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【日露交渉】右手に「対露制裁」、左手に「平和条約」で進むわけがない

http://hrp-newsfile.jp/2019/3626/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆日露首脳会談 何が成果?

6月29日の日露首脳会談では、大きな進展がありませんでした。

今回、合意に至ったのは、以下の項目だと報じられています。

・日ソ共同宣言を基礎にした交渉加速を継続
・2023年までに相互訪問者を少なくとも20万人、計40万人に
・北極圏での液化天然ガス(LNG)生産事業や医療分野での協力拡大
・北方四島での共同経済活動を秋に試行(観光やごみ処理等)
・航空機での北方領土元島民の墓参りの実施

(※北極圏でのLNG生産事業では、三井物産とロシアガス大手ノバテクが協力する)

内容をみると、特に、これといった大きな成果が見当たりません。

◆新しい一手がなかった安倍政権

そもそも、今回は、6月22日の時点でプーチン大統領が、国営テレビのインタビューで領土返還の「計画はない」とあらかじめ述べていました。

南クリル諸島(北方領土)のインフラ建設を進めるとも発言しており、島の施設から「ロシア国旗を下ろすことはあるか」と訊かれた際には、「そうした計画はない」と答えていたのです。

今回は、今までと同じ議論を続けても、らちがあかないことは明らかでしたが、安倍首相に新しい一手はなかったのです。

日ロ首脳会談は26回目となりましたが、結局、平和条約と領土交渉は一向に進展していません。

◆「外交の成果」を政策パンフに書けない自民党

今回の会談も含めて、安倍首相の「外交」は、PRが目立つわりには、十分な成果があがっていません。

それは、自民党の政策パンフレットを見れば分かります。

経済政策では、若者の就職内定率が過去最高であるとか、企業の倒産が減ったとか、具体的に並べる内容があるのですが、外交・安保政策には、それがないのです。

そのかわりに、安倍首相の「写真」で紙面が埋められています。

トランプ大統領とゴルフしたり、モディ首相やマクロン大統領、プーチン大統領などと一緒に映っている写真が「成果」のかわりに並べられているのです。

◆たいして進展がない「外交・安保政策」

自民党の外交・安保政策には、「ゆるぎない防衛力を整備する」(米豪印等と)「自由で開かれたインド洋を実現」「北朝鮮の核・ミサイル放棄」「拉致被害者全員の帰国」などといった項目が並んでいます。

どれも大事ですが、これらの政策は政権ができた頃から主張してきたものです。

そのため、もはや「成果があったのかどうか」が問われるべき時が来ています。

対露外交については「領土問題を解決し、日露平和条約の締結を目指します」と書かれていました。

しかし、26回も首脳会談をし、プーチン大統領が2回訪日したのに、議論はたいして進んでいません。

そして、進んでいないのは、他の項目も同じなのです。

「防衛費が増えた」といいますが、微増にすぎません。

また、北朝鮮の核ミサイル放棄や拉致被害者の帰国は一向にめどがたちません。

「自由で開かれたインド洋の実現」は、中国に対抗する米国の「インド・太平洋戦略」との連携を意味しますが、今の日本は、中国のご機嫌取りに終始しています。

◆日本は、右手で制裁しながら、左手で「平和条約と領土返還」を求めている。

日露交渉に関して言えば、そもそも、「ロシア制裁を続けながら領土返還を求める」という日本のスタンスに矛盾があります。

これは、2016年12月に、プーチン大統領が初めて訪日した時と全然、変わっていません。

当時は、オバマ大統領の任期が残り1ヶ月しかなく、トランプ政権のロシア政策も固まっていなかったので、制裁解除のチャンスだったのですが、安倍首相は決断できませんでした。

プーチン大統領にとっては、日本がひたすら米国に追随しているようにしか見えず、その後、領土返還について態度を硬化させています。

実際に、返還後の北方領土に米軍基地がつくられる可能性を危険視し、「日本がこの問題でどの程度主権を持っているのか分からない」と指摘しています。

制裁解除もできない国が、米軍の意に反して基地の建設を止められるとは信じがたいからです。

プーチン大統領には、右手で制裁しながら、左手で平和条約と領土返還を求める奇妙な外交に見えたに違いありません。

◆日露交渉を進展させるために

やはり、日露交渉を進展させたいのなら、日本は、態度を明確にしなければいけません。

まずは「ロシアは敵ではない」ということを示す必要があります。

対露制裁を解除し、ロシアのG8復帰を促すなど、日本は独立国として主体的に動くべきです。

ロシアを敵国扱いすることを終わらせなければ、平和条約の締結や領土返還交渉が進まないのは当然です。

我が国は、日露関係を強化することでロシアが中国寄りになることを防がなければなりません。

日米同盟があるので、米国の理解を得るのは大変ではありますが、これは、それだけの労力を費やすに値する政治課題です。

自民党の「対米追随」外交だけで、日本の未来を拓くことはできません。

幸福実現党は、対露外交に新たな一手を打ち、日露平和条約を早期に締結すべきことを訴えてまいります。

【参照】

・自民党「令和元年政策パンフレット」

・朝日デジタル「プーチン氏『日本の決定権に疑問』 北方領土と米軍基地」(2018/12/21)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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