神戸市で中3女子自殺――いじめ対策の強化を
http://hrp-newsfile.jp/2019/3512/
HS政経塾スタッフ 遠藤明成
◆神戸市での中3女子自殺「寄り添える教師がいなかった」
4月15日、2016年に神戸市(垂水区)で起きた中学3年生の自殺を巡る再調査委員会は、その原因がいじめにあったと認定しました。
自殺した女子生徒は1年生の頃からいじめられていたのに、教職員は気づかず、よくあるトラブルとしてしまい、問題が深刻化したからです。
委員会の報告は「寄り添える教師が1人でもいたら命を救えた可能性がある」と指摘しています。
◆聞き取り調査のメモが教育委員会のメンバーによって隠蔽された
この再調査は、自殺の後に行われた第三者委員会の報告に遺族が納得できず、いじめの詳細への調査を町に求めたことから始まりました。
生徒の母親は、この報告を受けて、コメントを発表しています。
「第三者委員会の調査結果を待っていただけだったら、おそらくいじめがあったことも認められることはなかったのではないかと思います」
この発言の背景には、生徒の自殺から5日後に学校が行った調査が、市教育委員会の首席指導主事から指示を受け、隠ぺいされたという問題があります。
以前の校長がいた頃につくられた聞き取り調査のメモには、いじめの内容が書かれていました。
しかし、17年3月に遺族が再調査を要望し、新校長がメモを提出するまで、それは明らかにならなかったのです。
今回の事件では、新校長が教育委員会の上層部に送り、委員会への調査が行われた結果、指導主事が隠ぺいしたことが発覚しました。
結局、遺族が自ら動かなければ、いじめの真相が封印されたままで終わりかねない状況だったのです。
◆証言は同じなのに調査する人によって報告書の内容が変わる
母親のコメントのなかで、特に印象的なのは「生徒たちの証言内容は変わっていないはずなのに、調査する人が変われば報告書の内容が違ってくるのはなぜなのでしょうか」という言葉です。
再調査委員会では、中学1年の頃に「ネットいじめ」が行われていたことや、2年の頃に「この生徒をいじめてもいい」という雰囲気が学年全体に広がっていたこと、さらには不適切な学校運営が行われていたことが認定されました。
しかし、第三者委員会は、そこまで踏み込むことができなかったのです。
◆「第三者委員会」が機能不全になる場合もある
この事件で、第三者委員会が十分に機能しない危険性があることが明らかになりました。
結局、第三者委員会の調査では、自殺に至る過程の全体像が遺族に伝わらなかったからです。
こうした「再調査で、やっと問題の全体像が明らかになる」という事態は、16年に兵庫県多可町で起きた小学5年の女子生徒の自殺事件、14年に起きた鹿児島市の高校1年男子の自殺事件などでも起きています。
第三者委員会をつくっても、教育委員会などが「学校寄り」の委員を選んだ場合、遺族が納得できるような調査が行われるとは限らないわけです。
◆教員や教育委員会の「隠ぺい」に罰則を
この「いじめ防止対策推進法」の運用では、第三者委員会の人選が課題になっています。
ここに学校側の意向を忖度する委員が集まった場合、機能不全になるからです。
そのため、「調査組織に一定数の遺族推薦委員を入れる」べきだという提言もなされています(教育評論家・武田さち子氏)。
また、「隠ぺいに関わった教員や教育委員会への罰則がない」という大きな問題もあります。
この法律には、隠ぺいに対する「抑止力」がないのです。
そのため、幸福実現党は、根本的な問題解決を図るべく、この法案に「いじめ隠ぺい」への罰則をつけることを訴えてきました。
「『いじめ防止対策推進法』を改正し、いじめの報告や対応を義務づけるとともに、放置・隠ぺいするなどした教員や学校への罰則を設けます」(幸福実現党 主要政策)
しかし、国会はいまだ、対策推進法を改正していません。
そのため、幸福実現党は、地方議会において「いじめ防止条例」の制定も目指しています。
条例において、一定の罰則を定めることができるからです(※)。
幸福実現党は、立党以来、いじめ対策の強化を訴えてきました。
今の体制では守りきれない子供たちを救うべく、さらなるいじめ対策の強化を推し進めてまいります。
(※地方自治体法 第14条3項「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる」
【参考】
・朝日新聞デジタル「神戸の中3自殺『教師寄り添えば救えた』 再調査委指摘」(野平悠一、西見誠一 2019年4月16日)
・神戸新聞NEXT「神戸垂水・中3自殺 いじめ認定で遺族コメント<全文>」(2019/4/16)
・神戸新聞(ネット版)「『遺族寄りでいい』いじめと自殺、全国で相次ぐ再調査 第三者性の担保が課題」(2019/4/17)
・産経デジタル「神戸市教委いじめメモ隠蔽、『腹くくって』指示発覚後もあきれた対応、遺族『裏切られた』」(2018/6/6)