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容積率規制の緩和で、安全で新しい都市づくりを【3】(全3回)

文/HS政経塾第二期卒塾生 曽我周作

前回の「提言(2) 容積率制限の緩和で経済活性化を図る」の続きからお送りいたします。

◆提言(2) 容積率制限の緩和で経済活性化を図る(つづき) 

私の前職での経験でも、老朽化したビルオーナーが、そのビルの建設当時の容積率規制の中で立てたビルが、現在の容積率規制では、その規制上限を上回っており、建て替えをした場合、現状の建物よりも容積率の低い、つまり小さなビルしか建設できないため、建て替えを断念し、既存のビルの改修をするしかないということがありました。

老朽化し、設備的に明らかに劣るため新しくビルを建て替えたくても、既存のビルより小さなものしか建てられないならば、それを断念せざるを得ない場合もあり、これは投資を抑制する効果を出してしまいます。

ですから、容積率の緩和を行い、そのような不利を生むのではなく、さらに現状よりも大きな建物を建てられるようにすることで投資意欲を高められれば、それも大きな経済効果を期待できるでしょう。

また、東京の人口が増え、その人たちが郊外に住むと、職住が離れた人たちが増加し、現状のようにある一定の時間に集中的に都心に向けて移動をすると、その人たちを輸送するための輸送力強化をはかる投資が必要にもなります。

それは必ずしも鉄道会社にとって望ましいものとは言えません。

容積率の緩和がなされて職住接近型の都市開発が進めば、その分都心の都市交通の発達が図られるでしょう。それは新しい投資になります。

したがって容積率の緩和で都心の都市開発をすすめ、職住接近型の都市開発を進めていくことは、経済効果は非常に高いことが期待できる政策であるといえるでしょう。

ただし、経済成長率が極めて低いことが東京の都市としての魅力を落とす大きな原因です。法人税の税率が世界的に見て非常に高いことがビジネス上の大きなリスクであるとも見られています。

したがって、法人税率を下げ、適切な経済政策のもとで経済成長を実現し、日本国内のみならず、世界から東京に進出したくなる環境づくりを行って、東京に「人」が集まる魅力を高めなければなりません。

◆提言(3) 共同化と高層化のメリットを出す

土地は限りあるものですので、容積率を緩和していく中で職住接近型の都市にしていくということは、共同化を進めるということです。

つまり、これまでよりも高層の建物(マンション)にもっと多くの人が居住する方向で開発をすすめていく必要があります。

したがって、建物の共同化を図る場合にインセンティブを働かせていく必要があります。

例えば「敷地規模の大きさにより与える容積率を変えて、大きな敷地としてまとめて利用する程大きな容積率が与えられる仕組みが考えられる。」(『都市と土地の理論』p111)と、岩田規久男氏が指摘するように、何らかの条件で容積率緩和という形でインセンティブを働かせるなど、開発事業を行うメリットを出す政策が求められます。

2014(平成26)年2月28日に閣議決定された「マンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律案」では耐震不足のマンションの建替え時に一定の条件のもとに容積率を緩和する特例をつける案になっています。(『都市のチカラ 超高層化が生活を豊かにする』森ビル都市再生プロジェクトチーム)

これにより、建替え時の費用負担を減らそうとするものです。

つまり、緩和された容積率を用いてより大きなマンションを建設し、その部分を新たな入居者に売却することで、前から住む住人の建替え費用負担の軽減を図るわけです。

これが、もし容積率が緩和されないなどで、住民だけで建替え費用等を負担するのは非常に厳しいことになります。この法律案そのものには私はまだまだ課題も多いと思いますが、要は事業へのインセンティブを働かせるということが非常に重要になるということです。

これは共同住宅から共同住宅の例ですが、戸建て住宅地を再開発事業で共同住宅化する場合にも、同様に容積率緩和はメリットになります。

共同化する際に容積率を緩和し共同住宅を建設することで、新たな入居者に向けて緩和された容積を有効活用し大型の共同住宅等を建設し、事業にかかる費用に充てることで住民負担を軽減することができます。

民間事業者にとってもインセンティブが働き、再開発事業等の後押しをすることもできます。

いずれにせよ、容積率の緩和だけにとどまらず、様々な方法でインセンティブを働かせ、民間の活力を引き出す方向で政策を組み立てるべきです。(完)

そが 周作

執筆者:そが 周作

政務調査会 都市計画・インフラ部会長・HS政経塾第2期卒塾生

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