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台湾有事に備えて、国民保護法の改正を!沖縄県民の生命を守るためには

http://hrp-newsfile.jp/2024/4485/

HS政経塾第12期生 山城頼人

◆台湾有事に備え、沖縄等の避難想定が進むも、現状では大事な視点が足りていない

近年、中国の習近平国家主席は台湾の統一についての発言を繰り返しており、専門家の間では、習主席の任期が終わる2027年までに、台湾の統一に向けて動くのではないかと言われています。

こうした台湾有事の際に国民の生命を守るために、「どのようにして避難をするか」ということが真剣に検討され始めています。

沖縄県の先島諸島(与那国島や石垣島、宮古島など)をはじめ、今年の1月には鹿児島県の離島の住民避難を想定した図上訓練が行われました。

今まで台湾有事に備えた訓練は行われていなかったため、実際に訓練を行って、課題を洗い出すことは重要なことです。しかし、大事な視点が抜け落ちています。それは、住民に対して「避難指示が出るタイミング」です。

◆戦闘が目前にならないと避難指示を出せない!?

では、なぜ「避難指示が出るタイミング」が問題なのでしょうか。それは、台湾有事が起きて、先島諸島周辺が戦闘区域に入ってしまえば、避難が困難になるからです。

特に与那国島は台湾から約110キロの近さに位置しているため、真っ先に巻き込まれてしまいます。ですから、いかに早く避難を始めるかが重要なのです。

しかし、現行の国民保護法だと避難は間に合いません。その理由は大きく二つあります。

一つ目は、現行法では「武力攻撃予測事態」にならないと国民への避難指示が出せないためです。武力攻撃予測事態とは、「他国からいつ攻撃を受けるか分からない切迫した事態」です。

例えば、沖縄の離島が軍艦で囲まれ、明確に攻撃が行われると予想される事態などがあげられます。つまり、もう戦闘が目前に迫っている状態なわけです。こうした状況下で避難指示が出たとしても、先島諸島の避難には間に合わないのです。

なぜこのような法律になっているのでしょうか。それは、戦後の行き過ぎた平和主義から諸外国や自治体に必要以上に配慮して、法律を整備し、複雑化していったからです。

二つ目が、住民を輸送する手段が事実上ないということです。そもそも、自衛隊は住民避難への輸送に協力する余裕はありません。自衛隊の主要な任務は外敵(敵国)の排除になります。

軍事大国である中国を相手に戦うと考えると、住民避難のための輸送力を提供するのは困難であるのが実情です。大地震のときのように人命救助に徹することはできません。

また、民間の運送会社(航空会社、海運会社)が住民避難の輸送に協力してくれるかも、実際のところ分かりません。

そもそも、民間の運送会社に、住民避難を手伝う義務はありません。もし、武力攻撃事態に至れば、民間船が攻撃されるリスクもあります。

このようなリスクを背負ってまで、運送会社が自社の社員を現地に送り出すのかは疑問に思います。

前提として、そのような危険な状況下で、民間企業に避難を行わせるような計画を当初から考えるべきではありません。

◆早いタイミングで避難指示を出せるようにするには

以上の理由から、武力攻撃予測事態よりも、早いタイミングで避難指示を出すことができるように、国民保護法の改正を行うべきです。具体的には軍事衝突が深刻化していない段階である、「存立危機事態」と「重要影響事態」の両事態でも避難指示を出せるようにすることです。

存立危機事態とは、「日本と密接な関係にある国が攻撃を受け、日本の存立が脅かされる事態」のことを意味します。

例えば、米軍が中国から攻撃を受けた事態などがあげられます。重要影響事態とは、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」のことを意味します。例えば、南シナ海における中国とフィリピンの軍事衝突などがあげられます。

先島諸島の住民が、安全な間にすばやく島外避難を行えるようにするには、このような法改正をするべきです。

そして、政府は、存立危機事態と重要影響事態の解釈の範囲に、「台湾と中国の軍事衝突」、また「軍事衝突の予兆」を含めて、普段からシミュレーションを行っていく必要があります。

その上で、国民保護法を改正して、早いタイミングで避難指示を出せるような体制を構築すべきです。

もちろん両事態でも、自衛隊は敵国への対応を強いられるので、災害時のように人命救助のみに力を割くことはできませんが、武力攻撃予測事態よりも時間的には余裕が生まれます。

この間に、民間とも協力しながら、住民の輸送を行うべきです。

◆沖縄県民の生命を守るために、一刻も早い法改正を

もちろん、他にも課題は山積みです。例えば、避難にあてる具体的な輸送力の確保、避難場所の確保、空港の滑走路の延伸工事や港の岸壁の工事、または島内にも避難できるように地下シェルターの建設などが必要となります。

しかし、そうした準備を行っていたとしても、避難指示の出るタイミングが遅ければ、沖縄県民の生命を守ることはできず、本末転倒になってしまいます。

このような事態を招かないためにも、一刻も早く国民保護法の改正を行うべきです。

そして、そもそもこうした事態を招くことがないよう、同時に国防の強化と戦略的外交を展開していくべきです。

山城頼人

執筆者:山城頼人

HS政経塾 12期生

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