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家計を直撃した消費税増税

文/岐阜県本部政調会長 加納有輝彦

◆消費税増税の目的――社会保障の安定財源確保?

最新のNHK世論調査によると予定通り来秋消費税を10%にあげるべきが23%、時期を遅らせるが35%、取りやめるが38%となっています。73%が来年の10月の増税は見送るべきと、消費者の厳しい家計を反映した意見となっています。

これら家計の窮状に対し、政府は経済状況を注意深く見ていくとしながら、消費税増税は、社会保障の安定財源確保のために必要不可欠であり、国民に還元されるものであると認識を変えることはありません。

◆青天井の社会保障給付費

今や社会保障給付費(年金、医療、介護福祉等)は年間100兆円を突破しており、本年は予算ベースで115.2兆円となっています。現在、社会保障給付費の財源は、おおまかにいって3分の2が保険料、3分の1が税負担となっています。

国税負担分31.1兆円は、本年の一般歳出のなんと54%を占め、平成2年の29.4%と比べると、いかに社会保障費が増大してきたかが分かります。

そして団塊の世代が全て75歳以上となる2025年は、75歳以上が全人口の18%となり、必要な社会保障給付費は、148.9兆円に跳ね上がると厚労省は試算しています。

◆10%では終わらない消費税増税

社会保障の安定財源が消費税とすると、一体、どこまで消費税は上がるのでしょうか。

政府は、引き上げることが決まっている5%分の消費税のうち4%分を社会保障の安定化(毎年の財政赤字で賄っていた部分を埋めること)に充て、社会保障の充実へは1%分を充てると説明しています

つまり10%に引き上げたとしても、底が抜けて水漏れしている分に4%分が使われるわけです。10%でも実は全然足らないのです。

大和総研のシュミレーションによれば、高齢者1人当たり給付(年金・医療・介護の合計)を現在より15%大胆に抑制し、消費税率を25%にしたとしても、政府の基礎的財政収支は黒字化しない(2030年代半ば)と日本がこれから経験しようとしている高齢化がいかに厳しいかを示しています。

社会保障のすべてを政府が担うという発想から脱却しなければならない時期が来ています。

◆80%以上の高齢者は自立している

「孤独死」「無縁死」「老老介護」「老人漂流社会」「大介護時代」等々高齢者に対するイメージは非常に重たいものがあります。もちろん、こうした事実から目を背けてはならないと思います。

ただ、一方で、日本の高齢者は非常に若返っており元気であることも事実です。世界保健機関が提言する健康の定義「高齢者の疾病の有無ではなく、生活機能の自立度で判定する」基準をモデルにすると、日本の高齢者は80%以上が自立しているというデータがあります。

◆後期高齢者は「好機」高齢者

有名な徳島県上勝町の葉っぱビジネスでは、いわゆる後期高齢者が、パソコンを駆使し受注業務をこなし、年収1000万円を稼ぐ方もおられます。町の老人ホームは廃止され、一人あたりの老人医療費は徳島県内24市町村で最も少ない額といわれています。

適切な仕事さえあれば高齢者の健康は増進され、所得を産み、税金を納める側になります。

葉っぱビジネスを立ち上げた横石社長は、「後期高齢者制度には腹が立ちます」と言っています。「後期」は、実は「好機」チャンスであるんだと、まだまだ発展のチャンスはあるという明るい高齢者のイメージを持っておられます。

◆人間観の革命で「大増税社会」を阻止しよう

また新しい老化モデルでは、人間は、死の直前まで健康を維持することができるとされています。長生きが長患いで寝たきりという負のイメージもありますが、実は、長生きは、長く健康生活を楽しめるという意味となります。

日本の高齢者は若返っており、80%以上は自立をしており、適切な仕事があれば長寿を健康で全うでき、国や地域社会に貢献し続けることができるということが真実です。

支援を必要とする高齢者に対しても、元気な高齢者が支援する側に立つことができます。老老介護という負のイメージではなく、死ぬまで社会貢献、社会奉仕ができるという明るいイメージが大切と思います。

高齢者に対する暗いイメージを、明るいものにする「考え方」の変革をもって、元気な高齢者自身が、社会保障給付費の削減の起爆剤となり、増税ではなく、人間観の革命で社会保障のすべてを政府が担うという発想から脱却する端緒とできると確信します。

加納 有輝彦

執筆者:加納 有輝彦

岐阜県本部政調会長

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