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インフレにどう立ち向かうか【後編】

http://hrp-newsfile.jp/2022/4309/

HS政経塾スタッフ 赤塚一範

◆消費減税、補助金、賃上げだけでは、さらなるインフレを招く

前編で指摘したような病気を根本治療することなく、消費減税、補助金、賃上げという麻薬を用いて、物価上昇を和らげた場合、結論は更なるインフレです。

たとえば、今夏、電力不足が懸念されています。電力供給を強化することなしに、電力に対して消費減税をかけたり、補助金を出したりしたところで、電気を多量に生産できるわけではありません。

むしろ、電力需要が拡大してしまい、大停電になってしまうかもしれません。また、賃上げは、企業にとって単なる負担に過ぎず、投資不足、雇用減少を招き供給力低下に拍車をかけます。

他方で、賃金上昇によって消費者の需要を拡大させてしまうので、インフレが加速してしまうのです。もちろん、現金給付なども、勤労の精神を失わせ供給を弱らせるので、これもインフレ要因です。

日銀の金融緩和がインフレを引き起こしているという議論もあります。確かにそれもあるでしょう。しかし、日銀が国債を購入し、紙幣を市場に流すのは、政府支出を支えるためでもあるのです。

これら支出の大半は、年金や社会保障等のバラマキとして国民の消費を支えていますが、これも資源を浪費し、国民の勤労意欲を阻害するのでインフレ要因となります。

◆減量と勤倹貯蓄による投資がインフレの治療薬である

インフレの根本治療薬とは、(1)効率的生産部門へ労働を含む資源を集中、投資すること、そして、(2)不要な消費を抑え減量し、貯蓄を推進することです。

不必要な投資の例として、今回の参院選でも自民、公明、立民、維新、れいわ、国民民主、共産等が重要な政策とする「脱炭素に向けた投資の促進」があげられます。

かつて、毛沢東は、「大躍進政策」で中国の工業化を主導しました。鉄を国家の重要な資源と定め、農民に、農業を止め、それぞれ小規模な溶鉱炉を作るよう命令しました。

その結果が、大飢饉と、役に立たない粗悪品の鉄くずでした。毛沢東は、国の大切な資源を浪費したのです。

脱炭素に向けた国家主導の政策は、毛沢東を彷彿とさせます。日本には、火力発電所、原子力発電所がありますが、現在その多くが使われないか、まだ再投資すれば使えるにもかかわらず破棄されています。

そして、風力・太陽光といった非効率な再生エネルギーに投資されているのです。これらを止め、もう一度、火力、原子力に資源を投入すべきでしょう。

他方で、日本は、中国や北朝鮮といった軍事国家に囲まれており、いざという時のためのサプライチェーンの構築が急務です。

また、岸田首相は防衛費の増額を打ち出しています。これは必要な政策でしょう。

しかし、サプライチェーンを構築しなおし、軍事費を増額させるためにも、消費を抑える必要があるのです。

例えば、現在、JR東日本なども、半導体不足から一部の新規の車体製造を延期したと報道されるように、半導体が不足しています。

このようなときには、ゲーム機に使う半導体とミサイルに使う半導体は競合関係となり、ゲーム機に使う半導体を節約しなくては、ミサイルを作ることはできないのです。

サプライチェーンの構築も同様です。

例えば、ショベルカー等重機を動かすにはガソリンが必要ですが、ガソリンが不足する場合、ディスコやカジノを作ることと、国内の古びたインフラを再構築することとは競合関係となるのです。

勿論、これら資源の配分を市場統制によって行うわけにはいきません。これを自発的に行うには、消費者側の節約マインド、そして実のある産業を大きくしていこうとする勤労の精神が欠かせないのです。

そして、政府の社会保障や年金も縮小しなければなりません。これらは、消費を促進し、国家の資源を浪費するからです。

国民が消費を抑え、貯蓄をし、その貯蓄によって、サプライチェーンの再構築や軍事費が賄われなければなりません。

もし、貯蓄なしでこれらを行なおうとすれば、それは国債発行による貨幣の増発を用いて行うこととなり、インフレを加速させてしまうのです。

実際のところ、私達は、ある程度はこのインフレを受け入れなければなりません。それは、もう既に資源が浪費されてしまっているからです。

これを克服するためには、今一度本当に必要な商品とは何なのか、日本が安全であるためには何が必要なのかを消費者自身が考え、無駄な消費を抑え、必要なものに再投資していくという資本主義の精神の復活が望まれるのです。

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執筆者:webstaff

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