世界経済の安定には「成長産業」が必要!
文/HS政経塾第5期生 表なつこ
◆原油安で混乱する国際経済情勢
中国の景気減速によって、投資家の真理が冷え込みこれまで需要が見込めると思われていた原油価格が暴落しています。中東のみならず世界の原油産出国の景気も悪化させ始めています。
他方、原油安は日本にとってはメリットがあります。日本は世界第3位の原油消費国、世界最大のLNG輸入国であるため、原油価格の安さは貿易収支の改善などに寄与します。ガソリン代や電気料金の下落にもつながります。
その反面で石油の元売り業など資源ビジネスには苦境となります。
また、短期的にはメリットがあるものの、原油安が長期化すれば、投資の減少によって石油生産量が減ることが考えられます。
石油開発は、探鉱から生産まで3~5年ほどかかるため、開発が停滞すれば5~10年後に供給が不足して、油価が高騰する危険性もあるのです。このように、原油安は世界を混乱させる可能性を含んだものです。
◆消費が低迷していては国内経済の成長も見込めない
安倍総理は9月24日の記者会見で、GDP(国内総生産)を600兆円に行き上げることを今後の目標に掲げました。ですが、9月8日発表の2015年4~6月木の実質GDPは、3四半期ぶりのマイナス成長となっています。
この原因は、輸出の悪化と個人消費の減少が原因だと言われています。輸出の悪化は、中国経済の成長鈍化という外部要因が強いため、ある意味仕方がないと言えますが、GDPの6割を占めている個人消費が低迷していることは不安材料です。
ここを改善しない限り、GDP600兆円は実現できないでしょう。
GDP公表後に出された各シンクタンクの見通しでは、7~9月のGDPはプラス成長に転じるという予測が主流ですが、日本総合研究所の枩村秀樹氏の観測によると、これは猛暑効果やプレミアム付き商品の使用によるもので、消費の押し上げ効果はわずかであり一過性のものだと指摘されています。
さらに、食品や身の回り品など家計に身近な品目は値上がりしており、内閣府の調査では家計の85%が1年後に物価が上昇すると予測しています(9月26日の日経新聞)。消費税10%への再増税の問題などもあります。
値上がりと合わせて所得も増えているなら問題ありませんが、所得が上がらないなか物価がさらに上昇すると考える人が増えれば、節約志向が強くなり消費が低迷することは明らかです。
アベノミクス開始以降、名目上の所得は上昇していますが、物価の上昇を上回っていないため、実質の所得はまったく増加していません。
先述の枩村氏は、「景気回復の恩恵は家計部門には全く波及しておらず、ここで好循環のメカニズムが途切れてしまっている」と指摘しています。これは、幸福実現党がアベノミクスは失敗すると主張していた通りの内容です。
個人消費を回復させるには、国内産業を活性化させ企業が利益を上げ、それによって雇用者の賃金上昇を実現させる必要があるでしょう。
翻って日本の産業界を見てみると、中小企業の多くが、電気料金が上がってもその値上がり分を価格に転嫁できず、人件費削減などで対応しています。
電気料金は、「燃料費調達制度」で原油などの輸入費用が電気料金に転換される仕組みで、電気の使用者も燃料の輸入代を負担しています。
現時点では原油価格は安くなっており日本にはメリットもありますが、長期的に見ると原油価格は上昇し続けてきたもので、さらに国際情勢の変化に応じて乱高下する不安定なものです。
◆変動する経済環境に合わせて何が必要か考えよう!
電気料金の安定化には、原発の早期再稼働が有効です。また放射線を無効化する技術や使用済み核燃料を再利用する技術の実用化などは、人類が必要とする成長産業だといえるでしょう。
日本は、国内の可処分所得を増やし、消費拡大によってGDPを成長させ、新たな成長産業を創っていくべきです。
日本の成長産業が新たなパイを創出することによって、世界の経済的混乱も収束させることができるよう、大きな志で成長産業の育成を訴えていきたいと思います。