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月面基地の早期建設をめざして

HS政経塾6期生 須藤有紀

◆宇宙でも?迫りくる中国の脅威!

先月17日、中国は1ヵ月の長期任務を目標とした、有人宇宙船「神舟11号」の打ち上げを行ないました。またその2日後、中国時間の19日午前3時31分、地球から393キロ離れた軌道上で、実験室「天宮2号」へのドッキングにも成功しました。

現在、中国の宇宙開発技術、打上経験、実績は、アメリカや旧ソ連を含むロシアにははるかに及んでいません。

しかし、着々とその差を縮めて来ています。

習近平国家主席は、2030年に「宇宙強国」となることを目標に掲げています。

中国政府も宇宙計画を優先課題と位置づけ、2018年には独自の宇宙ステーション「コアモジュール」を打ち上げ、2022年に稼働を計画しています。

また、2017年には月面の土壌サンプル採取を計画し、2018年には月面裏側への着陸を計画するなど、月探査に意欲を見せています。

こうした中国の動きに対して、日本はなかなか宇宙開発に乗りきることが出来ていません。

◆本気でやるなら、「プログラム的探査」

元日経BP記者でノン・フィクションライターの松浦晋也氏は、日本の宇宙開発の問題点は特に「プログラム的探査」の欠如にあると指摘しています。

プログラム的探査とは、長期的な計画に基づいて、戦略的に行われる探査の事です。

月探査で言えば、大まかには以下のようになります。

(1)月の周りを回って月表面の情報を集める探査機を打ち上げる。
(2)月に着陸する。
(3)月を走り回って情報を集めるローバーを送り込む。
(4)月の物質を収集し、持って帰る「サンプル・リターン」を行う。
(5)有人探査を行う。

日本は、はやぶさを例外として、ほとんどのプロジェクトが単発です。

月探査においても、jaxaは月探査の長期計画をjaxa案として出していますが、実現はなかなか厳しいようです。

◆立ちはだかる「予算」の壁

2007年に、日本で初めて月探査のために打ち上げられた月周回衛星「かぐや(SELENE)」は、目覚ましい成果をあげて諸外国から称賛を浴びました。

しかし、その後続機である「SELENE-2」は開発を中断されています。理由は色々と考えられますが、一番は予算の不足だと言われています。

SELENE-2は、月への着陸探査をめざしたプロジェクトでした。

SELENE-2サイエンスチームは、「着陸探査は周回探査に比べても2倍の費用がかかる」とした上で、各国は1000億クラスの予算で実施していると指摘しています。

日本の宇宙開発関連予算は3000億円規模なので、着陸探査だけでもおよそ3分の1の予算規模を必要とすることが分かります。

しかし、現実に中国が月探査に力を入れ、月面基地建設や「宇宙強国」としての地位に色気を示している以上、日本も月探査に積極的にならねばなりません。

有人飛行経験のあるアメリカなどと協力して月への有人飛行を行い、中国をけん制する必要があります。

◆でっかい理想を掲げて積極投資を!

SELENE-2は、成果を最大化するために様々なミッションを担おうとしていましたが、開発を中断され、そのミッションの一部を別プロジェクトが引き継ぐ形となりました。

公募で決まったプロジェクトである、SLIMは、ピンポイント着陸の実証を目的とし、2019年にイプシロンで打ち上げ予定となっています。

SLIM自体は素晴らしいプロジェクトですが、SELENEとは別プロジェクトの単発ミッションです。単発ミッションは、同様の探査プロジェクトの結果が出てから、次のプロジェクトに移るので、移行期間が長くなりがちです。技術継承や人材確保、部品などの面で様々な弊害が生じます。

幸福実現党は、「高付加価値の未来産業(航空・宇宙産業、防衛産業、ロボット産業、新エネルギー開発など)に対し、10年以内に100兆円を投資し、振興を図る」という政策を掲げています。

やはり、こうした大胆な政策を掲げ、単発ミッションではなくプログラム全体に対して、積極的な投資をはかる必要があるのではないでしょうか。

◆宇宙はフロンティア

宇宙は21世紀のフロンティアです。

宇宙開発の過程で編み出された技術は、私たちの生活に転用され、より便利な物を生み出しています。
 
カーナビや、Googleマップなどの地図サービス、天気予報などは、衛星を使っていますし、宇宙服の技術を転用した肌着や、高性能の浄水器なども誕生しています。

また、月の資源を利用した建設材料や、フロン3といった新エネルギーの材料の発見も期待されます。

こうした経済的発展可能性の面からも、先述した安全保障の面からも、月面開発は重要です。

日本は国家として、月面基地建設までを視野に入れた月面開発プログラム全体に大規模な予算を投入すべきです。そのためにも、まずは宇宙産業を戦略産業に位置付け、官民ファンドの創設などを検討する必要があります。

日本のさらなる発展のためにも、宇宙開発が一段と進むことを願ってやみません。

(参考)
産経新聞 http://www.sankei.com/life/news/160101/lif1601010006-n5.html
東洋経済 http://toyokeizai.net/articles/-/140675
CNN.com http://www.cnn.co.jp/fringe/35090776.html
「合わせ技は認められないのか~SELENE-2の実情~」
http://www.isas.jaxa.jp/j/researchers/symp/sss13/paper/S2-004.pdf
日経BP 
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/matsuura/space/071026_change/

須藤有紀

執筆者:須藤有紀

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