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倫理観に国家が介入「パワハラ防止法」ハラスメントで裁判沙汰も【前編】

https://youtu.be/SVRu3pKazlU 

幸福実現党党首 釈量子

◆4月全面スタート「パワハラ防止法」とは

4月から、いわゆる「パワハラ防止法」(正式名称:改正労働施策総合推進法)が全面スタートとなりました。

この法律が始まったのが2020年6月からで、このときは大企業のみが義務の対象でしたが、この春からは中小企業へも対策が義務付けられるようになりました。

今回の法律で定められたパワハラの定義とは、以下の3点です。

(1)優越的な関係を背景とした言動
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
(3)労働者の就業環境が害される

そして上記(1)から(3)までの要素を全て満たすもの

例えば、みんなの前で「辞めてしまえ!」と怒鳴りつければ、これはパワハラと認定される可能性があります。

怒鳴るという行為は「仕事上必要ない」と考えられ、定義(2)の「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」と判断されてしまうわけです。

また、会社の宴会で若手に余興をやらせて、場は大盛り上がりと思っていたら、実は「あんなことはやりなくなかった」と、後でパワハラと断罪されることもありえます。

これは、上司から「やれ」と言われたら断れないということで、特に定義(1)の「優越的な関係を背景とした言動」にひっかかってくるわけです。

実際に、会社の研修会などで、パワハラと認められた裁判事例は出ており、例えば、2015年に大分地裁は、うさぎの耳型のコスチュームを着させたということで、60代女性に対し、20万円の支払いを命じています。

◆何でもかんでもハラスメントになる時代

ちなみに、「自分は関係ないか」と思う若手の方もいるかもしれませんが、若手の平社員もハラスメントをする可能性があります。

例えば「テクノロジー・ハラスメント」いわゆる「テクハラ」です。

IT機器に弱い目上の先輩たちに「こんな簡単なこともできなくて、よくこれまで仕事ができましたね」などと言ってしまったら、テクハラ認定になりえます。

この他にも、年齢を理由とした嫌がらせをする「エイジ・ハラスメント」(エイハラ)。

恋人がいる人が自分の恋愛や結婚の価値観を人に押し付ける「ラブ・ハラスメント」(ラブハラ)など何でもかんでも「ハラスメント」になる時代です。

◆厚生労働省が示したパワハラの6つの類型

今回のパワハラ防止法に併せて厚生労働省は、以下の通り、パワハラの6つの類型を示しました。

(1)身体的な攻撃
(2)精神的な攻撃
(3)人間関係からの切り離し
(4)過大な要求
(5)過小な要求
(6)個の侵害

こちらは厚生労働省が過去のパワハラ裁判を元に、分類をまとめたものになりますが、非常に広い範囲を対象としているようです。

例えば、専門家は、部下の指導するため机を叩いたり、椅子を蹴ったりすると威嚇をしたということで、(2)の「精神的な攻撃」として、パワハラと認定される可能性があると指摘しています。

また、(6)の「個の侵害」は、要はプライバシーの侵害になるため、部下の女性に対し「子どもはまだ?」と聞くこともNGです。

ちなみに、「30才を過ぎているのに結婚していない人は信用できない」という価値観を披露してもパワハラとなり得ます。

これらのパワハラの多くは、以前から、裁判でパワハラと認定されたことがあるケースです。

◆パワハラ防止法の問題点

今回の法律の肝は、6つの類型が明記されたこと、企業に対して、パワハラ防止の取り組みを義務付けたことです。

罰則はないのですが、違反した場合、勧告が行われ、それを無視すると会社名が公表されてしまいます。

そして、この法律の問題点は、具体的な取り組み違反の内容は、「指針」という形で、すべて政府に丸投げしているところです。

その結果、厚生労働省は就業規則の改定や相談窓口の設置など、具体的には条文には書いていない10種類の取り組みを企業に対して義務付けました。

これは中小企業には重い負担です。

ほかにも男女雇用機会均等法では「セクハラ」が、育児・介護休業法では「マタハラ・ケアハラ」が同じように指針という形で細かく規制されています。

こういう形の規制は気を付けないと「言葉狩り」のように広がる可能性があります。

何がハラスメントになるかを政府が決めるようになっていくと、中国のような個人個人に「社会信用スコア」をつけて、善悪の基準を管理しようとしている全体主義国に近づいていくと言えます。

(後編につづく)

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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