【相続税廃止】日本はいつまで「お金持ちが逃げ出す国」を続けるのか
http://hrp-newsfile.jp/2019/3654/
HS政経塾スタッフ 遠藤明成
◆既存の政党は「相続税の強化」ばかり
幸福実現党は相続税廃止を訴えていますが、既存の政党は資産課税の強化を進めています。
共産党や立憲民主党、国民民主党といった野党は「福祉の財源は、お金持ちから取ればいい」という考え方です。
また、安倍政権の下で、2015年には相続税の最高税率が50%から55%にまで上がりました。
その結果、課税対象者が増え、「中の上」ぐらいの生活レベルの人たちも相続税に怯える世の中になったのです。
◆現在の相続税の仕組み
相続税は、15年から制度が変わり、その年度の課税件数は、前年の8割増しとなりました。
14年度に課税されたのは5万6千人でしたが、15年度には10万3千人まで増えたのです(※1)。
そうなったのは、基礎控除が減り、相続税がかかる財産の水準が下がったからです。
【基礎控除の変更】
・14年12月まで:「5000万円+1000万円×法定相続人の数」
・15年1月以降:「3000万円+600万円×法定相続人の数」
(この場合、相続財産が8000万円で相続人が2人いる場合、基礎控除は4200万円なので、課税所得は3800万円になる)
そして、課税所得にかかる税率は、以下の8段階になりました。
・1000万円以下:10%
・3000万円以下:15%
・5000万円以下:20%
・1億円以下:30%
・2億円以下:40%
・3億円以下:45%
・6億円以下:50%
・6億円超:55%
◆日本の相続税の最高税率は世界最高
さらに、今の税率を各国と比較してみます(※2)。
・日本:10%/55%(3000万円+〔相続人×600万円〕)
・米国:18%/40%(約12億円)
・英国:40%/40%(約4400万円)
・ドイツ:7%/30%(配偶者が約9200億円、子が約4900万円)
・フランス:5%/45%(約1200万円)
欧米の主要国と比べても、最高税率の高さは際立っています。
〔※財務省資料をもとに最低税率/最高税率 控除額を「円相当」で表記。資料に掲載された各国通貨での金額を、7/11の為替で換算)
◆世界には相続税がない国もある
しかし、世界には、相続税がない国もあります。
シンガポール、マレーシア、インド、中国、ニュージーランド(NZ)、オーストラリア、カナダ、スウェーデンなどには相続税がありません。
スイスの場合、シュヴィーツ州という相続税のない州があります。
他の州には相続税がありますが、「全州で配偶者間の相続と贈与を非課税にしており、多くの州は親子間の相続も非課税」なので、日本とはずいぶんと違う制度です(※3)。
◆資産家は日本を見捨てる
日本の最高税率は高いので、富裕層の中では海外移住を選ぶ方も増えています。
そのため、財務省は国外資産への課税強化を進めました。
まず、2014年に5000万円超の国外資産を持つ人に情報開示が義務付けられました。
15年には国外に出る際に有価証券などが1億円以上ある場合、含み益に所得税を課税されることになりました。
18年には、国外資産に相続税を免除する条件として、海外に在住する年数が「5年超」から「10年超」へと延ばされました。
外務省によれば、2007年に76万人いた長期滞在者は、17年に87万人(17年)に増加。
同じ期間で、海外の永住者は36万人(07年)から48万人(17年)に増えています(※4)。
この中に富裕層も数多く含まれていることが推測されています。
◆所得税と相続税、資産課税の比較
これに関しては、所得税と相続税の最高税率、証券税制を比べると、実情が見えてきます。
(以下、所得税/相続税/証券税制の税率。プレジデント記事※5を参照)
・日本: 45%/55%/20%
・米国: 39.6%/40%/20%+州税
・NZ: 33%/0%/0%
・シンガポール: 22%/0%/0%
・マレーシア: 28%/0%/0%
米国の最高税率は40%。基礎控除は12億円なので、日本よりも負担が軽くなっています。
今後、米国やシンガポール、ニュージーランド、マレーシアへと資産家が逃げていけば、我が国は富を生む人材を失い、衰退への道をたどりかねません。
◆スウェーデンはなぜ相続税を廃止したのか
日本は格差是正のために相続税を強化しましたが、福祉を重視する国が、みな同じ考え方を採ったわけではありません。
福祉国家のスウェーデンは、2007年に相続税を廃止しました(※6 朝日記事を参照)。
その理由は「高額所得者が国外に出てしまえば、国の競争力が落ちる」からです。
(これは朝日新聞が現地のスウェーデン人に取材した声)
実際に、家具で有名なイケア社の創業家はスウェーデンからスイスに逃げてしまいました。
現地の方は、「税金が理由で移転したのだろう。相続税は経済活動にブレーキをかける」と述べています。
そして、07年に廃止に踏み切った時の財務相は「中小企業では負担が重く、事業を引き継げない場合が多かった」と指摘しています。
同国では、相続税と贈与税が国の税収に占める割合は約0.2%なので、廃止が可能と判断したのです。
◆相続税廃止は企業経営者の支援のために重要
社会保障を重視するスウェーデンでも、企業や創業者が海外逃亡しないよう、相続税を廃止しました。
それ以外にも、相続税には公平性において問題があると見られています。
元国税庁長官の渡辺裕泰・早稲田大教授は「大金持ちは専門家に頼んで、把握が難しい金融資産に変えたり、国外に逃げ出したりする。払うのは大都市に土地を持つような中産階級や小金持ちだけ」(※6)とも述べていました。
さらに、相続税は、中小企業の事業継承の妨げにもなります。
これが原因で企業を畳まなければいけないケースも多いのです。
事業承継の負担を減らす例外措置も始まりましたが、その場合、5年間、雇用の8割を維持し続けなければいけません。
これは、かなり厳しい基準です。
また、中小企業者は、事業を有能な子供や親類、見込んだ後継者に譲りたいのですが、相続税は均分相続であり、遺留分があるので、それはかないません。
贈与をしても、「贈与税」がかかります。
◆相続税廃止とフラット・タックスで、日本は「お金持ちが来る国」に変わる
結局、相続税を強化すると「金の卵を生むガチョウを殺す」結果になりかねません。
そのため、幸福実現党は相続税の廃止を訴えてきました。
また、日本に、お金を稼ぐ優れた人材を招き入れるべく、所得税の一律化(10%程度)や証券課税の廃止をあわせて提唱しています。
そうすれば、日本は米国やニュージーランド、シンガポール、マレーシアよりも富裕層に有利になるので、海外移住の必要はありません。
それどころか、海外から日本に向けて富裕層がやってきます。
そうなれば、消費が増えるだけでなく、新規事業への投資や、慈善事業への寄付などが増えるからです。
幸福実現党は、相続税を廃止し、日本を「お金持ちが逃げる国」から、「お金持ちが集まる国」に変えてまいります。
【参照】
※1:財務省「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」
※2:財務省「税調第18回総会 資料2-2 我が国と諸外国の相続・贈与に関する税制の比較」(2018.10.16)
※3:SWITZERLAND GLOBAL ENTERPRISE「スイス税制の概要」
※4:外務省「海外在留邦人数調査統計(平成30年要約版)」2017.10.1)
※5:プレジデントHP「日本の超富裕層が次々に米国移住するワケ」(2019.1.12)
※6:朝日新聞デジタル「〈カオスの深淵〉立ちすくむ税金:2_2」(2012年7月)