「自由」を基盤とした経済政策の必要性
文/HS政経塾5期生 水野善丈
◆最低賃金決定に異例の政権介入
企業の最低賃金の水準は毎年夏に、労使の代表が厚生労働省の「中央最低賃人審議会」という場で議論され決められています。
この議論に歴代の政権は口を出すことはありませんでしたが、今夏、安倍首相は「賃金の大幅な引き上げ」を要求、そして、来年度賃金を3%増やすように企業に要請しました。
◆企業の内部留保に課税?
さらにこれだけに止まらず、最低賃金引上げの為に、企業の内部留保への課税も政府・与党内で議論が進められています。
内部留保とは、企業の最終利益から配当などにお金を回した後に残る企業が自由に使えるお金のことをいい、企業にとっては体力の部分といえます。
そこに対して、政府は内部留保に課税することによって、企業に投資や賃金を増やさせる狙いを考えているのです。
◆目的は個人消費を上げるため?
では、なぜ政府はここまでして市場に介入し賃金を強制的に上げようとするのでしょうか。
その狙いとして政府は、「最低賃金を上げることによって、落ち込み傾向にある個人消費を増やすこと」を考えています。
なぜなら、安倍首相は2020年までにGDPを600兆円に増やすという目標達成を目指しており、それを達成するためには、GDPの6割を占めている個人消費を増やしていかなければならないと考えているからです。
◆矛盾した政策
しかし、ここまででちょっと考えてみれば、政府が矛盾した政策をしているのが分かると思います。
そもそも、安倍首相がGDPを増やしていく上で大切だと考えている個人消費が冷え込んでしまったのは、今年、消費税が5%から8%の増税されたことが原因であることが明らかです。
そして、それに懲りず、2017年には10%へのさらなる消費増税をしようとしています。
この状況をみるにつけても、自分たちで立てた目標(GDP600兆円)に対して、答えの道(個人消費の活性化)を知っているにも関わらず、そこに自ら障壁(消費税増税)を持ってきて通れなくし、国民に更なる負担を強いる政策をしていることが分かると思います。
◆消費減税ですべて解決
つまり、安倍首相が本当にGDP600兆円を目指しているならば、国民生活を縛り経済成長を押しとどめている消費税増税を止めて、消費減税をすることが先決なのです。
その結果、政府が心配している「GDPの6割を占める個人消費」が回復し、真にGDPを増やすことができ、財政赤字も縮小することができるのです。
◆徴税強化策は自由を奪う
また一方で、政府が増税ありきの政策を実行する時は、必ず国民の自由が阻害される方向に行くということも知らなくてはいけません。
今年に入り消費増税だけでなく、所得税・相続税の最高税率の引き上げも行われ、徴税強化が進められています。
それに伴い、政府による市場介入が増え、マイナンバー制度の導入による国民の私有財産の監視強化も進められ、ますます国民の自由が狭まっているのです。
◆「自由からの繁栄」が大切な理由
幸福実現党はこうした「自由」の観点からも、現在の政府が進めている「国民から税金をいかに取り、それを使うか」という「大きな政府」の体制に対して、警鐘を鳴らしています。
政府が勘違いしてはいけないのは、国家の主役が「政府」ではなく「国民」であるということです。
幸福実現党がなぜ「自由からの繁栄」を訴えているのかというと、「一人一人の国民を最大の価値・主役として、それぞれに与えられた天性や才能を発揮させる方向に向かってこそ国家が繁栄する」からなのです。
政府は、政府中心の徴税強化の考えを白紙に戻し、減税政策・規制緩和といった国民の自由を広げる方向で経済政策を考えるべきだと思います。