コロナ対策の特措法・感染症法の改正、入院拒否への罰則は基本的人権の侵害!【前編】
幸福実現党党首 釈量子
はじめに、コロナでお亡くなりになられた方に哀悼の意を表するとともに、ご遺族の方には心よりお悔やみ申し上げます。
◆入院拒否への罰則を導入
1月22日、政府は新型コロナウィルスへの対応策として、特別措置法(特措法)や感染症法の改正案を閣議決定しました。
その後、与野党の修正協議が続き、1月28日現在、前科のつく「刑事罰」についてはさすがに見送られる方向ではあります。
しかし、改正案では、コロナ患者が知事等による入院勧告を拒否した場合や、入院先から抜け出したりした際の罰則を導入し、2月上旬にも成立するものと見込まれています。
一時期、「懲役刑」を閣議決定したという政権の発想自体、とても恐ろしいものがありますし、罰則が科されること自体、国民の心理や経済活動をものすごく萎縮させることは間違いありません。
しかし、この政府の対応には、あまりにも大局的な判断を失っていると言わざるを得ません。
まず政府の本音としては、「東京オリンピックを強行したい」ということではないでしょうか。ワクチンの接種と合わせて、感染の拡大を強力に抑え込むことで、諸外国から見て東京五輪を開催できる環境を整えなければと焦りって悩乱しているとしか思えません。
◆コロナ感染の冷静な分析を
日本の状況を見ると、新型コロナの感染は、1月28日現在で32万人、死者数は5000人を超えた程度です。
一方、季節性インフルエンザに、年間1000万人の人が感染し、関連死を含めて、約1万人が亡くなっているとされます。肺炎でも、毎年10万人の人が亡くなっています。
コロナ感染対策の結果なのか、今シーズンはインフルエンザによる死者数が激減し、そのほか、風邪や肺炎患者による死者も含め、トータルの死者数は減少しているのです。
日本ではむしろ例年よりも死者数が減少していることを考えると、罰則を科すことは、バランスを欠いているのではないでしょうか。
PCR検査で陽性となっても、それで他の人が感染するかどうかは確実ではありません。
濃厚接触者でも感染する人としない人がいるように、その人から必ず感染すると決まっているわけではありません。にもかかわらず、罰則を導入しようとしています。
◆罰則は「基本的人権」の侵害
はっきりいって、今回の菅政権の方針は、 国民の「基本的人権」を侵害しているものです。
「基本的人権」は、日本国憲法の三原則(「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」)のうちの一つです。
そのうちの最大のものが「自由権」です。
日本国憲法は、第十三条で「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を定めています。
また、「経済的自由権」として、第二十二条で、「居住、移転及び職業選択の自由」、第二十三条で「財産権」を認めています。
菅政権は、国民の「健康を守る」という名目で、国民に様々な規制をかける傾向があります。しかしこれは、国民の「基本的人権」を侵害する、非常に危険な傾向性なのです。
「国民の健康を守る」という、一見、誰も反論できないような、素晴らしい大義名分を掲げて、政府が国民を管理していくというのは、これは恐ろしい「全体主義」の特徴です。
ナチス・ドイツは、「優れた遺伝子を残し劣っている遺伝子を残さないことで、人類が進歩する」という「優生学」の考え方に基づいて、1933年に、遺伝的で矯正不能のアルコール依存症患者、性犯罪者、精神障害者、そして子孫に遺伝する治療不能の疾病に苦しむ患者を、強制的に断種することを可能とする法律を立法化しました。
これによって、36万件から40万件に上る強制的な不妊手術が行われました。
そして、1939年からは、「T4作戦」(テーフィアさくせん)と呼ばれる、精神的な障害および肉体的な障害を負っている人への安楽死政策が行われ、7万人から数十万人が殺害されたと言われています。
ナチスの話を持ち出すのは、極論に見えるかもしれません。
しかし、1月15日、コロナに感染した東京都内の家族で、30代のお母さんが「自分が周りの人にうつしたかもしれない」「娘の居場所がなくなるかも」というメモを残して自殺するという痛ましい事件がありました。
先に陽性になった夫も濃厚接触者で、小学生の娘さんと同時に陽性判定が出たということです。
小池都知事は「心のケアが必要」と仰っていましたが、政治が「ゆるみ」だとか、買い物に至るまで外出を制限したり、家にいることがほかの人を守るだとか、感染者を「バイキンマン」扱いするかのようなメッセージを発信した責任もあるのではないでしょうか。
もし「インフルエンザの患者に罰則を科す」というならば、なんて冷たい政治なのか。自分は犯罪者なのかと。人々は暴動を起こし、「革命」だって起こしたくなるでしょう。
これは、ナチス・ドイツと同じ傾向性が出てきていると言えます。
(つづく)