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混迷する「小池ファースト」の東京都政 ~豊洲市場に即刻移転を。

東京都第10選挙区支部長 幸福実現党青年局部長(兼)HS政経塾部長 吉井としみつ

◆混迷する築地市場の移転問題

東京都議会は、百条委員会を設置して、築地市場の豊洲への移転についての経緯を明らかにするべく動いています。

一方、3月3日、元都知事の石原慎太郎氏が記者会見を開きました。

これに対して、様々な報道が出ていますが、会見内容を見る限り、豊洲移転については議論を重ねた結果、都庁全体でコンセンサスがあったということは間違いないと思います。

いまだに「犯人探し」をするような過熱報道がほとんどですが、一番大事なことは、築地市場と豊洲市場を比べて、どちらが安全なのかを冷静に比較する。

そして、それを有権者に責任転嫁するのではなくて、政治家が責任を持って決断することが、「本当の都民ファースト」ではないでしょうか。

まずは、築地市場と豊洲市場の安全性について、あらためて考えてみたいと思います。

◆豊洲の地下水に適用している基準は妥当なのか?

豊洲の地下水に適用されている基準は、環境省が定めている「環境基準」です。「環境基準」とは、飲用を前提にして達成することが望ましいとされている基準です。

では、検査されている豊洲の地下水は、飲用なのでしょうか?

実は、飲用ではありません。

「飲用ではない地下水に、飲用を前提にした環境基準を適用している」ということを押さえる必要があります。

そもそも地下水は、管理システムで浄化して排出することになっており、安全性に重大な懸念が出るわけではないと専門家会議での見解も出ています。

しかも、環境基準を上回る地下水が検出された場所は、敷地内ではありますが、豊洲市場の建物外です。

3月中に豊洲の地下水の検査結果が公表となりますが、豊洲の地下水は「飲料に使わない水」ということを押さえて、結果を受け止めるべきです。

◆「盛り土」ではなく「コンクリート」で対応できる

豊洲市場への移転が延期になったのは、2016年11月7日の判断でした。

豊洲の土壌から出る汚染物質が、地表に出ないようにするための「盛り土」がされていない、ということが主な趣旨でした。

これにより、報道が過熱し、盛り土をしていないことが、あたかも豊洲の安全性にとって致命的ではないか?という雰囲気ができてしまいました。

しかし、事実は異なります。

豊洲は、35センチメートル以上のコンクリートを敷設しており、土壌汚染対策法に則って処置されています。

法令では、地表面から50センチメートル以上の盛土をするか、3センチメートルのアスファルトまたは、10センチメートル以上のコンクリートであれば良く、念入りに対策がされています。

さらに、豊洲の土壌は、汚染物質の除去作業が行われており、汚染土が舞うことはありえません。

また、汚染された地下水が気化することで安全性に問題あるのではないかという指摘も、実際に観測した結果、十分に環境基準に適合することが分かっており、そうした懸念が払拭されるデータがとれています。

◆むしろ、築地市場の方が危ない

現在の築地市場は、80年以上大きな役割を果たしてきました。その功績は素晴らしいものがあります。

しかし、その一方で、建物の老朽化、建材に使用されているアスベストの飛散、さらにはトラック、ターレ(運搬車)、観光客が入り乱れる非効率な物流状況で年間300件以上の交通事故が発生しています。

また、トラックやターレ(運搬車)による高濃度のベンゼンを含む排出ガスが、食品に触れてしまう状態でもあり、衛生面でも懸念があります。

しかも、2016年8月の東京都の調査では、環境基準面では問題はないものの、空気中のベンゼン濃度は、築地市場の方が豊洲よりも高いのです。

安全面・衛生面でも懸念があったからこそ、市場の移転をせざるを得ず、6000億円もの都税を使って豊洲市場が建設されたのです。

◆豊洲の風評被害の発信源は誰なのか?

安全性が確保されているにもかかわらず、仲卸をはじめとする市場関係者の方々も移転に二の足を踏んでいます。その最大の理由とは何か。

それは、悪化した「風評被害」です。

3日の石原氏の会見を受けて、小池都知事は「仲卸の方々も今のままでは豊洲に移れないと明確に言っている」という趣旨の発言をなされています。

しかし、その最大の原因である、豊洲の風評被害をつくりだしたのは、小池都知事ご自身です。

また、「都民ファーストの会」の勢いは強まっていますが、そもそも都議会議員も、豊洲移転については容認してきたわけです。

青島都知事(1995年~1999年)時代から、豊洲移転の話が出ているわけですから、関係ないはずありません。

それが、ここに来て豊洲移転に二の足を踏んで、百条委員会を招致して「あたかも都民のために、熱心に議論する」ことは、政治パフォーマンスに他なりません。

こうした百条委員会での、政治パフォーマンスがなされている間には、使われない豊洲市場の維持費だけで、毎日500万円以上もの税金が使われていることは、何故かあまり報道されません。

東京都は世界を代表する都市ですが、残念ながら都政のコスト感覚やマネジメントは、世界の模範となるには程遠い状況のようです。

◆「有権者への責任転嫁」が民主主義?

ここまで見ると、「都民ファースト」と謳いながらも、その実態は「小池ファースト」の東京都政になっているのではないでしょうか?

豊洲移転の判断については、「都民の意見を参考に総合的に判断する」、さらには「東京都議選の争点にする」という話もありますが、政治家が責任を持って判断するべき問題を、有権者に責任転嫁することはやめていただきたいと思います。

政治家が責任を持って決断するべき問題を、選挙の争点にするという名目で、都民に丸投げする。そして、「その選挙結果を行政に反映して、都民の声を聞きました」というのでは、そもそも、政治家は要らないと宣言しているのに等しいのではないでしょうか。

政治家が決断するべき問題を、有権者に問うという名目で責任転嫁をすることが常態化しています。2016年の参議院選挙でも、消費税の問題を国民に判断させるという責任転嫁の争点づくりがなされました。

無責任・民主主義政治で、税金を浪費し続けてはなりません。

豊洲市場への移転は、一刻も早く進めるべきです。

それと同時に、例えば「豊洲安全宣言」を小池都知事が発表するなど、自らつくりだした風評被害の払拭に責任を持って取り組むことこそ、本当の「都民ファースト」ではないでしょうか。

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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