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欺瞞に満ちた「安心の社会保障」

文/幸福実現党・千葉県本部副代表 古川裕三

◆支持率回復を狙った「新・三本の矢」

先般、安倍総理は、アベノミクスの第二ステージとして、(1)希望を生み出す強い経済、(2)夢を紡ぐ子育て支援、(3)安心につながる社会保障を謳った「新三本の矢」を発表し、具体的には、(1)GDP600兆円、(2)出生率1.8、(3)介護離職ゼロなどを掲げました。

特に(2)と(3)に社会保障の充実がうたわれていることをみてもわかるとおり、国民の生活重視の路線を強調し、安保法制の成立後の支持率回復と、来年の参院選を意識した内容となっています。

なお、8%→10%への消費増税についても、17年4月の予定通り実施するとしていますが、これは、子育て支援も社会保障も、10%への消費増税が前提であるということであり、逆に言えば、「社会保障」という大義のもと、「人命」を人質に取り、誰も反対できなくさせているわけです。

◆滞納額ワーストの消費税

ちなみに、国税庁の発表によると平成26年における消費税の新規発生滞納額が、前年度比117.1%の3294億円で、全税目の55.7%を占め、例年同様に税目別滞納額でワーストでした。

消費税率が5%から8%に引き上げられたことで、消費税の新規滞納発生額が480億円も増えました。この結果をみても、例年、滞納額がワーストであるという状況を鑑みても、やはり消費税は減税していくべきではないでしょうか。

8%への増税後、滞納額が新規で増えたということは、事業の存続のために、滞納せざるを得ない中小零細企業が増えたということです。

法人税と違い、消費税は赤字であっても納めなければなりませんから、消費増税によって売り上げが落ちた企業、特に中小零細企業の事業者は自腹を切って納めているのが現状です。

今後の倒産件数や失業者の増加、またそれに伴う自殺者数の増加が懸念されます。

◆アダム・スミスの徴税の原則

そもそも、国民の資本、生産手段など、経済活動の元手にあたるものに対して税金をかけることは徴税の原則から外れることを経済学の父、アダム・スミスは『国富論』の中で指摘しています。

つまり、木になった果実、その実りの一部を税として納めてもらうことが原則で、元手であるリンゴの木の枝をへし、折って納めてもらったり、木の幹を削ったりしてはならないということです。

元手である木が傷ついてしまったら、果実を生み出す力がなくなってしまうからです。

その意味で、消費税は、消費活動そのものを妨害するマイナス効果しかありません。企業の売り上げ、利益を減らし、果実を生み出す力を削ぎ落していきます。

消費税は、生産者から消費者に商品が届くまでの流通過程の全てに課せられるハードルのようなものであり、このハードルの高さが増税によって上がっているのです。

さらに、消費税は、逆進性が強く、低所得者ほど負担が重いという意味で消費者いじめの税金であり、日本経済を支える中小企業に大打撃を与える税金なのです。

本当の意味で、国民の立場に立って「安心の社会保障」を謳うのであれば、消費減税こそが、有効な政策手段であるはずです。

減税を通じて個人の経済力を上げ、自立した個人を増やしていくことが、膨張し続ける社会保障費を抑えていくことにもなるのです。

◆欺瞞に満ちた「安心の社会保障」に騙されないために

今回の「新・三本の矢」の政策において、民をいじめる消費増税を表明した一方で「安心の社会保障」を謳うとは、国民を欺いていると言わざるをえません。

日本のGDPの約6割を占める消費を冷え込ませる消費増税を宣言しておきながら、GDP600兆円を目指すとする政策は矛盾しています。消費増税は、GDPを減らすのです。

世界一の経済大国であるアメリカも、逆進性があり、物価を上昇させ、行政上のコストがかかる、などの理由から国家としては付加価値税(消費税)を導入していません。

消費大国であるアメリカは、消費の大敵である消費税の威力をよくわかっている、というべきでしょう。

アメリカのように、個人消費を増やして経済成長を実現していく路線を日本もとるべきであり、その意味で、消費減税が起爆剤となるはずです。

幸福実現党は、国民の経済的自由を守る砦として、消費減税を訴え続けてまいります。

古川 裕三

執筆者:古川 裕三

HS政経塾 担当チーフ

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