Home/ 佐藤恵一 佐藤恵一 執筆者:佐藤恵一 埼玉県東松山市議会議員 【地方議員は語る(後編)】再エネ推進の「幻想」を打ち砕いた一撃とは? 2024.05.07 https://youtu.be/48LTUlmsg5o 埼玉県東松山市議会議員 佐藤恵一 ◆第2ラウンド。委員会審査で不採択となった「請願」が本会議で審議される ある市民団体から提出された再エネ推進の「請願」。前編では、委員会採決で不採択となったことをお伝えしました。後編では、その後の本会議での攻防をお伝えいたします。 3月定例会の最終日、本会議での委員長報告において、当該委員長が委員会内での討論内容と「不採択」という審査結果を告げると、請願の紹介議員が、請願内容に賛成の立場で討論を行いました。 本議員は、討論の冒頭で「請願の内容は前提がずれていると指摘があったが、ずれているのはその発言をした委員の認識である」と述べました。 さらに、「石炭火力全廃の時期を明確にしない日本の政策は、世界の流れに逆行していると請願は述べている」と請願の正当性を訴えました。 しかし、前編で紹介した「原子力の活用が世界の流れと逆行しているという認識は誤っている」と私が指摘した部分には触れられなかったのです。仮に意図的に論点をすり替えたのであれば、誠実性に欠ける討論であると言わざるを得ません。 少なくとも、委員長が述べた内容と紹介議員の討論はかみ合っていませんでした。他の議員の方々も、その点を疑問に思ったのか、本会議での採決の結果は、不採択となりました。 ◆第3ラウンドは議員提出の「意見書」。再エネ推進の幻想を指摘する 続いて第3ラウンドへと移ります。「請願」の紹介議員とは別の革新系の議員と他1名の議員が提出した「意見書」の審議です。 「意見書」の趣旨は、先程の「請願」とほぼ同じでしたが、私が指摘した「原発の活用は世界の流れと逆行している」という文言は盛り込まれていません。 この意見書に反対討論を行ったのは保守系の議員と私の2名。保守系の議員の反対討論は、委員会での反対討論を盛り込んだ内容で、COP28に触れ、「原発の活用は世界の流れに逆行していない」という指摘も含まれていました。 続いて私の反対討論ですが、主に「再エネの高コスト」を中心とした論点で挑みました。再エネが主力電力となりえない現実を伝える重要な論点だからです。 具体的には、本会議の数日前に経済産業省が発表した「2024年の再エネ賦課金が標準家庭で年間1万6千752円となる」という内容を盛り込み、再エネ推進は重い国民負担を強いること、更なる物価高の要因になること、経済への大きなダメージになることを訴えました。 また、自然由来のエネルギーでは安定した電力供給ができないなど再エネを主力電力とすることの限界も指摘しました。 さらに再エネの環境破壊の論点です。同じ会派の先輩議員からのアドバイスで「山肌を削る太陽光パネルの設置により、森林破壊と土砂崩れが起きていること」を訴えました。 既に日本の太陽光発電は、国土面積当たりで言えば、導入量は世界第1位です。こうした状況で、さらに太陽光などの再エネを推進すれば、より深刻な問題が発生してしまいます。 そして、そこまで懸命に「脱炭素」に取り組んだとしても、日本ができることは限られています。日本で化石燃料を一切使わなかったとしても、世界のCO2排出量の5%しか削減できないのです。 これによって、下がる気温はわずか0.00002~0.00004℃という指摘も紹介し、討論を終えました。 ◆なぜか「再エネより原発のコストが高い」と主張し、応戦する革新系議員 その後、予想通り革新系の議員が手を挙げ反論のため登壇しました。 まず、本議員は「発電コストについて重要な事実誤認がある」とした上で意見書への賛成討論を始めました。 私たち2人の反対討論の中では原発のコストには一切、触れていませんが、「原発の発電コストよりも再エネの発電コストの方が低くなるという試算がある」と述べられ、「再エネのコストが高いのは、火力発電を行う電力会社の利益確保と福島第一原発被害の補償が電気料金に上乗せされているため」と説明されました。 まず「再エネコストは原発より低い」と主張がありましたが、私が指摘したのは建設費も含めたコストです。 資源エネルギー庁のホームページにおいて、建設費・工事費を含めると再エネは原発に比べ約2倍のコストがかかると記載されています。 また、再エネは発電量が天候に左右され、火力発電などのバックアップ電源も必要とします。そうした部分のコストも加味すると、再エネは導入すればするほど、高コストになることも指摘されています。 また、私も指摘しましたが、そもそも日本では税金のように電気料金に「再エネ賦課金」が加算されています。「再エネ賦課金」は、国が再エネ推進のため、再エネの高い電気代を、国民が負担する制度です。 再エネが本当に低コストなら、再エネ賦課金の制度は必要ありません。残念ながら、革新系議員の賛成討論では、こうした論点に対する言及はありませんでした。 ◆議会を通じて、幸福実現党の哲学や考え方をお伝えさせていただく 本会議での採決の結果、本意見書は不採択となりました。 その後、同僚議員の方々からは、「説得力のある討論内容で感心した」という趣旨のお言葉をいただきました。まだ1年目で経験不足の私に、こうした温かい言葉をかけてくださるのは、感謝が尽きません。 今回は「再エネ推進」がテーマでしたが、このように地方議会においても、国政レベルの論戦が繰り広げられます。 公の場である議場での発言は、その場にいる議員や自治体職員、傍聴者だけでなく、議会中継を観る方々に大きく影響を与えるものであり、責任重大です。 一方、こうした場で幸福実現党の政策や考え方をお伝えさせていただけるのは、大変ありがたい機会であるとも感じております。 今後も積極的に議場での発言を行い、地域の皆様の幸福の実現に取り組んでまいります。 【地方議員は語る(前編)】再エネ推進を巡る地方議会の攻防。世界の潮流は「再エネ推進」「原発推進」のどっちだ? 2024.05.07 https://youtu.be/_ATD3mDdVSo 埼玉県東松山市議会議員 佐藤恵一 ◆「再エネ」の問題は地方議会でも激論 昨今、「再エネ」の問題が、国政レベルの政治テーマとなっていますが、地方議会も無縁ではありません。 私が市議を務める埼玉県東松山市の3月定例会では、再エネを推進すべく「脱炭素」「脱原発」を訴える内容が議論されました。 内容としては「気候変動対策とエネルギー自給が重要であり、日本政府が脱炭素政策の柱とした原発活用と火力発電の延命・温存は世界の脱炭素化の流れと逆行している。目的達成のための手段としては再エネしかないので、2035年の再生可能エネルギー電力目標を80%以上とすることなどをはじめとした4つの具体的要望を議会の意見書として国に要望して欲しい」というものでした。 こうした内容が、革新系の議員の方を中心に提言され、激論が交わされました。 ◆地方議会で、国政テーマは「請願」「意見書」という形で論戦が行われている 具体的には、国に対して意見書の提出を求める請願として提出されました。 地方議会における請願とは、市政に関することを直接、市議会に要望できる制度で、意見書とは議会の議決に基づき、議会としての意見を内閣総理大臣、国会、関係行政庁に提出するものです。 実は請願であっても、議会に意見書提出を求める内容であれば、国政に影響を与えることができます。 他の自治体の最近の事例では、香川県で「選択的夫婦別姓」の法制化などを国に求めることが全議会で可決され、新聞などが報じています。地方議会であっても、メディアなども通じて、国政テーマにも影響を与えることができるわけです。 請願はこうした国政のテーマも取り扱うことができるものであり、しばしば世論形成の目的でも利用されることがあります。 そうした請願ですが、提出の際には当該地方公共団体の議会の議員が「紹介議員」となる必要があり、今回の請願はある市民団体の代表者が提出者となり、革新系の議員を紹介者として提出されました。 提出された請願は、私が所属する経済建設常任委員会で審議することとなりました。 請願は提出されると、関係する委員会で審議され、「採択」「不採択」の決定が行われます。議員全員の会議である「本会議」で、全ての議案を細かく審議すると、議会がパンクしてしまいます。 ですから、地方議会では、各委員会がそれぞれの担当分野の議案を審議し、その審査結果を、本会議に報告し重要な審議資料とします。 議会によって名称や所管する内容等は異なりますが、東松山市議会では4つの常任委員会が設置されています。 常任委員会とは、常設されている委員会という意味で、私の所属する経済建設常任委員会では、環境問題や商工業、農政、観光に関わることなどを調査、審議します。 ◆最新の世界の潮流が、反映されていなかった再エネ推進の請願 今回の請願は、「脱炭素と再生可能エネルギーへの転換の加速を国に求める意見書の提出を求める請願」という名称で、「原発推進が世界の流れと逆行している」という内容も盛り込まれていました。 しかし、この請願には、大きな問題がありました。日本政府が脱炭素政策の柱とした「安全確保を大前提とした原子力の活用」については、決して世界の潮流に逆行していないのです。 昨年12月に開催された気候変動対策を話し合うCOP28においては、198カ国から関係者が集まりました。 合意文書の中には「原子力」などの再エネ以外の低排出技術も気候変動対策の有効な手段として明記され、日本を含む22カ国が2050年までに原子力エネルギー容量を3倍に増加させる宣言が発表されています。 以上のことから、本請願は最新の世界情勢を反映しているとはいえないものだったのです。世界の潮流を「脱原発」と決めつける姿勢は問題で、結論ありきで脱原発を訴えているようにも感じました。 ◆反対討論を多くの方に共感頂き、請願は不採択へ 私はこの点を中心に論戦を展開させていただきました。 具体的には「日本政府の政策は、世界の潮流に逆行しているとはいえず、むしろ本請願が世界の潮流を見誤った内容であり、議会として取り扱うのは不適切」と委員会内で反対討論をし、多くの議員の支持を得ました。 今回、論点を「世界の潮流」に絞ったのには、理由があります。 請願の内容を見ると、政府が進める原発推進は世界の潮流から外れており、間違っているものなので、目的達成の手段は「再エネ推進しかない」という結論になっています。 しかし、「世界の潮流は脱原発」という前提が崩れたらどうなるでしょうか。そうなれば、請願自体の正当性は失われます。それを、誰しも否定できない事実をベースに指摘することで、誰しも納得せざるを得ない反対討論ができると考えました。 反対討論の結果、委員会審査は不採択となりました。委員会終了後には、同僚議員から、よく調べられた良い内容だったと称賛のお言葉をいただきました。 委員会では不採択になったものの、請願は委員会採決の後、本会議でも採決が行われます。 本会議で経済建設常任員会に属していない議員が委員会での採決結果に異議を唱えてくることが予想された他、請願とは別に革新系の議員が提出していた「意見書案」にも反論する必要がありました。 委員会での反論の論点を絞ったもう一つの理由は、ここにもあります。反論材料を温存し、本会議で予想される論戦に備えることにしたのです。 こうして「脱炭素、再エネ推進」をめぐる攻防は、第2ラウンドに移っていきます。 (後編につづく) すべてを表示する