「吉田ドクトリン」から脱却し、九条改正、国防軍編成、防衛産業の育成を目指す【後編】
http://hrp-newsfile.jp/2022/4321/
HS政経塾スタッフ 遠藤明成
◆「吉田ドクトリン」で日本が失ったもの(2):防衛産業
吉田ドクトリンを信じている人は、軍事にお金を使うことは経済の発展につながらないと考えています。
そうした考えのもとで、再軍備の勧めを断った結果、日本は、国家に不可欠な産業の一つを失いました。
それが、防衛産業です。
三菱重工のように自衛隊の装備をつくる企業はありますが、どの企業も、全体の中でその割合は低く、ほとんどが1割前後にとどまっています。
しかし、米国の防衛大手を見ると、ロッキードマーティンは9割以上が軍需です(71%が国防総省から受注。28%が世界への兵器輸出)。
レイセオンテクノロジーは軍需が65%を占めています(民間向け売り上げは35%)。
欧州を見ても、売り上げを占める軍需の割合は高く、英国のBAEシステムは9割、スウェーデンの国産戦闘機をつくるSAAB (サーブ)は8割あります。
日本には、防衛に特化した大手企業がなく、腰を入れて防衛産業に打ち込みにくい状況が続いているわけです。
2021年度の防衛費をみると、4分の3が現状維持に使われ、残りの4分の1から新規の装備費を出していますが、そのお金も、米国からの装備品購入に回される割合が増え続けています。
日本は、自国に防衛産業を育成しきれていないのですが、防衛装備を他国に依存しながら、自主防衛を実現することはできません。
国際政治アナリストの伊藤貫氏は、米国の兵器は「ブラックボックス」で管理されているので、もし、将来の大統領が「中国とは戦わない」と決めたならば、日本に売った兵器をすべて止めることが可能だとも指摘していました。
F35戦闘機を例にとると、予算が増えない中で米国兵器ばかりを買った場合、日本企業に払うお金が減り、戦闘機の生産基盤を維持できなくなります。
F2戦闘機の生産は終わったため、新しい需要を生み出さなければ、F35を買っている間に国内の技術者が離散し、日本は「戦闘機の作れない国」になってしまうのです。
そうした問題があるので、欧州ではユーロファイター、スウェーデンではグリペンという、自前の戦闘機を作り続けてきました。
防衛産業がなければ「独立」を維持できないからです。
こうした新型戦闘機の開発には「兆」の単位のお金がかかります。
それは、防衛予算の倍増なしには不可能なのです。
◆防衛産業への投資は未来産業の育成のためにも不可欠
そもそも、軍事にお金を使うことは経済の発展につながらない、という考え方は、正しくありません。
日本でも、戦時中に戦闘機や軍艦、戦車などをつくっていた技術者は、戦後、民生用の航空機や船、自動車などの製造に力を注ぎ、経済発展に大きく貢献しました。
愛国心に満ちた技術者たちの力があって、「重厚長大」産業の復活が早まったのです。
たとえば、ヤンマーディーゼル社の山岡浩二郎社長は、「ヤンマーに入社した旧海軍の技術陣は、それこそそうそうたる顔ぶれであり、ヤンマーが今日あるための大きな礎石であった」と述べています(沢井実『海軍技術者の戦後史』名古屋大学出版)。
新幹線の振動問題を解決したのは、ゼロ戦の飛行を安定させた松平精という技術者です。
当時、新幹線開発を支えた鉄道技術研究所(鉄研)には、1000人もの旧軍技術者が集められていました。
軍事のために用いた技術力は、民間経済のためにも使えるので、軍事費を無駄な浪費と見なすのは、間違った考え方です。
今の社会のインフラをみると、軍事で使われて発展したものが数多くあります。
例えば、その一つが鉄道です。
プロイセンでビスマルクが宰相だった頃、モルトケ将軍は鉄道を用いて兵士をいち早く投入し、普墺戦争、普仏戦争に勝利しました。
鉄道は、社会の基幹インフラとなると同時に、軍の輸送や兵站を支える役割を果たしています。
航空技術は、第一次大戦前は、好事家の趣味程度のレベルでしたが、第二次大戦の頃には主戦力に変貌します。
そして、戦後世界を支える基幹技術となりました。
宇宙ロケットの技術と弾道ミサイルの技術も、かなりの部分が重なります。
原子力は兵器だけでなく、発電においても、エネルギー政策の基幹を担っています。
インターネットも、もとは軍用だったものが、民間に普及し、世界のインフラとなるに至りました。
軍事への投資には、基幹的な技術のレベルを高めるものが数多くあります。
世界の主要国が軍事に投資する中で、日本だけがそのお金を惜しんでいると、世界的な技術開発競争に劣後する危険性が高まるのです。
◆「吉田ドクトリン」を乗り越え、真の独立、主権回復をめざす
国防軍も、防衛産業も、日本の独立を守るためには、不可欠なものです。
日本が21世紀に、独立国として、大国の責任を果たすためには、吉田ドクトリンから脱却しなければなりません。
憲法九条を抜本改正し、国防軍を編成し、自国の防衛産業を発展させる必要があります。
これがなければ、北朝鮮の核ミサイルや中国の軍拡には対抗できません。
日米同盟を維持しながらも、自主防衛力の強化を進めていかなければなりません。
米国が「世界の警察官」をやめた時代においては、自分の国を自分で守らなければならないからです。
そのために、幸福実現党は「吉田ドクトリン」からの脱却を呼びかけています。
そうであってこそ、日本が真の独立を果たし、主権を回復したと言えるからです。
経済大国となった日本は、いつまでも「一国平和主義、一国繁栄主義」を続けることはできません。
幸福実現党は、「自由・民主・信仰」を守り、中国や北朝鮮などの唯物論国家、一党独裁の国家から、アジアの国々を守るべく、力を尽くしてまいります。
【参考】
・大川隆法著『国家繁栄の条件』幸福の科学出版
・岸田文雄『岸田ビジョン』講談社+α新書
・防衛白書 令和3年度版
・『SAPIO 2015年10月号』
・沢井実著『海軍技術者の戦後史』名古屋大学出版