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LGBT理解増進法、何が問題?

http://hrp-newsfile.jp/2023/4431/

幸福実現党政務調査会長代理 小川佳世子

◆議論百出の「LGBT理解増進法案」

性的少数者に対する理解を深めるための法律案、いわゆる「LGBT理解増進法案」についての議論が自民党内で進められています。

特に議論になっているのは、「差別」という言葉を入れるかどうかです。LGBTに関して「差別は許されない」としてしまえば、心の中で思ったことや、つぶやいたことまで非難されて、生きにくい世の中になるのではないかということで、慎重な声があります。

しかし、野党などからは「理解を進めるだけでは生ぬるい」「差別の禁止まで踏み込むべきだ」というような意見も出ています。

このように議論がまとまらないなか、5月19日から始まるG7広島サミットで議長を務める岸田首相としては「日本が性的少数者に理解のある国である」ことをアピールするため、サミット前に国会に法案を提出し、できれば成立させたいと考えているようです。

この法律について、国民はおおむね理解を示しています。今年2月に行われた世論調査(FNN・産経新聞社)では、理解増進法を成立させるべきと考えている人が64%を超え、反対の26.5%を大幅に上回りました。

また、同性同士の結婚を認めることについては、特に20代では9割以上が賛成、30代でも88%以上が賛成していて、特に若い世代を中心にLGBTへの理解が進んでいるようです。

しかし、いま、この法律を成立させることはいくつかの疑問があります。

◆疑問(1):「内政干渉」で急かされていないか

一つ目の疑問は、海外からのプレッシャーや空気に押されていないか、ということです。

アメリカのエマニュエル駐日大使は、東京新聞の取材に対して、LGBTへの差別を禁止する法律について、早めに法律を制定すべき、と訴えています。

日本の法律について、なぜアメリカの大使が口を挟むのでしょうか。アメリカの政府関係者が日本の政治に口を挟むことは、「余計なお世話」を通り越して、「内政干渉」です。

「日本だけがLGBTに理解のない国だと思われている。サミットまでに法整備を」と、不必要に空気を読んで成立を急ぐのはおかしな話です。

他の国が何を言おうとも、日本の国のことは、日本で責任を持って決めるべきです。

◆疑問(2):LGBTに寛容な日本に特別な法律が必要か

二つ目の疑問は、欧米諸国とは違い、もともとLGBTに寛容だった日本に、特別な法律が本当に要るのだろうか、ということです。

例えばイギリスでは1967年まで同性愛が犯罪とされていました。男性同士で性行為を行ったら有罪となり、刑務所に入れられていたのです。

そうした偏見は今も残り、LGBTの人たちを狙った犯罪が後を絶ちません。

イギリス・ロンドン警視庁の統計によれば、2018年にロンドン市内で確認されただけで、年間2300件のLGBTを狙った暴行などが起きているとのことです。

アメリカコロラド州でも、昨年11月、LGBTの人たちが集まるナイトクラブが銃撃され、30人が死傷する事件が起きました。

さらにアメリカでは、同性愛を精神障害と見なして「治療」する施設がいまだに存在しています。2014年にオバマ大統領が、同性愛の治療を中止する声明を発表したものの、世間から隔離された施設でいまだに人権を無視した治療が行われています。

一方、日本ではそのような極端な差別はなく、ゲイのタレントが活躍できるほどです。

しかも、今、日本が成立させようとしている法律は、LGBTに焦点を当てて差別禁止を定めようとするものであり、世界的に見ても異例なものです。

他の国では、人種、宗教、年齢、性的指向(恋愛対象がどの性別か)などで、雇用や教育面において差別をしてはいけない、という法律はありますが、LGBTに特化した法律はありません。

「日本だけがLGBTについての法整備が遅れている」と主張する人もいますが、わざわざ「性的指向」などという言葉を法律にいれなくても、日本では歴史的に、欧米諸国のような極端な差別や人権侵害は行われてきませんでした。

◆疑問(3):行き過ぎた保護は大多数の人を不幸にする

三つ目の疑問は、この法律をつくることで、大多数の人が暮らしにくくならないか、ということです。

現在、日本がつくろうとしている法律は、差別をした人への罰則があるわけではないので、「罰則がないならそれほど大きな問題は起きないんじゃないか」と考える向きもあります。

しかし、国がわざわざこのような法律を作ることは、国民への価値観の押しつけとなります。法律をつくることで、決して「差別」するつもりがなくても、「同性愛は受け入れられないな」という考えを持つ人が、社会的に批判を浴びるということにもなりかねません。

2月には、首相秘書官が同性カップルについて「見るのも嫌だ」とオフレコ発言をしただけで、クビになるという出来事がありました。

これは公的な場でなされた発言ではなく、「思想・信条の自由」「言論の自由」の範囲と言えるのではないでしょうか。

もし、この法律が成立したら、普通の国民が職場や学校等でこういう発言をしただけで、世間的な非難を浴びることになり、生きづらくなる人が出てしまいかねません。

さらに、LGBT理解増進法案には、今のところ「性自認」という文言が入る見込みです。

「性自認」とは、肉体の性別にかかわらず、自分で認識している性別のことです。

具体的に言うと、例えば肉体的には男性の人が「私は女だ」と認識するだけで、女性であることを認め、尊重しようということです。

そうしたら何が起きるでしょうか。

体は男なのに、「女性だ」と主張して女性トイレやお風呂などに入っていく男性も認めなくてはならなくなります。

実際、LGBTの権利保護を進めるアメリカでは、男性の体のままで「私は女です」と主張して女性のお風呂に入り、その後暴動に発展した事件がありました。

小さな女の子を連れた親が「なぜ男が女性のお風呂に入ってくるの」と抗議をしても、「LGBTの人を差別してはいけない」というカリフォルニア州の法律を根拠に、親の抗議は聞き入れられませんでした。

また、肉体は男性なのに「私は女だ」と主張して、女子スポーツ大会で優勝し、真面目に努力してきた女性が不利益を受けるといったケースも出ています。

そのため、「多数派が安心して生きられるようにしよう」と、揺り戻しも起きています。

フロリダ州では、「小学校で、性自認について話し合いをしてはいけない」という法律が、カンザス州では「性自認に基づいたトイレの使用を禁じる」つまり、「女性のトイレは生物学的女性だけしか使ってはいけない」という法律が定められたりしています。

アメリカなどはLGBTへの理解が進んでいるというイメージの報道がなされていますが、実際はどのようなことが起きているかを理解したうえで、議論を進めるべきでしょう。

◆政治に必要な宗教的視点

私たち幸福実現党は、LGBTの権利拡大や同性婚を認めることには反対の立場です。

それは、大勢の人たちが生きにくくなるだけでなく、少数派の人たちの幸福にもつながらないと考えるからです。

欧米諸国において、LGBTの人たちへの差別の歴史は、キリスト教的価値観によるところが大きいと思われます。聖書には、同性愛は罪であるというような記述があります。

かといって、神仏の存在を否定し、人間は何をやっても自由であると主張し、LGBTの人たちに過度な権利を認めるのも、社会の秩序を乱し、大勢の人を不幸にします。

私たち幸福実現党は宗教政党であり、神仏の存在や霊的な世界を認める立場です。そして、宗教的な視点から、なぜLGBTの人たちがいるのかということを伝えています。

大川隆法党総裁は、人間は、何度もこの世とあの世を転生輪廻している存在であり、例えば肉体的には男性でも、過去何度か女性で生まれた経験があると、女性として生きた時の記憶が魂に残り、女性としての生き方を望んだり、男性に惹かれたりすることもあるという霊的真実を明かしています。

そのようにLGBTの人たちへの理解を示しつつ、今世与えられた性で生きることが魂の経験を増やす上で重要であることを説いています。

一方、最近では、強い欲望を持つ人がその思いと同通する悪しき霊に憑依されるケースも増えており、死後、苦しみの世界に行かないためにも、過度な権利保護はすべきではないと教えています。

いずれにせよ、こうした視点は、この世的議論や多数決の民主主義では決して得られないものだと言えます。

本当に多くの人の幸福につながる政治を行うためには、やはり神仏の心や霊的な真実を教える宗教的真理が不可欠なのです。

小川 佳世子

執筆者:小川 佳世子

幸福実現党政務調査会長代理

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