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インフレにどう立ち向かうか【前編】

http://hrp-newsfile.jp/2022/4307/

HS政経塾スタッフ 赤塚一範

◆物価高に苦しむ家計

物価の上昇によって、国民生活はダメージを受けています。「家計の値上げ許容度が高まっている」との最近の黒田総裁の発言に対する批判の厳しさからも、それは明らかです。

しかし、そもそもデフレ脱却、インフレ率2%の達成というのは、2012年末に安倍政権が誕生して以来の目標だったはずです。

統計では2022年4月、物価上昇率は悲願の2%を超え(5月は2.1%)、完全失業率も2.5%まで減少しほぼ完全雇用状態です。

ですが、国民生活は苦しくなるばかりです。今回のインフレの何が悪かったのでしょうか。

このインフレの苦しみの原因として、企業が賃上げをしないから、コロナやウクライナでの戦争でサプライチェーンが混乱したから、日銀が金融緩和を止めないから等々が言われています。

実際、今回の悪性インフレにはそれら要因もからんでいるでしょう。日本はこのインフレとどう向き合い、どのような手を打つべきなのでしょうか。

◆バラマキばかりの政策

今回の参院選では、各政党の物価対策が争点となっています。各政党の経済政策をまとめると、次のようになります。

(1)消費税やガソリン税等の減税(立民、維新、れいわ、国民民主、共産)
(2)特定分野、家計への補助金(自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産)
(3)賃上げのための制度づくり(自民、公明、立民、れいわ、国民民主、共産)

これらは、物価上昇で困窮する家計を財政的に支援する政策ですが、基本的にバラマキといって良いでしょう。

現在の日本の状況を踏まえると、これら政策は瞬間的に家計を助けることになっても、結局はより大きなマイナスを生み出してしまう麻薬のような政策なのです。

今必要な政策は、この逆で、バラマキを縮小し、消費を抑制すると同時に、貯蓄を増加させ、社会資本を強化していくことなのです。

◆バラマキは日本の病気を悪化させる

現在の日本を例えると、病気の痛みに耐えきれず、麻薬を打ち過ぎて精神が壊れかけている人間のような状態です。麻薬は、手術の痛みを緩和するなど、上手に使えば、身体を健康にするでしょう。

しかし、病気の根本を解決せず、麻薬だけに頼っていれば、病気は悪化しますし、麻薬依存症となり心も壊れてしまうでしょう。

現在の日本に必要なのは、先に述べた(1)(2)(3)のような麻薬政策を打ち続ける「一時的な痛み止め」ではなく、根本的な治療です。

もしそれをしないなら、日本は、より重い病気、つまり更なるインフレになってしまうかもしれないのです。

◆物価上昇の意味

「価格は情報伝達のシグナルである」これは、ノーベル経済学賞を受賞した自由主義経済学者フリードリヒ・ハイエクの言葉です。

彼によれば、価格の上昇とは、その財は貴重であり、その財は節約され効率的に使用されなければならないというシグナルです。

例えば、銅の価格が上がっているとすれば、それは銅が貴重になっており、今ある使用法から銅を引き抜き、より消費者のニーズがあり効率的に使用される分野に銅が使われなければならないのです。

では、物価上昇は何を意味するのでしょうか。物価とは、経済にある商品の価格を集計し、指数化したものです。

物価とは、マクロ経済学的概念であり、ハイエクのいうミクロ的な意味での価格とはやや違いますが、次のようなことが言えるでしょう。

物価上昇とは、需要に対して、商品全体が不足している、供給力が弱っているということを意味します。

また、他方で、今ある日本の貴重な資源が効率的に使用されておらず、その使用方法から資源を引き抜き別の場所で使用されなければならないというシグナルでもあります。

つまり、インフレの要因とは、供給力の低下であり、資源の無駄遣いなのです。これが日本の根本的病気なのです。もちろん、海外が原因によるインフレも、不要な投資拡大やコロナ対策、戦争も資源の浪費です。

(後編につづく)

webstaff

執筆者:webstaff

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