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【ASEAN首脳会議】TPPがあればRCEPに力を注ぐ必要なし

http://hrp-newsfile.jp/2019/3606/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆ASEAN首脳会議 RCEPが主な議題か

6月20日から23日まで、タイのバンコクで、ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議が開催されています。

そして、22日の財相会議では、日本や中国、インドなどのアジア諸国が交渉を続けているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の年内合意に向けた話し合いが行われます。

(※RCEPは、Regional Comprehensive Economic Partnershipの略)

このRCEPは、日本と中国、韓国、インドとオーストラリア、ニュージーランドにASEANの10か国を足した16カ国でつくる経済連携協定です。

この広域FTAは、TPPに対抗したい中国と、TPPに参加できなかったインド等の思惑から生まれましたが、それが実現すれば、GDPと貿易総額で世界の3割を占める経済圏が生まれます。

それは、TPP11に匹敵する規模です。

しかし、このRCEPを主導しているのは、貿易の自由化が進んでおらず、TPPへの参加要件を満たせなかった中国とインドです。

そのため、RCEPは、TPPのように大きく関税を削減する協定ではないのですが、日本は、その規模の大きさに惹かれ、長らく交渉を続けてきました。

◆広域FTAにおいても野心を露わにする中国

RCEPの交渉は、もともと18年内の妥結を目指していましたが、交渉は難航し、議論が19年にまで延長しています。

そして、最近は、中国がインド抜きのRCEP案を主張し始めました。

それだけでなく、19年4月には、ラオスで開かれた「ASEAN+日中韓」の会合で、インドとオーストラリア、ニュージーランドを除いた13か国で「東アジア経済コミュニティー」(EAEC)を推し進める構想を明かしました。

その折に提示された文書には、EAECの主要な協力分野に「FTAの構築を含む」と明記されていると日経が報じています。

(※EAECは、マレーシアのマハティール首相が1990年に打ち出した「ASEAN+3」の枠組み)

中国がこの時期に「ASEAN+3」を強調してきたのは、米国の「インド太平洋戦略」に協力する「印・豪・NZ」を排除し、中国主導の広域経済圏を目指すためだと考えるべきでしょう。

◆TPP11があるのに、RCEPが本当に必要なのか?

インドはもともと、大幅な関税削減には消極的なので、RCEPの交渉はなかなか進みません。

そして、中国は、インドを抜きにして、中国主導の経済圏をつくりたがっています。

そこで、問題となるのは、このRCEPに参加する意義が、どれだけあるのか、ということです。

◆貿易交渉の専門家が評価した「RCEP」の中身

この問題について、元農水官僚の山下一仁氏は〈「中国」に惑わされず、RCEPよりTPP拡大を」〉と題した記事を公開しています。

(※山下氏は、GATTのウルグアイ・ラウンドでの交渉等を過去に担当した農政と貿易の専門家)

その要旨は以下のとおりです。

・RCEPは基準が緩く、ほとんど関税を削減せず、WTO以上のルールや規律も設定しないFTAなので、貿易の現状を大きく変えるものではない。

・東南アジア諸国でTPP11とRCEPの参加国が重複するので、2つの関税、ルール、規則が錯綜して貿易が混乱する

・RCEPよりも貿易の自由度やルール面でレベルの高いTPPでアジア太平洋地域の経済を統合すべき

・質の高いFTAにならないRCEP交渉に貴重な人的資源を割くよりも、TPPの拡大に傾注すべき

この記事には〈参加国のGDP規模を重視する日本政府。大事なのは「規模」より「規律」だ〉という副題がつけられていました。

これは、極めて理にかなった主張です。

すでにTPPがあるのに、それを生かさず、中国の影響が強い経済連携に入ることに力を浪費するのは、筋が通らないからです。

◆RCEP交渉には「見切り」をつけよう

RCEP交渉は2012年に始まりましたが、いまだに終わりが見えません。

しかし、すでにTPPは成立しているので、日本は、RCEP交渉よりも、こちらを活かしたほうが懸命です。

TPPに入っていないASEAN諸国に参加を促し、インドのような難しい国とは別個に交渉すればよいわけです。

日本には、日米貿易交渉や日露平和条約の締結、台湾との関係強化といった、重要な懸案事項が数多くあります。

RCEP交渉にいつまでも力を費やさず、こちらには見切りをつけるべきです。

幸福実現党は、主要政策において「中国主導の経済連携への参加は支持しません」と主張してきました。

今後も、米国との関係を重視しながら、アジアの自由主義国との貿易拡大を図り、日本経済とインド太平洋地域の発展を目指してまいります。

【参照】

・日経電子版「インド外しRCEP、中国が提案 交渉停滞受け」(2019/6/18)

・山下一仁「中国」に惑わされず、RCEPよりTPP拡大を -参加国のGDP規模を重視する日本政府。大事なのは「規模」より「規律」だ-」(2018.07.11、キャノングローバル戦略研究所HP)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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