IoT導入には、「サイバー・セキュリティシステム」が不可欠
http://hrp-newsfile.jp/2017/3185/
HS政経塾第6期生 山本慈(やまもと・めぐみ)
◆生産効率化の対策としてのIoT導入
経済産業省の調査から、海外に工場をもつ日本企業の1割以上が、ここ1年間、国内に生産拠点を戻していたことが明らかになりました。
国内へ移転する理由としては、円安や現地の人件費の高騰、品質管理の向上が挙げられます。また、ほとんどが中国、上海から移転しているようです。
生産拠点が国内に戻れば、雇用者数が増え、失業率の低下に寄与するはずですが、国内回帰したほとんどの企業では、人手不足が問題になり、総務省の調査では、リーマン・ショック以降、「製造業」の大幅な減少が続いていると報告されています(2011年)。
就業者数減少の対策と生産の効率化を図るために、7割以上の企業が「IoT(Internet of Things)」導入を検討しています(ボーダフォン・グローバル・エンタープライズ・ジャパンが2016年に行った調査)。
◆IoT導入で、サイバー攻撃の危険性が高まる
IoT導入などで、産業のIT化が進む一方、サイバー攻撃が問題として挙げられます。
サイバー・セキュリティ大国であるオランダは、国土に浸水する海水が国家安全保障の脅威になり、制御システムで海水の国土浸水を防いでいます。
産官学連携機関HSDのハンス・ヴォン・ローン氏は「サイバー攻撃でバルブなどの制御システムがハッキングされれば、広く浸水被害が発生しかねない。数年前に寸前で被害を食い止めた事件が起きた」と話しています(19日付日経産業新聞)。
このように、サイバー攻撃によって、国家が危機に陥る恐れがあります。
またIoT搭載の機器をハッキングし、スパイ活動や製品を危険なものに変えることも可能と報告されています。
アメリカ人で11歳のルーベン・ポールくんは、オランダで開催されたサイバーセュリティ会議でIoT機器を使用して、会議に参加した人の電話番号を取得し、その人のスマホを乗っ取るなどの実演をして見せました。
※やじうまPC Watch
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1060047.html
◆世界から遅れる日本のサイバー・セキュリティ・システム
産業のIT化とIoT搭載製品が普及される中、日本のサイバー・セキュリティ・システムは世界から遅れをとっています。
多摩大学大学院教授であり、(サイバー・セキュリティの)ルール形成戦略研究所所長である國分俊史氏によれば、日本のサイバー・セキュリティは「防止」することに焦点をあてすぎ、セキュリティーを破られた後の「対応」に考えがいたっていないケースが多いといいます。
国際社会では、サイバー攻撃は日常的にあり、サイバー攻撃に対するシステムを構築することは国防上当然のことです。
世界中でIoT搭載製品が普及することをふまえ、EUとアメリカ間では、サイバー・セキュリティの技術レベルを国際規格化する話し合いが大詰めを迎えています。
※Forbes「世界に遅れる日本のサイバー・セキュリティ 「安全神話」が障壁に」
https://forbesjapan.com/articles/detail/15532
つまり、市場で商品を売買する際に、最低限のサイバー・セキュリティを導入していなければ、グローバル市場で取り扱えないということです。
今ではEUとアメリカ間だけですが、将来的には日本にも関わることといえます。
◆セキュリティ技術をあげるべき
IoTを製造業に導入したり、製品に搭載したりすることは、製造や日常生活の効率面などのメリットから、今後も普及していくでしょう。
ただし、その弱点をねらうサイバー攻撃に対しては、ただちに措置できるサイバー・セキュリティ・システムの構築や、技術レベルを高めておく必要があります。
また貿易によって経済が成り立っている日本では、サイバー・セキュリティの国際規格を超える技術を国家が促進していく必要があるでしょう。