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香港デモは、中国の”国内問題”ではなく、国際問題だ

http://hrp-newsfile.jp/2019/3620/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆G20を前にして、香港のデモ隊が各国領事館に陳情書を提出

G20首脳会談の前日に、香港のデモ隊は各国の領事館まで行進し、「逃亡犯条例」改正の完全撤回への支援を訴えました。

デモ隊は陳情書を領事館に提出し、この条例をG20の議題とすることを求めています。

「香港に自由を、いまこそ民主主義を」

「トランプ大統領、香港を解放してください」

そう訴えているのは、条例案の審議が止まっただけでは、まだ不十分だからです。

香港政府は、条例案が来年7月に廃案になることを受け入れると表明しましたが、議会は親中派が多数なので、実際は、あとで審議を再開できます。

そのため、デモ隊は香港政府が自ら案を完全撤回するまで妥協せず、各国政府に支援を呼びかけました。

香港政府は北京の言いなりなので、中国に主要国が抗議し、圧力をかけなければ、また改正案が蒸し返される恐れがあるからです。

◆香港をめぐる米中高官のそれぞれの主張

29日には、米中首脳会談が開催されますので、両国の事前の動きを整理しておきます。

まず、6月17日に、ポンペオ国務長官は、香港デモについての見解を問われ、「トランプ大統領は常に熱心な人権の擁護者だ」「(香港問題が)会談の議題に含まれると確信している」と述べています(FOXニュースのインタビュー)。

これに対して、中国の張軍・外務次官補は24日に「香港の問題は純粋に中国の内政問題であり、いかなる諸外国にも干渉する権利はない」と反発。

G20が、世界の経済協議の場であることを理由に、香港について議論することは認められないと主張しました。

しかし、それは、適切な主張ではありません。

確かに、G20は、もとは国際経済会議でしたが、G7を拡大し、新興国にまで参加枠を広げたのは、急成長する国に応分の責任を求める意図があったからです。

そのため、香港の民主主義を維持するという、返還時の約束を守ることを各国が要求するのは当然です。

また、「逃亡犯条例」改正で、市民や外国人が当局の意のままに中国本土に引き渡されるようになれば、香港の信用が失墜し、「国際金融都市」としての機能が失われます。

香港が中国本土と同じになれば、香港から他のアジア諸国(シンガポールなど)に事務所を移転する企業が増えますし、香港への投資が減るので、結局、国際経済にも影響が出るのです。

つまり、ポンペオ国務長官が述べたように、これがG20の議題に入るのは、当然のことです。

「議論を認めない」と主張する中国は、G20が自国内の会議ではなく、「国際会議」であることを忘れてしまったのでしょう。

諸外国の首脳の言論の自由を奪う権利が、中国にあるはずがありません。

◆香港デモの影響で、台湾の蔡英文総統と国民党候補者との支持率が逆転

香港デモに関しては、同じく中国の脅威を前にした台湾人が注目しています。

世論調査では、台湾人の7割(70.8%)が「香港人のデモを支持する」と答えており、中国への反感が高まっています。

中国は、香港と同時に、台湾の民主主義を脅かしているからです。

その結果、「中国との関係を改善し、景気回復を図る」という国民党の主張は、前よりも台湾人の心に響かなくなりました。

むしろ、中国への対決路線に切り替えた蔡英文総統の支持率が上がっています。

「蔡氏の支持率は47・7%(前月43・1%)、不支持率は43・6(前月46・8%)」

「17年11月から続いていた支持が不支持を下回る状態を抜け出した」(朝日6/25)

野党候補者のトップ3を見ると、香港デモについて「よく知らない」と答えた国民党の韓国瑜(高雄市長)は、首位から二位に下がりました。

現在は、郭台銘(テリー・ゴウ鳴海会長、7月1日に退任)が首位です。

第三位は、朱立倫元主席で、3人の支持率は拮抗しています。

(5/19⇒6/24、台湾民意基金会が野党候補者の支持率を調査)

・郭台銘:21.8%⇒29%

・韓国瑜:23.8%⇒26.4%

・朱立倫:18.3%⇒26.7%

郭氏が首位ですが、経済よりも「民主主義の危機」が懸念され、現在では、どの野党候補よりも蔡氏のほうが支持率が高くなっています。

「大手テレビ局TVBSが今月24日に公表した調査では、蔡氏に初めて逆転され、それぞれ8~15ポイント差を付けられている」(産経6/26)

香港市民が立ち上がったことで、アジアの政治の風向きが変わり始めています。|

◆G20議長国の日本が、率先して香港デモへの支援を打ち出すべき

しかし、G20の議長国である日本の政治家は、中国のご機嫌伺いのため、香港デモへの明確な支持を打ち出せないでいます。

菅長官が6月13日に行った記者会見でも、まるで他人事のような発言がなされています。

・「邦人保護の観点を含め、日本政府としても引き続き大きな関心を持って注視している」

・「民主的なプロセスの下、十分議論が行われ、『一国二制度』の下で香港の自由や安定などが維持されることを強く期待している」

・「今後とも香港当局とは必要に応じ意思疎通を続けていきたい」

・「平和的な話し合いを通じて事態が早期に収拾されることを期待する」

そして、今の日本では、台湾の韓候補のように、香港デモに冷淡でも、支持率が急落することもありません。

日本では、水や空気があるのと同じように「平和」や「普通選挙」があるのは当然だと思われているので、香港デモが、中国の脅威に直面する自分たちにとっても大事な問題だとは、十分に受け止められていないのです。

幸福実現党は、こうした風潮を打破すべく、「沖縄・台湾・香港の自由を守ろう!」デモを開催し、香港デモの支持などを訴えました。

6月16日には、沖縄県本部が開催。410人が参加しています。

26日には、東京都新宿区でもデモを実施し、炎天下のなか、約950人が参加しました。

トランプ大統領が、香港デモを支持するのかもしれませんが、米国だけが言っても、他の主要国が賛同しなければ、中国への圧力は半減してしまいます。

日本は本年、G20の議長国なのですから、米国とともに香港デモへの支持を打ち出し、他の自由民主国を先導すべきです。

こうした大事な時期であるからこそ、幸福実現党は、香港の民主化勢力を支援するとともに、平和ボケの日本を目覚めさせるために、力を尽くしてまいります。

【参照】

・米国務省HP”Secretary of State Michael R. Pompeo With Chris Wallace of Fox News Sunday”(2019.6.16)該当の発言は以下の通り。
“The President has always been vigorous defender of human rights. ”
” I’m sure this will be among the issues that they discuss. ”
・AFP通信「G20で香港に関する議論『認めない』中国政府」(2019.6.24)
・朝日デジタル「香港デモ、注視する台湾 一国二制度の『怖さ気づいた』」(2019.6.25)
・聯合新聞網「台灣民意基金會民調:韓國瑜大輸清14.5%」(2019.5.19)
・中国評論新聞網「流冷掉了?游盈隆:角色期望不同」(2019.6.24)
・産経ニュース「台湾野党、総統選で討論会 香港デモ影響で精彩欠く」(2019.6.26)
・産経ニュース「菅長官、香港デモを注視『民主的プロセスの下、自由の維持を』」(2019.6.17)
・日経電子版「官房長官『話し合いで収拾を』」(2019.6.13)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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