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イスラム圏で止まらない「中国の進撃」

文/幸福実現党山形県本部副代表 城取良太

◆イランにとって中国はかけがえのない存在?

イスラム国の台頭で中東情勢が緊迫の一途を辿る中、中国はイランとの蜜月関係を更に深めつつあります。

イラン国内のメディアによると、イスラム国(ISIS)対策として、中国とイランは共同軍事訓練を行う計画があり、イラン軍の最高司令官は「もしイスラム国がイランに侵攻してきたら、我々はイラン領域に入る前に、彼らを殲滅させる」と中国との共闘を公に宣言しています。(10/2 ・IRNA)

また時を同じくして、9月20日には中国海軍の艦艇が、初めてイランの港湾に入港し、大歓迎を受けています。

もともと、中国とイランの関係は1980年代から続いており、制裁措置が行われる最中においても、イランの核開発への支援、武器輸出やミサイル技術の提供などを続け、イラン産の原油や天然ガスを大量に買い支えてきました。

今も核開発を巡って欧米諸国から制裁を受けるイランにとって、中国は世界からの孤立を避ける上で「かけがえのない存在」のように感じるところでしょう。 

◆イスラム圏で止まらない「中国の進撃」

イラン以外でも、中東・北アフリカのイスラム圏において「中国の進撃」は止まることを知りません。

具体的には、70%がスンニ派イスラム教徒である北アフリカのスーダンでは、1989年にイスラム色の非常に強いバシル政権成立後、国際テロを助長しているとして欧米からの制裁が加えられましたが、その間隙をぬって中国の投資が入り込み、今ではスーダン経済に与える影響は他を圧倒しています。

3年前に分離独立した南スーダンに眠る豊富な石油権益を守るため、今年に入ってからは両国の停戦交渉の仲介まで買って出ております。

また、中国とパキスタンの関係も非常に良好で、戦闘機や戦車の共同生産、核技術の提供、港湾などインフラ整備などで中国が支援しており、対インドの共闘関係を示す通り、近年カシミールのパキスタン領内に中国軍を配備したとも言われています。

中国が手を広げるのは反米的国家のみではありません。

アメリカの戦略的同盟国と見なされてきたサウジアラビアにおいて、かつては「無神論国家」として警戒されてきた中国ですが、ここ30年間で貿易総額は約100倍に跳ね上がり、今ではサウジアラビア国王から「中国は我々の兄弟国」と呼ばれるまでの信頼関係を構築しています。

濃淡の差こそあれ、イスラム圏の幅広くに中国の影響力は増していると考えてよいでしょう。

◆中国とイスラム圏の接近を指摘していたハンチントン教授とカダフィ大佐

こうした中国とイスラム圏の緊密化について、アメリカの国際政治学者であるサミュエル・ハンチントン氏は「文明の衝突」の中で、

「イスラム文明と中華文明は、宗教・文化をはじめ、全てにおいて根本的に異なっているが…兵器拡散や人権その他の問題について、西欧という共通の敵に対して協力をする」と述べています。

また、リビア内戦で処刑されたカダフィ大佐も、中国とイスラム諸国の関係について、

「新しい世界秩序とは、ユダヤ人とキリスト教徒がイスラム教徒を支配することを意味し、もしそれができたら、その後はインド、中国、日本のその他の宗教の信奉者を支配するだろう。」

「儒教グループを代表する中国と、新十字軍を主導するアメリカとの間に闘争が起こることを期待しよう。…我々イスラム教徒は、我々の共通の敵との戦いで、中国を支持する。」と、中国とアメリカの闘争を期待する見解を、20年も前に発表しておりました。

◆日本の中東外交の深化は必要不可欠だ

しかし、今や中国こそが、欧米、特にアメリカとイスラム圏の衝突のイニシアティブを握っているといっても過言ではありません。

莫大な資源外交でイスラム諸国をてなずけながら、特に反米国家や武装テロ組織などへの武器移転・資金援助を行うことで、中東有事を誘発・助長し、財政難に喘ぐアメリカを中東に釘づけにさせ、アジア回帰を有名無実化させる――

まさに兵法三十六計の三計「借刀殺人(同盟者や第三者が敵を攻撃するよう仕向ける)」の如く、決して自らはアメリカと対峙することなく、自らのアジアでの覇権戦略を進めていこうとする中国の思惑が理解できます。

日本の国内では、未だに「日本にとっての中東外交は石油外交」ということをもって良しとする論調が少なくありませんが、「中国の中東外交がいかに彼らの覇権戦略につながっているか」という点からも、日本の中東外交を更に深化させていくことは必要不可欠なのです。

また、雇用を生み出さない資源依存型経済を助長させ、武器移転によって暴力やテロリズムを蔓延させる「中国モデル」から、持ち前の教育力で人を育み、技術力を育み、産業を育む「日本モデル」への脱却こそが、イスラム圏の安定と未来の幸福に繋がるのです。

このように日本が本格的に、中東におけるキープレーヤーになることこそ、欧米とイスラム圏の融和を促しながらも、中国の覇権主義を退けていく大きな力となっていくはずです。

【参考書籍】
「進撃の華人」 ファン・パブロ・カルデナル他著

しろとり 良太

執筆者:しろとり 良太

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