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海上封鎖で食料断絶?台湾情勢の緊迫化で迫る日本の食料危機【前編】

https://youtu.be/ugpWvLgFYns

幸福実現党党首 釈量子

◆ヨーロッパを襲う歴史的干ばつ

世界で広がる異常気象が食料危機に更なる影響を与えそうです。

日本でも記録的な豪雨で農作物などにも大きな被害が及びましたが、ヨーロッパでは逆に深刻な水不足によって大変な事態になっています。

英国を含んだEU地域の実に60%において、干ばつの被害が深刻化していると報じられており、そのうちの4分の1で植物の生育が厳しいほどの水不足が発生しているとのことです。

調査によればEU圏内のトウモロコシ、大豆や、植物油の原料となるヒマワリの生産は8~9%低下すると予測されています。

特に、歴史上最悪の干ばつに見舞われているフランスでは、ベシュ環境相が5日、「100以上の自治体で飲用水が尽きた」と述べ、給水車が出動している緊急事態が続いています。

農作物(レモンやオリーブ)への被害は「壊滅的な状況」とされ、12日には英国・イングランド8地域でも「干ばつ宣言」が発令され、被害の深刻化が懸念されています。

ウクライナ戦争が長引き、世界の穀倉地帯からの食料供給が大打撃を与えるさなか、ヨーロッパでの干ばつによる大凶作は、世界の食料危機を更に加速させそうです。

◆台湾有事で日本に届かなくなる食料とは

更に、ペロシ米下院議長の電撃的な台湾訪問によって、台湾を巡る情勢が緊迫化の一途を辿っています。

「台湾有事は日本有事」と我々も繰り返し訴えてきましたが、食料自給率(カロリーベース)37~38%しかなく、6割強を輸入に依存する日本はいよいよ死活問題です。

それが、米台中の間での軍事的緊張の高まりに応じて、バシー海峡など日本のシーレーンが中国海軍によって封鎖される可能性が高まっているからです(図)。

もしシーレーンが封鎖されると、石油タンカーや、食料などの物資を運ぶ民間商船の航行が阻害、迂回を強いられ、状況によっては拿捕される恐れも出てきます。

台湾近海のシーレーンが封鎖された場合、日本に入ってこなくなる食料として、穀物を中心に具体的に見ていきたいと思います。

全量を国内で自給できている米は別として、まず小麦です。

自給率は15%程度(2020)ですが、米国(227万トン)、カナダ(180万トン)、豪州(106万トン)の3ヵ国で輸入のほぼ全量を賄っているため、台湾周辺のシーレーンリスクは負っておりません。

一方で、問題なのは大豆(自給率6~7%)とトウモロコシ(自給率0%・スイートコーン除く)です。

大豆輸入の15%、とトウモロコシ輸入の約40%をブラジル産に(おそらくアルゼンチン産も)依存していますが、両品目共にブラジル産の約7割が、サントス港など大西洋側の港から輸出され、南アフリカ喜望峰経由で、インド洋から台湾近海を航行するルートを通ります。

これらがシーレーン遮断の影響を受ける可能性が高くなっています。

割合としては輸入大豆の約1割、トウモロコシの約3割を占め、日本の食料調達に与える被害は甚大だと言えるでしょう。

用途は、輸入大豆の3割が食用、7割が油など、輸入トウモロコシの75%が飼料用、25%がでんぷんなどの加工用です。

更に、戦域の拡大によっては、中国や北朝鮮に囲まれ、ロシアまで敵に追いやった日本周辺の海上路が全て分断される恐れは無きにしもあらずです。

そうなれば、北米や豪州方面からの船舶も日本に寄港できず、全ての穀物輸入が途絶える恐れすらあるのです。

◆あるべき食料安全保障体制とは?

このように、天災や戦争などの外部要因によって、日本と世界を取り巻く食料事情(肥料含め)はかなり厳しい局面を迎えつつあります。

食料を買うお金がいくらあっても、物理的に手に入らなくなる状況がすぐそこまできていますが、日本はそうした局面に全く対応できておりません。

万が一、輸入が全て途絶えても、全国民を食べさせるというサバイバル思考をベースに、あるべき食料安全保障体制を早急に検討する必要性があります。

その一丁目一番地となるのがもちろん「食料増産」です。自給力を高め、有事に対応できる体制を早急に整えるべきです。

特に、生存に直結する穀物の増産は不可欠でしょう。しかしながら、日本農政は半世紀に渡って、真逆の方向に「大きな失敗」を犯し続けてきました。

それは本来日本の強みであり、大きな武器であるはずのコメを減産し続ける政策を採ってきたことです。正式には生産調整、また俗に減反と言われるものです。

(中編につづく)

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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