【NHK料金】国民に解約の自由がないのはおかしい
http://hrp-newsfile.jp/2019/3567/
HS政経塾スタッフ 遠藤明成
◆NHKもTV番組をネットで同時配信が可能に
5月29日、NHKのテレビ番組をネットでも同時配信を可能にすることを盛り込んだ「改正放送法」が成立しました。
今まで同時配信できるのは民放だけだったのですが、2020年のオリンピックに合わせて、NHKもこれが可能になりました。
これに対して、民放連(日本民間放送連盟)は、NHKがネットに業務を拡大するのは「民業圧迫」になると反発しています。
民放各局の収入源は、スポンサーからの広告収入等ですが、NHKは法律で支払いが定められた「受信料」で賄われているからです。
そのため、民放連は、NHKのネット業務の範囲に上限(*受信料収入の2.5%以下)を定めるべきだと主張しています。
◆国会議員もマスコミも公共放送の問題点はスルー
国会では、改正放送法に対して、自民党、立憲民主党、国民民主党、公明党、日本維新の会、希望の党、社民党などが賛成しました。
マスコミは、監査委員会のチェック機能強化(不祥事対策)、情報公開による透明性の確保といった法改正の要旨を報じたものの、公共放送の問題点については、あまり言及していません。
その問題点というのは、現代では「公共放送が必要な理由」が揺らいでおり、料金徴収の仕組みが時代遅れになっているということです。
◆「公共放送が必要な理由」の根拠は怪しい
NHKは、受信料で成り立つ公共放送は、国家に直接支配されず、民放のようにスポンサーに左右されないので、独立した放送が可能だと主張しています。
独立した立場で「公」のための放送を行うことが、公共放送の意義だとされているのです。
しかし、その実態は、建前と一致していません。
例えば、NHKの紅白歌合戦では、広告代理店や芸能事務所と密接な関係が築かれています。
大河ドラマでも、役者は芸能事務所を通じて確保しますし、プロモーションには広告代理店が関わります。
番組を通じて利害関係が生まれるので、実際のNHKは、自分たちが主張するほどには、独立できていません。
「特定の利益や視聴率に左右されず」(NHK)と書きながらも、NHKが毎年、紅白歌合戦や大河ドラマの視聴率を気にしているのは周知の事実です。
(※今年の大河ドラマ「いだてん」は視聴率一桁が続き、年間放映が危ぶまれている模様)
また、公的な情報の配信も、大部分は民放で可能です。
例えば、大地震の際には民放でも予定を変更して緊急報道を行っています。
ネット記事や動画、SNS、携帯アプリなどの媒体が増えたので、緊急情報はテレビ以外でも入手できます。
公的な情報の配信は、もはやNHKだけが担っているわけではないのです。
◆時代遅れな料金徴収システム
NHKの受信料については「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」(放送法64条)と定められています。
これは、テレビが広まり始めた頃にできた制度なので、現代では、もう古くなってきています。
1950年代は民放が少なく、主な番組がNHKから提供されていたので、「テレビを設置するがNHKは見ない」という人は稀でした。
しかし、今は多チャンネル化が進み、選択の自由の幅が広がっています。
WOWOWのようにスクランブルをかければ受信料を払った視聴者に限って番組を提供できるので、「受信設備を買ったらNHKと契約しなければいけない」というルールを強要する必要性はなくなっています。
◆NHKとの契約・解約を自由にしたらどうなる
NHKがいう「公共放送が必要な理由」が妥当かどうかは、「契約・解約」を自由に国民が選べるようにすればわかります。
NHKの主張が理にかなっているのなら、多くの国民は契約を維持するはずです。
しかし、納得できなければ、多くの国民がNHKを解約するでしょう。
これは、高度な価値判断が問われるような問題ではないので、国民に選ばれるかどうかで、NHKの主張の是非を判断できます。
放送法を根拠にしなければ存続できないのなら、NHKには、国民を納得させられるだけの「中身」がなかったと考えるべきなのです。
◆本当に「公共放送」が必要かどうかは、国民に選ばせればわかる
NHKは「公共放送」という建前を掲げ、憲法で認められた「契約自由の原則」に対する特別扱いを求めています。
しかし、その業務の多くは民放でも代替できますし、その経営実態と建前の間には、ギャップが生まれてきています。
そのため、今後のNHK改革の方向性としては、まず、NHKに関して、国民に解約の自由を認めることが大事です。
それでNHKが潰れても、民放に対して、非常時に公の放送を優先すべきことを、法律で強く義務づければ済むのではないでしょうか。
(※NHK改革には「民営化」という道筋もありえます。これは、民放と競争条件を同じにして「広告容認+独自コンテンツの活用」で放送局としての独自性を追求するという選択肢です)