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なぜ日本は負けたのか?――戦史に学ぶ、未来への舵取りと提言 《第5回》

文/岐阜県本部副代表 河田成治

◆情報の積極的活用

(1)戦艦「大和」の存在は、大々的に宣伝すべきだった

また日本軍は情報の発信という面でも下手でした。

太平洋戦争に突入する前、日本は戦艦「大和」、「武蔵」の建造を超極秘扱いにしました。欧米列強を遙かに凌駕する、超々弩級戦艦だったからです。

しかし、これは情報の活用という面から考えれば、極秘扱いではなく、堂々と公表すべきだったと思います。

1930年に締結されたロンドン軍縮会議において、日本は、欧米の圧力に屈し、対アメリカ比6割の軍艦(重巡洋艦)に制限されていました。

その理由は、アメリカが日本の海軍力をたいへん恐れていたからで、もし戦争になった場合、同数の軍艦(重巡)ではアメリカは勝利する自信がなかったからです。

しかし日本の重巡洋艦を6割に抑え込んでも、当時のアメリカ海軍は日本との戦争に反対でした。その理由はアメリカには戦艦などの海軍力が不足していたからです。(ゴードン・プランゲ著「トラ トラ トラ」)

アメリカは伝統的に、敵軍に対して圧倒的有利でなければ戦わない傾向があります。

もし、日本に戦艦大和と武蔵があることをアメリカが知っていれば、開戦には大いに躊躇したはずです。(戦前は、航空機を主体とする空母艦隊は補助的なもので、大艦巨砲主義、つまり戦艦の数と強さが戦争の勝敗を左右するという考えが世界的常識でした。)

また、日米開戦前の日中戦争当時の出来事ですが、日本海軍の機密文書を中国の国民政府軍が入手したことがありました。

この情報を同盟国であるアメリカに知らせようとした参謀を蒋介石が制止し、「日本海軍がこんなに強力であることを知ったら、アメリカは日本の経済封鎖を止めて、中国を見捨てるだろう。だからこれをアメリカに知らせるな」と言ったそうです。(小室直樹著「日本の敗因」)

このように、日本の海軍力の実力をアメリカが知っていれば、戦争は回避された可能性があります。つまり自国を強く見せることは戦争抑止の手段として有効だということです。

(2)弱く見せることの得意な自衛隊

ひるがえって現代の自衛隊は、憲法の縛りで必要最低限度の自衛力しか持てないことになっていますが、この戦史からは、かえって戦争の誘因であることが分かります。

残念なことに、自衛隊はいかに弱く見せるかに涙ぐましい努力をしています。例えば攻撃機は、穏便に支援戦闘機と呼び、世界標準から見たら立派なヘリ空母を、護衛艦(駆逐艦に分類される小型の軍艦)と呼んでいます。

最新型の「いずも型護衛艦」は2隻が就航予定ですが(一番艦「いずも」は2015年3月竣工予定)、全長248mもある事実上のヘリ空母で、これは先の大戦における日米の正規空母なみの大きさです。

戦艦大和の263mにも匹敵する「いずも」は、いかに巨大かが分かると思います。これを自衛隊は、弱く見せて「護衛艦」と呼んでいます。

(3)F-35Bで本格的な空母運用へ

昨年2013年6月には、ヘリ空母「ひゅうが」に米軍のオスプレイが着艦訓練をしましたが、F-35B(垂直離着陸型のステルス戦闘機)の配備が米軍で始まれば、近いうちに「いずも型」ヘリ空母への、米軍F-35Bの着艦訓練も行われるでしょう。

これでF-35Bの運用が検証されれば、将来的には簡単な改修で、自衛隊のF-35Bも配備され、本格的な空母運用の道が開けるでしょう。

大川隆法総裁は、著書『宮澤喜一元総理の霊言』あとがきに「日本の自衛隊が、すでに実質上の高性能空母を二隻持っており、2016年までには実質的に空母四隻体制になることを中国政府がまだ気づいていないことを望みたい」とやや皮肉を込めて著しています。このように自衛隊の強さを宣伝することこそ、中国の戦争を思いとどまらせる上で、重要なことであります。

日本は憲法で軍隊を持てないことになっているため、政府や自衛隊が「強さ」をPRすることは極めて難しい状況ですから、憲法改正までの間は、幸福実現党が自衛隊の強さを代弁しています。

軍事的威力のアピールを「軍事プレゼンス」といいますが、自衛隊の存在感を示すことで、実質的に戦争を思いとどまらせる「抑止力」になります。こういう平和努力もあります。(つづく)

河田 成治

執筆者:河田 成治

岐阜県本部副代表

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