Home/ 経済 経済 政治家の「ムダ遣い」のツケを支払わされるZ世代。若者に無関心の日本政治、未来を変えるためにはどうすべき? 2024.03.16 幸福実現党政調会:西邑拓真 当記事は、下記の動画と連動しています。ぜひ、ご覧ください。 https://youtu.be/zWVT9hHdYpY ◆政府の来年度予算案が衆院で可決 3月2日、2024年度の政府の予算案が衆議院の本会議で可決され、年度内の成立が確実となりました。 今回決まった予算では、一年間で政府が使うお金、歳出額は112兆5717億円と多額にのぼり、昨年度に次ぐ過去2番目の規模となっています。 現在、政府の収入にあたる税収はおよそ70兆円です。歳出額は110兆円ですから、その差は実に40兆円です。 政府はこの差額40兆円を借金、国債で賄っているのです。俯瞰的にみて、およそこの30年は、税収がそれほど増えない中で、歳出は拡大を続け、毎年多額の借金を生み出してきました。 そして、その国債はいわゆる「60年償還ルール」の下で、今の若い世代、また、これから生まれる世代が、そのツケを払うことになります。 政府が歳出を拡大することは、実は、将来世代への負担の押し付けで成り立っているのです。 ◆世代間格差を生み出すバラマキ こうした状況をなくしていくためには、そもそも財政の構造を変えなければなりません。 政府が使うお金の最大の項目は「社会保障」費です(*1)。そもそも、年金や医療などの社会保障給付の財源は、私たちの収入から天引きされる社会保険料ですが、それだけでは巨額の社会保障給付を賄いきれないために、社会保障費に多額の税金が投じられています。 今、少子高齢化が急速に進んでいるため、今後、社会保障給付は拡大し続けていくと予想されています。社会保障のあり方を今、抜本的に見直さなければ、今後、さらに国債を発行する、あるいは大増税、社会保険料の大幅な引き上げに迫られることになります。 こうしたことについて、年金制度を例に見てみましょう。 年金制度ではそもそも、「将来、自分達が高齢者になって受ける年金は、自分達が現役の時に積み立てる」という「積立方式」が採用されていたのですが、1970年代に年金給付の大盤振る舞いを始めて、積立方式が成り立たなくなり、「賦課方式」、つまり、「今、高齢者が受けている世代の年金は、今働いている現役層がこしらえる」という方式に実質的に移行したのです。 現役層の人口が拡大する局面では、こうした賦課方式は成り立つのですが、今はまさに少子高齢化が進んでおり、「支えられる高齢者層」が増える一方、「それを支える現役層」が減少の一途を辿っています。 1950年には、12人の現役層で高齢者1人を支えているという構造でしたが、現在は概ね、現役層2人で高齢者1人を支えている状況となっています。そして、およそ40年後の2065年には、1人の高齢者を1人の現役層で支えるという状況となるのです。 それは、例えば自分の給料が30万円だとすると、この30万円で自分や家族を支えるとともに、社会保障制度のもとで、「見知らぬ、誰かわからない高齢者一人」を養うということを意味するのです。 このように、社会保障の賦課方式が採用されている中で、少子高齢化が急速に進むという、日本では今、「最悪のコンビネーション」が成り立ってしまっているわけです。 鈴木亘教授(学習院大学)は、厚生年金、すなわち、会社などに勤務している人が加入する年金について、若者と高齢者層など、世代間でどのくらいの格差があるかについて試算しています(*2)。 年金の大盤振る舞いの恩恵を受けた世代は、年金の支払う額よりも貰う額の方が多い「もらい得」となっている一方、若い世代は、貰う額よりも支払う額の方が多い「払い損」となっています。例えば、2000年生まれの方は、2610万円の「払い損」になるという試算となっています。 3460万円の「もらい得」となっている1940年生まれの方と比べると、実に、6000万円ほどの開きがあるのです。 そもそも、保険というのは、「加入者同士がお金を出し合い、将来のリスクに備える」ためにあり、年金も「年金保険」というくらいですから、本来は、保険の一つであり、「長生きしすぎて資産がなくなり飢え死にする」というリスクを社会全体でカバーしようとするものです。決して、年金は、世代間での「所得再分配」を行うための道具ではないはずです。 若い世代はいわば、「加入すれば必ず損する保険」に、強制的に入らされている状況にあると言えます。こうした年金制度の歪みを、無視し続けるわけにはいきません。年金をあるべき姿に戻すために、本来の年金制度のあり方について、徹底的な議論を行うべきでしょう。 ◆シルバー民主主義の横行は、若者の未来は暗くさせる 幸福実現党・大川隆法総裁は『地球を救う正義とは何か』において、少子高齢化がもたらす政治的問題について、「今後、『シルバー民主主義』といって、高齢者たちが選挙民として増えてきます。高齢者の場合、投票率が高く、だいたい六十数パーセントの人が投票します。一方、若者は三十数パーセントしか投票しません。二倍ぐらい違うわけです。そうすると、政治家としては『年を取った方の票を集めたい』という気持ちになるのです」と述べています。 2022年7月に行われた参議院選挙における年代別投票率(*3)を見ると、60歳代(65.69%)、70歳代以上(57.72%)と高い水準にある一方で、10代(35.42%)・20代(33.99%)は、少子化で有権者数自体が少ないにも関わらず、投票率も高齢層に比べて、半分程度に止まっています。 こうしたことから、今の政治において、相対的に若い年代の声が届きにくくなっているのが事実でしょう。 これまでの政治において、社会保障のあり方を見直そうという動きが、出ていないわけではありません。 しかし、結局のところ、その場しのぎとして制度の微修正にとどまってしまい、制度を根本的に変えるというところまでは到達していません。 それは、有権者の多くを占めるのがシルバー層であり、こうしたシルバー層の利益を優先する政治が行われてきたからにほかなりません。臭いものに蓋をし、制度改革の先送りを続けてきたこれまでの政治こそが、「シルバー民主主義」が横行してきた証明と言えるのではないでしょうか。 ◆若者が「政治参加」しない限り、未来は変えられない 関東学院大学・島沢諭教授が『教養としての財政問題』などでも触れていますが、政治学の中で、シルバー民主主義の脱却に向けて、若者の声を政治に届けるための新しい選挙制度のアイデアが、様々提案されています。 例えば、投票権をまだ持たない子供を養う親に、子供の人数分の選挙権を付与する「ドメイン投票制度」、「20代選挙区」「60代選挙区」など、年代別の選挙区を設ける「年齢別選挙区制度」、あるいは、人間の限界の余命を例えば、125歳とした時に、90歳なら125-90=35票、20歳なら125-20=105票を付与するなどして、若いほど自分が持つ票数が増える「余命投票制度」というものがあります。 こうした奇抜なアイデアがあるわけですが、結局のところ、高齢者が多数を占める「シルバー民主主義」の下では、高齢者が損失を被るような制度改革の実現は難しいと言えるでしょう。 幸福実現党は、上記のような選挙制度の変更を唱えているわけではありませんが、若者にとって希望の持てる未来を到来させるには、年金など社会保障のあり方を真っ当なものに変えることは必要と考えています。また、これからの世代にツケを回す、バラマキをなくさなければなりません。 日本の政治を変えるには、特にZ世代の皆さんの政治参加が必要不可欠です。幸福実現党は、若い世代、Z世代の皆さんとこれまでの日本を創り上げてきた世代の方との架け橋になるような政策提言を行っていけるよう、今後とも努めてまいります。 (*1)財務省「令和5年度一般会計予算歳出・歳入の構成」など参照。 (*2)幸福実現党2022年4月主要政策、鈴木亘『年金問題は解決できる!』(日本経済新聞出版社)参照。 (*3)総務省「参議院議員通常選挙における年代別投票率(抽出)の推移」参照。 https://www.soumu.go.jp/main_content/000646811.pdf (*4)全体の投票率は、52.05%。 地方自治体で加速する保育無償化――本当に必要なことは、保育無償化をやめること 2024.03.14 http://hrp-newsfile.jp/2024/4487/ HS政経塾12期生 縁田有紀 ◆地方自治体でも加速している保育無償化 ここ最近、地方自治体では、独自に保育無償化を加速させる動きが見られています。 全国一律の保育無償化は、3~5歳児が対象ですが、独自で0~2歳児にも対象を広げる地方自治体が増えています。 象徴的だったのは、2023年10月から、東京都が0~2歳の第2子の保育料無償化をはじめました。 直近では、2024年2月4日投開票の京都市長選で、自民・公明・立憲推薦の候補者、松井孝治氏は第2子以降の保育料無償化を公約として掲げ、当選を果たしています。 このように、地方自治体で保育無償化が進められているわけです。 しかし、優しい印象を持つ保育無償化ですが、手放しに喜べません。「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉もありますが、このような一見優しいものほど、大きな落とし穴が隠されているのです。 ◆「無償化」という言葉のウソ この保育「無償化」という言葉は、良い印象を持ってしまい、歓迎しがちです。 しかし、日々の保育にお金がかからなくなったわけではないのです。 例として、東京都の認可保育所の場合、全年齢1人当たりの平均運営費は、月額15万円~20万円程度のコストがかかっています。 特に0歳児1人当たりにかかる保育運営費は、平均で月額30万円~50万円程度もかかっているのです。 このように、保育には大変なコストがかかっているわけですが、問題は「無償化」という言葉のウソによって、そのコストが見えなくなってしまうことです。 そして、このコストを負担しているのは、保育園を利用していない人も含めた国民の税金なのです。 ◆無償化で保育の需要は、際限なく広がる このような無償化の構造は、保育園の利用を過剰に促していくことになります。本来、保育園を利用するかどうかは、自分たちの収入のなかで、家庭で判断することになります。 しかし、「政府からの無償」という過度な支援は、自分たちの経済状況は関係なく、自分たちの責任の範囲を超えたお金で、保育園を利用することになっていきます。 これにより何が起こったかというと、保育園の需要拡大です。 こども家庭庁が発表している「保育所等関連状況取りまとめ」によれば、3~5歳児の保育利用率は、2018年は51.4%でしたが、2019年から国による保育無償化開始以降、右肩上がりで上昇し、2023年には59.5%となりました。 3~5歳児の保育を利用する人数で言えば、約7.8万人増えたのです。 ◆過度な福祉で家庭がいらなくなってしまう こうした保育所全入の流れは、価値観の変容を引き起こしています。 ベネッセコーポレーションが2022年3月に行った「第6回幼児の生活アンケート」によれば、「子どもが3歳くらいまでは母親がいつも一緒にいたほうがいい」と回答した比率は、過去最少の44.9%。2005年の61.7%から20ポイント近く減少しているのです。 もちろん、保育無償化のみがこの原因であると断定はできませんが、大きな影響を与えていると考えられます。 このような考え方の変化は、「子育ては家庭で責任を持つもの」という伝統的な価値観が崩れ、「子育ては社会や政府がするもの」に変化しているとも言えるでしょう。 しかし、政府に面倒を見てもらう、依存しようとすればするほど、家庭がいらなくなってしまいます。 例えば、武田龍夫著『福祉国家の闘い』では、福祉国家を代表するスウェーデンについてまとめていますが、ここに象徴的な記述があります。 大学生がある老人に、一生の中でもっとも重要な変化は何かと問いました。 二度の世界大戦かなどと大学生はいろいろ考えていましたが、老人の返答は「それはね、家族の崩壊だよ」。家庭の中にあった老人たちの介護、子どもの子育ては公的機関に任せるようになったことで、家庭が役割を失っていく様を表しています。 家庭の価値がわからなくなり、家庭をつくる意味も、家庭を大切にする意味もわからなくなってくるのです。 ◆気づかぬ間に政府依存に さらに、そうして高められた福祉が、人々の幸福には直結するかと言えば、実はそうではありません。 衆議院議員を務め、マルクス主義を鋭く批判していた山本勝市氏は『福祉国家亡国論』の中で次のように述べています。 「人間の欲望は、それ自体絶対的水準があるのではなく、欲望自体が肥大してくるのが通例です。その肥大した欲望を満足させるためには自分で努力しなければならないということであれば、たとえその欲望を満たせなくてもあきらめますが、国に要求すれば与えられるということであれば、節度が失われてきます。福祉が経済的に高まれば高まるほど、ますます精神的状態は不満足の度合いが高まることになりがちなのです。」 (引用終わり) 残念ながら、これは保育の分野でも当てはまりつつあります。 2019年に全国一律で幼保無償化が行われましたが、それでは足りないということで、0~2歳児の保育も無償化してほしいという希望、保育園を利用する人だけではずるい、専業主婦にも支援が必要だ、だから、「こども誰でも通園制度」をしようなど、福祉は際限なく拡大しつつあります。 こうして福祉が拡大すればするほど、家族の絆は失われ、家庭は解体されていきます。 その結果、バラバラになった個人は、結局政府なしには生きることができなくなります。まさに、過度な福祉は、隷属への道そのものです。 ◆まずは一つでも減量を 大川隆法党総裁は『危機に立つ日本』の中で、「正しい方向で努力しなくても、いくらでも援助を引き出せる世界は、一見、善いように見えますが、これは、自分の体のなかに、麻薬、麻酔を打ち続けているのと同じです。」とおっしゃられ、なんでも政府が面倒を見る社会に警鐘を鳴らされています。 なかなか抜け出しにくい過度な福祉による政府依存から、一歩でも抜け出すことを考えなくてはなりません。まずは、保育無償化を加速させるのではなく、むしろやめることを考えなければならないのです。 そして、現役世代の負担解消は、「税金、社会保険料」の重い負担にこそあります。税金や社会保険料は、「五公五民」とも言われ、総額で収入の半分近くも取られており、バラマキ政策の「減量」に目を向けていくべきでしょう。 LINEへの行政指導、アメリカで中国に個人情報の販売・移転禁止… ほぼ同時に報道された2つの事件から見えてくるものとは 2024.03.08 https://youtu.be/Et-1K-LeD1s 幸福実現党政務調査会 藤森智博 ◆日米でほぼ同時に報道された個人情報の重大事件 月間利用者数は9500万人を超え、日本人口の約7割をカバーするLINEアプリ。今や日本人になくてはならない。 そんなLINEアプリですが、個人情報の流出が相次ぎ、2月29日には総務省が行政指導を行う方針であることを日経新聞がスクープし、3月5日に行政指導が行われました。 そして、ほぼ時を同じくして、2月28日にアメリカでは米国人の特定の個人情報を大量に販売・移転するのを禁止する大統領令が発表されました。禁止する対象は、中国などの安全保障上の懸念がある国々あり、個人情報は、個人の健康状態などの機密情報になります。 運命は数奇にして、個人情報関連の大きな事件が、ほぼ同時に日米で起きました。この2つの事件を比較していくことで、日本の個人情報保護の大きな問題点が見えてきます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。 ◆繰り返すLINEの個人情報流出に、ついに3回目の行政指導。しかし効果のほどは? まずはLINEです。LINEは21年3月に中国から利用者の個人情報が閲覧可能だったことが発覚し、大問題となりました。 このときLINEは対策として、①中国からのアクセスの完全遮断、②海外に保存してあるLINEデータを同年9月までに国内に完全移転することを発表。 さらに4月には、総務省から行政指導も受けますが、その後も問題は後を絶ちません。 21年10月には、ヤフーなどのZホールディングスと合併し、LINEヤフーとなりましたが、23年8月には、韓国のネイバーに対し、利用者への十分な周知をせずにデータを提供したとして総務省の行政指導を受けました。 ネイバーはLINEの生みの親であり、今もLINEヤフーに対し、事実上ソフトバンクと同等に出資している大株主です。 LINEヤフーは、このネイバーに不十分な周知で、位置情報約410万件を含む約756万件の個人情報を提供したのです。 さらに23年11月には、LINEヤフーは、44万件の個人情報がサイバー攻撃で流出した可能性を発表。その原因の1つは、ネイバーと一部のシステムを共通化していたことでした。 加えて、今年2月には、ネイバーとは別の韓国の業務委託企業から、旧LINEの従業員情報が5.7万件流出した可能性と、44万件としていた個人情報の流出が、実は51万件だった可能性を発表しました。 しかし、同社から具体的な説明や対策の発表はなく、業を煮やしたのか、総務省が再び行政指導を行うことが2月29日に報道され、3月5日に実際に行われました。 ですが、21年から3度目となる行政指導で、問題が解消されるのかと言えば、大いに疑問であると言わざるを得ません。 ◆政治主導で、個人情報の機密データの悪用を防ごうとするアメリカ 次にアメリカを見てみましょう。28日に発表された中国などへの大量の個人情報を販売・移転するのを禁止する大統領令です。 今回規制された個人情報は、遺伝情報、音声やキーボードを打つ動きなどを含む生体認証に関する情報、そして健康情報、位置情報、金融情報、個人を特定可能な情報です。 例えば遺伝情報などは生物兵器にも転用可能であり、こうした情報が安全保障上の懸念国に流出することは、安全保障上の危機に直結しかねません。バイデン政権の幹部も、遺伝情報の悪用を最も強く懸念していると述べています。 さらに、こうした機密情報は、スパイ活動や脅迫、詐欺などに活用できます。 LINEの例で考えてみれば、不倫相手とのメッセージのやり取りが“文春砲”などで、暴かれることが多々ありますが、こうした個人情報を中国などが入手すれば、有名人や政治家を脅迫し、世論誘導やスパイ活動に従事させることも可能です。 また、健康上の悩みも脅迫などに利用できるでしょう。 これを先ほどのLINEの情報流出で考えてみると、21年段階で、韓国のサーバーに保管されていた情報は、オンライン診療サービスで利用する健康保険証の情報も含まれていました。 また、昨年8月の行政指導の内容も、機密情報に分類された「位置情報」の約410万件の流出でした。 昨年11月から続く情報流出では、どのような機密情報が含まれていたかは、現状不明ですが、過去の事例を見る限り、何かしらの機密情報が含まれていたと考えるべきでしょう。 アメリカでは、こうした機密情報の取り締まりが、大統領令によって強化されます。さらに議会では、アメリカ人の遺伝情報を守るために中国のゲノム解析大手BGIなどと政府機関が契約するのを禁止する法律を検討しています。 また、今回の規制対象は外国でしたが、外国だけでなく、アメリカの連邦政府自体が、諜報機関を通じて、国民のそうした機密情報を収集していることが議会で明らかになり、超党派で問題意識が強まっています。 ◆日本も政治主導で、国民の機密情報の悪用を防げ このように、日米で個人の機密情報の問題は、同様に起こっている問題ですが、その“対処”の仕方には大きな違いがあります。 2021年以降、LINEへの行政指導は3回に及びますが、この間に個人情報保護法の法改正はありません。 一方、アメリカでは、法令の制定を行なったり、議会で強い関心を持って、個人情報の問題を扱っています。 また、アメリカでは議会や政府が、中国への情報流出を問題視していますが、日本の政治家は、あまりそうした問題を語りません。 今回の日米の2つの事件を比較すると、日本の政治のこうした問題点が鮮明に見えてきます。 また日本では、マイナンバーのシステムを強化し、中国のような国民総監視社会に近づきつつありますが、一方で、米紙ワシントン・ポストに昨年8月、中国からのサイバー攻撃で政府のコンピューターシステムから機密情報が流出した疑いが報道されるなど、行政の情報管理の在り方には大きな疑念があります。 大川隆法総裁は次のように述べています。 「国民監視を一元管理し始めたら、やられるのは、おそらく、日本国民がやられるのであって、たぶん外国のスパイのほうではなかろうと思います。そちらのほうはトラブルを避けたいから、たぶん“逃げ放題”になるのだろうから、たいへん情けないなと思っています」(『コロナ不況にどう立ち向かうか』/第1章 政治について言いたいこと) 今のままでは、私たち国民の個人情報は、内外からほしいままにされかねません。 そうした事態を防ぐためには、アメリカのように政治の側から声を上げていくことが必要なのです。 再エネ推進はもう限界なのに・・・国民に負担ばかりのFIT制度が止められない仕組みとは? 2024.03.06 https://youtu.be/YSEmBglPaM4 HS政経塾 第12期生 坂本和佳 ◆再エネ事業者に対する交付金の一時停止が可能に 現在、太陽光発電の増加に伴い、山間部で相次ぐ住民とのトラブルが無視できない状況になっています。 こうした状況を受け、経済産業省は再エネ事業者と住民とのトラブルを回避するために、FIT制度の規定を変更する改正再エネ特措法を4月1日に施行する予定です。 FIT制度とは、再エネ政策の根底を支える制度で、再エネ事業者が発電した電気を高値で買い取ることを電力会社に義務付けるものです。 今回の改正では、法令違反をした場合に、FIT制度等の交付金を一時停止できるようになります。 再エネ事業者にとってFIT制度は、操業資金の供給源にして命綱であり、この交付金が無ければ事業継続が危うくなります。 このFIT認定の一時停止の権限を持つことによって、悪質な業者への抑止力とし、解決を図ろうとしています。これは事業者の違反行為の解消につながる面はありつつも、トラブルへの根本的な解決にはなりません。 なぜなら、既に日本の再エネ政策は限界まできており、そうした中で政府が無理やり導入を進めれば、更なる負担やトラブルを引き起こしかねないからです。そうした点を詳しく見ていきます。 ◆そもそも太陽光パネル設置の適地が少ない日本 まず、太陽光発電は莫大な土地が必要になるという点が上げられます。エネルギー密度が低いため、発電効率が悪く、広大な土地を必要とします。 原子力発電所1基分の発電量を賄うためには、太陽光パネルを山手線の内側の約2倍の面積に敷き詰めなくてはならないほどです。 しかし日本は平地面積が限られている上に、すでに平地部分には人口が密集しています。そのため、大量に再エネ電源を導入することは実質不可能です。 それにもかかわらず、日本の再エネ導入量はすでに世界第6位、太陽光発電の導入量であれば世界第3位、国土面積当たりの太陽光発電の導入量は世界1位となっています。 国土面積当たりの平地面積で見れば、再エネ電源の導入が進んでいると言われるドイツの約2倍です。日本の再エネの導入量はもうすでに限界に達していると言えます。 ◆設置工事費の増加でコストは高止まり こうした状況の下で、無理に再エネを増やそうとすれば、コストは高止まりしてしまいます。 平地面積が限られた中で、大規模な太陽光パネルを設置するには、山肌を削って設置するしか方法がありません。そのため、設置の造形コストが余分にかかってしまいます。 太陽光パネルの費用は年々減少傾向にあると言われていますが、日本では、こうした背景もあり、建設費用が他国に比べて高止まりしているのが現状です。 日本で再エネ建設が高くつく理由は他にもあります。それは自然災害です。日本は自然災害が多いため、耐風や耐雪などの基準を満たそうとすると、工事費はさらに高くなるのです。 そして再エネコストの増加は、電気代の上昇に直結します。高コストの再エネを維持するには、FIT制度による買取費用も高くならざるを得ません。 そうなれば、私たちの電気代に転嫁されている再エネ賦課金の金額は高止まりしてしまい、電気代が益々上がることになるのです。 ◆屋根上設置の推進で国民負担はさらに重く このようにFIT制度による再エネの推進が、電気代の上昇につながっていますが、政府の政策は国民負担をさらに強める方向に進んでいます。 それが、太陽光パネルの屋根上設置です。平地の適地が少ないということで、次に屋根の上に目を付けたのです。 政府は、本年2024年からFIT制度に新たな区分を設け、太陽光パネルを屋根上設置にすると平地よりも2~3割ほど高く買い取るようにしました。 これは発電する側からはうれしい話ですが、この高い電気代を負担するのは私たち国民であることを忘れてはいけません。 さらに東京都では、2025年4月から脱炭素政策のため、大手住宅メーカーに対し、太陽光パネルの設置を義務付ける制度が創設されることになりました。 この義務化とセットにして太陽光パネル搭載の住宅商品の開発へ助成金を交付し、都民を誘導しようとしています。 東京都は住宅購入者への義務ではないことを強調していますが、購入する住宅が太陽光パネル設置済みのものしか選べなくなれば、事実上、購入者への義務化になります。 また、その負担は購入者ないし、助成金の財源を負担する納税者が負うことになります。 通常であれば、誰もこのような義務化を望みません。しかし、誰も批判できない錦の御旗になっているのが「脱炭素」という名目です。 脱炭素のため、地球温暖化を防止するためという大義名分を掲げて推進することで、誰もそれを否定出来ない風潮が作り上げられています。 その裏では、義務化と補助金の範囲が拡大することによって政府の権限、強制力は格段に強まり、「大きな政府」にも拍車がかかっています。そして、それは、国民生活を圧迫するものに必ずなるのです。 ◆国民への負担にしかならないFIT制度の撤廃が必要 再エネの導入拡大は、百害あって一利なしの状態です。悪徳業者も増え、トラブルが多発し、今や弊害の方が大きくなりつつあります。 政府はやっと、こうした事業者への対応を始めましたが、根本的にこの負の流れを止めるためにはFIT制度の撤廃を進めるべきです。 FITなどの国民の負担や補助が無ければ維持できないのが再エネ電源ですが、そもそも再エネは不安定で高コストな電源なので、国民が余分な負担をしてまで維持すべきものではありません。 むしろこの制度自体が、環境や地域住民に配慮することなく、再エネを推進するような悪徳業者が生まれる温床になっており、政府が価格統制をすることによる歪みも大きいため、制度そのものを廃止すべきです。 本来投資すべきは、エネルギー自給率を高め、安定した電力を供給できる原発であると考えます。 このように、現在は再エネ事業に対しての過剰な保護が生み出した弊害が大きく尾を引いているため、早急にこのFIT制度の撤廃が必要なのです。 『金利ある世界』に向けて必要な『覚悟』とは 2024.02.28 https://www.youtube.com/watch?v=qIofw00WPrc 幸福実現党 西邑拓真 ◆「金利ある世界」に向けて、今、議論が進められている 日経平均株価がバブル経済期の史上最高値を塗り替え、活況にわく株式市場ですが、株式市場や為替相場に大きく影響を与えるのが「金融政策」です。一見難しいと言われる「金融政策」について、今回は難解な理論は省き、なるべくわかりやすくお伝えいたします。 金融政策とは、日本の中央銀行である、日本銀行が行っているものであり、金利を上げたり下げたりしたり、世の中に流れるお金の量をコントロールすることで、景気の変動を調整、物価の安定を実現しようとするものです。 日銀の黒田東彦前総裁は「異次元の金融緩和」、いわゆる「黒田バズーカ」というものを行い、日銀が10年ものの長期の国債を金融機関から大量に買うことによってその金利を0%に抑えること、また、金融機関が日銀に預けているお金の一部に手数料をつける、いわゆる「マイナス金利」政策を行ってきました。 黒田前総裁は昨年4月、10年の任期を終えて退任し、黒田氏の後任として、日銀総裁に植田和男氏が就任しました。植田総裁の下、今、日銀は「異次元緩和」を見直し、「金利ある世界」に戻ることを模索していると言われています。 ◆「異次元緩和」の代償 では、そもそも、黒田前総裁による黒田バズーカは、正しかったと言えるのでしょうか。そして、「金利ある世界」に向けては何が必要となるのでしょうか。こうしたことについて、今回は以下の3点から考えて参ります。 (1)成長路線に戻ることに失敗 一つは、黒田総裁は景気回復のために、金融緩和に奮闘したものの、金融緩和一辺倒だけでは、日本経済が成長路線に戻らなかったということです。 金利が低ければ、お金が借りやすくなりますので、個人が新築の家を建てたり、企業が設備投資を行うという動きが活発になり、景気は回復に向かうはずです。しかし、黒田前総裁の任期中、消費税が8%、10%と二度上がったことが災いし、異次元緩和も虚しく、経済はほとんどゼロ成長となりました。 異次元緩和で、日銀は金融機関が持っている国債を買い続けた結果、日銀の国債保有比率は、黒田総裁就任前の2012年には10%程度だったのが、2023年9月末時点で53.86%となり、国債発行額1066兆円のうち、実に日銀保有分は574兆円となりました。その分、金融機関などにこうした多額のお金が入っていくわけです。しかし、アベノミクスの下で2度の消費増税が行われて実体経済が傷つけられたことで、お金が世の中に回っていかない、という状況となったのです。これを人間の体で例えると、血液が大量に注入されているけれども、それがまさに循環しない状況と言えるでしょう。日本経済は、消費税という血栓ができて、心筋梗塞や脳梗塞が起きる寸前だと言えるかもしれません。 (2)資本主義の精神を傷つけている 二つ目は、「資本主義の精神を傷つけている」という点です。 経済学の父、アダム・スミスは、生前、「各人が節制、勤勉に励めば、国家全体としても自ずから豊かになる」と述べています。つまり、人が勤勉に働き、節制して富を蓄積し、その富を自分自身が事業を行うか、あるいは企業家にお金を貸して、工場を建てたり、人を雇ったりして、何かを付加価値のあるものを生産する。そして、得られた富で、さらに付加価値あるものを作っていくという好循環ができるわけです。これはまさに、「資本主義の精神が国家を繁栄させる」ということです。 かつては、銀行に定期預金を預けておけば、6%程度の利子がつき、貯金をある程度蓄えておけば、年金がないとしても利子収入だけで老後は安泰と言われてきました。 ゼロ金利の時代の今、お金を貯めても利子がほとんどつかず、資本主義の精神が働きにくくなっていると言えるでしょう。 特に、「マイナス金利」というのは、資本主義に逆行するものであり、もってのほかです。現在、日本以外でマイナス金利を採用している国は見当たりません。マイナス金利政策については早急に解除すべきです。 一般的に、金融政策は短期的には経済を刺激して効果があると言われていますが、長期に見ると、疑わしい面があります。 経済学者の小林慶一郎教授は、「ゼロ金利環境では低収益の事業でも採算性があると見なされるので、現状維持の消極的な経営が蔓延」することから、イノベーションが停滞し、日本経済が今停滞しているとの可能性に言及しています(*1)。ある意味で、経済を成長させようとしているゼロ金利が、かえってゼロ成長を生んでいるとも言えるでしょう。 また、「政府がいくらバラマキを続けて国債を発行したとしても、日銀が買ってくれるから安心だ」という構造、日銀の姿勢が、政府のばら撒き体質を支えてきたと言えます。ただ、この膨らんだ財政赤字が国民の将来不安の要素となって、これも、低成長を呼び寄せていると言えます(*2)。 こうしたことを踏まえ、長期にわたって異次元の金融緩和を続ける日本は今、抜本的な見直しが必要になってきているのではないでしょうか。 (3)日銀が「あの世行き」になる可能性 3つ目は、まさかの日銀倒産リスクです。 日銀がまさか倒産するなんてあり得ないと思う方もおられるかもしれませんが、もし、政府の財政が今後も悪化し続け、日本の国債は危ないと、人々が思うようになれば、皆、国債を手放すようになり、国債は大暴落して、紙切れになるかもしれません。そうなると、どうなるでしょうか。 幸福実現党の大川隆法党総裁は『秘密の法』の中で、次のように述べています。 「借金が一千百兆円も一千二百兆円もある国が出している国債を、日銀が直接買っているということですから、もしこの国債が“紙切れ”になるものだったなら、日銀まで一緒に“あの世行き”ということになります。その可能性も、今、近づいてはいるのです。」 日銀が買ってきた国債は、日銀のバランスシートから見たら「資産」となります。国債が紙切れになったら、資産は大きく目減りし、債務超過に陥り、場合によっては、「破綻する」危険性も否定できない、ということです。 ◆「金利ある世界」に向けて必要な「覚悟」とは 大規模緩和にはさまざまな副作用があり、日銀は今、いよいよ方針転換に迫られているわけですが、植田総裁の下で「金利ある世界」を実現するためには、何が必要となるでしょうか。 政府の財政状況を見ると、歳出額114兆円(*3)のうち、およそ25兆円が、過去の借金の返済と利息分による「国債費」となっています。 現在、政府は国債を含め、約1200兆円の債務を抱えていると言われています。細かな計算は省き、単純計算をするとすれば、今、0%の国債金利が1%になると利子支払いだけで毎年12兆円、2%だと毎年24兆円に向かうことになります。つまり、2%になるだけで、今の国債費分の利払費が発生することになり、元本を返すのが難しい状況となってしまいます。 今後も、政府がバラマキを続け、借金を増やし続ければ、国債を返す費用は増加の一途を辿ることになるのです。 金利が上がることは、日銀自体の経営にも影響を及ぼします。植田総裁は2月22日、衆院予算委員会で「金利全般が1%上昇したという場合に、保有国債の評価損は約40兆円程度発生する」としています。国債が「紙切れ」にならずとも、「金利ある世界」になれば、その反面で、国債の価格が下がるということにつながるわけで、日銀にとっても極めて苦しい経営状態となるのです。 従って、「金利ある世界」に戻るために必要なのは、政府の「バラマキ体質」から脱却することに他なりません。今、異次元緩和からの「出口戦略」の議論だけが先行しており、ある意味でその前提条件とも言える政府の健全財政については、議論が十分に進んでいないように思われます。 金利ある世界、資本主義の精神のもとで確かな経済成長を果たしていくために、政府は、財政の「体質改善」をするという覚悟を持っていただきたいと思います。 (*1)小林慶一郎『日本の経済政策』(2024年)より (*2)HRPニュースファイル「バラマキのオンパレードで到来するマズイ未来とは?」(2024年2月20日)参照 < http://hrp-newsfile.jp/2024/4475/ (*3) 2023年度予算。財務省HP (https://www.mof.go.jp/zaisei/financial-structure/index.html)参照 バラマキのオンパレードで到来するマズイ未来とは? 2024.02.20 https://youtu.be/Hs7wA_DRHa0 幸福実現党政調会・西邑拓真 ◆日本政府の財政は加速度的に悪化している 今月9日、財務省は、国債などの政府の借金が2023年末時点で、1286兆4520億円になったと発表しました。 現在、2024年度予算案の国会審議が行われていますが、昨年末に閣議決定された当初予算案では、2年連続で110兆円超えとなる112兆717億円となっています。 歳出と税収の時系列の動きを表したものを「ワニの口」と表現されますが、歳出は上がり続ける一方、ゼロ成長が続いたことで、税収はほとんど増えなかったことから。ワニの口が開き続けています。 歳出を税収で賄えない部分は国債で穴埋めされますが、財政健全化の見通しがつかない中で、政府の借金は構造的に膨らむ一方となっています。 岸田文雄首相は昨年、「次元の異なる少子化対策」として、児童手当の拡充など、今後3年間で子ども・子育て関連予算を年3兆5000億円積み増し、将来的には倍増することを掲げました。 その財源として、現在、医療保険の枠組みを使い、社会保険料を増加することで賄う方向となっていますが、当初は財源を明確にしないまま、お金を使うことだけを先に決めてしまいました(※1)。 安倍晋三政権をはじめとする歴代政権が、一時的な歳出は行うにしても、恒久的な歳出の拡大は行ってこなかったのとは対照的に、岸田政権では財源の見通しを立てないままに恒久的な歳出の拡大を決定した点で、政府の財政のスタンスが「変質」したとする向きもあります(※2)。 つまり、日本政府の財政は、現政権下で不健全化が加速している状況です。 岸田政権ではこれまで、少子化対策や原油高対策の補助金策などを行ってきましたが、では、こうしたバラマキはどのような帰結を招くのでしょうか。今回は以下の3点に焦点を当てて、議論を進めてまいります。 ◆バラマキがもたらすもの(1)大増税 一つは、言わずもがな「増税」であり、もう少し正確に言えば、「国民負担率」が増加するということです。 政府の歳出が拡大し続ければ、増税圧力が必然的に増すことになりますが、増税という形でなくても、岸田政権における少子化対策の財源のように、社会保険料が高くなるという場合もあります。 いずれにせよ、国民負担率は上昇し、国民に負担が重くのしかかることになります。 現在、おおむね50%の国民負担率も、現在の財政スタンスが維持されれば、将来的な国民負担率は60%、70%へと増大することは避けられないでしょう(※3)。 ◆バラマキがもたらすもの(2)世代間格差の拡大 バラマキがもたらす弊害として、二つ目に挙げられるのが、世代間格差の拡大です。 政府がこのままバラマキを続け、その原資を増税や社会保険料負担ではなく、国債発行に頼るとすれば、どうなるでしょうか。 この時、国債を60年かけて返済するといういわゆる国債の「60年償還ルール」の下で、政府によりこしらえられた借金のツケは、若者や将来世代に回されることになります。 高齢者に手厚い今の社会保障制度の下で、負担の将来への先送りを続ければ、高齢者と若者、あるいは現在世代と将来世代との間における世代間格差が拡大することになります。 島澤諭氏の推計によれば、今の社会保障制度を維持するという前提で考えた時、生涯にわたる社会保障給付やその他の歳出により生じる負担から受益分を差し引いた「生涯純負担額」について、0歳児は一人当たり3,737万円の純負担となり、負担よりも受益の方が大きい90歳に比べて、およそ9,000万円の格差が生じるとしています(※4)。 生まれた途端におよそ4000万円の負担を背負うと同時に、こうした世代間格差に直面することになるわけですから、これはまさに「財政的幼児虐待(※5)」と言えるでしょう。 バラマキで借金を積み増せば、これから人生を歩む世代の負担は、さらに高まっていくことになります。 経済学の格言で「フリーランチはない」というものがありますが、これは、すなわち、「何も失わずに何かを得ることはない」ということを表しています。 これは政府によるバラマキも同じです。例えば、一人当たり10,000円の現金給付を行う場合、国民からお金を徴収し、それを配るというコストを考えれば、10,000円以上のお金が必要となりますが、こうしたお金は、増税、社会保険料で現在の世代か、あるいは国債発行で将来の世代かが、必ずツケを払わなければならないのです。 ◆バラマキがもたらすもの(3)インフレ 3つ目は、物価高騰、すなわちインフレです。 13日、米国の1月の消費者物価指数の上昇率が、前年同月比で3.1%になったことが発表されました。米国の物価はやや落ち着きを見せてはいるものの、まだ高インフレから脱却したとは言えない状況が続いています。米FRBは早期の利下げには慎重な姿勢を見せており、円安・ドル高の基調はしばらく続く可能性が高いと言えます。 さて、これまで、日本や米国をはじめとする先進各国が高インフレに苛まれたのは、コロナ禍による供給網の遮断や石油価格の高水準が続いたことなど供給側の要因だけではなく、コロナ禍における財政出動が過大だったという、需要側のいわば「財政インフレ」の面もあるのは確かです。 このことは、コロナ対策としての財政出動が限定的だった新興国は、資源高が収まると、先進国よりも早くインフレが低下する方向に向かっていったことからも言えるでしょう。 河野龍太郎氏は、1980年代の米国における高インフレを抑えたのは、「小さな政府」路線を掲げ、社会保障など歳出を抑制したレーガン大統領の財政スタンスにあったと指摘しています(※6)。 日本はもとより、先進各国が「しつこく高いインフレ」から抜けるには、今こそ「小さな政府」路線へと舵を切り、歳出のあり方を見直す必要があるのではないでしょうか。 ◆必要なのは「返済計画」と、財政を健全にするという政府のコミットメント 財政出動は一般的に、景気を刺激するとされていますが、歳出が拡大し、債務が積み上がると、人々は増税や財政破綻への不安を覚えるようになり、政府の意図とは裏腹に、家計や企業は消費や設備投資を控えるようになってしまいます。結局のところ、バラマキで経済がよくなることはないのです。 腰の入った景気回復に向けて、今、日本政府が行うべきは、国民の「将来不安」を払拭することにほかなりません。将来不安の一要因となっているのがまさに、日本の財政です。 大川隆法党総裁は、『減量の経済学』の中で、今必要なのは、「政府の借金を返す計画である」とする旨を言及しています。 やはり、こうした返済計画を立てると同時に、その計画を政府が着実に履行するというコミットメントを与えることが必要です。政府はバラマキはやめ、抜本的な歳出削減を実践することも行っていくべきです。 (※1)今月16日、少子化対策の財源として、医療保険料とあわせて徴収する「子ども・子育て支援金」を活用することなどを盛り込んだ、少子化対策関連法案が閣議決定されている。 (※2)河野龍太郎『グローバルインフレーションの深層』(2023年, 慶應義塾大学出版会)より (※3)将来的な国民負担率の増大に影響を及ぼす最大の要因は社会保障費と考えるが、紙幅の関係により、今回は議論を割愛した。 (※4) 島澤諭『教養としての財政問題』(2023年, ウェッジ)より (※5)「財政的幼児虐待」という用語は、米国の経済学者ローレンス・コトリコフ教授が唱えたもの。 (※6)河野龍太郎『グローバルインフレーションの深層』(2023年, 慶應義塾大学出版会)より 物流「2024年問題」の切り札「トラックGメン」で、かえって業界は衰退へ【後半】 2023.09.20 HS政経塾13期生 岡本 隆志 ◆物流業界の混乱が予想される「2024年問題」に対して政府も解決策を策定 2024年4月から「働き方改革」の物流業界への適用により、宅配便で「モノが届かなくなるのではないか」とささやかれる「2024年問題」。前半では、「働き方改革」の問題点を指摘しました。 「働き方改革」によって、安定輸送が困難になるなど、数多くの問題が生じる可能性があるのです。 これらの問題を解決するため、政府は2023年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」(※1)を策定しました。しかし、政府による解決策は、解決どころか物流業界を縮小させかねない可能性があります。 ◆「政府が決めたトラック運賃かどうか」を監視する「トラックGメン」の導入 「2024年問題」の解決策として様々な施策を打ち出している政府ですが(※2)、その代表の1つに「トラックGメン」の導入があります。 「トラックGメン」は、政府が定めたトラック運賃で取引されているかを監視する目的があります。すでに全国の各支局に162名が配置され、電話や訪問などで情報収集にあたっています。 「トラックGメン」の導入の裏には、政府がトラック運賃を決めたいという思惑があります。1990年に施行された物流二法(「貨物自動車運送事業法」ならびに「貨物運送取扱事業法」)による規制の緩和で、運送業界への新規参入が認められるようになりました。 そのため、競争が激化し、「荷待ち時間が考慮されないなど不当に低い価格で取引が行われている可能性がある」と政府は考え、2020年4月に、政府は参考となるトラック運賃を定めることにしました。 ただ、あくまでこれは参考であり、法的拘束力はありません。ですが、不当な取引は「独占禁止法」の「優越的地位の濫用」や「下請法」違反にあたると考え、政府は「トラックGメン」を導入し、定めた価格で取引が行われるよう監視することにしたのです。 ◆政府が進める物流業界版「護送船団方式」は、失敗に終わる 労働環境の改善は確かに課題の1つですが、政府が取引価格を決めて、事業者の経営に介入することには問題があります。 なぜなら、政府の産業保護は、かえって産業を衰退させることが多いためです。代表的なものは、金融業界で行われていた「護送船団方式」です。 1990年代まで、銀行などが企業努力なしで存続できる体制が保障されていましたが、様々な問題が生じていました。 例えば、行政官庁と金融機関が癒着し、「天下り先」の温床になったり、横並び体質がはびこり、顧客目線の金融サービスが行われにくい状態が続きました。 そのように競争の原理が働かなかったことが、横並びの不動産融資を加速させ、1990年代のバブル崩壊にも繋がっていきました。 結局、バブル崩壊が金融機関に大打撃を与え、護送船団方式も崩壊していくことになります。こうした政府の産業保護により、企業努力が疎かになり、かえって産業に損害を与えてしまうことがあるのです。 トラック運転手の低賃金が問題視されていますが、政府の保護によって企業の創意工夫を止めてしまうことには問題があります。また前半で指摘した通り、低賃金の問題も改善の兆しはあります。 事業経営を保護するのではなく、規制緩和や税金などの物流コストを引き下げることで、物流輸送の生産性の向上を促すことこそ、政府は取り組むべきです。 ◆生産性向上に必要なのは「高速道路の最高速度引き上げ」などの規制緩和 政府が取り組むべき規制緩和の1つは、「高速道路を走るトラックの最高速度の引き上げ」の早期実現です。 速度を高めることで輸送時間が短縮でき、生産性の向上が期待できます。ヤマト運輸や佐川急便など、63社で構成されている全国物流ネットワーク協会からは要請(※3)されており、すでに政府も有識者検討会を設置し、安全性を考慮しながら検討を進めています。 トラック事業者も安全性向上に取り組み、最高速度の引き上げを実現できる環境が整いつつあります。 例えば、全国トラック協会が「トラック事業における総合安全プラン2025」(※4)を策定し、各社に積極的な取り組みを働きかけています。 こうした取り組みも功を奏し、事故数も減少傾向です。トラック運転手が関係する大型貨物・中型・準中・普通貨物の年間の事故数は、ここ10年間(2013年~2022年)で、49.3%(172件→89件)減少(※5)しています。 ですから、最高速度引き上げは十分に実現できる状況であり、物流業界の生産性向上のためにも、迅速な規制緩和が望まれます。 ◆「燃料の減税」と「高速道路の定額化」で、物流コストの引き下げを 加えて減税による物流コストの引き下げも重要です。 特に物流業界に重要なのは、燃料に対する税金の引き下げです。 燃料は輸送に欠かすことができませんが、円安などの影響により価格が上昇し、事業者の経営を圧迫しています。燃料価格の実に30%以上が税金であり、健全財政を前提とした燃料の減税を行うべきです。 他にも「高速道路の定額化」(※6)でも物流コスト削減を期待できます。日本の高速道路は距離制料金制度を採用していますが、物流の障害となっています。 遠くへ運ぶほど高い利用料金がかかるため、長距離輸送を担う運送事業者の経営の痛手となっています。そのため、トラック運転手の給料も上がりにくい状況となっています。 定額化によって、低賃金の改善につながることも期待できます。ある会社では、高速道路料金が給料から引かれることもある(※7)そうで、輸送費が安くなれば、トラック運転手の賃金の上昇も実現できます。 ◆規制や税金を減量し、自由からの繁栄を目指す 以上のようにトラック運転手の賃金引き上げには、政府が取引価格を決めるなど規制を強化して事業を保護するのではなく、むしろ規制の減量や健全財政を前提とした減税が大切です。 事業の保護は、企業の創意工夫を止め、発展を止めてしまいます。経済活動への介入をできる限り減らし、小さな政府で繁栄を導くことが大切です。 (※1)日本、内閣官房、「『物流革新に向けた政策パッケージ』のポイント(案)」(2023年6月2日) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/dai2/siryou.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※2)日本、農林水産省、「物流の2024年問題に向けた政府の取組について」(2023年7月)8ページ https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-377.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※3)日本、経済産業省、「特積み業界の現状と課題 第6回 持続可能な物流の実現に向けた検討会資料 全国物流ネットワーク協会」(2023年2月17日)8ページ https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/pdf/006_01_02.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※4)全日本トラック協会、「トラック事業における総合安全プラン2025」(2021年3月30日)4ページ https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/anzen/plan2025.pdf (最終検索日:2023年9月18日) (※5)全日本トラック協会、「警察庁『交通事故統計(令和5年7月末)』より抜粋」(2023年8月) https://jta.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/judaijiko_shukei202307.pdf (最終検索日:2023年9月17日) (※6)栗岡完爾、近藤宙時『地域格差の正体』(クロスメディア・パブリッシング、2021年) (※7)NHK、「深夜の高速道路で大渋滞~『0時待ち』の謎」(2022年7月28日) https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/kishanote/kishanote64/ (最終検索日:2023年9月18日) 2024年から宅配便が届かない!? 物流業界を苦しめる「2024年問題」とは?【前半】 2023.09.20 HS政経塾13期生 岡本 隆志 ◆2024年4月以降、「働き方改革」でモノが届かなくなる可能性 コロナを機に、急速に普及したネット通販。それに伴い「置き配」という言葉が浸透するなど、すっかり私たちの生活に宅配便が身近になりました。 しかし、2024年4月から、宅配便でモノが届かなくなる恐れが浮上しており、いわゆる「2024年問題」と言われています。 この背景には、安倍政権下で2018年に制定された「働き方改革」があります。物流業界では2024年4月から、「働き方改革」が適用され、トラック運転手の時間外労働の上限規制が年間960時間に制約されます。 これにより、1日に運べる荷物量が減少するため、安定輸送が困難になることが予想されています。 また、「働き方改革」の適用で、人材流出の懸念もあります。働く時間が減り収入が減るため、離職を検討している人が出ているためです。 人手不足が加速すれば、さらに安定輸送が困難になるのではないかと言われています。政府はそれでも「働き方改革」を進めるのはなぜでしょうか。 ◆「働き方改革」の背景にある「過労死」と「低賃金」の問題 ここで「働き方改革」の背景を、2点説明します。 1点目は、長時間労働による過労死の問題です。過労死ラインの100時間を超える勤務によって亡くなられた方の遺族が、運送業者に賠償を求めて提訴(※1)するなど、トラック運転手の過労死が大きな問題となりました。 厚生労働省によれば、「道路貨物運送業」の令和4年度の労災認定(脳・心臓疾患)の決定件数(※2)は、最多の56件でした。これは、その次に多い「卸売業・小売業」の2倍以上あり、全体の約30%を占めています。 2点目は、長時間労働であるにもかかわらず低賃金であるということです。厚生労働省によれば、トラック運転手は全産業の平均時間よりも約20%多く働いているにもかかわらず、平均所得額は約10%低いという状況です(※3)。 このような状況が生じているため、政府はトラック運転手の時間外労働の上限を規制し、労働環境の改善に努めているのです。 ◆「働き方改革」で働けなくなる人も 一見、政府が行う「働き方改革」はトラック運転手にとってありがたい話にも見えますが、必ずしもそうではないようです。その理由の1つが自らの意志で長く働き、多くの給料を稼ぎたいトラック運転手の存在です。 あるドライバーからは「大変なことを承知のうえでこの仕事を選んだ。働く時間が減ることで収入が減ってしまうことが不安だ」(※4)との声が上がっています。 厚生労働省によると、残業代が月の総支払額の20%強を占めており(※5)、労働時間が制限されれば、給料が減ってしまいます。 すでに、離職を検討しているドライバーも存在しており、物流業界の人材不足が加速する危険性もあります。 ◆実は改善に向かいつつある「低賃金」の問題 また、依然として全産業の平均所得額より所得が低いものの、着実にトラック運転手の所得額が増えています。 大型トラック運転手と中小型トラック運転手の年間平均所得額は、8年間(H.26~R.3)でそれぞれ約9%、約14%増加(※6)しています。 一方で、全産業の平均賃金は約2.6%の増加(※7)でとどまっています。このように、少しずつではありますが、低賃金の問題も改善に向かっています。 ◆一律に規制を敷くのではなく、政府は、企業の創意工夫に委ねるべき もちろん長時間労働による過労死など、トラック運転手の労働環境の改善は、命に関わることである以上、決して看過して良い問題ではありません。 しかし、「働き方改革」と称して一律に規制をかけることの弊害を見逃してはいけません。体調や健康状態は人によって異なります。家族や人間関係、生活習慣なども異なります。 ですから、どれくらい働けば、「働きすぎ」になるかは、人それぞれのはずです。一律に決めることはできません。 それを無視して、一律に規制をかければ、先述のように、まだ働けるのに「働きたくても働けない人」が出てきてしまいます。 一方で、企業を一律な規制で“がんじがらめ”にしなくても、企業は長時間労働を放置できません。現代においては、長時間労働で大事故を起こしてしまえば、企業への痛手は計り知れないからです。 社会的な大問題を起こし、メディアに報道されれば、企業の存続にかかわります。 例えば、株価や売上の急激な下落はもちろんのこと、そうした悪質な企業とはお付き合いできないし、商品やサービスも買わないという事態も十分に考えられます。ですから、企業もそうした問題を放置できないわけです。 企業の自由な取り組みに委ねることで、新しい発想で長時間労働などの問題の解決策を生み出すこともできます。 例えば「置き配」。日本では、2019年から「Amazon」が始めたサービスですが、再配達の軽減や車の燃料コストの削減に寄与しています。 政府が規制を敷かなくても、企業の自由な取り組みで、トラック運転手の負担を軽減できた事例です。このように自由な競争があるからこそ、新たな知恵が生み出され、労働環境を改善していくこともできるのです。 ◆政府は「働き方改革」を見直すことで「2024年問題」の回避を トラック運転手が直面している長時間労働による過労死や、低賃金の問題は、解決されていくべき問題です。 ただ、このような問題を解決するために、「働き方改革」によって一律にトラック運転手の労働時間を規制することには問題があります。 なぜなら、安定輸送が困難になることや給料が減少するなど、副作用も生じているからです。ですから、「働き方改革」は見直し、企業の自由な取り組みに委ねるよう政策を転換することで、「2024年問題」を回避すべきです。 しかし、政府は「働き方改革」によって生じる「2024年問題」の対策として、運送事業者に負担がかかるさらなる規制を敷こうとしています。 後編では、その規制の問題点を指摘したうえで、政府が取り組むべき政策を提言します。 (※1)NHK、「トラック運転手“過労死” 遺族が運送会社に賠償求め提訴」(2023年5月11日) https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230511/2000073594.html (※2)日本、厚生労働省、「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」(2023年6月30日)4ページ https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001113801.pdf (※3)日本、厚生労働省、「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト賃金構造基本統計調査『トラック運転者の年間労働時間の推移』」(online) https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work (※4)NHK、「ビジネス特集 “荷物の3割が届かない” 衝撃の予測は現実になるのか?」(2023年1月24日) https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230124/k10013958651000.html (※5)THE GOLD ONLINE、「月収28万円・50歳のトラックドライバー『配達が終わらない』の嘆き…さらに『給与大幅減』の悲劇に『もう、やっていられない』」(2023年6月7日) https://news.yahoo.co.jp/articles/f16746a1db3431fb533800e13177de8f5c0629dc?page=1 (※6)日本、厚生労働省、「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト 賃金構造基本統計調査『トラック運転者の年間労働時間の推移』」(online) https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work (※7)日本、厚生労働省、「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況 『賃金の推移』」(2023年3月17日) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/01.pdf (※1~7)最終検索日:2023年9月17日 公平な税制に向けては、「シンプルで安い税金」を追求すべき 2023.07.18 https://info.hr-party.jp/2023/13413/ 幸福実現党政務調査会ニューズレター No.33 先月末、政府税制調査会は、働き方の多様化など昨今の経済構造の変化を踏まえた、中長期的な税制のあり方を示す「中期答申」をまとめ、岸田文雄首相に提出しました。 幸福実現党政務調査会としての見解は、下記の通りです。 ◆今、議論すべきは、「歳出に見合った税収の確保」ではなく、「税収に見合った歳出のあり方」 政府税制調査会 による今回の答申 では、「世代間不公平」を是正すべきとの観点から見て、歳出に見合った「十分な税収」を確保することが重要だと強調されています。 確かに、今のように政府が税収で賄えない歳出を行い続け、国債を乱発していけば、政府の「借金」ツケは、若者世代や、将来世代に回され、「世代間不公平」は拡大していくことになります。 このため、今の財政構造を改める必要があることは論をまちません。 しかし、国民所得のうち、税と社会保険料の負担分の割合を示す「国民負担率」は48.1%(2021年度実績値)に達しており、現段階で既に「五公五民」という状態になっていることからも、これ以上の増税余地はないと言えます。 仮に増税を実施するとすれば、結果として、「増税後の世界」を長く生きる若者世代に、負担を押し付けることになってしまいます。 「歳出に見合った十分な税収を確保するために増税すべき」というのではなく、今必要な視点は、「税収に見合った歳出とするために、政府の無駄な仕事を「減量」するということではないでしょうか。 政府財政の最大の歳出項目となっているのは、社会保障です。少子高齢化が今後一層進むと想定されるなか、年金、医療保険が賦課方式 で運用され続けるならば、消費税をはじめ、増税圧力は高まり続けることになります。 本来、年金、医療は保険料の範囲で運用を行うべきにもかかわらず、再分配的な要素や必要以上の給付を行っていることもあって税投入を余儀なくされている状態です。 歳出構造を大きく変えて、消費税をはじめ減税の余地を作るためにも、社会保障の抜本的な制度改革に向けて、早急に議論を開始すべきです。 1.政府税制調査会は、首相の諮問機関である。その役割は、中期的な税制のあり方を提示することとされる。一年ごとの税制改正は与党の税制調査会が担当している。 2.政府税調の「中期答申」は、中期的な税制のあり方をまとめた報告書としての位置付けとなる。 3.賦課方式は、年金、医療保険の給付の原資を、その時の現役世代の保険料で賄う財政方式。 ◆「結果平等」へ向かう税制は、経済停滞を招くのみ。シンプルで安い税体系こそ必要 今回の答申では、年間所得が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」について言及されています。 岸田首相は「成長と分配の好循環」をコンセプトとする「新しい資本主義」を謳っており、今後、金融所得課税の強化に向けた議論が加熱することも懸念されるところです。 マイナンバーと預貯金口座などとの紐付けが進み、政府が国民の金融資産を把握できるようになれば、将来的に貯金税が導入されると危惧されます。 政府が国民の資産に手を突っ込むことは「財産権の侵害」に他なりません。 答申では、金融所得課税を強化するとの方針が明示された訳ではないものの、今後の動向を注視する必要があります。 さらに、今回の答申では、財源調達機能と所得再分配機能を発揮する上で、所得税の累進性の重要性が記述されており、今後、中・高所得者層を狙い撃ちにした所得増税をすべきとの議論が出かねません。 所得税の累進性を強化することは、すなわち、「結果平等の世界」に近づくことを意味しています。 「努力や勤勉の精神を発揮して所得を上げる」という原則を否定すれば、日本経済が「沈没」して税収は増えるどころか、大幅にダウンすることも考えられます。 そもそも、「成長と分配の好循環」とは矛盾を孕んだ考え方であり、「分配」を強めれば「成長」はできなくなり、ゆくゆくは「分配」する原資すら無くなってしまうのです。 税収をアップさせるには本来、増税ではなく、いかに経済活動を活発にするかということに主眼を置くべきです。 累進性と様々な控除制度で税体系を複雑にさせていることが、経済活動の妨げとなっており、納税意欲の低下を誘引しています。 幸福実現党は、シンプルで安い税制を整備することが、経済成長を促進させ、税収増につながると考えるものです。 所得税は低い税率を設定しながら各控除を見直しつつ、中長期的には、税率10%程度のフラットタックスを実現すべきとの考えです。 ◆企業の経済活動を活発にする税制を 政府は脱炭素社会に向けて、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進するとの方針を掲げています。 5月に成立したGX推進法により、2028年度より、化石燃料の輸入業者に対して輸入する化石燃料に由来するCO2の量に応じて化石燃料付加金を課すとともに、2033年度より、発電事業者に対して、二酸化炭素の排出枠を割り当てて、その量に応じた特定事業者負担金を徴収するとされています。 さらに今後、カーボンプライシングの一環として、炭素税の導入に向けて、具体的な議論が進む可能性もあります。 炭素税が導入されれば、特に日本の製造業はコスト高に見舞われ、炭素税がない国やそれが低い国に対して、競争力を低下させることにつながります。 日本経済を奈落の底へと沈めないために、炭素税は絶対に導入すべきではありません。 税収増を図るためには、企業活動を阻害するのではなく、いかに活性化させるかという観点が必要です。 現在、日本の法人実効税率は29.74%となっており、今なお、英国(19%)のほか、アジア圏内では韓国(27.50%)やシンガポール(17%)と比べて、日本の法人税率は依然として高水準となっています。 法人税は企業にとってコストそのものであり、高い法人税は日本企業の国際競争力を失わせるほか、国外企業の日本進出を阻む大きな要因となっています。 法人税を安くすることは、日本企業の国際競争力アップを図って成長力を底上げするだけでなく、日本企業の国内回帰や海外企業の日本進出を促すことから、経済安全保障上も有益です。法人税率を10%台に引き下げるなど、より大胆な法人減税が必要です。 経済成長の実現に向けては、人材の適材適所や産業の新陳代謝を促すといった観点から、労働の流動性を高めることも必要です。 しかしながら、政府は「労働の流動性を高める」ことを理由に、一つの会社で長く働くほど退職金の税負担が軽くなる仕組みを見直し、実質的な「退職金増税」を実施することを示唆しています。 公平で、働き方の選択に中立な税制を敷き、転職を行う人も、終身雇用で働く人も「安い税金」が享受できるよう制度設計をすべきと考えます。 同時に、人材の流動化を促すためには、企業、労働者いずれの申し立てでも解雇時の金銭解決ができるよう法整備を進めるべきです。 さらに、税制は多様な働き方に対応するべきとして、転職や非正規雇用、フリーランスなどの働き方が多様化していることを踏まえて、会社員に手厚いとされる所得控除のあり方を見直すべきとも言及されています。 これはつまり、サラリーマンへの実質的な増税となります。これは「社会情勢の変化」を、増税を行うための理由づけにしているに過ぎません。 いずれにしても、公平性を担保するにあたっては、さらなる増税措置は絶対に行うべきではありません。勤続年数や働き方にかかわらず「安い税金」となるようにすべきです。 また、10月に導入が予定されているインボイス制度については、企業・事業者に対して煩雑な事務手続き等の負担を強いるとともに、小規模事業者やフリーランス等にとっては実質的な増税措置となる場合もあり、物価高など経済状況が芳しくない中でこうした事業者に対してさらなる負担を強いることは避けるべきことから、同制度の導入は見直すべきです。 改正マイナンバー法で監視社会に突き進む日本。4つの「抵抗権」で声を!【後編】 2023.06.25 https://youtu.be/SqsKVSOeSII 幸福実現党党首 釈量子 ◆マイナンバーの危険性 マイナンバーの危険性は、前編で指摘したセキュリティーの問題にとどまりません。 (1)貯金税 政府は今、1200兆円以上の借金を抱え、税金を取る手段を血眼になって探しています。 物価も上昇し、金融緩和の修正も迫られる中、「異次元の少子化対策」なるバラマキを続けるなら、企業の内部留保や個人の貯金等に目が行くわけです。 個人の「所得」のみならず「資産」まで把握して、その量に応じて税金を取るため、資産把握にマイナンバーを使うであろうことを、大川隆法党総裁は、警鐘を鳴らしてきました。 4月25日、経済界や学会の有志がつくる「令和国民会議(令和臨調)」は、社会保障制度の改革を促す政府への提言及びその後の記者会見の中で、マイナンバーで国民の所得を把握できるようにすべきとしました。 令和臨調で三菱UFJ銀行特別顧問の平野信行氏は「現在のマイナンバーは用途が狭すぎる」「資産や所得の把握に一番欠けているのは銀行口座への登録で、これは義務化すべきだ」との見解を示しました。 令和臨調は子育て支援策の財源として、「税を軸に安定的な財源を確保すること」と求めていて、政府財務省の意向にそった発信をしているのは間違いありません。 また、死亡後に残った遺産に課税する「死亡消費税」の導入もあります。死んだ後に税金を取る国などありません。 (2)AI等による監視主義は「人間の家畜化」につながる 「私有財産」も国民の自由権の一つであり、国民の行動から財産状態から職業などを一元管理できるようになれば、行きつく先は今の中国のような監視社会です。 経済的自由が制限されると、あらゆる自由が根こそぎ奪われます。 ◆「全体主義」に対しては抵抗を! 日本人は、「賢い人たちがやってくれる」と呑気に思いがちですが、全体主義的傾向には、「抵抗権」を盾に声を上げなくてはなりません。 (1)具体的には、マイナンバー制度の見直し 法律が成立したからもう遅いと考えるのはまだ早いのであって、見直しは可能です。 6月7日に読売新聞が社説で「1980年に納税者番号の一つ、グリーンカード制度を導入する法律が成立した後、政財界から批判が噴出したため、5年後に廃止した」として、見直しを訴え、話題になりました。 (2)現金、紙の保険証などアナログの要素を残すべき なんでもデジタルにすればいいという発想はやめて、「紙の健康保険証」も残したい人の選択肢を尊重すべきです。 すでに日本の病院は、ロシアや北朝鮮などサイバー攻撃の対象になり、電子カルテ化した医療情報を身代金に取られ、診療が止まった事例もありました。 災害による停電も常時念頭に置くべきです。デジタル化が遅れてアナログのままであるほど安全と言えるわけです。 政府は「誰一人取り残されないデジタル社会」などと言いますが、カードを持たないと不便な社会を作り出すのは断固拒否していきたいと思います。 (3)マイナカードで、国民や自治体の「欲」を釣るな 岡山県備前市では、給食費及び学用品費を無償化とする条件として、マイナンバーカードの取得を求めるとしました。 子供たちの給食と引き換えにする市の姿勢は、本来取得が自由なはずのカード有無で、行政のサービスを差別することになります。 マイナンバーの理念である「公平・公正な社会の実現のため」どころか、カードの有無で「差別」を付けるなど許されません。 (4)デジタル庁廃止 職員約730人のうち民間出身者は約250人、そのうち約9割が民間企業とも兼業できる非常勤職員です(2022年4月時点)。これはほとんど「ザル」です。 スパイ天国の日本でどんな情報も抜かれる可能性をはらんでいるのではないでしょうか。 ◆「全体主義」には抵抗を 国家が暴走して個人の「自由」を踏みにじるのが「全体主義」ですが、「カードを持つと便利になる」「お金が振り込まれる」という政府の言葉に簡単に踊らされてはなりません。 こうした教訓を学ぶことなく、突き進む政府の傲慢さの根源は、中国と同じく、神仏の目を意識しない精神性の低さにあります。 簡単に自由を奪い、人間を家畜化する政治に警鐘を鳴らすことは、「自由・民主・信仰」を政治的信念とする幸福実現党の使命だと考えています。 すべてを表示する « Previous 1 2 3 4 … 78 Next »