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4月から始まった制度改正――日本に必要とされる「勤勉革命」

幸福実現党政務調査会 西邑拓真

当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。
https://youtu.be/BGBWAB_AQu4

◆新年度の開始で、暮らしはどう変わるか

新年度が始まり、私たちの生活に影響を与える、料金の値上げや制度改正が行われています。何が変わったのか、簡単に見てまいります。

一つ目は、食品や宅配料の値上げです。

4月に値上がりする食品は、価格を変更せずに中身を減らすという「実質値上げ」を含めると、2806品目に及びます。

宅配料金は、佐川急便で平均7%、ヤマト運輸で平均2%の値上げに踏み切っています(*1)。様々な商品の値上がりが続いており、今後、生活はますます苦しくなっていくと懸念されます。

二つ目は、時間外労働の上限規制の適用です。

安倍晋三政権の下で進められた「働き方改革」により、2019年以降、一般の労働者の時間外労働、残業に対して、年間で720時間の上限規制が設けられましたが、運送業、建設業、医師については、人員確保が難しいなどという理由から、その適用が5年間猶予されていました(*2)。

しかし、猶予期間が過ぎる今、こうした業種が、労働時間の減少により現場で支障が出る、いわゆる「2024年問題」に対して十分に対応できているとは言えないでしょう。

今後、宅配料などの更なる値上げ、場合によっては地域で医師が不在となるケースが生じるなど、私たちの生活に打撃を与えかねません。

三つ目は75歳以上の一部の方を対象にした公的医療保険の保険料引き上げ、四つ目は、森林環境税の導入です。森林環境税は、国内の森林整備を目的に、住民税に上乗せされる形で、年間一人あたり1000円が徴収されるという新しく導入された税金です。

こうした保険料の引き上げや新税の導入は、国民負担をさらに増大させることになります。

五つ目は、ライドシェアの一部解禁です。

これまで、タクシー以外の自家用車が客を運ぶ「白タク」行為は原則禁止となっていました。

しかし、タクシー不足や地域における移動手段を確保するという観点から、今月1日より、東京や京都など一部地域を対象に、ライドシェアが部分的に解禁されることになりました。

ただ、海外とは違い、ドライバーはあくまでタクシー業界に雇用される形に留まっており、ライドシェアが運行できる区域や時間帯も限られています。

このように一見「規制緩和」に見える「ライドシェア一部解禁」は、不足する移動手段を穴埋めする「その場しのぎ」の策にすぎません。タクシー業界が政治に守られていることで、料金は高止まりしてしまっています。

それによって生じる損失を被っているのは、私たち消費者です。利便性を高めたり、安全性を担保するルールを整備しながらも、地域の足を確実に確保するという観点から、タクシー業界以外にも有償運送業への参入を認める「全面解禁」を目指すべきではないでしょうか。

◆経済成長路線への回帰に向けて必要な「勤勉革命」

今の日本は、様々な業界が既得権益で守られているほか、増税や社会保険料の引き上げで、「大きな政府」化が進んでいます。

一方で、日本経済はこの30年、低迷が続いています。昨今、GDP3位の座をドイツに明け渡し、近く、インドにも追い抜かれるのではないかとも言われています。

日本が経済成長路線に回帰するには、何が必要なのでしょうか。その大きな鍵となるのが「勤勉」という価値観ではないでしょうか。幸福実現党の大川隆法総裁は、『減量の経済学』の中で、次のように述べています。

「自由的な意志による努力の継続があって、そして経済的繁栄は来るのです。

過去、こういう『勤勉革命』というのは、イギリスで二回ほど起きています。十六世紀、十八世紀ごろに、それぞれ起きていますが、これでイギリスの国力がガーッと上がっているわけです。

要するに、『個人個人が、自由意志に基づいて勤勉に働いて、世の中を発展させようとする』、『自分自身も豊かになって、世の中も豊かになるように努力しようとする』―、世間の風潮がそういうふうになってきたときに、産業革命が起きたりして、国がもう一段上がっているわけです。」

◆勤勉革命がイギリスで起こった背景とは

ここで、18世紀ごろのイギリスに焦点を当てると、1700年から1870年までの170年間で、イギリス経済の規模は、10倍にまで拡大しています(*3)。

この経済成長を裏付ける要素の一つが、労働時間です。特に18世紀後半、1760年から1800年において、年間の平均労働時間は約2631時間から3538時間へと35%増加しています(*4)。

当時、工場での生産活動が行われていましたが、それは、労働者による長時間労働があってこそ、運営が成り立つものでした。確かに、あまりにも長い労働を強いられたり、場合によっては児童労働が起こったケースもあったのは事実でしょう。しかし、プラスの面に焦点を当てると、人々の勤勉性が国全体としての活発な生産活動に繋がっていき、これがさまざまな「技術革新」が生み出された、「産業革命」にもつながったのは確かです。

ではなぜ、当時のイギリス人は労働意欲が高かったのでしょうか。

一つは、「財産権」が保障されていたこと、すなわち、国家が個人や企業の財産を没収するといったリスクがほとんどなかったことです。

1688年に起こった「名誉革命」以降、イギリスでは議会政治が確立し、国家権力はある程度制限されていました。国民は自らの財産が政府に奪われる心配もなく、安心して労働に励み、富を築くことができたのです。

もう一つは、信仰観です。マックス・ウェーバーが説いたように、当時のイギリスの人々は「魂の救済は、あらかじめ神によって決められている」というカルバンの「予定説」に従って、自らが「選ばれし者」であることを示そうと、勤勉に働いて富を蓄積していったのです。

16世紀以降、世界経済のフロントランナーを走ったのはオランダ、イギリス、米国とプロテスタントが優位な国々であることからも、宗教が国の経済的な繁栄に大きく影響を及ぼしてきたと言えるでしょう。

いずれにしても、経済活動の自由や民主主義、そして信仰をベースとする考え方が、勤勉革命が起こった素地になっていたのではないでしょうか。

◆日本経済が成長するのに必要な「小さな政府・安い税金」

今、日本では、バラマキが横行しています。バラマキは必ず、増税など国民負担の増大につながります。増税は、働いたり知恵を出して稼いだお金が強制的に国家に没収されることに他なりません。これはある意味で国民の財産権に対する侵害です。

バラマキ・増税は、働かなくてもお金がもらえること、また、働いても重い税金で自由に使えるお金が少なくなるということから、労働意欲をますます低下させることにつながります。ましてや今、政府は働く自由を阻害する新たな規制まで設けています。

日本経済が成長するためには、確かな信仰観の下で、政府はバラマキや要らない規制をなくして、「小さな政府、安い税金」を目指すべきではないでしょうか。

(*1)ヤマト運輸は、大型の宅急便やクール宅急便など、佐川急便は飛脚宅急便を対象としている。

(*2)建設業の労働者に適用される上限規制は、他の業界と同様、年720時間が上限となる。運送業のドライバーは年960時間、医師は、休日労働を含めて年1860時間となる。いずれも、特別な事情がある場合に限られる。

(*3)マーク・コヤマ他『「経済成長」の起源』(草思社、2023年)より。

(*4)永島剛「近代イギリスにおける生活変化と勤勉革命論」(専修大学経済学会, 2013年)より。

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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