貨及び金融の調節を行うにあたっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全なる発展に資することをもって、その理念とする」と書かれています。 この条文も、それ自体は正しいのです。しかしながら、日銀マンは物価の安定こそが大事であって、経済成長や雇用に関する優先順位は低いと言わざるを得ません。 すると、何が起きるか、簡単な思考実験をしてみましょう。 アベノミクスが効果を発揮して消費者物価指数が1%を超えたとします。日経平均株価も1万を超えて1万5千を超す状態が起きました。 典型的な日銀総裁ならば、「インフレ懸念」があると称して引き締めに入ろうとします。その結果、景気が悪くなっても、物価の安定が達成されれば問題がないと考えるのが日銀なのです(実際、2006年の金融引き締めが不況をもたらしたことは、高橋洋一教授らが指摘している)。 しかしながら、世界のほとんどの中央銀行には、経済成長と完全雇用の維持が明記されています。その代わり、目標達成の手段は自由です。中央銀行の独立性とは、目標達成の手段に関することなのです。 一方、日銀の目的は物価の安定のみです。だからこそ、20年間の平均経済成長率がゼロでも、日銀は動こうとしなかったわけです。 最近に来てようやく重い腰を上げ始めましたが、不十分です。これでは、世界の趨勢からは逸脱していると言わざるを得ません。 日銀法改正の論点 日銀にはマクロ経済指数(インフレ率や失業率、経済成長率等)に対して結果責任がないので、日銀特有の内部論理がまかり通るのです。現在の新日銀法は、日銀の内部論理を法律によって保証してしまったようなものです。 だからこそ、安倍総裁や浜田氏らの経済学者から日銀法改正が提案されているわけです。 他には、学習院大学の岩田規久男教授や嘉悦大学の高橋洋一教授、早稲田大学の若田部昌澄教授が日銀法改正の理論的発信をしています。 また、自民党の山本幸三議員らの国会議員有志でも日銀法改正に向けて動ける議員が一定数います。彼らの主張は、以下の3つに集約されます(浜田氏同書p.177参照)。 1.雇用の維持を政策目標にする 2.金融政策への結果責任を明記する 3.インフレ目標を義務付ける 幸福実現党も日銀法の改正は衆院選で明記し、日銀総裁その他役員の罷免権を主張しました。 当然の如く、日銀の白川総裁を始め、強烈な抵抗をするのは目に見えています。同時に、日銀寄りのマスコミや御用学者からの批判も多く出ることは必至ですが、日銀法改正の最大のチャンスがやってきたのは間違いありません。 安倍首相の断固とした取り組みを期待するとともに、日銀側も本来の独立性とは何かを再考して頂きたいと祈念します。(文責・中野雄太) デフレ脱却を本気で考えるならば幸福実現党からも民間登用を 2012.12.19 先日の『「アベノミクス」は幸福実現党の政策そのもの』について追加論点を述べます。 安倍総裁は、日銀の白川総裁に建設国債の日銀直接引受を提言しています。そして、注目するべきは、デフレ脱却に向けて日銀と民主党政権が作成した共同文書の修正にも踏み切ろうとしていることです。具体的には、日銀に物価上昇率1%ではなく2%を目指すことを明記したことが特筆に値します。 ただし、日銀は手ごわい相手であるのは変わりありません。 白川総裁は、安倍総裁の提案に対して「非現実的だ」と猛抗議。これは、極度にインフレを嫌う日銀特有の批判の仕方です。また、政府による金融政策のコミットメントに対して「日銀の独立性」の問題を持ち出して批判を展開しています。言い換えれば、日銀は「政府や政治からの独立性」を理由として金融政策の目標や責任から逃げ、日銀独自の世界観の中で金融政策を行っているわけです。 通常、金融政策の目標は政府が設定し(例:消費者物価指数の上昇率等)、目標達成の手段に関しては中央銀行が自由に行うことができます。しかしながら、日銀の場合は「物価の安定」と「日銀の独立性」を盾にして、政府や政治家からの介入や提言を極度に嫌います。これが日銀の伝統的な遺伝子であり、白川総裁は典型的な日銀マンを地でいっているわけです。 それでも、日銀は2012年2月14日に事実上のインフレ目標として1%を「目途」とする旨を発表し、少しずつ状況は変わってきつつあります(最終的には、日銀法の改正をしなければ日銀改革はできない。当問題に関しては別途詳細を扱う予定)。 金融政策は高度な専門的技術を要するため、安倍総裁がどこまで対応できるかがカギですが、専門技術に加えて日銀の官僚答弁は難解極まるものが散見されます。 これに対して、安倍総裁は、内閣官房参与に経済担当として浜田宏一エール大学名誉教授を招集する予定です。浜田教授はアメリカでも有名な経済学であり、日本の経済学者にも多大な影響を与えています。例えば、経済論壇でも有名な早稲田大学の若田部昌澄教授や学習院大学の岩田規久男教授などは、浜田教授の政策に近い学者であり、今後政権への関与が予想されます。その意味で、日銀に対応するには相応の理論武装をするべきであり、浜田氏の採用は妥当だとみるべきです。 消費税増税を正当化するためのデフレ脱却か ところで、安倍総裁は、なぜ今さら金融緩和を持ち出してきたのでしょうか。素朴な疑問として、自民党は復興増税や消費税増税法案前になぜ金融緩和の議論ができなかったのでしょうか。 自民党の中では「デフレ脱却後に消費税増税」を見据えているのは間違ありません。自民・民主・公明の三党合意から衆参両院で過半数以上が消費税増税法案に賛成していることを考慮すれば、増税路線は全く消えていないばかりか、自民党の圧勝によってかえって強化されたと見るべきです。 消費税増税法案附則18条には、景気弾力条項が明記されています。つまり、政府は増税をするには経済の好転を条件にしています。具体的には名目3%、物価上昇率1%(=実質2%成長)を達成していたら、増税に踏み切る。そうでなければ、増税を見送るという内容です。 確かに、増税をするのなら成長率が高い時にやるのは常識です。しかしながら、せっかく経済成長を実現しても、増税によって再度景気が悪化することまでは読めていません。 また、増税によって景気が良くなるという意見もありますが、過去20年間の経済実績を見れば説得力に欠けます。その意味で、安倍総裁の金融政策には一定の評価はできるものの、増税を見据えた上での金融政策であれば意味はありません。 本気ならば幸福実現党からも民間登用を ここで今一度、自民党と公明党、そして民主党がやったことを再認識しましょう。 今回の衆院選における自公の圧勝は、増税政党の圧勝であること。国民は消費税増税を承認してしまったということです。法案を通したのは野田総理ですが、実際は自民党と公明党も絡んでいることを決して忘れてはなりません。 幸福実現党は、今回の衆院選では消費税の中止を提言しました。同時に、名目7%の経済成長率を達成するための金融緩和と財政政策のポリシーミックスも主張しています。複雑な税制の見直しと役所の無駄の削減も同時に進め、再度GDP第二の地位復帰。その先にはGDP世界一のプランも持っています(ついき党首、黒川政調会長との共著『日本経済再建宣言』参照)。 従って、安倍総裁がデフレ脱却と経済成長を本気で考えるならば、上述の民間の学者に加えて幸福実現党から民間登用するかブレインに含めることも検討するべきでしょう。中途半端な「アベノミクス」として幸福実現党の政策を取り入れるよりもはるかに効率的です。加えて、我が党が入り込むことによって、政府が進める増税法案の廃止に向けて強力なけん制ができます。そうすることで、日本経済の沈没を阻止し、防波堤を築くことができます。 安倍総裁、一考されてはいかがでしょうか。(文責:中野雄太) 北朝鮮がミサイルを発射。もう国防議論から逃げることは許されない 2012.12.12 北朝鮮が12月12日、長距離弾道ミサイルを発射し、成功したことを全世界に向けて発信しました。 報道によれば、「光明星3号」が予定通りの軌道で侵入し、第一段目は韓国南西部辺山半島西側に、二段目はフィリピン近海に落下したことが確認されています。 [HRPニュースファイル476]で指摘したように、今回のミサイル発射は軍事行動です。 さすがに、今回は事前に報道があったために、09年には「飛翔体」と報道したNHKでも「事実上の長距離ミサイル」と報道していますし、政府も即座に抗議の意志は示しました。 野田首相は早急に安全保障会議を開いて情報収集に当たっており、3年前と比較して報道姿勢や政府の対応に進歩があったのは事実です。 ただ、破壊装置の発動は見送られましたが、必要性がなく見送れたのか、判断ができなかったのかは不明です。その意味で、破壊装置の準備だけでは何とも不安が残るのも事実です。 国際社会でも、北朝鮮のミサイル発射は国連の安全保障理事会決議案に違反しているとの認識を持っているのは間違いありません。今回は法的拘束力のある決議を採択されるとの見通しがあります。 ただし、国連では毎度のごとく中国とロシアが非難決議や議長声明に難色を示し、拒否権発動をしてくることが難点であり、「烏合の衆」の議長声明や決議案は骨抜きにされ、事実上の効果は小さいと考えるべきです。→[HRPニュースファイル484]参照 また、日本では衆院選、韓国では大統領選の最中という政治的空白を突いてきている点には、北朝鮮の政治的意図が強く表れています。 また、ミサイル発射を29日以降まで延期することや技術的問題が発生して解体作業に入っているとの情報が流れていましたが、国際社会の目を欺き、ミサイル発射に踏み切ったことに注目する必要があります。言い換えれば、弄(もてあそ)ばれたわけです。 これを受けて、幸福実現党の大川隆法名誉総裁も同日、霞が関の経済産業省前で緊急街宣を行い、北朝鮮のミサイル発射を強く批判しました。⇒http://www.youtube.com/watch?v=ZhpyGwDCr9Q 併せて、国家のエネルギー安全保障を脅かす早急な脱原発を主張する政治家や政党に対してこれまでにない強い口調で非難しております。 大川名誉総裁は、国防の重要性と中国・北朝鮮の軍事的脅威や民主党政権のダッチロールをどこよりも早く指摘してきた方です。 そして、その後も世界教師(ワールド・ティーチャー)として中国や北朝鮮の民主化と軍事圧政からの解放を強く主張しています。12月5日の「地球的正義とは何か」という法話でも当問題に言及されています。 幸福実現党のついき秀学党首も緊急声明を発表しました。⇒http://www.hr-party.jp/new/2012/32377.html 内容を要約すれば、ミサイル発射は我が国及び北東アジアの安全を脅かすものとして断じて容認できないこと。日米韓はじめ関係各国で連携し、実効ある制裁措置で臨むことを明言しています。 さらに、日米同盟を基軸としながらも「自分の国は自分で守る」という防衛の基本姿勢を主張しています。 なぜなら、北朝鮮だけではなく20年以上も軍拡を続ける核大国・中国の脅威が現実化しているからです。 具体的には、非核三原則の見直しと核武装への議論と準備を開始することを提言しています。 現憲法上認められている「自衛のための必要最小限度を越えない実力」には核保有も含まれるという解釈を打ち出しています(もちろん、戦争や紛争を回避する最大限の外交交渉をしていくことは言うまでもない)。 憲法解釈で言えば、北朝鮮や中国は前文に明記されている「平和を愛する諸国民」とは言えません。理由は以下の通りです。 軍事演習の一環として他国民を拉致していること。日本では100名を超えている拉致被害者は、未だに全員帰還できていません。 また、北朝鮮国内では情報統制と思想統制が厳しく、経済的にも国民は飢えに苦しんでいます。 軍事力が先行する共産主義体制は、朝鮮半島のみならず、日本を含めた東アジア一帯の安全保障にとって脅威です。 裏には中国も控えています。彼らの動きを見れば、チベットや新疆ウイグル、モンゴルを自治区に編入し、現在でも激しい弾圧が行われています。侵略の意図があることは自明の理です。 このように、東アジアでは、日本国憲法前文のような理想的な平和国家は少なく、逆に思想の自由や言論の自由、信教の自由を抑圧する国家が存在しています。 そうした国が核保有をすることで外交上の脅迫をしてくれば、我が国の安全保障は一層脆弱となります。 だからこそ、幸福実現党は憲法9条の解釈変更を主張して自衛戦争と自衛隊を軍隊として明確に位置付けているわけです。 ここにきて、集団的自衛権の行使にあたり公明党は自民党との協力を取りやめることを発表していますが、こうした緊迫する東アジア情勢の中で憲法9条の堅持と集団的自衛権行使の否定は非現実的です。 また、選挙のために「寄生虫」のように自民党に張り付き、国益を蚕食する同党の離脱は当然であり、速やかに退場するべきです。 とまれ、隣国の核ミサイルに降伏するのか、それとも国民の生命・安全・財産を守り、豊かで誇り高き日本という幸福を実現するのか、「ファイナル・ジャッジメント」の時は近づいています。(文責:中野雄太) 自由を守る聖闘士としての幸福実現党 2012.12.05 衆院選が幕開けした12月4日、筆者は地元の情報誌の取材を受けました。担当記者は「今回の選挙は正直見えない部分が多い」と本音を漏らしていました。 確かに、10以上の政党が乱立し、1500人程度の候補者が立候補している衆院総選挙は予想が難しいのは事実でしょう。 ただし、選挙の争点は明確なはずです。一時的な政党の立党と合流は、はっきり言って重要ではありません。 経済危機、国防危機、エネルギー危機が進行しているのですから、どこの政党や候補者を選ぶかははっきりとしているからです。 既に、幸福実現党からは経済力、防衛力、原子力の基本三本柱を発表しています。 言い換えれば、増税法案を中止して減税、金融財政政策で景気回復を実現する。自衛隊を防衛軍として位置付けるだけではなく、非核三原則の廃止と核武装などを通じて国の安全を守る。そして、安全性が確認できた原子力発電所から再稼働させて雇用や生活を守ります。 さて、上記の論点から導かれる国家の姿とはいかなるものでしょうか? それは「自由からの繁栄」の一言に尽きます。さらに突き詰めて言えば、「自由を守るための戦い」だということです。 経済面では、自由貿易や規制緩和、減税路線への転換を通じて国民の富を増やすこと。この論点は当ニュースファイルで何度も指摘してきました。 特に、8月10日の消費税増税法案の中止を訴えているのは、国家の課税権濫用から国民の自由を守るという視点があります。 今回の衆院選と来年夏に予定されている参院選で、増税に反対する議員が大量に当選することで消費税増税法案を廃案にできます。 増税は国家権力による私有財産の「合法的略奪」です。 民意を問わず、消費税増税法案を通した国会議員を「罷免」するには、衆院と参院の選挙しかありません。 先の法案採決に当たり、増税法案に賛成票を投じた議員を「全員退場」させる最大の機会の一つが、今回の衆院選です。 原子力発電に関してはどうでしょうか。 原子炉が全て停止されれば、国民の生活に不自由が生じます。停電や節電が続けば、夏場や冬場にエアコンを常時稼働させることは難しくなります。 また、熱中症による死者が出ることや、熱不足により子供やお年寄りに健康被害が出ることもあります。特に、東北の被災地では、未だに暖房が不十分な中で不自由な生活を余儀なくされています。 経済面では、生産ラインを縮小や労働者の勤務削減が余儀なくされます。加えて、今後は電気料金がジワジワと値上がりしていくことになるので、家計や生産者に負担を強いることとなります。 そうなれば、経済活動の不自由が加速してしまうわけです。 一方、発送電分離やスマートグリッドなどの自由主義的なエネルギー政策も検討すべきですが、現時点では原子力発電によって失われた電力量を補填するには不十分であることは否めません。 地域独占を打破していくことは重要とはいえ、時間とコストがかかる問題であるがゆえに、慎重な議論をしていくべきでしょう。 そして、防衛力です。現在は北朝鮮のミサイル発射予告がなされています。中国による度重なる領海侵犯はとどまることを知りません。ロシアの領空侵犯や北方領土への野心も加速しています。 今こそ、国防の議論をしなければいけません。単なる予算増大では問題は解決しません。 憲法や自衛隊法を含めた憲法改正や法改正、ミサイルや核武装に向けた外交交渉が必要です。 特に、日米同盟を基軸としてどれだけ自主防衛の領域を増やしていくのか。問題は山積みですが、国防の議論は避けて通れません。 では、防衛力を明記することが自由と関係があるのか、疑問に思われる方もいるでしょう。実は大いに関係があります。 ノーベル経済学賞を受賞したハイエク博士の師であり、自由主義哲学最高峰に位置したと言われているL・V・ミーゼスは次のように述べています。 「自由でいたいものは自由を奪う意図を持った者たちに対して死ぬまで戦わなければならない。(中略)裁判所・警察官・刑務所及び軍隊という政府機構の維持には、相当な支出が必要である」(『ヒューマン・アクション』307p) 要するに、自由主義は「無政府主義」ではないのです。自由を奪おうとする唯物論国家や軍事的侵略をしかけてくる国と、「死ぬまで戦う」のが自由主義者なのです。 その意味で、幸福実現党の候補者は、自由を守るための聖闘士(セイント)です。それは、「神の正義」「地球的正義」の樹立を含んだ聖なる戦いでもあるのです。(文責:中野雄太) すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 5 … 11 Next »