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AIJ問題の教訓から考える“本当に”安心の年金とは?

AIJ投資顧問が受託した企業年金の約1,852億円の損失を契機に、企業年金の不安が広がっています。2月28日の厚生労働省の発表によると、少なくとも約88万人が影響を受けると考えられます。

さらに、AIJ投資顧問は、今年の1月23日まで勧誘を続けていたことから、新たに被害が判明する基金が出てくることが予想されます。

2月29日の日経新聞でも、2011年12月時点で94の年金基金が投資顧問会社「AIJ投資顧問」に加入していたと報じられています。

問題は「AIJ投資顧問」に運用委託された年金基金の運用虚偽です。運用開始直後から損失が出ているにも関わらず、運用の失敗を隠すための虚偽の運用実績を財務局に報告し続け、さらに顧客に対して高い運用利回りを保障するとして勧誘を続けていたようです。

顧客から集めた資産を、香港のプライベート・バンクに移した後の資金の流れに不透明な点も多く、全容解明にはまだ時間がかかりそうです。

今回の企業年金の事件から、今後の年金を考える3つの教訓を考えてみたいと思います。

第1に、「投資家保護」と「投資判断の自由」のバランスです。

金融庁は、今回の事件を受けて、投資顧問265社に対して、金融商品取引法に基づく報告命令を出しました。リスクが高く、深い調査が必要と判断した投資顧問には2次調査を実施する方針です。

「投資家保護」という観点から、年金運用実績の虚偽報告は絶対に許されることではなく、投資顧問会社は高い倫理観が必要とされます。だからこそ、透明な情報開示のルールの徹底がなされるべきです。

第2に、「厚生年金基金の仕組みの見直し」です。

厚生年金基金は企業年金の一種で、現在約450万人が加入しています。国が運用する厚生年金の一部代行と、独自の掛け金で運用し、高い利回りを出すことで、年金支給額を高めることを目的として1967年に創設されました。

しかし、多くの基金が、想定していた運用実績を上げられず、結局、足りない部分を基金の母体企業が穴埋めする構造になってしまいました。

そこで、資金が豊富な大企業の基金の多くは、代行部分を国に返上し、独自の掛け金のみの運用に移行しています。

一方、自社だけで運用できない中小企業は、代行部分を国に返上できず、厚生年金基金の仕組みを抜けたくても抜けられない結果、高い利回りでどうにか積立金を増やしたい誘惑にかられやすい状況といえます。

今回の事件では、被害を受けた94年金基金のうち(今後増える可能性あり)、その大半の73基金が、地域・同一業種で集めた中小企業でつくる厚生年金基金であり、投資判断の責任はありますが、厚生年金基金の構造的な問題も考えられます。

今後、厚生年金の代行部分の補填に焦るあまり、投資内容が不透明な商品に手を出して損失を拡大しないためにも、代行部分と独自の掛け金の部分を厚生年金基金から切り離し、その基金が自ら運用できるよう検討する必要があるのではないでしょうか。

第3に「景気回復に向けた経済政策が不可欠である」ということです。

年金基金の減少の大きな原因には、運用している株式の下落があります。株価の上昇と活力ある経済とは密接な関係にあります。「活力ある経済」という土台に、年金という柱も建つわけです。

土台がグラグラしているにも関わらず、柱だけを修復しても根本的な解決には繋がりません。今回の焦点は企業年金でしたが、「国が運用する国民年金・厚生年金は大丈夫なのか?」という疑問も出てきます。

国民年金と厚生年金の積立金の推移を見ますと、2005年度末の約150兆円から、2011年度末の約112兆円と大幅に減少しています。

こうした状況にも関わらず、厚生労働省が想定する年金積立金の運用利回りは4.1%であり、現実とかけ離れていると言わざるを得ません。

本当に安心できる年金には、「活力ある経済」が不可欠です。

その意味からも、政府が推進している「税と社会保障の一体改革」はピントが外れています。なぜなら、消費税を増税しても経済は回復するどころか縮小するからです。「土台なくして柱なし」です。

私たち国民一人ひとりも「経済成長」を志向し、政府は、その意欲に応えて、景気回復の環境づくりをする――これこそ、国民の幸福に奉仕すべき政府の責務であります。
(文責・吉井としみつ)

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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