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「国民の安全を守る」はまやかし?地方自治法改正でヒッソリ近づく危険な未来

幸福実現党政務調査会 藤森智博

当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。
https://youtu.be/LRQO2xspgUE

◆地方自治法改正で、県や市町村などへの国の権限が強化され、全体主義に一歩近づく

今、SNS上では、地方自治法が改正され、”プチ緊急事態条項”がつくられるのではないかと話題になっています。地方自治法とは、市町村や県などの組織や運営、国との関係などを定めている法律です。

この地方自治法の改正案が、3月1日に国会に提出され、大きな波紋を呼んでいます。

改正の内容は、いくつかあるのですが、今回、注目したいのは、感染症や災害などが発生したときに、市町村や県などの自治体に国が「指示」を出すことができるという部分です。

つまり、緊急時には、自治体に対して、国が強権を持つことになります。これをもって、「“プチ緊急事態条項”だ」「独裁国家になる」ということが、一部で話題になっているわけです。

ただ、ここで注意しておきたいことは、今回の法改正は、自治体の権利を緊急時に制限するもので、国民の自由や人権を直接的に制限するものではないということです。

自由や人権を制限するためには、それこそ「緊急事態法」のような法律が必要です。その意味では、今回の法改正で、すぐに全体主義国家や独裁国家が完成するわけではありません。

しかし、間違いなくその道筋を描く法改正になると考えられますので、ポイントを3点、お伝えさせていただきます。

◆「国民の安全を守る」という名目で、国民の自由や人権は侵害されていく

まず挙げたいポイントは、今回の地方自治法の改正は、間接的に国民の自由や人権を制限するものに必ずつながるということです。

それは、今回の法改正の経緯を見れば明らかです。2020年に中国発・新型コロナ・ウィルスがまん延し、国は緊急事態宣言を発令いたしました。

しかし、緊急事態宣言で大きな権限を持つのは、都道府県知事です。この知事に対して、国はストレートな命令はできず、必ずしも国の方針に従わない首長が出てきました。

率直に言ってしまえば、コロナなどの緊急時に自治体を国の命令に従わせるために、この法改正は生まれているのです。

そして、こうした命令は、国民の自由や人権を制限するものにつながることが予想されます。

それは、改正案の条文を見れば一目瞭然です。条文では、指示を出すための条件として「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の「発生」や「発生するおそれ」のある場合としています。

ポイントは「安全」のところです。この「安全」という言葉は「魔法の言葉」で、「国民の安全を守る」という名目で、緊急事態宣言が発出され、行動制限が行われたり、ワクチンの接種が強力に推進されました。

つまり、「安全」という大義名分のもと、国民の自由が制限され、人権が侵害されたわけです。

もし、この条文が「国民の”自由”に重大な影響を及ぼす事態」だったら、一考の価値はあったかもしれません。

緊急事態宣言下では、東京都の小池都知事のように、国と競うような形で、独自の基準で国民に行動制限を強める事態も多々あったからです。

こうした暴走する知事たちを止めるための条項なら、検討の余地はあったでしょう。しかし、「安全」を盾にしている以上、国民の自由や人権を侵害する方向で、運用されると考えるべきです。

◆拡大解釈されれば、理由をこじつけて、国の“やり放題”となってしまう危険性も

次のポイントは、指示を出すための発動条件が、曖昧過ぎる点です。つまり、国の強権発動が乱用される恐れがあります。

条文では、「大規模な災害」「感染症のまん延」を挙げつつも、その他の「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」であっても、指示などの強権を発動できるようになっています。

この事態を拡大解釈すれば、理由をこじつけて、「やり放題」となる可能性があるわけです。

さらに問題なのは、こうした事態の認定を「閣議決定」のみで可能としている点です。

例えば、有事法制では、「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」「存立危機事態」「重要影響事態」は、全て国会の事前ないし事後承認を必要としています。

災害については、国会承認を経ずして、自治体に指示を出すことができますが、今回の法案のように発動の条件があいまいではありません。

つまり、今回の改正案は、“お手軽”な条件で、“お手軽”に閣議決定で発動可能であり、ここが大きな問題なのです。

◆国の権限が強化されても、本当に必要な「安全保障分野」で発揮される期待は薄い

一方で、国と地方自治体の関係の在り方として、安全保障面で大きな課題があることも事実でしょう。

例えば、沖縄県の米軍基地の辺野古移設の問題です。2013年時点では、最短で22年度でしたが、県の強烈な反対に遭い、現在では2030年代半ばに遅れる見通しです。しかし、辺野古移設は国家全体の安全保障の問題であり、「地方自治」のみで振り回してよいものではありません。

この沖縄の問題が、今回の地方自治法の改正で解消されるかと言えば、大いに疑問です。

法律に基づき「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と認定して、県に指示を出したとしても「条文の乱用だ」と反発され、指示には従わず、結局、裁判にもつれ込むのは目に見えています。

裁判になれば、県側の主張が認められる可能性もあります。従って、こうした問題の有効打にはなりえないでしょう。

こうした問題は、裁判の余地がないよう、個別法で、具体的に規定すべきと言えます。

◆「緊急事態」と称して全体主義が入ってくる

ですから同法案の結論としては、本来、国がリーダーシップを発揮すべき問題では効果は出ず、国民の自由や人権が制限されることになるでしょう。

コロナ禍では、多くの自治体は責任問題となることを嫌い、国の指示待ちの姿勢でしたが、今回の法改正で、正式に国の「お願い」が「指示」に格上げされれば、喜んでこれに従い、国民の自由を制限する対策を講じていくことになると考えられます。

大川隆法党総裁は、『コロナ不況にどう立ち向かうか』の第1章「政治について言いたいこと」で次のように述べられています。

「日本人はわりにお上の命令に忠実なので、『はい、はい』と言って従う気はあるのですけれども、『ちょっと気をつけないと、もう一歩で(全体主義に)行ってしまいますよ』というようなことは言っておかなければいけません。(中略)「緊急事態」と称して全体主義が入ってくるので、気をつけなければいけないところがあると思います。」

今回の地方自治法改正は、まさに「安全」を大義名分に「緊急事態」を煽ることで、国民の自由や人権が侵害され、全体主義への道を開く危険性のある法律です。

もちろん、「地方自治」を名目に、本当に必要な「安全保障」の問題が疎かになってはいけませんが、これには、災害対策基本法のように個別法でもって、解決を図っていくべきでしょう。

藤森智博

執筆者:藤森智博

幸福実現党 政務調査会

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