国民を苦しめる欠陥法「消費税法」
◆消費税転嫁対策特別措置法の施行
消費税の増税に伴い、中小企業・小規模事業者が円滑に価格転嫁できるようサポートする「消費税転嫁対策特別措置法」が10/01日より施行されました。(平成29年の3月末まで適用)
同法では、強い立場の大規模小売事業者が弱い立場の事業者に対して、消費税増税分を値引き強要すること、買いたたき等の消費税の転嫁拒否行為が禁止されています。
円滑な価格転嫁を実行するためには法律による取り締まりが必要であるとの判断です。悪質な違反は、公正取引委員会が「勧告・公表」等を行うとされています。
当法律の施行にあわせ、中小企業庁が474人、公取委が119人、約600人の臨時職員を採用して、監視業務に当たります。マスコミでは『消費増税Gメン』と言われています。
600人足らずで全国の商取引を監視することはできません。基本的には、関係者の情報通報(内部告発)を頼りとしています。
もちろん、弱い立場の事業者に一方的に負担を求める悪質事業者を許すことは出来ません。
しかし、わが国においては、生産者、問屋、小売り事業者は運命共同体としてグループを形成しており、情報通報がなされるという環境ではないと考えられます。
◆大手チェーン店・量販店は増税後も価格据え置き?
すでに家具販売大手のニトリホールディングス(札幌市)の似鳥昭雄社長は、自社生産などによるコスト削減で、消費税増税後も商品価格を据え置く方針を示しました。(中日10/01)
スーパーのアピタやピアゴを展開するユニーグループ・ホールディングス(愛知県稲沢市)も、食品や雑貨といった安売り商品の価格を据え置く構えで、他のスーパーや量販店も一部で同様の動きを見せています。(中日10/01)
このように大手チェーン店や量販店は、すでに「消費税転嫁対策特別措置法」の立法趣旨に反する決定を世間に堂々と公にしているのです。
値引き強要による価格転嫁拒否ではなく、企業努力により自主的に価格を据え置く(価格転嫁しない)ということです。
◆価格据え置きは、人件費据え置き?削減?
企業努力とは、さらなるコスト削減です。
J.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は、「来年春の消費税引き上げによる減収への備え」のため2013年度中に従業員約1000人を削減するといいます。(ザ・リバティーWeb 10/10)⇒http://the-liberty.com/article.php?item_id=6761
安倍首相は、賃上げを経済界に要請していますが、現実は、価格据え置き圧力が、そのまま人件費のさらなる抑制、削減に繋がっているのです。
小規模事業者は、すでに原材料、光熱費の高騰が経営を圧迫しており、消費税増税はダブルの衝撃となり、来年4月以降の選択肢に『廃業』の可能性をあげる事業者も少なくありません。
多くの中小企業は『薄利』で生きています。消費税率3%の増税は、『薄利』を吹っ飛ばす衝撃となっています。
◆消費税法に「価格転嫁」の記載なし?
そもそも「円滑な価格転嫁」を立法までして推進しなければならないのはなぜでしょうか。
消費増税Gメンが本来、取り締まらなければならないのは、根本的に「円滑な価格転嫁」を阻害している存在でしょう。
それこそ実は「消費税法」そのものなのであります。そもそも転嫁については、消費税法上、法規定が一切ないのです。消費税法本法の中に転嫁という言葉の意義・規定等の記載が全くありません。
消費税が転嫁を予定している税でありながら、消費税を転嫁できなかった場合の納税義務規定に関し、法解釈が困難な部分があるのが消費税法なのです。
それがため多くの犠牲者・自殺者を誘因したのも消費税法であります。
過去「消費税を価格転嫁できなかったので、消費税の納税義務はないはず」と裁判を起こした経営者がいましたが、その判決は「消費税法は、価格転嫁を前提としていない。転嫁をしてもいいし、しなくてもいい。しかし納税義務は存在する。」というものでした。
この問題を二十年以上放置し、今、増税したいがためにあたかも納税者の味方になったが如く、消費増税Gメンまで税金を使って採用する政府のご都合主義は看過できません。
幸福実現党は、消費税増税問題を引き続き訴え続けると共に、その衝撃を克服するための政策提案をしてまいります。(岐阜県本部政調会長 加納有輝彦)