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容積率規制の緩和で、安全で新しい都市づくりを【2】(全3回)

文/HS政経塾第二期卒塾生 曽我周作

前回は、東京都心の容積率利用がまだまだ低く、発展の余地があること。また現在の容積率制限については何かの明確な理論的根拠に基づいたものではないことをお伝えしました。

今回からはいくつかの提言をさせていただきたいと思います。

◆提言(1) 容積率制限の緩和で、床面積当たりのコストを下げる

職住接近型の都市を建設するには、都市部に多くの人が暮らすことを可能にする必要があります。

また、同時に経済の発展のためには、多くのビジネスチャンスがある都心部に進出したい企業が、もっと都心部に進出できるようにすることも必要です。

ここにおいて目指すべき方向は床面積当たりのコストを下げることです。

岩田規久男氏は、下記のように指摘しています。

「容積率の上昇はそれによって土地単位面積当たりの地代(土地所有者自身が使用する場合は、帰属地代)収入を増大させるから、地価を上昇させる可能性がある。」

「しかし、地価が容積率の上昇に比例して上昇しないかぎり、床面積当たりの地価は必ず低下する。…人々は一般的に、同じ床面積であれば共同住宅よりも一戸建て住宅を好み、共同住宅であれば容積率の低いそれをより好む傾向がある。」

「そうであれば、地価は容積率が上昇しても比例以下でしか上昇しないし、容積率の上昇とともに地価上昇率も低下する。」(『都市と土地の理論』p41)

床面積当たりのコストを下げるには、供給量を増やす政策が必要です。

現在よりも容積率を緩和し、都市計画を見直し、高容積率の建築物を建てられるようにすることで、土地当たりの床面積供給量増加させる方向に政策誘導をすべきです。

もちろん、そうすることによって、土地にさらに大きな建物が建てられるようになれば、土地の価値が上昇します。都心部で利用可能容積率が1%上昇すると地価が0.77%上昇するという説もあります。(『容積率緩和型都市計画論』p139)

土地の地価が上昇するということは土地に対する固定資産税の税収増加にもつながり行政側にもメリットはあります。

当然、整備されたインフラにあまりにも見合わない容積率制限や、整備予定のインフラがあまりにも設定された容積率に見合わないものであるならば問題でありますが、方向としてはインフラという都市の「器」を大きくし、高層都市に耐え得るものにしていくべきです。

◆提言(2) 容積率制限の緩和で経済活性化を図る【1】

岩田規久男氏の指摘は続きます。

「企業が集積する都市の中心部は容積率を高くして高度に利用しなければならない。土地を高度利用すれば、企業はそれだけ相互に近接した場所に立地できるから、交通時間と交通コストを節約できるし、交通量も抑制できる。」

「また車道と歩道を含めた道路の幅もゆったりとれる…職住近接を図って通勤混雑を緩和するためにも、朝が早かったり、夜が遅かったりする職業に従事している人たちのためにも、都心部から30分以内といった地域にも住宅が必要であろう。」(『都市と土地の理論』p39)

以上のように、容積率の緩和を行い、土地を高度利用できれば、非常に経済的な効果が高いといえるでしょう。

企業間の距離を縮めることは、問題対応に要する時間も非常に節約できることになります。「移動」によって失われる時間を減らし、付加価値創造のための時間を生み出すことにもなります。

さらに、岩田氏が指摘するように、これからさらに土地の高度利用を図っていくとすると、それにともない都心の交通需要も自然と高まることになるわけですが、職住の接近をはかれば、郊外から都心への通勤ラッシュ時の交通需要増加の抑制にもつながります。

現状のような職住が離れた状況の下で失われる時間を減らし、ある意味において時間を創造します。職住の接近が図られれば人々の心身への負担も抑えられますし、職住接近型の都市建設にむけた新しい投資も進むでしょう。

(次回につづく)

そが 周作

執筆者:そが 周作

幸福実現党 政務調査会 都市計画・インフラ部会長

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