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給付金は「資本主義の精神」を破壊する――守るべきは、近代日本を築いた「勤勉の哲学」【前編】

http://hrp-newsfile.jp/2022/4303/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆バラマキ政策が並ぶ各党参院選の公約

参院選に向けて、多くの政党が、票を求めて様々な交付金を公約しています。

自民党、公明党、立憲民主党だけを見ても、補助金や交付金、手当といった言葉が目白押しです。

自民党は「1兆円の地方創生臨時交付金」や「赤字でも賃上げする企業に対する補助金」「事業再構築補助金、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金」「出産育児一時金の引上げ」「大胆な児童手当や育休給付の拡充」などを公約。

公明党は「中小企業の賃上げを支援する補助金の拡充」「ものづくり、事業再構築、持続化補助金等」における「グリーン枠」の拡充、結婚と出産から保育、高等教育までの無償化をはかる「子育て応援トータルプラン」の策定、「基礎年金の再配分機能の強化」などを掲げました。

立憲民主党は「燃料等の購入費補助」「事業復活支援金の支給上限額倍増」「年金生活者支援給付金」「給付付き税額控除」「高校の授業料無償化や児童手当の所得制限撤廃」「児童手当などの延長・増額」で対抗したので、結局、どちらが多くのお金を配るか、という競争になってきています。

まるで打ち出の小槌があるかのように、大盤振る舞いのメニューが並んでいます。

配る金額の規模は、自民党よりも公明党のほうが大きく、立憲民主党や国民民主党よりも共産党のほうが大きいのですが、どの政党も、目指しているところは同じです。

それは、バラマキにほかなりません。

「身を切る改革」を掲げる維新の会は違うのではないか、と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらも、基本政策に「ベーシックインカム」を掲げ、全国民にお金を配ろうとしているので、結局、目指すところは同じです。

今の日本で、「小さな政府」と「減量」を訴えているのは、幸福実現党だけだと言えるでしょう。

◆お金を配ってインフレに対抗? そんな馬鹿な・・・

コロナショック以降、給付金が大量に配られましたが、最近では、それが「物価高対策としてお金を配るべきだ」という政策に変わりつつあります。

4月26日には、政府が、地方創生臨時交付金を拡充し、1兆円の「コロナ禍における原油価格・物価高騰対応分」という枠を創設。

国会では、5月31日に、物価高騰対策を盛り込んだ2.7兆円の補正予算が成立し、そのうち、1.7兆円が原油高対策の補助金とされています(石油元売り会社への補助金)。

これに対して、立憲民主党をはじめとする野党は「岸田インフレ」と戦うために、もっと多くのお金を配ろうとしているのです。

しかし、これらの政策には、根本的な間違いがあります。

今のインフレは、コロナ対策で日銀が大量のお金を刷り、政府が大量のお金を使ったことで引き起こされました。

インフレの原因である「お金を配る」政策で、インフレ対策をすることはできません。

なぜ、インフレが進むのかというと、物やサービスの総量はたいして変わっていないのに、お金だけが大量に増えているからです。

物やサービスの総量が変わらない中で、お金の量が増えれば、1円あたりの価値が下がるのは当然です。

さらに、米国やヨーロッパが市場に流すお金を減らす中で、日本だけがお金をたくさん刷り続けているのですから、ドルやユーロに対して円は安くなっていきます。

日本は、食料や燃料、資源を外国から輸入しなければ経済が回らないので、円安になると、今までと同じ値段で製品がつくれなくなります。

そうなると、今まで110円で変えたものが120円、130円と値上がりし、生活が苦しくなっていきます。

そして、「物価高で生活が苦しい」という声が大きくなると、政治家はお金を配ることを約束しますが、それは、未来の物価高を生み出すので、何も問題は解決しません。

のどが渇いた人が塩水を飲み、もっとのどが渇くのと同じことです。

結局、バラマキをやめ、幸福実現党が訴える「減量の経済学」を実践しないと、物価高対策はうまくいきません。

政府の無駄な仕事を減量し、無駄に使われているお金や、見通しなく配られているお金を減らさないと、「また値段が上がった」と嘆く毎日を、延々と過ごさなければいけなくなります。

今回の物価高は、ロシアとウクライナの戦いの影響を受けていますが、本当の原因は日本国内にあるということを忘れてはなりません。

◆給付金によって壊れる「経済倫理」

給付金には、それ以外にも、危険な一面があります。

それは、努力なくお金をもらえることをきっかけにして、悪の道に転落する人が出てくる、ということです。

例えば、最近、朝日新聞で、コロナ給付金詐欺の容疑者は、20代以下が7割を占めているということが報じられていました。

警察庁によれば、給付金詐欺で、昨年7月から今年の5月末までに摘発された3770人のうち10代と20代が68%を占めました。

(朝日デジタル「コロナ給付金詐欺容疑者、20代以下68% SNSで『安易に加担』」編集委員・吉田伸八 2022年6月15日)

警察庁幹部は、その人たちについて「申請名義人として使われたケースが多いと思われる」「若者がSNSなどを通じて、安易に犯罪に加担している状況がうかがえる」などと指摘しています。

若者が多いのは、日本の給与体系では若い人の年収が少ない、という背景もあるのでしょう。

しかし、「給付金」が悪の誘惑を生み出していることは見逃せません。

「努力をしなくてもお金をもらえる」という仕組みが、倫理の元になる「縁起の理法」に反しているからです。

努力なくして豊かさを望むのではなく、やはり「善因善果、悪因悪果」という掟に従い、経済倫理のもとに「豊かさ」を求めることが大事です。

ヨーロッパで資本主義ができたのは、宗教改革の後にできたキリスト教徒(プロテスタント)の倫理があったからだと言われています。

神の栄光を地上に著すために、人との契約を守り、勤勉に努力し、時間あたりの効率を上げていく人たちが、豊かな社会をつくり出してきました。

岸田総理は「新しい資本主義」を訴えているのに、こうした「倫理」の大切さを忘れています。

給付金が、人の勤勉の精神を奪い、転落の道にいざなっている事実からは目をつぶっているのです。

(後編につづく)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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