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RCEPのリスクとデジタル人民元の脅威、中国は通貨覇権を握るのか?【前編】

https://youtu.be/HgS-GtklwjE

幸福実現党外務局長 及川幸久

◆RCEPとは

今回は、「RCEPのリスクとデジタル人民元の脅威」と題し、中国の新たな経済的な脅威についてお送りします。

RCEP(アールセップ)とは、「東アジア地域包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership)」のことで、英語の頭文字 をとって RCEPと呼びます。

まず、2月10日、RCEP協定案が自民党の対策本部内で了承されました。

これによってRCEPという自由貿易協定がこれから日本の国会の中で批准される見込みになりました。

◆RCEP合意までの経過

どこからRCEPの話が出てきたかというと、実は日本からでした。

2006年、現在の自民党二階幹事長から「二階イニシアチブ」と呼ばれる、「東アジアEPA提唱」案が出されました。東アジアの中で自由な貿易をやるという提案です。

そこから数年かけて議論がなされ、昨年2020年にRCEPとして、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10カ国(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア)に、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドも入って合計15カ国が合意しました。

15カ国によってなされる自由貿易は、世界最大の自由貿易協定になります。世界の人口、世界のGDP、それから世界の貿易総額の約3割を占めるのがこの地域です。

しかし、この中にインドは入りませんでした。

インドが離脱した理由は、RCEPに入ってしまうと安い中国製品が入ってきて国内に多くの失業者が出てしまう点と、中国と国境紛争中で自由貿易協定を結ぶわけにいかないという判断があります。

そしてアメリカも入っていません。

日本政府は、わが国企業活動、経済成長に寄与し、日本が自由貿易推進の力強いメッセージを発信すると言っています。

◆RCEPの中身

RCEPの中身を見てみましょう。

(1)関税の自由化、9割ぐらいが自由化になると言われています。

(2)サービス分野の規制緩和や投資障壁の除外ですが、中国はサービスにおける規制や投資障壁はたくさんあり、本当にできるのでしょうか。

(3)国を跨いだ広域的なサプライチェーンの実現、製造業にとってはメリットが大きいのだろうと思われます。

(4)通関コストの大幅な低減

(5)コンテンツやデータなどのデジタル情報に関し、国境を超えた自由な流通ですが、中国が「デジタル人民元」を基軸通貨にしようとしている点で問題です。

◆RCEPとCAIを主導する中国の狙い

中国は主導して東アジアでRCEPを進めましたが、ヨーロッパではCAI(中国 EU 投資協定)を進めています。

CAIは、英語でcomprehensive agreement of investment という包括的投資協定という意味で、
投資協定になっていますが、実質上の自由貿易協定です。

CAI はEUが入っており、イギリスは入っていません。アメリカも入っていません。

1月22日、アメリカの保守系メディア「THE DIPLOMAT」が、中国 とEUの投資協定CAIに関して、アメリカとインドの政府が懸念を持っているという記事を出しています。

要は、中国から見るとアメリカを抜きにして、アジアのRCEPと欧州のCAIの自由貿易協定で広いテリトリーを獲得したことになります。

自由貿易協定で広いテリトリーを獲得すれば、投資であろうと貿易だろうと全部お金が絡みます。

自由貿易において常に世界の基軸通貨は米ドルであったはずですが、中国主導でアメリカ抜きということになると、必ずしもドルを使う必要がありません。

ここに、米ドルに代わって人民元を基軸通貨に持っていきたいという習近平政権の狙いがあります。

◆「デジタル人民元」が「米ドル」に挑戦

アメリカのメディアに、「デジタル人民元」が「米ドル」に挑戦するという記事(※動画の9:25)が出ています。

紙の「人民元」は世界で影響力がない弱い通貨です。現時点では中国も経済においてドルの世界で生きており、ドルを稼がなければなりません。

ドルを稼ぐためには2つあります。貿易で稼ぐか、海外から中国に投資してもらうかです。

中国が持っているドルの量を外貨準備高と言い、どれだけドルを持っているかによって、紙の「人民元」の発行量は決まります。

ドルを稼いでドルの量が増えなければ、中国国内の内需拡大すらできないわけです。

結局、ドルというアメリカの世界の中に中国も入っているだけで、これでは中国がアメリカを超えることはできません。

しかし、ドルを持っている量に左右されずに自由に使える「デジタル人民元」を導入して世界の基軸通貨である米ドルに挑戦し、取って代わろうとしているのです。

これはRCEPとCAIによってアジアとヨーロッパでアメリカ抜きにして「デジタル人民元」を決済通貨にするという壮大な中国共産党の戦略なのです。

(つづく)
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及川幸久

執筆者:及川幸久

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