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ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)の活用の問題点【2】

https://info.hr-party.jp/2021/12014/

3. 問題点(2) ワクチン接種証明書で、憲法の基本的人権が侵害される

◆接種証明書なしで、飲食店の利用ができなくなる恐れ

政府は、接種証明書の活用によって、営業時間、酒類提供、会食等の制限を緩和する方針です(※11)。「接種者と未接種者が分け隔てなく利用できるよう」としつつも、具体例として、接種証明書を「利用したグループの会食については、人数制限を緩和」としています。明らかに自己矛盾です。

つまり、未接種者が飲食店利用で不利益を被るのは間違いが無く、後はその程度の問題になります。最悪の状態は、未接種者の入店拒否ですが、報告書では言及がありません。しかし、検査システムを導入する以上、そうした事態が発生しても不思議ではありません。また、その際のトラブルの責任は民間が負うことになります。

また、政府の各種規制に苦しむ飲食店にとって、制限緩和は渡りに船と言えます。雪崩を打って飲食店が検査システムを導入すれば、未接種者が飲食店の利用ができなくなる未来もありえます。

なお、政府は、ワクチン接種以外にも、PCR検査等の陰性証明も認めていますが(※12)、1回で数千円以上かかる陰性証明を繰り返し発行するのは困難です。なお、陰性証明の有効期限は、PCR検査が72時間で、抗原定性検査は24時間です。加えて、検査費用には、公費は原則投入されません。

◆イベントへの参加を監視される恐れ

政府は、さらに摂取証明書の活用として、イベントを挙げています。緩和措置の条件として、ワクチン摂取証明書等に加え、「QRコードによる感染経路追跡などの手法の活用を含む、包括的感染対策」も入れています。

つまり、感染対策の名目で、接種情報と位置情報を組み合わせて活用される恐れがあるわけです。そうなれば、誰が何のイベントに参加したのかが第3者が管理できるようになるわけです。また、言及はありませんが、未接種者がイベントに参加できない可能性は拭えません。

◆接種証明書なしで、県をまたぐ移動が制限される恐れ

政府は、ワクチン接種・検査を受けた人への自粛要請をしない方針です。裏を返せば、未接種者には、引き続き自粛要請を続けるということです。

これだけなら今までと変わりませんので、一見問題がないように見えます。しかし、公共交通機関が、政府の方針を錦の御旗にして、検査システムを導入する可能性があります。つまり、ワクチン接種をしない者は、自由な移動ができなくなる恐れがあります。

◆接種証明書なしで、部活ができなくなる恐れ

政府の方針では「大学等の部活動や課外活動における感染リスクの高い活動についても、ワクチン・検査パッケージを活用すること等により、原則可能とする」とあります。

つまり、ワクチンを接種しない者だけが、部活ができなくなるわけです。これは事実上の接種の強制と何も変わらないでしょう。

◆こうした制限は、憲法違反になりうる

こうした規定は、憲法に定める基本的人権を侵害します。具体的には、憲法第13条の「幸福追求権」(※13)や、憲法第22条に関する「移動の自由」(※14)などが当てはまります。もちろん、これらは「公共の福祉」によって、制限を受けるものでもあります。

しかし、ワクチン接種証明書は、「公共の福祉」を考えても、憲法違反である恐れがあります。公共の福祉に関しては、通常、制限する利益と、制限した結果生まれる利益を比較して、後者の利益が大きければ、人権の制限が認められます(比較衡量論)(※15)。今回の場合、ワクチン接種証明書の効果が疑わしいのにもかかわらず、その結果の人権制限は、幅広く、かつ、深刻です(※16)。

◆先行する海外でも、憲法違反の批判が起きたり、証明書の偽造が頻発したりしている

海外でも、ワクチン接種証明書への批判は高まっています。CNNの報道によれば、米インディアナ州では、大学が登校の条件として、ワクチン接種を義務付けたことを「違憲」として学生が裁判を起こしています(※17)。

また、フランスでは、接種証明書利用の義務化をめぐり、黄色いベスト運動と連動したデモが頻発していると報じられています(※18)。さらに、デモに加え、偽造証明書が発行され、問題化しているようです。

(※11)首相官邸「第76 回(令和3年9月9日開催)資料(新型コロナウイルス感染症対策本部)」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/novel_coronavirus/th_siryou/sidai_r030909.pdf
(※12)なお、こうした検査体制を「ワクチン・検査パッケージ」とし、既感染者への取り扱いは要検討としている。しかし、現段階の制度設計では含まれていないため、既感染者にも、ワクチンや陰性証明を強いられる可能性がある。
(※13)第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
(※14)第22条「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」
(※15)衆議院憲法調査会事務局(2004.4)「「公共の福祉(特に、表現の自由や学問の自由との調整)」に関する基礎的資料」
https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/chosa/shukenshi046.pdf/$File/shukenshi046.pdf
(※16)なお、政府は、憲法違反と言われないように、実質の人権制限を政府ではなく、民間企業にやらせる仕組みを作っている。これは、通説とされる憲法の「間接適用説」を悪用した手法と言える。
(※17)CNN(2021.6.23)ワクチン義務付けは「違憲」、学生が大学を提訴 米インディアナ州」
https://www.cnn.co.jp/usa/35172799.html
(※18)東京新聞(2021.7.25) 「ワクチン証明義務化のフランスで抗議拡大 不正発行も問題に」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/119257

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執筆者:webstaff

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