日本林業の再出発に向けて
幸福実現党 兵庫県本部副代表 みなと 侑子
◆外資買収による水源地問題から考える日本林業
外国人や外国人資本による水源地買収が問題になって久しくなります。
首相が衆議院予算委員会において「政府としても大変重要な問題であると考える」と発言し、対応を検討しているといいます。
この問題はすでに多くの指摘がなされてきたが、対応が後手後手になっており、具体的な対策がない点、省庁間の連携の問題などが挙げられています。
北海道では、中国資本や中国資本の影がある日本企業が広大な土地や森林を買収しています。中には水源地を抱える270haに及ぶ森林地帯もあるそうです。
しかし、なぜ日本人が土地や森林を手放すのでしょうか。先祖代々の土地を手放したがる日本人は少ないはずです。
この問題の根本には、日本林業が抱える問題があるのかもしれません。
◆日本林業の現状
日本の国土面積のうち、森林は67%を占める。森林といえば水源地のような場所を想像するが、実際はそうではありません。
日本の森林のうちの40%にあたる約1000万haはスギやヒノキ、カラマツが植林された地です。
戦後、日本人は森林を大規模に伐採し、そして植林でした。
1955年の時点では、スギ1㎥で雇用できる作業員数は11.8人でした。そのため、1日に概ね12人を雇うことができ、林業は成り立ったのです。
しかしこの後、人件費が上がり、国産材は急速に輸入材にとって代わりました。
新築住宅の減少に加えて、大手住宅メーカーの台頭により木材住宅が激減した結果、私たちが木を使う機会もぐっと減ったのです。
その結果、50年後の2004年の時点では0.3人しか雇えなくなった。山の資産価値は50年前に比べて、40分の1になってしまいました。
そうなると、山に手入れに入る人は激減、木は切り出されなくなります。
人の手が入らない場所は、密植された針葉樹の「死の森」となってしまいます。
光が林床に当たらず、真っ暗なのはもちろん、草も生えていない。すると餌を求める虫も、それらを狙う動物もいない。そのような中で木々は、何とか子孫を残そうと必死に花粉を飛ばしています。
◆解決への道のりを探して
大企業や大規模林業家の所有する森林では、世界の林業国から学び、生産性を高め、付加価値を高めた木を市場に供給しようと努力しています。この知恵に学び、山の価値を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。
一つには、森林管理のための徹底的なコストダウンと共に効率化を進めることです。
政府の補助金制度も存在しますが、従来は働いた人数分に対して補助金がでていたため、人手をかけないようにするための合理化を行えば、補助金が少なくなるという矛盾がありました。
現在では合理化や木材生産のための努力を行えばメリットがでる形となりましたが、林業においては他の業界で当たり前に行われていたことが行われていなかったのです。
日本では経営が重要視されていませんが、ヨーロッパに存在する森林専門大学では林業経済学、森林政策をはじめさまざまな学問を3年間学び、専門性と学術性をもつ森林官が数多く存在しています。
これからは、日本でも経営の視点を持ち、広大な森林を管理する林業家が求められます。
もう一つは、実際に木が適正価格で売れるようにすることです。
現在、ある程度の規模を擁する林業家でも、その平均収入はわずか26万円です。そのためほとんどの人が兼業を行っています。ビジネスとして成り立たなければ、林業家の成り手は出てきません。
国産材の使用が推進されていますが、市場に木が溢れればいいというものではありません。
需要以上に供給がすすめば、木の値段が暴落し、林業家にダメージを与えます。新たな需要を作り出していくことが求められているのです。
例えば木の割り箸は環境に優しくないということで、プラスチックのマイ箸に変えた人もいるかもしれません。しかし真相はその逆で、割り箸ほど林業家を助けた商品はありません。
割り箸のために木を切っているのではなく、他の木を大きくするために切らないといけない間伐材を用いて作られるのが割り箸です。
林業にとってはコストパフォーマンスに優れた商品で、その需要がなくなれば間伐材も行き場がなくなり、山に放置されかねません。このように間違ったエコ思想には、注意が必要です。
「日本書紀」では、スサノオノミコトの毛を抜き、地面に挿したところ木が生えてきたとされています。日本中にある山や木、森林は神様からの贈り物です。
これらをどう活用し、さらに100年後に残していくか。日本の林業はこれからが勝負です。