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「日本の景気はよくなった」は本当? 中小企業統計が語る現実

http://hrp-newsfile.jp/2019/3480/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆「景気はよくなった」とうそぶく現政権

安倍政権は「景気は消費税増税で一時期、後退したが、最近は回復してきている」と見て、消費税を10%に上げようとしています。

「好景気が続いている」とマスコミも報じていますし、実際に、多くの企業の業績がよくなったのも事実でしょう。

しかし、その声とはうらはらに、中小企業の売上高は、そんなに伸びていません。

そのことを、財務省の「法人企業統計調査」から確認してみたいと思います。

◆バブル崩壊以降、中小企業の売上高平均は「半減」

まず、政府資料から見ますと、平成27年の『中小企業白書』では、小企業と中企業、大企業について、34年間の平均売上高の推移を比較しています。

そこでは、1980年の値を「100」とした時に、大・中・小企業の売上高(1社あたり平均値)の推移が書かれていました。

・大企業:98.9(80年代)⇒91.5(2010~13年)
・中企業:104.7(80年代)⇒51.6(2010~13年)
・小企業:103.7(80年代)⇒55.1(2010~13年)

驚くべきことに、中小企業の平均売上高が半減しています。

大企業の売上高はバブル崩壊後、失われた20年の間も少しずつ回復してきましたが、中小企業の売上は不調が続いていたわけです。

(2000年代では中企業は50.3。小企業は57なので、2010~13年に大きな好転は見られない)

安倍首相が前回の消費税増税を決断したのは2013年10月でしたが、このデータから見る限り、当時の政府が中小企業の状況を正しく把握できていたとは思えません。

(※前掲データは財務省の「法人企業統計調査」を整理したもの。資本金を基準として、小企業は1000万円~1億円未満、中企業は1億円~10億円未満、大企業は10億円以上と仮定。各グループの売上累計を調査対象の頭数で割り、1980年の値を100として指数化した)

◆「勢い」がなくなった日本の中小企業

しかし、これは2013年までの話なので、「その後は違うのでは」と思われた方もいるはずです。

そのため、財務省の「法人企業統計調査」の時系列データ(金融業と保険業除く)を用いて、その後の平均売上高を追跡してみました。

80年代と第二次安倍政権の期間(2013~17年)で比べてみましょう。

以下、売上高(1社あたり平均値)です。

〇中企業

・80年代:10.3億円
・2013~17年:5.3億円

〇小企業

・80年代:1.4億円
・2013~17年:0.7億円

多少、改善していますが、やはり、半減しています。

ほぼ、中小企業白書に書かれた通りの結果です。

利益率は上がり、経営体質は改善されましたが、この売上減は、中小企業が「勢い」を失ったことを示しています。

売上が減ればシェアの獲得もままならず、お金の貸手からは将来性に疑問符をつけられるので、これはゆゆしき問題です。

安倍政権は「起業家育成」も掲げていますが、売上減が深刻なのですから、消費増税で中小企業や新興企業の勢いを削ぐべきでありません。

※参考:1社あたり平均純利益。 ()内は売上高に占める純利益の割合

▽中企業

・80年代:901万円(0.9%)
・2013~17年:769万円(1.4%)

▽小企業

・80年代:71万円(0.5%)
・2013~17年:105万円(1.5%)

◆「景気がよくなった」は、主に大企業の話なんじゃ・・・

さらに、大企業のデータも見てみると、安倍政権のいう「景気回復」の主な対象が見えてきます。

〇1社あたり平均売上高

・80年代:281億円
・2013~17年:270億円

▽1社あたり平均純利益。 ()内は売上高に占める純利益の割合

・80年代:3億4500万円(1.2%)
・2013~17年:11億6000万円(4.3%)

売上高は微減ですが、利益率は3.6倍になったので、大企業は強くなったとも言えそうです。

◆大企業だけを見ている安倍政権では、日本経済復活はない

安倍政権は企業に賃上げを求め、限定的な減税政策で設備投資を募っていますが、どちらも、中小企業には難しい話です。

「金融緩和で円安になれば輸出企業に恩恵がある」といっても、中小企業の売上高に輸出が占める割合は4.1%(2015年)です。

円安は、原材料を海外から輸入・加工し、国内で売る企業にコストアップをもたらします。

輸出で儲ける大企業に消費増税はあまり関係ありませんが、国内で活動する中小企業は売上が減って苦しみます。

幸福実現党が、立党以来、この増税は消費を冷え込ませ、景気悪化をもたらすと述べていたのは、大企業だけでなく、中小企業まで含めて、日本経済を活発にしたかったからです。

消費税が上がれば利益の削り合いになるので、体力のある大企業のほうが有利になります。

しかし、それでは、新興企業は育ちません。

日本経済を活発にするには、新たに売上を拡大し、シェアを獲得するチャレンジャーが必要です。

幸福実現党は、消費税5%への減税によって消費を盛り上げ、零細企業から大企業までの業績を盛り立てることを目指します。

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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