デジタル庁に迫る中国軍の魔の手――私たちの個人情報が危ない? 【後編】
幸福実現党党首 釈量子
◆中国が狙う究極の個人情報:DNAデータ
中国が最も狙っている個人情報の一つは、DNAです。
DNA情報は、身体の設計図ですので、その人やその民族の弱点というものが見えてくるわけです。
実際、アメリカの米中経済安全保障審査委員会(USCC)は2019年の段階で、中国が遺伝子情報を収集し、それを生物兵器に利用する危険性を報告しています。
もし、日本のDNAを収集したビックデータが流出すれば、生物兵器に悪用される可能性もあります。
厚生労働省などが所管する日本医療研究開発機構(AMED:エーメド)が国民の全遺伝子情報の15万人規模の大規模データベースづくりを目指すと言われています。
ちなみに、マイナンバーの健康保険証としての利用は、今年3月から始まっていて、10月からは、マイナンバーの専用サイトである「マイナポータル」で、薬剤情報・医療費情報の閲覧が順次可能になります。
政府のマイナンバーカードの健康保険証利用を推進するチラシには、「ご自身の診療情報がマイナンバーと紐づけられることはありません」と書かれています。
しかし、情報自体はデジタル化され、ネットにつながっているため、サイバー攻撃のリスクはゼロではないでしょう。
◆期待できない日本のサイバー反撃能力
個人情報などが中国のサイバー攻撃で流出したとしても、それに対する日本の「反撃」は、おそらくできないでしょう。
「なぜ、反撃なのか」ということですが反撃能力をもつことで、一種の「抑止力」になるわけです。
例えば、今年の5月7日、アメリカのパイプラインがサイバー攻撃を受けて停止した事件が起きました。これに対し、アメリカは即時反撃し、犯人のロシア系のハッカーを敗北に追い込みました。
しかし日本において、自衛隊がこうした動きをするのは難しいです。
その理由は、憲法9条の問題です。9条では、軍隊を持ってはいけないことになっているので、自衛隊は必要最小限度の実力組織でなければなりません。
また、サイバー攻撃に対し、自衛権を発揮するためには、「武力行使の三要件」を満たす必要があります。
手短に言えば「日本の存続が危ぶまれるような存立危機事態であり、他に手段が無く、武力行使は必要最小限でないといけない」という条件です。
「武力行使の三要件」とは、厳密に言えば次の通りです。
(1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと,又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(存立危機事態)
(2)これを排除し,我が国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないこと
(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
2020年の5月16日の衆議院の本会議で、当時の岩屋防衛大臣は、「どのようなサイバー攻撃がこの武力行使の三要件に言う武力攻撃に該当するかにつきましては、生起した事態の個別の状況に応じて判断すべきもの」と答えています。
ですが、厳しい武力行使の条件の中で、自衛隊が政府へのサイバー攻撃の反撃をできるかは、正直、疑問です。
デジタル後進国とも言われる日本が、焦ってアナログ情報をデジタル化すれば、サイバー攻撃の格好の餌食になるだけです。
ともかく、日本政府は、便利さなどデジタル庁の利点ばかり訴えますが、中国への情報流出という安全保障上の問題は間違いなくあります。
加えて、デジタル庁によって、「国民の情報を集めて監視する。さらには資産状況を把握し、税金をかけていく。そうして国民の自由を奪っていく」そうして日本を「デジタル全体主義」に導く面もあります。
ですから、政府に求めたいことは、憲法9条の改正や、スパイ防止法などの法律を制定して、サイバー攻撃から防衛できる体制を整えることです。
デジタル化以前にやるべきことはたくさんあるはずです。それを無視してデジタル化したところで、問題の解決は難しいでしょう。